リーダーシップとマネジメントスキル

ITSSで深掘りするプロジェクトマネジメントの実力と年収の秘密

ITSS(ITスキル標準)とは何か?

ITSS(ITスキル標準)は、IT分野で働く人のスキルや知識、実務能力をわかりやすく評価するための基準です。日本の経済産業省が中心となって策定しました。複雑になりがちなITの仕事を体系的に整理し、どんな役割や専門分野があるのか、その中で必要となる能力を明確にしています。

IT業務を11の職種に分けて整理

ITSSでは、ITに携わる仕事を「システム開発」「運用・保守」「プロジェクトマネジメント」など、11職種に大きく分類しています。たとえば、パソコンのトラブルを解決する人は「サポート」の職種に、プログラムを書く人は「開発」の職種に分かれます。そのため、自分がどの分野にいるのか、目指す職種がどこなのかを確認しやすい特徴があります。

7段階レベルでスキルを見える化

ITSSは各職種ごとにスキルや知識、実務経験を7段階レベルで示します。たとえば、レベル1は基礎を学び始めたばかりの初心者、レベル7になるとその分野で国内外を問わず活躍できる専門家というイメージです。このように自分が今どの段階にいるのかを把握できるので、今後身につけるべきスキルや目標を明確にしやすくなります。

ITSSを使うと何が良いのか?

ITSSを使うことで、自分自身の課題や得意分野を把握しやすくなります。また、企業側も社員の能力や強化ポイントを明確にできるため、人材育成や配置に役立つ例が増えています。具体的には、転職活動やキャリアアップにおいて「自分の実力を第三者にも説明しやすい」点が大きな魅力です。

次の章では、ITSSが示す7段階のスキルレベルとプロジェクトマネジメントとの関わりについて詳しく解説します。

ITSSの7段階レベルとプロジェクトマネジメント

ITSS(ITスキル標準)には、スキルを1から7までの7段階で評価する仕組みがあります。これにより、自分や同僚が現在どのレベルにいるのかが分かりやすくなっています。例えば、ITの仕事に就いて間もない人はレベル1や2、ある程度経験を積んだ人はレベル3や4、さらに高度な知識や指導力を持つ人はレベル5以上と評価されることが一般的です。

プロジェクトマネジメント職では、特にレベル3から5の間で多くの人が活躍しています。それぞれのレベルにどんな違いがあるのかを簡単にご紹介します。

  • レベル1・2: 基本的な作業の理解と実施が中心で、指示を受けてタスクをこなす段階です。
  • レベル3: ある程度自立して業務を進められるようになり、小規模な作業やチームの一部を任されることがあります。
  • レベル4: プロジェクト全体の管理やチームのまとめ役となり、プロジェクトマネジメントの中心的な役割を担います。
  • レベル5以上: 複数のプロジェクトを指導する立場や、社内外で先進的な取り組みを牽引するようなリーダーとなることが多いです。

このように、ITSSのスキルレベルはプロジェクトマネジメント職のキャリアパスを考える上で大変参考になります。次の章では、それぞれのレベルがどんな特徴を持っているのか、もう少し詳しくご説明します。

次の章に記載するタイトル: プロジェクトマネジメントの各レベルの特徴

プロジェクトマネジメントの各レベルの特徴

レベル3:自立型プロジェクトメンバー

この段階では、担当する作業を自分で計画し、効率よく実行できます。例えば、システム開発チームの一員として与えられたタスクを期日までに仕上げたり、問題が起きた場合には自ら対応策を考えて動くことが求められます。ただし、まだチーム全体やプロジェクト全体を管理する役割は難しく、リーダーというよりはチームの「支え」として重要なポジションです。自分でスケジュールを立てたり、作業効率を高める工夫をすることが特徴です。

レベル4:プロジェクトマネージャ(PM)

PMは、複数の課題や問題を自らリードします。例えば、クライアントとの打ち合わせや、チームメンバーの進捗管理、納期や予算の調整など、幅広い業務を任されます。またシステム開発だけでなく、他の業務分野や技術にも興味を持ち、全体像を意識したマネジメントが求められます。プロジェクト全体を引っ張ることで、会社や組織の戦略目標にも貢献します。

このレベルになると、国家試験である「プロジェクトマネージャ試験」やITストラテジスト試験、また海外資格のCCIEなど、難易度の高い資格も取得の対象になります。実際にこれらの資格は、実務経験が豊富なエンジニアが多く受験し、合格率は10%を切ることもあります。

レベル5以上:シニアPM・コンサルタント・アーキテクト

レベル5からは、さらに大きな組織やプロジェクト単位でのリーダーシップが不可欠です。例えば、数百人規模のシステム刷新プロジェクトの総監督を務めたり、新しいITサービスの立ち上げを提案・実行したりと、会社の未来を左右する案件を率先して進めます。また、経営陣との折衝や海外チームとの連携など「経営の視点」を取り入れる場面も増えます。技術だけでなく、ビジネスや組織運営への深い理解と創造性が必要となります。

次の章に記載するタイトル:プロジェクトマネジメント職に対応した主な資格

プロジェクトマネジメント職に対応した主な資格

はじめに

前章では、ITSSの各レベルにおけるプロジェクトマネジメント職の特徴を、具体的な業務や役割に基づいてご説明しました。どのレベルでも求められる知識やスキルは異なりますが、プロジェクト遂行において必要な力を順に高めていくことが大切だとお分かりいただけたのではないでしょうか。

