目次
はじめに
PMBOKは、プロジェクトマネジメントの世界標準ガイドです。しかし「5つのプロセス群」「10の知識エリア」「第7版の原則」など、用語が多くて複雑に感じる人も多いはずです。この記事では、初心者でも“全体像が一度でつかめる”ように、プロジェクトの流れを5つのステップで整理し、10の知識エリアや第7版の重要ポイントまでわかりやすく解説します。実務者やPMP受験者の基礎固めにも最適です。
PMBOKとは?一言でわかる基本概念
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクトを成功に導くための体系的な知識とベストプラクティスをまとめたガイドです。業界や業種を問わず使えるため、世界中のPMが共通言語として利用しています。第6版ではプロセス中心、第7版では“原則中心”のフレームワークに進化しています。
プロジェクトとは?
プロジェクトとは「期限があり(有期性)、他と同じものがない(独自性)」活動のことです。これに対して定常業務は繰り返し・継続的な作業。プロジェクトが難しい理由は、QCD(品質・コスト・納期)の制約の中で成果を出さないといけないためです。この複雑さを整理するための地図がPMBOKです。
プロジェクトマネジメントとは?
プロジェクトマネジメントとは、目的達成のためにスコープ・コスト・納期・品質・リスク・コミュニケーションなどを統合的に管理することです。PMの役割は「計画→実行→調整→完了まで」全体を統括する総監督のようなものです。
第1章:PMBOKの5つのプロセス群とは?
PMBOKでは、プロジェクト全体を5つの流れ(プロセス群)に整理しており、これは「プロジェクトの標準的な進み方」を示す地図のようなものです。複雑に見えるプロジェクトも、この5つの流れに当てはめて考えるだけで一気に理解しやすくなります。まずはプロジェクトがどんな順番で進むのか、物語のようにイメージしながら見ていきましょう。
立ち上げプロセス群
プロジェクトの最初の一歩は「本当にこのプロジェクトをやるのか?」を正式に決めることです。ここで重要なのは、何のためにやるのか(目的)、どの状態になれば成功と言えるのか(成功基準)、そして誰が関係するのか(ステークホルダー)をはっきりさせることです。これらを文章としてまとめた「プロジェクト憲章」ができあがると、プロジェクトは正式にスタートします。「方向性の決定と共通認識作り」が立ち上げの役割です。
計画プロセス群
プロジェクトがスタートしたら、次は“計画づくり”です。PMBOKでは「成功の8割は計画で決まる」と言われるほど重要なフェーズで、ここでどれだけ丁寧に準備できるかが後半のスムーズさを左右します。
作業内容を分解するWBS、スケジュール、必要な予算、品質基準、リスク対応など、プロジェクト成功のために必要な計画をすべてここで作ります。そして、これらを統合した「プロジェクトマネジメント計画書」が完成すると、プロジェクトは“実行可能な状態”になります。
実行プロセス群
計画が整ったら、ようやく作業が動き出します。
チームメンバーが実際に作業を進めたり、外部の業者へ発注したり、コミュニケーションを取りながら成果物を作り上げていくフェーズです。プロジェクトの「現場」の中心となる部分で、問題が出れば解決しながら前に進みます。ここで生まれるものが、最終的にユーザーへ届ける“成果物そのもの”です。
監視・コントロールプロセス群
実行フェーズと同時進行で行われるのが、この「監視・コントロール」です。
ここでは「計画どおりに進んでいるか?」を常にチェックし、もしズレていれば調整を行います。例えば、スケジュールが遅れていれば対策を練り、コストが超過しそうなら対応策を考え、リスクが発生したらすぐに判断します。いわばプロジェクトの“健康診断”のような役割です。
このフェーズが適切に行われることで、プロジェクトが迷子にならずに目的地に向かって走り続けることができます。
