はじめに
「取締役になると責任ばかり増えてしまうのではないか」
「役員になった途端に残業代が出なくなると聞いたけれど本当なのだろうか」
「会社から取締役就任を打診されたものの、引き受けるべきか迷っている」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
長年勤務してきた会社で役員昇格の話が出た方や、家族経営の会社で名前だけ取締役になっている方の中には、「肩書きは立派になったのに仕事内容はほとんど変わらない」「責任だけ重くなってしまうのではないか」と不安を感じている方もいるかもしれません。
この記事では、取締役が「デメリットしかない」と言われる理由をはじめ、取締役が負う責任や労働条件の変化、名ばかり役員のリスクについて順を追って説明していきます。
取締役は「デメリットしかない」?
取締役は会社経営に関わる重要な立場ですが、就任したからといって必ずしもメリットばかりとは限りません。
そのため、「昇進したのに思っていたほど得ではなかった」と感じるケースもあります。ここでは、取締役が「デメリットしかない」と言われる主な理由について詳しく見ていきましょう。
責任だけ増えて負担が重くなりやすい
取締役になると、担当部署だけでなく会社全体の経営判断に関わるため、負う責任も大きくなります。
事業計画や投資判断の結果について責任を求められることもあり、場合によっては損害賠償責任が発生するケースもあります。
そのため、一般社員よりも判断の重みが増え、精神的な負担を感じやすいといわれています。
労働者としての保護を受けにくくなる
取締役は一般社員とは異なり、労働基準法による保護を受けにくい立場です。
そのため、残業代が支給されないケースや、解任時に社員と同じ保護を受けられない場合があります。
取締役へ就任すると責任だけでなく立場も変わるため、制度面の違いについて事前に確認しておくことが大切です。
「役職が上がる=得する」とは限らない
取締役に就任すると肩書きは上がりますが、必ずしも待遇面のメリットが大きくなるとは限りません。
報酬が増えても、その分だけ経営判断に関わる責任や負担が重くなることがあります。
また、残業代の対象外になるケースも多いため、肩書きだけで判断せず、仕事内容や責任の大きさも含めて考えることが大切です。
取締役になると失いやすいもの
取締役に就任すると、肩書きや権限が増える一方で、従業員だった頃には受けられていた制度や保護の一部が適用されなくなることがあります。
ここでは、取締役になることで失いやすいものや変化しやすいポイントについて解説します。
残業代が出なくなる場合がある
取締役は一般社員とは契約形態が異なるため、残業代が支給されないケースがあります。
業務時間が長くなっても時間外手当の対象にならないことが多く、以前より働く時間が増える場合もあります。
そのため、取締役への就任を検討するときは、報酬額だけでなく働き方や待遇全体を確認しておくと安心です。
労働時間や休日の管理対象から外れることがある
取締役に就任すると、一般社員のように労働時間や休日を細かく管理されない場合があります。
そのため、休日でも取締役会への出席や経営判断への対応が必要になることがあり、仕事とプライベートの境界があいまいになるケースもあります。
就任を検討するときは、報酬だけでなく働き方の変化についても確認しておくと安心です。
雇用保険に加入できないケースがある
取締役は一般社員とは立場が異なるため、雇用保険に加入できないケースがあります。
そのため、退任後に失業給付を受けられない場合もあります。
取締役へ就任する際は、報酬だけでなく社会保険や保障制度がどのように変わるのかも確認しておくと安心です。
簡単に辞めにくくなることがある
取締役は会社の経営に関わる立場のため、一般社員のようにすぐ退任できない場合があります。
後任者の選定や業務の引き継ぎが必要になり、退任時期を会社と調整するケースも少なくありません。
そのため、就任を検討するときは、将来の働き方やキャリアも含めて考えておくことが大切です。
取締役になると増える責任とリスク
取締役になると、単に役職名が変わるだけではなく、会社の重要な意思決定に関わる立場としてさまざまな責任を負うことになります。
ここでは、取締役になることで増える責任とリスクについて解説します。
会社の経営責任を負う立場になる
取締役は担当業務だけでなく、会社全体の経営判断に関わる立場になります。
事業計画や投資、資金調達など重要な意思決定に参加するため、その結果に対する責任も大きくなります。
肩書きが上がるだけではなく、会社の将来を支える重要な役割を担うことになるでしょう。
損害賠償責任を負う可能性がある
取締役は会社の重要な意思決定や監督を担うため、判断や管理に問題があった場合、損害賠償責任を負う可能性があります。
一般社員よりも責任の範囲が広く、場合によっては個人として責任を問われることもあります。
取締役への就任を考える際は、権限だけでなく責任の大きさについても理解しておくことが大切です。