レベル1-2に対応した資格

プロジェクトマネジメントの初級レベルで役立つ資格には、「ITパスポート試験」や「基本情報技術者試験」があります。これらはIT業界の基礎知識を身につけるための国家試験です。たとえば、ITパスポート試験ではビジネスやITの基本用語を幅広く学べますし、基本情報技術者試験ではプログラミングやシステム開発の基礎も問われます。プロジェクトの基礎を理解する第一歩となります。

レベル3に対応した資格

さらにステップアップしたい場合、「応用情報技術者試験」や「PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)」資格が挙げられます。応用情報技術者試験はシステム開発や運用に加え、マネジメントや戦略といった幅広いテーマをカバーしており、中堅レベルのプロジェクトリーダーとして活躍する土台が築けます。PMP資格は国際的なプロジェクトマネジメント資格であり、プロジェクトの計画・実行・統制など実践的な知識が問われます。現場でプロジェクトを管理する方には大きな強みとなるでしょう。

レベル4に対応した資格

さらに上位レベルには、「プロジェクトマネージャ試験(IPA)」や「ITストラテジスト試験」、「CCIE」や「ORACLE MASTER Platinum」などの資格があります。プロジェクトマネージャ試験やITストラテジスト試験は、戦略的なプロジェクト計画や経営視点からの提案力が求められる国家試験です。また、CCIE(ネットワーク分野における最高峰資格)やORACLE MASTER Platinum(データベース運用の最上位資格)などは、専門分野に特化したプロジェクトを率いる立場にも活かせます。これらの資格を取得すると、より大規模なプロジェクトや高度な技術を活用した案件でも信頼を得ることができます。

次の章に記載するタイトル:ITSSレベルと年収

ITSSレベルと年収

ITSS(ITスキル標準)の各レベルによって、年収に大きな差があるのをご存じでしょうか。厚生労働省の調査結果によると、ITSSレベルが高いほど、年収も高くなる傾向が見られます。特にプロジェクトマネージャ職の場合、実際の年収分布は以下のようになっています。

  • レベル3:年収600~900万円
  • レベル4:年収650~950万円
  • レベル5以上:年収700~1100万円

この数字から分かるように、ITSSのレベルが上がるごとに、求められるスキルや責任も大きくなります。その分、年収にも反映されるのです。

例えば、レベル3のプロジェクトマネージャは小規模なプロジェクトを担当することが多く、チームの管理や進行管理が主な役割となることが多いです。一方、レベル5以上になると、会社全体の重要な案件や、大規模なプロジェクトを統括する立場となることが増えます。そのため判断力や調整力、複数部門との交渉力も必要となり、責任が大きくなる分、年収も高くなりやすいのです。

また、年収には、企業規模や地域、会社の業績による違いもありますが、ITSSレベルが客観的な評価基準となることで、自分のスキルがどの程度の価値を持つのか把握しやすくなります。キャリアアップを目指すうえで、自分の現在のレベルや、次のステップでどのようなスキルが必要かを考える指標としても、ITSSは役立ちます。

次の章では、ITSSを活用したキャリアパスと組織での活用方法についてご紹介します。

ITSSを活用したキャリアパスと組織活用

ITSSによるキャリアパスの具体的なイメージ

ITSS(ITスキル標準)を活用すると、プロジェクトマネジメント職(PM)でどのようにキャリアを積み上げていけるかが明確になります。たとえば、

  • レベル1~2では、実際の現場で働きながら基礎的な知識やスキルを身につけます。サポート役やアシスタントとして、仕事の流れを学べます。
  • レベル3になると、小規模なプロジェクトのリーダーや、大きなプロジェクトのサブリーダーとして活躍できます。部分的にプロジェクト管理も任され、人をまとめる経験も増えてきます。
  • レベル4では、正式なプロジェクトマネージャーとして自分自身でプロジェクト全体を動かします。計画から実行まで責任を持ち、全体を見渡す力が求められます。
  • レベル5以上になると、シニアPMやコンサルタントといった専門性の高い立場、グローバルプロジェクトや組織全体を動かす役割、さらには経営層へのキャリアアップなど、一層大きなステージでの活躍の道が広がります。

ITSSによる組織活用のポイント

組織がITSSを導入することで、社員一人ひとりの現在位置が明確になります。たとえば、新人には基礎研修やOJTでレベル1~2を目指す育成計画を立てられます。経験者には“どのプロジェクトでリーダーを任せるか”や“次にどのレベルを目指すか”を具体的に示し、成長の道筋を描ける点が特徴です。

また、業務内容や役割に応じて最適な人材を配置しやすくなり、ミスマッチを防ぎます。さらに、昇給や評価についても「これだけのスキルがあればこのポジション」「次はここを目指す」と客観的な基準ができるため、納得のいく評価体系を構築できます。


次の章に記載するタイトル:まとめ

まとめ

ITSS(ITスキル標準)は、IT業界で働く人にとって自分の現在地と目標を明確にするための大きな道しるべです。特にプロジェクトマネジメント職では、レベルが上がるごとに求められる知識や経験が増え、仕事の幅も広がっていきます。レベル4を超えると、より大きな責任やリーダーシップ、組織を引っ張る力が必要となることが特徴的です。

また、各レベルに対応する資格が設定されているため、「今の自分には何が足りていないか」「次にどんなスキルや経験を身につければよいか」が分かりやすくなっています。これにより、年収や評価制度とも結びつきやすく、将来設計がより現実的に行えるようになります。

ITSSの活用は、個人のキャリアアップだけでなく、企業が人材を正しく評価したり、適切な育成計画を立てたりする際にも大いに役立ちます。自身の目指すキャリアパスやポジションを意識しながら、ITSSをうまく活用してください。

IT業界で長く活躍したい場合や、これからプロジェクトマネジメントに挑戦したい方は、ぜひITSSを参考にして、着実なステップアップを目指しましょう。

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