プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントの準委任契約に管理義務はある?責任範囲・善管注意義務・裁判例

目次

はじめに

「プロジェクトマネジメントを準委任契約で受ける場合、どこまで責任を負うの?」
「プロジェクトが失敗したら、PMにも法的な責任が発生するの?」と疑問に感じていませんか。

プロジェクトマネージャーやPMOとして業務を任されたものの、契約書に「準委任契約」と書かれているだけで、自分に求められる管理義務や責任範囲が分からず、不安を抱えたまま業務を進めている方も少なくありません。

この記事では、プロジェクトマネジメントにおける準委任契約の基本的な考え方から、管理義務や責任範囲、善管注意義務の内容、実際の裁判例まで、順を追って説明していきます。

準委任契約におけるプロジェクト管理責任の考え方は?

準委任契約では請負契約のような成果物完成義務は負いませんが、それだけでプロジェクト管理に関する責任までなくなるわけではありません。

ここでは、準委任契約における管理義務の考え方や、プロジェクトマネジメントで管理義務が問題になりやすい理由、成果物責任との違いについて順を追って解説します。

管理義務がなくなるわけではない

準委任契約は成果物の完成を約束する契約ではありません。

しかし、それだけを理由にプロジェクト管理の義務がなくなるわけではありません。

契約で進捗管理や課題管理、報告などを担当すると定められている場合は、その内容に沿って管理業務を適切に行う必要があり、管理義務の範囲は契約書の内容によって決まります。

プロジェクトマネジメントで管理義務が問題になる理由

プロジェクトでは、進捗遅延や品質低下、予算超過などの問題が発生すると、受託者が管理業務を適切に行っていたかが問われます。

契約で進捗管理や課題管理、リスク管理、報告などを担当すると定められている場合は、それらを契約内容に沿って実施していたかが判断の対象になります。

そのため、結果だけでなく、管理業務の進め方も重要です。

成果物責任と管理責任は異なる

成果物責任は、契約で約束した成果物を完成させる責任です。

一方、管理責任は、契約で定められた進捗管理や課題管理、リスク管理、報告などを適切に行う責任を指します。

そのため、準委任契約では成果物の完成責任を負わない場合でも、担当すると定められた管理業務については適切に実施する責任を負います。

プロジェクトマネジメントの管理義務は誰が負う?

プロジェクトマネジメントの管理義務は、一方の当事者だけが負うものではなく、発注者・受託者それぞれの役割や契約内容によって責任範囲が異なります。

ここでは、それぞれが担う管理責任の違いと、契約内容によって責任範囲がどのように変わるのかを順を追って解説します。

発注者

発注者は、プロジェクトの目的や要求事項を明確にし、必要な情報や資料を提供するほか、仕様の確認や意思決定を適切なタイミングで行う責任があります。

これらが遅れると、作業の停滞やスケジュール変更につながるためです。

受託者へ管理業務を委ねていても、発注者自身が担う役割までなくなるわけではありません。

受託者

受託者は、契約で担当すると定められた進捗管理や課題管理、リスク管理、報告などを適切に行う責任があります。

遅延や課題が発生した場合は、状況を把握して必要な相手へ報告し、契約内容に沿って対応を進めることが求められます。

責任の範囲は、契約書で定められた業務内容によって決まります。

PMOやコンサルタント

PMOやコンサルタントは、契約で担当すると定められた管理支援業務について責任を負います。

進捗管理や課題管理、会議運営、資料作成、報告支援などを担当する場合は、それらを適切に実施することが求められます。

一方で、契約に含まれていない最終的な意思決定やプロジェクト全体の責任まで負うわけではありません。

PMOとプロジェクトマネージャーでは責任範囲がどのように違うのか迷う場合は、役割や権限の違いを整理した記事も参考になります。
▶PMOとPM(プロジェクトマネージャー)の違いとは?役割・仕事内容・責任範囲を比較

契約内容によって責任範囲は変わる

プロジェクトマネジメントの管理責任は、契約書に定められた業務内容によって決まります。

担当する進捗管理や課題管理、リスク管理、報告などについては責任を負いますが、契約に含まれていない業務まで担当するわけではありません。

そのため、誰がどの管理業務を担うのかを契約書で明確にしておくことが大切です。

準委任契約でも管理義務が発生する理由

準委任契約では成果物の完成義務はありませんが、受託者には契約内容に応じた善管注意義務が課されるため、プロジェクト管理に関する責任が生じる場合があります。

ここでは、善管注意義務の基本的な考え方から、管理義務との関係、違反した場合のリスクまで順を追って解説します。

善管注意義務とは?

