目次
プロジェクトマネジメント資格の全体像
プロジェクトマネジメント資格は、プロジェクトを計画・管理し、目標達成に導く実力を証明するための資格です。扱う分野はITに限らず、製造、建設、サービス業など幅広い業界で重視されています。資格を取得することで、知識だけでなく実践力やマネジメントの手法が身につくため、職場での信頼性向上やキャリアアップに役立ちます。
代表的な資格には、国際的に認知されたPMP(Project Management Professional)、CAPM(Certified Associate in Project Management)、PRINCE2、CompTIA Project+があります。これらは世界中で利用されているため、グローバルな環境でも高く評価されます。また、日本国内で重視される資格として、IPAのプロジェクトマネージャ試験(PM)やP2M(プロジェクト&プログラムマネジメント資格)、日本PMO協会のPMO資格があります。どの資格も日本語での受験が可能で、英語力に不安がある方でも挑戦しやすいのが特徴です。
資格取得を目指すことで、プロジェクトを円滑に進める知識や考え方が身につきます。プロジェクト管理に興味がある方や、組織でリーダーシップを目指す方は、一度どの資格が自分に合っているか調べてみると良いでしょう。
次の章では、主要なプロジェクトマネジメント資格の一覧と費用感についてご紹介します。
主要資格の一覧と費用感(抜粋)
プロジェクトマネジメント分野には、さまざまな資格が用意されています。それぞれに役割や特徴があり、取得にかかる費用も異なります。ここでは、よく知られた代表的な資格の抜粋とその費用感についてご紹介します。
PMP(PMI)
PMI(Project Management Institute)が認定するPMP(Project Management Professional)は、世界的に認知度が高い資格です。受験料は約405〜555米ドル(およそ6〜8万円程度)かかります。会員と非会員で受験費用が異なるのが特徴です。
CAPM(PMI)
PMIが提供するもう一つの資格であるCAPM(Certified Associate in Project Management)は、プロジェクト管理の経験が浅い方向けです。受験費用は約225〜300米ドル(約3〜4万円)です。
PRINCE2
イギリス発祥のPRINCE2はヨーロッパを中心に普及しています。基礎編にあたるFoundationが約63,800円、実践編であるPractitionerは約60,830円です。
CompTIA Project+
IT系の資格試験でよく知られるCompTIA Project+は、受験料が約46,284円となっています。
IPAプロジェクトマネージャ試験(PM)
情報処理推進機構(IPA)が実施する国家資格です。受験料は7,500円と、他の民間資格と比べると非常に安価です。
P2M(PMAJ)
日本のプロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が提供するP2M資格には、いくつかの段階があります。
- PMC(プロジェクトマネジメントコーディネータ):17,000円
- PMS(プロジェクトマネジメントスペシャリスト):39,200円
- PMR(プロジェクトマネジメントレジスタード):220,000円
上位資格ほど、費用も高くなります。
その他の資格
日本PMO協会が認定するPMO資格もありますが、こちらもコースやレベルによって費用が異なります。
これらの資格は、選ぶ目的や自身の予算、目指すキャリアパスによって最適なものが変わります。次の章では、代表的な資格であるPMPについて、その取得までの流れと維持方法をご紹介します。
PMP(Project Management Professional)の取得フローと維持
PMP(Project Management Professional)は、世界的にも有名なプロジェクトマネジメント資格です。取得するためには、いくつかの明確なステップを踏む必要があります。
PMP取得のための基本フロー
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PMI公式サイトでアカウント作成
まずはPMPを主催するPMI(プロジェクトマネジメント協会)の公式サイトにて専用アカウントを作ります。 -
職務経歴の申請
次に、プロジェクトマネージャーとしての実務経験を申請します。ここで問われるのは「肩書」ではなく、プロジェクトを計画し、進行管理し、完了まで導いた経験です。例えば、営業部門でプロジェクト型の大きな案件を進めた経験や、開発チームのリーダーとして新しいサービス導入を管理した経験などが対象となります。 -
35時間の公式PM研修受講
公式なPM研修(35時間分)の修了が必要です。これは専門の研修機関で、オンラインまたは通学形式で受講できます。 -
申請内容の審査と受験料の支払い
職務経歴や研修修了内容をPMIが審査します。審査通過後、受験料を支払います。 -