終結プロセス群
すべての作業が終わったら、プロジェクトは正式に終結します。
成果物の受け渡し、契約の終了、メンバーや関係者への最終報告、そしてプロジェクトで得た教訓の整理を行います。この「教訓」は次のプロジェクトの品質向上につながる重要な資産です。
終結は単なる終了ではなく、「経験を知識として組織に残す」フェーズでもあります。
▼ この5つの流れを理解すればプロジェクトは迷わない
プロジェクトは一見複雑ですが、
立ち上げ → 計画 → 実行 → 監視・コントロール → 終結
という流れが理解できれば、どんなプロジェクトも“今どこにいるのか、次に何をすべきか”が明確になります。
第2章:プロセス群の目的・主な活動・成果物まとめ
5つのプロセス群は、プロジェクトの「目的」と「やること」と「アウトプット」が明確に異なります。この章では、それぞれのプロセス群が“どんな意味を持つのか”を流れに沿ってわかりやすく整理します。プロジェクト全体を上から俯瞰できるようになるため、初心者はここを押さえるだけで理解が一気に進みます。
立ち上げプロセス群
立ち上げは、プロジェクトの“存在意義を決める段階”です。
目的は、プロジェクトを正式に開始し、関係者全員が同じ方向を向ける状態を作ることにあります。ここでは、事業目的を確認し、プロジェクトが達成すべきゴールを定義し、関係者(ステークホルダー)を洗い出します。
これらをまとめた「プロジェクト憲章」が完成すると、「このプロジェクトは正式に始まった」と認められます。
計画プロセス群
計画プロセス群は、プロジェクト成功への“青写真”を作る段階です。
どんな作業を誰が担当し、どれくらいの期間・コストで進めるのか、品質基準はどうするのか、リスクにどう備えるのかなど、プロジェクトの根幹となる方針を細かく詰めていきます。
これら多くの計画をまとめた「プロジェクトマネジメント計画書」が完成すると、プロジェクトは万全の準備が整い、実行フェーズへ進める状態になります。
実行プロセス群
実行プロセス群は、計画を現場で具体的な行動に変えていく段階です。
チームメンバーが作業を進め、必要に応じて外部との調達を行い、コミュニケーションを取りながら成果物を形にしていきます。ここはまさに“プロジェクトが動いている”状態で、活動量も最も多くなります。
作業の中で課題が見つかれば変更要求が生まれたり、追加の調整が必要になることもありますが、それも実行フェーズでよく見られる自然な流れです。
監視・コントロールプロセス群
監視・コントロールは、実行と並行して進む「プロジェクトの安全運転管理」です。
スケジュールの遅れ、コストの超過、品質問題、リスクの発生などを常にチェックし、計画とズレがあればその場で調整します。
このフェーズがしっかりしているほど、プロジェクトは迷走せず、計画どおりの進行ができるようになります。改善策や変更対応を記録しながら、状況に合わせて計画書を更新していくこともあります。
終結プロセス群
終結プロセス群は、プロジェクトを形式的にも実質的にも“きちんと終わらせる”段階です。
成果物が受領され、契約関係がすべて完了し、最終報告を経てプロジェクトは正式に終了となります。
さらに、プロジェクトを通じて得られた成功ポイントや改善点を「教訓(Lessons Learned)」として整理することで、次回のプロジェクトでよりレベルの高いマネジメントが可能になります。
終結まで行って初めて、プロジェクトは本当の意味で完了します。
▼ 5つのプロセス群を押さえれば、プロジェクトの全体構造が見える
プロジェクトは
「立ち上げ → 計画 → 実行 → 監視・コントロール → 終結」
という一連の流れで進みます。
この5つの役割を理解することで、あなたはどんなプロジェクトでも“どの段階で何をすべきか”を判断できるようになります。
第3章:10の知識エリアとは?