善管注意義務とは、受託者が業務を行う際に、その立場で通常求められる注意を払って業務を遂行する義務です。

準委任契約では、契約で担当すると定められた管理業務について、この義務に従って進捗管理や課題管理、報告などを適切に行うことが求められます。

そのため、十分な注意を払わずに管理業務を行った場合は、善管注意義務違反が問題になることがあります。

管理義務と善管注意義務の関係

管理義務は、契約で担当すると定められた管理業務を行う義務です。

そして、その管理業務をどのような水準で行うかを示す基準が善管注意義務になります。

そのため、担当する管理業務は、通常求められる注意を払って適切に実施することが必要です。

契約上の管理義務だけでなく、プロジェクトマネジメント全体でどのような管理業務を担うのか整理したい場合は、こちらも参考になります。
プロジェクトマネジメントとは?意味・必要性・管理するものをわかりやすく解説

善管注意義務に違反した場合のリスク

善管注意義務に違反したと判断された場合は、契約上の義務を適切に果たしていなかったとして、債務不履行による損害賠償責任を負う可能性があります。

その際は、契約で定められた管理業務を適切に実施していたかが判断の対象になります。

そのため、管理業務の実施内容や報告状況を記録として残しておくことが重要です。

プロジェクトマネジメントにおける管理義務とは?

プロジェクトマネジメントにおける管理義務は、単にプロジェクト全体を管理するという抽象的なものではなく、進捗や課題、リスクの管理に加え、関係者との調整や適切な報告など、日々の具体的な業務として求められます。

ここでは、プロジェクトマネジメントで求められる主な管理義務の内容を、それぞれの役割ごとに順を追って解説します。

進捗管理

進捗管理とは、契約や計画どおりに作業が進んでいるかを継続的に確認し、遅れがあれば原因を把握して対応する管理業務です。

作業の進み具合や予定との差異を確認し、必要に応じて関係者へ報告することも含まれます。

進捗を早めに把握することで、遅延の拡大を防ぎやすくなります。

課題管理

課題管理とは、プロジェクトで発生した課題を把握し、担当者や対応期限、対応状況を管理しながら解決まで確認する業務です。

課題を放置すると進捗遅延や追加作業につながるため、状況を整理しながら必要に応じて関係者へ共有します。

継続的に管理することで、問題の早期解決につながります。

リスク管理

リスク管理とは、プロジェクトで起こる可能性のある問題を事前に把握し、あらかじめ対応方針を決めて管理する業務です。

発生する可能性や影響の大きさを確認し、状況の変化に応じて内容を見直します。

事前に備えることで、問題が起きた場合でも影響を抑えやすくなります。

関係者調整

関係者調整とは、発注者や利用部門、開発担当者などと連絡や確認を行い、認識のずれや対応の遅れを防ぐ管理業務です。

仕様変更や課題が発生した場合は、対応内容や実施時期を調整し、必要な情報を共有します。

適切に調整することで、手戻りやプロジェクトの停滞を防ぎやすくなります。

報告義務

報告義務とは、プロジェクトの進捗や課題、リスクの状況を、契約やルールで定められた相手へ適切なタイミングで伝える義務です。

遅延や重大な課題が発生した場合は、内容や影響、対応状況を速やかに報告することが求められます。

適切な報告を行うことで、関係者が必要な判断や対応を進めやすくなります。

請負契約と準委任契約の管理義務の違い

請負契約と準委任契約は、どちらも業務を委託する契約ですが、成果物に対する責任や管理責任、報酬が発生する条件などに違いがあります。

ここでは、請負契約と準委任契約における管理義務の違いを、成果物責任や報酬、損害賠償リスクの観点から順を追って解説しま。

成果物責任

請負契約では、契約で定められた成果物を完成させて引き渡す責任を負います。

これに対し、準委任契約では成果物の完成は約束せず、契約で定められた業務を適切に遂行することが求められます。

そのため、請負契約は成果物の完成、準委任契約は業務を適切に行ったかどうかが判断基準になります。

管理責任

請負契約では、成果物を完成させるために必要な管理を受注者が行います。

一方、準委任契約では、契約で担当すると定められた進捗管理や課題管理、報告などの管理業務について責任を負います。

そのため、準委任契約では契約で定められた管理業務を適切に実施していたかが重要になります。

報酬発生条件

請負契約では、原則として成果物を完成させて引き渡すことで報酬が発生します。

一方、準委任契約では、契約内容に沿って業務を適切に遂行したことに対して報酬が支払われます。

そのため、成果物が完成していなくても、契約どおりに業務を履行していれば報酬が発生する場合があります。

損害賠償リスク

請負契約では、成果物を完成できなかった場合や契約内容に適合しない成果物を引き渡した場合に、損害賠償責任が問題になることがあります。

一方、準委任契約では、成果物の完成ではなく、契約で定められた業務を適切に遂行していたかが判断の対象です。

そのため、責任が問われる基準は、請負契約と準委任契約で異なります。

管理義務違反と判断されるケース

管理義務違反に当たるかどうかは、単にプロジェクトで問題が発生したかではなく、契約内容や求められる管理業務を適切に実施していたかによって判断されます。

ここでは、管理義務違反と判断されやすい代表的なケースを順を追って解説します。

進捗管理を怠った場合

契約で進捗管理を担当すると定められているにもかかわらず、作業の進行状況を確認せず、遅延への対応や報告を行わなかった場合は、管理義務違反と判断される可能性があります。