試験予約と受験
最寄りの会場やオンラインで試験日程を選び、受験します。試験は選択式です。
PMP資格の有効期間と維持
PMP資格は、取得後3年ごとに更新が必要です。更新には「PDU(プロフェッショナル開発単位)」を60取得する必要があります。1PDUは、1時間分のプロジェクトマネジメント関連の学習や活動に相当します。たとえば、セミナーへの参加や、本を読んで要約を提出するなど、様々な方法で獲得可能です。
受験に必要な経歴の目安
- 4年制大学卒業の場合:過去8年以内に36カ月以上の実務経験
- 高校卒業または短期大学卒業の場合:60カ月以上
ここで重要なのは、必ずしも肩書が「プロジェクトマネージャー」でなくてもよい点です。プロジェクトの立ち上げから終結までをリードした経験が評価されます。
次の章では、IPA「プロジェクトマネージャ試験(PM)」の位置づけや難易度についてご紹介します。
IPA「プロジェクトマネージャ試験(PM)」の位置づけ・難易度
IPA(情報処理推進機構)が主催するプロジェクトマネージャ試験(通称PM試験)は、国内において唯一のプロジェクトマネジメント分野の国家試験です。PMPとは異なり、日本独自の制度であり、日本のIT業界で広く認知されています。
実務的な出題内容
PM試験の特徴は、マークシート式の択一問題に加え、記述式・論述式の問題が出題される点です。例えば、午前IIでは知識を問う記述問題があり、午後IIでは実際にプロジェクトリーダーとして直面するようなトラブルや解決策を自分の言葉でまとめる論文形式となっています。つまり、暗記だけでなく「自分の経験や考え」を表現する力が求められます。
難易度と合格率
合格率は例年15%前後と、国家資格の中でも高難易度です。合格には実務経験や幅広い知識、論理的思考力が必要です。初めて受験する方は、過去問や参考書を活用して記述練習を早めに始めることが効果的です。
他の高度試験との関係
この試験に合格すると、ITストラテジスト試験やシステムアーキテクト試験など、他の高度情報処理技術者試験における一部試験科目の免除が受けられます。これにより、更なるキャリアアップも図りやすくなります。
費用・受験資格と国際的な認知
PM試験は受験料が安価で、年齢や実務年数などの制限はありません。そのため「基礎固め」やステップアップを目指したい方にも最適です。一方で、PMPのような国際資格と比較すると、海外での認知度や最新のプロジェクト管理手法の反映はやや限定的です。
次の章に記載するタイトル:よく比較される4種類:選び方の指針
よく比較される4種類:選び方の指針
プロジェクトマネジメント資格には、主に4つの種類がよく比較されています。それぞれの特徴を理解し、自身の立場や目的に合わせて選ぶことが大切です。ここでは、それぞれの資格の選び方についてわかりやすくご案内します。
PMP(Project Management Professional)
PMPは、実際にプロジェクト管理の経験がある方におすすめの資格です。グローバルで認知度が高く、プロジェクトマネジメントの国際的な標準となっています。海外でのキャリアや多国籍企業への転職を目指す場合に有利です。受験には実務経験が必要ですが、その分取得後の評価も高まります。また、資格を継続して保有するには、定期的な更新も求められます。
IPA「プロジェクトマネージャ試験(PM)」
IPA PMは、情報処理推進機構が主催する国家資格で、主にIT業界内で高く評価されています。費用をかけずに取得できることや、国内での知名度が高い点が特徴です。更新制ではないため、一度取得すれば永久に有効です。日本国内でのITプロジェクト管理にキャリアを絞る場合、コストパフォーマンス重視の選択となります。
P2M(PMAJ)
P2Mは、プロジェクトマネジメントを一から学びたい方に適しています。段階的な資格体系が特徴で、知識の習得から応用力の強化まで、一歩ずつ成長できます。初学者はまずPMC(プロジェクトマネジメント・コーディネータ)などの入門資格から始める方法がおすすめです。IT分野以外の大型プロジェクトにも対応する知識が身につきます。
PMO-S(日本PMO協会)
PMO-Sは、プロジェクトマネジメントの支援専門家やPMO部門で活躍したい方に向いています。いわゆる"裏方"として、プロジェクトの運営やサポートを専門とするキャリア志向の方に適合しています。プロジェクトを支える役割に興味があるなら、選択の候補に入れてみてください。
選び方の目安
- 実務経験があり、国際的に評価されたい:PMP
- コストを抑えて国内=特にIT業界で評価されたい:IPA PM
- 初めて学ぶ、体系的にステップアップしたい:P2M(PMCから)
- PMOや支援・サポートが専門のキャリアを目指す:PMO-S
それぞれの特徴や自分のキャリア目標と照らし合わせて、最適な資格選びを行いましょう。
次の章に記載するタイトル:資格取得のメリットと市場評価
資格取得のメリットと市場評価
資格取得のメリット
