目次
プロジェクトマネジメント協会(PMI)の正体と役割
PMIとはどんな団体なのか?
プロジェクトマネジメント協会(PMI)は、1969年にアメリカで誕生した非営利の専門家団体です。主な活動目的は、プロジェクトマネジメント分野における知識や技能の標準化と普及にあります。世界中の様々な業界や職種で活躍する人々を支援し、プロジェクトやプログラム、さらに複数事業の管理手法であるポートフォリオマネジメントに関するガイドラインや資格、コミュニティを提供してきました。
グローバルな影響力
PMIは2019年に50周年を迎え、これまでに300万人以上の実務者を支援してきました。活動の幅は国際的で、アメリカ以外にも各国で支部を持ち、グローバルなネットワークを構築しています。例えば、ソフトウェア開発や建設、製造業など業種・規模を問わず、多様な分野で活用されています。
日本でのPMIの役割
日本では「プロジェクトマネジメント協会」という名称で知られており、略称の「PMI」も定着しています。日本支部(PMI Japan)は、1998年に発足しました。日本産業界全般に向けてプロジェクトマネジメントの重要性を伝えるとともに、日々新たな知見や実践事例を共有する活動を行っています。日本支部の年次レポートでも、PMIが非営利かつ世界的な専門団体であることや、毎年の国内活動状況についてまとめられています。
PMIが目指すもの
PMIは単に資格を発行するだけではありません。プロジェクトマネジメントという考え方や文化を、より多くの組織と人々に広めることを重視しています。そのため、教育やガイドラインの発信、現場で役立つ情報共有も積極的です。結果、業界の壁を超えて多くの実務者がPMIを頼りにしています。
次の章に記載するタイトル:PMIが提供する世界標準「PMBOK」とその意義
PMIが提供する世界標準「PMBOK」とその意義
PMBOKとは何か?
PMBOK(ピンボック)は、PMI(プロジェクトマネジメント協会)がまとめた、プロジェクトマネジメントの知識体系ガイドです。簡単に言えば、効率よく「仕事の計画」や「進捗の管理」、「チームの運営」をすすめるための方法や考え方が詰まった教科書のような存在です。世界中の多くの企業や組織が、このPMBOKの書かれた内容を基に、仕事を進めています。
なぜPMBOKが標準とされるのか?
PMBOKが標準とみなされている理由の一つは、「どんな業界でも通用する内容」に整理されているからです。IT業界だけでなく、建設や製造、金融、さらには医療分野まで、実に幅広いプロジェクトで利用されてきました。例えば"家のリフォーム"や"新商品開発"といった場合でも、PMBOKで語られる計画立案や進行方法が役立ちます。
PMBOKの内容
PMBOKはおもに「何をどう管理するか」という知識に分かれていて、プロジェクトの計画から完了までの流れを段階ごとにわかりやすく解説しています。また、2021年に発行された最新版では、時代の変化に合わせてより柔軟な考え方や、多様な働き方を反映した内容になっています。たとえば、昔よりも変化の激しい時代を見据えて、チームで協力して問題を解決する方法や、人それぞれの強みを活かすアプローチが追加されました。
PMBOKを学ぶ意義
PMBOKを学ぶ最大のメリットは、「誰でも同じ土俵で話ができる」ことです。たとえば新しい仲間や海外のメンバーと一緒に仕事を進める際、PMBOKの知識があれば共通の言葉やルールでやりとりできます。人によってやり方がバラバラにならず、意思疎通もスムーズに進みます。
次の章に記載するタイトル: PMI資格の全体像(PMP/CAPM/ACPほか)
PMI資格の全体像(PMP/CAPM/ACPほか)
PMI資格とは何か?