進捗管理は管理業務の基本であり、必要な対応を行わなかった場合は、契約上の義務を適切に履行していなかったと評価されることがあります。

課題やリスクの報告を怠った場合

課題やリスクを把握していたにもかかわらず、契約や報告ルールに沿って発注者や関係者へ報告しなかった場合は、管理義務違反と判断される可能性があります。

報告が遅れたことで対応や意思決定が遅れた場合は、契約上の義務を適切に履行していなかったと評価されることがあります。

問題発生時に必要な対応を行わなかった場合

問題の発生を把握しながら、契約で定められた対応や関係者への連絡、必要な調整を行わずに放置した場合は、管理義務違反と判断される可能性があります。

その結果、損害や影響が拡大した場合は、契約上の義務を適切に履行していなかったと評価されることがあります。

関係者との調整義務を果たさなかった場合

契約で関係者との調整を担当すると定められているにもかかわらず、必要な連絡や協議を行わず、認識のずれや対応の遅れを放置した場合は、管理義務違反と判断される可能性があります。

調整不足によってプロジェクトの進行に支障が生じた場合は、契約上の義務を適切に履行していなかったと評価されることがあります。

裁判例から見る準委任契約の管理義務

準委任契約における管理義務は、実際の裁判でも契約内容や業務の進め方を踏まえて判断されています。

ここでは、裁判例で争点となったポイントや判断の違い、実務で意識したい点を順を追って解説します。

裁判で争点になったポイント

準委任契約に関する裁判では、契約でどの管理業務を担当すると定められていたか、その業務を善管注意義務に従って適切に行っていたかが主な争点になります。

成果物が完成したかどうかではなく、進捗管理や課題管理、報告などを契約どおりに実施していたかが判断のポイントになります。

受託者の責任が認められた事例

裁判では、進捗管理や課題管理、報告など、契約で担当すると定められた業務を十分に行わず、その結果として損害が発生した場合に、受託者の責任が認められています。

準委任契約であっても、善管注意義務に反して管理業務を適切に行わなかったと判断されれば、損害賠償責任を負うことがあります。

受託者の責任が否定された事例

裁判では、受託者が契約どおりに管理業務を行っていた場合や、問題の原因が発注者の意思決定の遅れや契約範囲外の業務にあると認められた場合は、受託者の責任は否定されています。

準委任契約では、担当していない業務や成果物の完成まで責任を負うわけではありません。

裁判例からわかる実務上の注意点

裁判例では、契約書に記載された業務範囲と、実際に行った管理業務の内容が責任判断の基準になります。

そのため、契約書で管理範囲を明確にし、進捗確認や課題管理、報告などの記録を残しておくことが大切です。

プロジェクトマネジメント契約でトラブルを防ぐ方法

プロジェクトマネジメント契約では、管理義務の内容や責任範囲が曖昧なまま業務を進めると、認識の違いからトラブルにつながる可能性があります。

ここでは、プロジェクトマネジメント契約でトラブルを防ぐために確認しておきたいポイントを順を追って解説します。

契約書で管理範囲を明確にする

契約書には、進捗管理や課題管理、リスク管理、報告、関係者調整など、受託者が担当する管理業務を具体的に記載しておくことが大切です。

管理範囲が曖昧なままでは責任の所在が分かりにくくなるため、担当する業務と担当しない業務を明確に区分しておきましょう。

PMO業務範囲を明確にする

PMOが担当する進捗管理や課題管理、会議運営、資料作成、報告支援などの範囲を契約書で明確にしておくことが重要です。

意思決定まで担うのか、それとも支援業務に限定するのかを整理しておけば、契約後の認識違いを防ぎやすくなります。

報告ルールを定義する

報告ルールでは、報告する内容や提出期限、報告先、使用する書式をあらかじめ決めておきます。

進捗報告の頻度や、課題・リスクを報告するタイミングを明確にしておくことで、報告漏れや対応の遅れを防ぎやすくなります。

課題管理責任者を明確にする

課題ごとに対応責任者と意思決定者をあらかじめ決めておくことが大切です。

課題管理表に担当者や対応期限、完了条件を記載しておけば、誰が対応すべきかが分かりやすくなり、対応漏れや責任の押し付け合いを防ぎやすくなります。

まとめ

プロジェクトマネジメントの準委任契約では、請負契約のように成果物の完成義務は負いませんが、契約で担当すると定められた管理業務については、善管注意義務に従って適切に遂行する責任があります。

そのため、「準委任契約だから管理責任はない」と考えることはできません。

また、管理責任の範囲は、発注者・受託者・PMO・コンサルタントなどの立場や契約内容によって異なります。

後から認識の違いが生じないよう、契約書で担当する業務や役割を具体的に決めておくことが大切です。

実務では、管理業務を適切に行うだけでなく、進捗確認や課題管理、報告の内容を記録として残しておくことも重要です。

契約内容を正しく理解したうえで役割を明確にし、管理業務を着実に進めることが、トラブルを防ぎながらプロジェクトを円滑に進めることにつながります。

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