プロジェクトマネジメント資格を取得する最大のメリットは、ご自身の知識や経験を「客観的」に証明できる点です。たとえば、PMPやIPAのプロジェクトマネージャ試験(PM)など、難易度の高い資格は、履歴書や社内申請の場で強いアピール材料となります。認定証を提示することで「一定の基準を超えたスキルを持っている」ことが一目で分かります。
また、近年はプロジェクトマネジメント人材が不足しており、資格を保有することで転職時や社内での昇進が有利になる傾向があります。特にITやシステム業界では、プロジェクトを円滑に進める能力が重視されているため、知識体系だけでなく実務経験の証明にもなります。
市場での評価
多くの企業では、PMPやIPA PMなど一定レベル以上の資格取得者に対して、資格手当や報奨金を支給する事例があります。たとえば、PMP資格を取得した場合には、月額の手当や一時金として数万円が支給されることもあります。これは、業界内でその資格が「難関」と認識されているからです。
こうした資格を持つ人材は、「プロジェクトを任せる」候補として企業からも注目されやすく、人材市場でも高い評価を受けています。更に、お客様や取引先への信頼獲得にもつながるため、フリーランスや独立希望の方にもメリットがあります。
次の章では、目的別の具体的な選定ガイドについてご紹介します。
目的別の具体的な選定ガイド
プロジェクトマネジメント資格を選ぶ際は、自分の目指す働き方や求められるスキル、働く環境によって適した資格が異なります。ここではいくつかの代表的な目的と、その目的に合った資格の選び方をご紹介します。
国際案件や外資系・グローバル志向の方向け
国際的に通用するプロジェクトマネジメントの資格を求める場合は、「PMP(Project Management Professional)」がおすすめです。PMPは世界中で認知度が高く、外資系企業やグローバル案件でも“共通言語”として機能します。更新制のため、常に最新の知識やフレームワークへアップデートできます。転職やフリーランスなど市場で自身のスキルの証明が重要な場合にも有効です。
国内IT業界・コスト効率重視の方向け
日本国内のITプロジェクトや、コストを抑えてしっかりした資格を取得したい方には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「プロジェクトマネージャ試験(PM)」が適しています。国家資格であり、信頼性が高いことが特長です。論述試験があるため、論理的思考やドキュメンテーション能力もアピールできます。年1回の試験なので、計画的な準備が必要です。
初学者や体系的に学びたい方向け
プロジェクトマネジメントを初めて学ぶ方や、段階的に知識を深めたい方には「P2M(PMC→PMS→PMR)」のシリーズをおすすめします。コンセプトや方法論を体系立てて学べるので、未経験者にも分かりやすいです。
PMO・プロジェクト支援職の方向け
プロジェクトマネージャーの支援業務や組織横断的な管理(PMO業務)を志す方は、「PMO-S」や「PJM-A」などの資格も検討しましょう。支援職能に合わせた内容で、現場での実務力向上にも役立ちます。
国際入門的資格や短期取得希望の方向け
短期間で取得できる国際資格や、入門レベルの知識を身につけたい場合は「CAPM(Certified Associate in Project Management)」や「CompTIA Project+」、「PRINCE2 Foundation/Practitioner」などがあります。英語対応が求められるケースもありますが、比較的受験ハードルが低いのが特徴です。
次の章に記載するタイトル:難易度・受験要件・費用の比較(要点)
難易度・受験要件・費用の比較(要点)
プロジェクトマネジメント資格を選ぶ際に、多くの人が気になるポイントが「難易度」「受験要件」「費用」です。ここでは代表的な資格であるPMPとIPA「プロジェクトマネージャ試験(PM)」について、要点を比較してご紹介します。
難易度の違い
PMPは「中級から上級レベル」の難易度です。実際にプロジェクトに関わった経験が求められ、試験内容も幅広いプロジェクト管理の知識が必要です。更新制もあるため、取得して終わりではなく、資格を維持する努力が必要です。
一方、IPA PM試験は合格率がおよそ15%と難関です。理論だけでなく、論述・記述式の問題が多く、実践的な知識と論理的な表現力が求められます。
受験要件の違い
PMPは受験のハードルがやや高めです。"学歴"と"プロジェクト実務の年数"、加えて「35時間の公式研修修了」が必須条件となっています。そのため、未経験者には受験自体が難しい資格です。一方でIPA PMは受験資格の制限がありません。誰でも申し込めるので、まず実力を試してみたい方にも適しています。
費用の違い
PMPは国際資格で、受験費用が数百ドル(通常、50,000~70,000円程度)かかります。さらに、公式研修受講や継続的な更新費用も発生します。全体として、ややコストは高めです。対して、IPA PMの受験料は7,500円と比較的安価です。更新制度も不要なので一度合格すれば追加コストはかかりません。