プロジェクトマネジメント協会(PMI)が提供する資格は、プロジェクトを管理し成功に導くための知識やスキルの証明として、世界中で認められています。PMIの資格にはいくつかの種類があり、それぞれが異なるキャリア段階や専門分野に対応しています。ここでは主な資格の特徴をご紹介します。
PMP(Project Management Professional)
PMPは、プロジェクトマネジメント分野で最も知られている資格です。国際的な認知度が高く、多くの企業がプロジェクト管理者に求める基準となっています。取得には実務経験(一定のプロジェクトリーダー経験)、35時間以上の公式講習受講、そして英語でのプロジェクト経験記述提出と、4時間・180問の試験合格が必要です。日本でも価値の高い資格とされています。
CAPM(Certified Associate in Project Management)
CAPMは、プロジェクトマネジメントの入門資格です。経験や実績が少ない方や新卒者向けで、プロジェクトに携わる基礎知識を証明できます。これからプロジェクト管理のキャリア始めたい人に適しています。
PMI-ACP(PMI Agile Certified Practitioner)
PMI-ACPはアジャイル(柔軟で迅速な開発手法)についての資格です。近年、ITや開発の現場でアジャイル手法の導入が進んでおり、従来の計画重視型だけでなく、変化に強いマネジメント能力を身につけたい方におすすめです。
その他の主要資格
・PgMP(Program Management Professional):複数プロジェクトをまとめて管理する専門家向け
・PfMP(Portfolio Management Professional):プロジェクト全体の戦略や優先順位を決める役割の方向け
・PMI-CPやPMI-PBA、PMI-RMP、PMI-SP、PMO-CPなど:建設・ビジネス分析・リスク管理・スケジュール管理など各分野で活躍したい方向け
試験方法と注意点
PMIの資格試験は、世界中にある試験センター「ピアソンVUE」で行われます。PMPは、残念ながら日本国内では自宅受験(OnVUE方式)は選べません。資格ごとに必要な経験や受験条件が異なるので、事前にしっかりと公式情報を確認しましょう。
他資格との比較も重要
日本国内にもプロジェクト関連資格があります。例えば、IPAプロジェクトマネージャ、PMAJのP2M、PRINCE2などです。PMIの資格は国際的に通用する点が魅力ですが、自分の業界や働き方に合った資格を検討するとよいでしょう。
次の章に記載するタイトル:PMIとPMPの違い、更新・メリットの要点
PMIとPMPの違い、更新・メリットの要点
PMIとPMPの違いと役割
まず、PMI(Project Management Institute)はプロジェクトマネジメント分野の国際的な団体です。世界中の専門家が参加しており、知識や技術の標準化、教育、資格認定を通じて、プロジェクトマネジメントの発展を支えています。
一方、PMP(Project Management Professional)は、PMIが運営する資格のひとつです。これは個人が持つ「スキル」と「知識」を公式に証明できる国際資格であり、取得には一定の実務経験や学習が必要です。つまり、「PMI」は組織、「PMP」はその組織が発行する資格と考えるとわかりやすいです。
PMPの更新(継続教育)
PMP資格を取得した後も、定期的な更新手続きが必要です。3年ごとに所定の学習や実践を継続していることを証明しなければなりません。例えば、関連するセミナーへの参加や、業務を通じて必要な知識・技術を磨き続けることが求められます。更新制度は、知識やスキルの最新性を維持する観点から導入されています。
PMP取得・更新のメリット
PMP資格を取得していると、プロジェクト管理の専門能力を証明できるため、転職や昇進で有利になるケースが多いです。また、国際的に認められているため、海外でのキャリアにも活かせます。更新制度を通じて常に新しい知識を得たり、同じ資格を持つ専門家同士のネットワークを広げたりする機会も増えます。
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日本の関連団体との違い(PMAJ・日本PMO協会)