プロセス群が「流れ」なら、知識エリアは「何を管理するか」です。
10の知識エリア一覧
・統合マネジメント
・スコープマネジメント
・スケジュールマネジメント
・コストマネジメント
・品質マネジメント
・資源マネジメント
・コミュニケーションマネジメント
・リスクマネジメント
・調達マネジメント
・ステークホルダーマネジメント
PMBOKでは、プロジェクトを成功させるために管理すべき領域を10種類に分類しています。プロセス群が「プロジェクトの進む順番」を示すのに対し、知識エリアは「プロジェクトで管理すべきテーマ」を示したものです。この10領域を理解すると、プロジェクト全体で“抜け漏れなく管理すべきポイント”が明確になります。
統合マネジメント
プロジェクト全体を統合的に管理し、バラバラの計画・作業をひとつの目的に向かって最適化する領域です。計画書の作成、変更管理、最終的なプロジェクト完了の手続きまで、全体を束ねる“司令塔”の役割を担います。
スコープマネジメント
「何を作るのか」「何を作らないのか」を明確にし、作業の範囲を管理する領域です。スコープが曖昧だと、後から要求が膨らむ“スコープクリープ”が発生し、プロジェクトが破綻しやすくなります。
スケジュールマネジメント
プロジェクトのタイムラインを管理する領域です。
・どの作業を
・どの順番で
・どれくらいの期間で
進めるかを計画し、遅延なく完了させる仕組みを作ります。ガントチャートやクリティカルパス法などもここに含まれます。
コストマネジメント
プロジェクトの予算を管理し、過不足が出ないようにコントロールする領域です。見積もりの作成、予算設定、コストの監視・調整など、資金面の健全性を確保します。
品質マネジメント
成果物の品質を確保するための仕組みづくりを行う領域です。「品質基準は何か」「どう測定するか」「どう保証するか」を計画し、実行面でも品質をチェックしながら進めます。
資源マネジメント
人・物・設備・環境など、プロジェクトの実行に必要な“リソース”を適切に管理する領域です。チームメンバーの役割分担や能力に応じた配置、設備の確保などを行います。
コミュニケーションマネジメント
必要な情報を、必要な人に、必要なタイミングで届けるための領域です。会議、報告書、チャット、メールなど、プロジェクト内外の情報の流れを整理し、誤解を防ぎます。
リスクマネジメント
不確実性を分析し、事前に備えてプロジェクトのダメージを最小限に抑える領域です。リスクの特定、分析、対応策(回避・転嫁・軽減など)の計画、発生後の対策などを行います。
調達マネジメント
外部の企業やサプライヤーから必要なサービス・物品を調達する領域です。依頼、契約、納品管理、検収など、外部パートナーとの取引を適切に進めるための管理が含まれます。
ステークホルダーマネジメント
プロジェクトに関係する全ての利害関係者を理解し、関係を最適に保つための領域です。期待値の調整、コミュニケーション計画、関係構築など、協力を得ながらスムーズに進める基盤となります。
▼ 10の知識エリアが分かるとプロジェクト管理が“抜け漏れゼロ”になる
この10領域はプロジェクトの健康状態を保つための必須項目です。
プロジェクト全体を俯瞰し、「今どの領域が弱っているか」「どこを強化すべきか」を判断できるようになります。
第4章:プロセス群 × 知識エリアのマトリクス(文章だけで理解できる図解解説)
PMBOK第6版の理解で最も重要なのが、この「プロセス群 × 知識エリア」のマトリクスです。これは、プロジェクトで “いつ(プロセス群)” どんな管理をするのか(知識エリア) を整理したもので、プロジェクトマネジメントの全体像を一度に理解できる“地図”の役割を持っています。
なぜマトリクス理解が必須なのか
プロジェクトはただ作業を進めるだけではなく、時期ごとに管理すべきテーマが変わっていきます。例えば、計画段階ではスケジュールやコストの計画が中心になり、実行段階ではコミュニケーションや調達の管理が重要になります。この「いつ × 何を」の視点を一枚の表にまとめたのがマトリクスです。
さらに、このマトリクスはPMP試験でも頻出で、プロセス名・配置場所の理解は合格の必須要素といっても過言ではありません。実務では、どの作業がどの知識エリアに紐づくのかを把握することで、抜け漏れのない計画・管理が可能になります。