国際認知度の違い
PMPは「グローバル標準」と言われるだけあり、世界中で有効性が認められている資格です。外資系企業や国際的なプロジェクトに携わる場合も安心です。一方、IPA PMは日本国内での評価が主となり、海外での認知は限定的です。
次の章では、取得後の運用・更新についてご説明します。
取得後の運用・更新
PMP資格の運用と更新
PMP(Project Management Professional)の資格は、一度取得したら終わりではありません。3年ごとに資格を更新する必要があります。更新には「PDU(Professional Development Units)」というポイントを60単位分集めることが条件です。PDUの取得方法はさまざまで、専門セミナーへの参加や、インターネットを使った講座の受講も含まれます。さらに、プロジェクトマネジメント関連のコミュニティへの貢献(ウェビナーの運営協力や知識共有)、実際の業務での経験も一部PDUに換算できます。更新のタイミングが近づいた際は、PMI公式サイトから更新手続きが可能です。ご自身の活動を定期的に記録しておくとスムーズに進められます。
IPAプロジェクトマネージャ試験(PM)の運用
一方、IPA「プロジェクトマネージャ試験(PM)」の場合は、合格すれば資格そのものに更新制度はありません。つまり、生涯有効です。ただし、ITやマネジメントの分野は技術や手法が日進月歩で進化しているため、取得後も最新情報のキャッチアップが欠かせません。書籍の購読や公的な勉強会・セミナーへの参加、現場での実践を通して、知識や手法を磨き続けましょう。
その他の資格の場合
主要なプロジェクトマネジメント資格の中には、維持や更新が必要ないものもあります。ただ、ご自身のキャリアアップや、市場価値を維持するためには、資格取得後も継続的な学びや情報収集が重要です。「資格は取ったけれど、それきり」にならないように常にアンテナを張っておくことが大切です。
次の章に記載するタイトル:受験準備の実務アドバイス(要点)
よくある質問(FAQ)
資格取得に関するよくある疑問とその回答
Q1. PMPとIPA「プロジェクトマネージャ試験」はどちらから取得すべきですか?
A. 目的によります。国際的な知名度や外資系企業を重視するならPMPが先、国内IT分野や官公庁系を重視するならIPA PMからも良いです。また、両方を目指す場合はIPA PM合格後にPMP申請準備を始める流れが効率的です。
Q2. 未経験でも受験可能ですか?
A. PMPの場合、一定のプロジェクト実務経験が必須です(大学卒業者は36か月)。IPA PMはプロマネ業務経験が推奨ですが、具体的な実務要件はなく、自己学習でチャレンジできます。
Q3. PMPの継続資格取得(更新制度)は大変ですか?
A. 更新には3年ごとに所定時間の学習や活動が必要ですが、計画的にセミナー・学会参加やEラーニングを利用すれば、日常業務の中でも達成可能です。
Q4. IPA PM試験の論述式対策で効果的な勉強法は?
A. 過去問を使った論述練習と、リスク・品質・調達などの事例を自分の経験や業務に当てはめて書く練習が効果的です。他人の答案例と比較するのも客観性を養うコツです。
次の章に記載するタイトル:「よくある質問(FAQ)」
よくある質問(FAQ)
Q1. 未経験でもプロジェクトマネジメント資格は取得できますか?
はい、未経験の方でも取得できる資格があります。たとえば、P2Mの初級(PMC)、CAPM、PRINCE2 Foundationなどは、実務経験が必須ではなく、基礎知識をしっかり学べば合格できるものです。これらはプロジェクトの基礎を身につけたい方におすすめです。
Q2. PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を目指す場合、どの資格が適していますか?
PMO-SやPJM-Aなど、PMOの役割に特化した資格があります。これらはPMOの仕事内容や業務範囲に合わせて作られており、実務に直結する知識が身につきます。PMO志向の方はこれらの資格取得を検討すると良いでしょう。
Q3. フリーランスや高単価案件を目指すなら、どの資格が有利ですか?
PMPやIPA PMなどの上位資格は、履歴書や職務経歴書に記載することで信頼性を高め、より高単価の案件やフリーランス案件を獲得する際に有利です。特にPMPは国際的な評価も高いため、国内外で活躍を考えている方にもおすすめです。
Q4. どの資格が自分に合っているか分かりません。どう選べば良いですか?
自分の現在の職種やなりたい将来像を明確にすることが大切です。実務経験が浅い方は基礎資格、実務経験豊富な方やキャリアアップ志向の方は上位資格や専門特化資格を選ぶのがおすすめです。
Q5. 資格取得後はどのような活用方法がありますか?
社内での昇進・異動、転職活動時のアピール、またフリーランスとしての信頼獲得などが挙げられます。また資格取得を通じて得た知識は、日々の業務改善やプロジェクト成功にもつながります。