日本の関連団体との違い(PMAJ・日本PMO協会)
日本の団体とPMIの違いとは
日本国内でプロジェクトマネジメントに取り組んでいる主な団体として、「日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)」と「日本PMO協会(NPMO)」があります。これらは、それぞれ独自の活動や資格制度を持ち、PMIとの違いを理解することが大切です。
日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)
PMAJは、日本発のプロジェクトマネジメント標準である「P2M」に基づき、独自の資格としてPMRやPMSを提供しています。PMAJの資格は、製造、情報システム、建設など幅広い分野で活用されています。PMAJは日本の産業や文化の特徴を反映した教育・研究活動にも力を入れています。
たとえば、あるIT企業が新しいソフトウェアを開発する際、PMAJ資格を持つプロジェクトマネージャーが日本の企業文化や慣習を踏まえてチームをまとめる、といったケースがみられます。
日本PMO協会(NPMO)
日本PMO協会は、プロジェクトマネジメントの中でも特に「PMO(プロジェクトを統括・支援する専門組織)」に焦点を当てています。資格や研修だけでなく、PMO導入や現場での運用支援、調査研究活動なども行っています。組織のプロジェクト推進力を上げていくことに特化しているのが特徴です。
たとえば、大手メーカーが複数の新商品開発プロジェクトを同時に進める際、PMO協会の知見や認定資格者が体制づくりや進捗管理をサポートする、といった活用例があります。
グローバル標準のPMIとの違い
PMIはアメリカ発祥のグローバル団体で、世界中の組織やプロジェクトに通用する標準(PMBOK)や国際資格(PMPなど)を提供しています。世界中の異なる国や業界で使える知識や経験の証明を重視しています。
つまり、PMAJや日本PMO協会は日本の実情や課題に即した活動や資格を提供し、PMIはグローバルな視点での知識体系と資格を提供している点が大きな違いです。どちらが優れているというより、目的や活用したい現場に応じて最適な団体や資格を選ぶことが大切です。
次の章に記載するタイトル:プロジェクトマネジメントの基礎キーワード(学習の入口)
プロジェクトマネジメントの基礎キーワード(学習の入口)
プロジェクトと運営管理の違い
最初に理解しておきたいのが「プロジェクト」と「運営管理(オペレーション)」の違いです。プロジェクトとは「明確な始まりと終わりがあり、独自の成果物を生み出すための活動」を指します。例えば、新製品の開発やウェブサイトの立ち上げ、イベントの開催などが該当します。一方、運営管理(オペレーション)は日々繰り返される業務やサービスの運用管理を意味します。飲食店の接客や製品の製造ラインなどがその例です。この違いを整理しておくと、プロジェクトマネジメントの必要性がはっきり見えてきます。
プロジェクトライフサイクルとフェーズ
プロジェクトには「ライフサイクル(全体の流れ)」があります。ライフサイクルは、一般的にいくつかの「フェーズ(段階)」に分かれています。たとえば、計画、実行、終了などです。新しいアプリ開発を例にすると、最初にアイデアを企画し(立上げ)、どんな機能を盛り込むかを細かく決め(計画)、実際に作り始め(実行)、進行状況を確認し調整し(監視コントロール)、最後にリリースして完了(終結)となります。このように段階ごとに分けることで、進捗や課題を把握しやすくなります。
5つのプロセスグループ
PMIのプロジェクトマネジメントでは、「5つのプロセスグループ」がとても重要です。
- 立上げ:プロジェクト開始の合意や目的設定の段階です。
- 計画:成果物やスケジュール、予算などの計画を立てます。
- 実行:実際に計画に沿って作業を進めます。
- 監視コントロール:進行中の成果や計画との差を確認し、必要に応じて修正します。
- 終結:成果物の納品やまとめを行い、プロジェクトを終了します。
たとえば、文化祭の開催の場合、「立上げ」で企画案を決め、「計画」で役割分担や予算を設定し、「実行」で準備と運営、「監視コントロール」で進行やトラブル対応、「終結」で片付けと振り返りを行うイメージです。
これらの基礎キーワードを覚えることで、プロジェクトマネジメントの全体像をつかむ第一歩となります。