業績悪化時のプレッシャーが大きくなる
取締役は会社全体の経営に関わるため、業績が悪化した際には原因の分析や改善策の検討を求められることがあります。
コスト削減や事業の見直しなど重要な判断に関わる場面も多く、一般社員より大きなプレッシャーを感じることも少なくありません。
そのため、責任の重さを理解したうえで就任を検討することが大切です。
名ばかり役員になるケースもある
会社によっては、実際の経営判断にほとんど関わらないまま、取締役に就任するケースがあります。
しかし、経営への関与が少なくても、取締役としての責任やリスクがなくなるわけではありません。
就任後に後悔しないためにも、事前に役割や権限の範囲をしっかり確認しておくことが大切です。
取締役就任を慎重に判断した方がいいケース
取締役への就任は肩書きや報酬だけで判断できるものではなく、就任後に負う責任や契約条件まで含めて検討することが重要です。
ここでは、取締役就任をすぐに決めるのではなく、事前によく確認した方がよいケースについて解説します。
役員報酬だけで判断している
取締役への就任を考えるときは、役員報酬の金額だけで判断しないことが大切です。
取締役になると経営に関わる責任が大きくなるほか、残業代や雇用保険などの制度が変わる場合もあります。
報酬だけでなく、仕事内容や責任、働き方まで含めて検討すると、納得した判断につながりやすいでしょう。
責任範囲を理解できていない
取締役になると、会社全体の経営判断や監督に関する責任を負うことになります。
役職名だけで就任を決めてしまうと、想像していなかった責任や義務に戸惑うこともあるかもしれません。
就任を検討する際は、仕事内容だけでなく、自分がどこまで責任を負うのかを事前に確認しておくことが大切です。
実質的に「名ばかり役員」になっている
取締役として登記されていても、実際には経営判断にほとんど関わっていないケースもあります。
しかし、経営への関与が少なくても、取締役としての責任までなくなるわけではありません。
就任前には、どのような権限や役割があるのかを確認し、納得したうえで判断することが大切です。
H条件を書面で確認できていない
役員報酬や任期、担当業務などを口頭だけで確認している場合は注意が必要です。
就任後に条件の認識に違いがあっても、書面がなければ確認や相談が難しくなることがあります。
安心して就任するためにも、報酬や役割、責任範囲、退任条件は事前に書面で確認しておくことが大切です。
取締役就任前に確認しておきたいポイント
取締役への就任を受ける前には、肩書きや報酬額だけで判断するのではなく、就任後の権利や義務、契約上の取り扱いまで具体的に確認しておくことが大切です。
後からトラブルや認識違いを防ぐためにも、事前に確認しておきたい重要なポイントを押さえておきましょう。
役員報酬と待遇条件を確認する
取締役への就任前には、役員報酬の金額だけでなく、支給方法や待遇条件まで確認しておくことが大切です。
残業代や各種手当、福利厚生がどのように変わるのかを事前に把握しておくと、就任後の認識違いを防ぎやすくなります。
安心して就任するためにも、条件はできるだけ書面で確認しておくとよいでしょう。
どこまで責任を負う立場なのか確認する
取締役へ就任する前には、自分がどのような役割を担い、どこまで責任を負うのかを確認しておくことが大切です。
取締役会への参加範囲や担当業務によって、求められる責任や負担は変わることがあります。
就任後に戸惑わないためにも、責任の範囲を事前にしっかり確認しておくと安心です。
雇用契約が終了するのか確認する
取締役へ就任すると、一般社員としての雇用契約が終了し、契約形態が変わる場合があります。
その場合、残業代や雇用保険などの制度の扱いも変わることがあるため、事前に確認しておくと安心です。
就任後の認識違いを防ぐためにも、自分の立場や契約内容をしっかり確認しておきましょう。
辞任時の条件や手続きを確認する
取締役へ就任する前には、辞任するときの手続きや条件も確認しておくことが大切です。
後任者への引き継ぎや退任までの流れ、役員報酬の扱いなどを事前に把握しておくと、退任時の混乱を防ぎやすくなります。
就任時の条件だけでなく、辞任時のルールまで確認したうえで判断すると安心です。
まとめ
取締役は会社経営に関わる重要な立場ですが、肩書きが上がるからといって、必ずしもメリットだけが増えるわけではありません。
経営判断に関わる責任が大きくなるほか、残業代や雇用保険など、これまで受けていた制度の扱いが変わる場合もあります。
また、会社によっては権限や役割が十分に与えられていないまま、責任だけを負う「名ばかり役員」のような状況になる可能性もあります。
そのため、役員報酬だけで判断せず、責任範囲や働き方、契約内容までしっかり確認することが大切です。
取締役への就任は、会社から期待されている証でもあります。
納得した形で新しい役割を引き受けられるよう、条件や責任を十分に理解したうえで判断してみてください。