次の章に記載するタイトル:実務者が押さえるべき受験・学習の実際(ケースに基づくポイント)
実務者が押さえるべき受験・学習の実際(ケースに基づくポイント)
試験準備を始める前に
実際に受験する前に、まず自分自身の現在の業務や経験がPMPなどの受験要件に合っているかの確認が必要です。プロジェクトに関する仕事の経験年数や、発生した課題をどのように解決してきたかなど、自分のキャリアを丁寧に振り返ることが、大切な第一歩となります。
学習計画の立て方と時間管理
PMPの場合、一般的には200~300時間程度の学習時間が推奨されています。仕事や家庭の状況に応じて、平日の夜や週末を活用するなど、現実的に続けられるスケジュールを立てましょう。例えば、毎日1時間ずつ学習し、週末にまとめて模擬試験を受ける方式など、生活リズムに合わせた工夫も必要です。
実務と両立するコツ
学習時間が取りづらい方には、短いスキマ時間を利用する方法が役立ちます。通勤や移動時間を利用して問題を解いたり、基本用語を暗記したりすることで、無理なく実力を底上げできます。
英語でのプロジェクト記述への対応
受験申込やプロジェクト経験の申請では、英語で自分の実績を書く必要があります。難しく感じるかもしれませんが、業務内容をできるだけ具体的に、かつ簡潔にまとめると伝わりやすくなります。実際の申請例やテンプレートを参考にしながら書くことで、初心者でも安心して準備できます。
試験フォーマットに慣れる
PMP試験は全部で180問、4時間という長丁場です。過去問や模擬試験に繰り返し取り組み、決められた時間内で全問解答する経験を積むことが大事です。実際に時計を使いながら練習し、本番で焦らないよう体感を鍛えましょう。
資格の選択基準・比較
多くの人が国内資格(IPAプロジェクトマネージャ、P2M、PRINCE2など)とPMP(PMI)を比較検討しています。選ぶ際には、将来的なキャリアの広がりや転職市場での評価、グローバルな認知度などを考慮しましょう。例えば、海外プロジェクトや外資系企業を目指す場合、英語力とPMP資格がセットで評価されることが多いです。国内限定のために受けるならIPA、幅広い選択肢を持ちたい場合はPMPやPRINCE2が好まれます。
次の章に記載するタイトル:こんな人にPMI/関連団体の情報が役立つ
こんな人にPMI/関連団体の情報が役立つ
国際資格でキャリアを広げたい方へ
もしあなたが「どの業界にも通用する資格」を取りたいと考えている場合、PMIが発行するPMPやCAPMなどの資格が大いに役立ちます。たとえばIT業界だけでなく、建設、製造、サービス業など、さまざまな職種で通用するのがこれら国際資格の強みです。海外で働きたい方やグローバル企業に移りたい方も、国際的な基準のもとでスキルを証明できるので、転職やキャリアアップを目指す際の武器になります。
組織のプロジェクト管理を仕組み化したい場合
組織としてプロジェクトを効率よく回したい、と考えている企業や管理職の方にもPMIの情報は役立ちます。PMIが策定した「PMBOK」などの標準ガイドに従えば、プロジェクトの進め方や評価方法、人材育成の方向性まで明確にできます。たとえば新規事業を集中的に回す企業や、部門をまたいだ大規模プロジェクトが多い組織では、社内で統一されたルールが重要です。その際、PMIのノウハウを導入することで "誰でも同じやり方" が浸透しやすくなります。
日本独自の評価や現場目線が必要な場合
一方で、「日本の商習慣や企業文化に合わせてプロジェクト力を高めたい」場合は、日本発のPMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)が提供する『PMR(プロジェクトマネジメント・レディネス)』などが参考になります。技術系や公的事業の現場では、世界的な資格よりも、現場実践力やチームでの成果が重視されるケースも多いからです。日本らしいマネジメントのあり方を評価したい方には、PMAJや日本のPMO協会の情報収集が有効です。
自分に合った情報を選ぶポイント
あなたが「何を重視したいのか」(国際資格か現場力か)、また「どんな現場に携わりたいのか」(国内中心か国際案件か)で、取るべき情報や資格が変わります。自分の今後を考えるとき、PMIや関連団体の情報は大いに参考になります。