マトリクス全体のイメージ|【PMBOK 第6版】プロセス群 × 知識エリアマトリクス
“テキスト図”で全体像を示します。
| 知識エリア | 立ち上げ | 計画 | 実行 | 監視・コントロール | 終結 |
|---|---|---|---|---|---|
| 統合マネジメント | ● | ● | ● | ● | ● |
| スコープマネジメント | ● | ● | |||
| スケジュールマネジメント | ● | ● | |||
| コストマネジメント | ● | ● | |||
| 品質マネジメント | ● | ● | ● | ||
| 資源マネジメント | ● | ● | ● | ||
| コミュニケーションマネジメント | ● | ● | ● | ||
| リスクマネジメント | ● | ● | |||
| 調達マネジメント | ● | ● | |||
| ステークホルダーマネジメント | ● | ● | ● | ● |
このように、横軸にはプロセス群(立ち上げ → 計画 → 実行 → 監視・コントロール → 終結)、縦軸には10の知識エリアが並び、交差点に「対応するプロセス」が入ります。これを見ることで、プロジェクトの全活動が“体系的にどこに位置するか”が一気に分かります。
マトリクスを理解するためのストーリー解説
文章として理解しやすく、マトリクスの流れをストーリーで説明します。
立ち上げの中心は「統合+ステークホルダー」
プロジェクト開始時は、統合マネジメントがプロジェクト憲章を作り、ステークホルダーを特定します。
つまり、「プロジェクトの方向性を決め、関係者を把握する」活動が中心です。
計画フェーズでは“ほぼすべての知識エリアが登場”
計画フェーズはプロジェクトの基礎を固める段階なので、
スコープ・スケジュール・コスト・品質・資源・リスク・コミュニケーションなど、ほとんどの知識エリアがここで集中します。
ここをしっかり固めることで、後のズレを防止できます。
実行フェーズでは「人・コミュニケーション・調達」が主役
実行フェーズは、計画を現場で進める段階です。
そのため、資源(メンバーや設備)、コミュニケーション、調達など“人やモノを動かす領域”が中心になります。成果物が作られるのもここです。
監視・コントロールでは“ほぼ全領域が再び登場”
プロジェクトが計画どおり進んでいるか監視するため、計画フェーズで作ったほぼすべての領域に再び関わります。
例えば、スケジュールの遅れの確認、コストの見直し、品質の検査、リスク発生時の対応などです。
終結フェーズは「統合」と「調達」で片付ける
最後にプロジェクトを正式に終わらせるため、統合マネジメントが完了報告や教訓整理を行い、調達マネジメントが契約を終了させます。プロジェクト全体の締め作業です。
マトリクスを理解すると何が変わるのか
このマトリクスを理解すると、
・どの作業がどの知識エリアに属しているか
・今どのプロセス群にいて、次に何をすべきか
・計画の抜け漏れがどこにあるか
がすぐに判断できるようになります。
プロジェクトの全体像を“1枚の地図”として把握できるようになるため、初心者だけでなく実務者にとっても最も価値が高い知識です。
第5章:PDCA・QCDで理解するPMBOK
PMBOKは専門用語が多く、初心者には「どこで何をするのか」が掴みにくい特徴があります。
そこで、現場でも定番の PDCA と QCD を使って理解すると、一気に実務イメージが湧きます。
PDCAとプロセス群の対応関係
PMBOKの5つのプロセス群は、そのままPDCAサイクルに対応させられます。
これは現場でも非常に重要な視点で、プロジェクトの活動を「どの段階の仕事なのか」で整理できるようになります。
Plan(計画)= 計画プロセス群
最も分量が大きく、成功の可否が8割決まるとされるフェーズです。
WBS、スケジュール、コスト、リスク、品質などすべての計画がここで作られ、「ベースライン」も確定します。
Do(実行)= 実行プロセス群
計画で定めた内容を現場で実際に進める段階。
チーム育成、調達、コミュニケーション、品質確保など「動く工程」はすべてここに該当します。
Check / Act(監視・調整)= 監視・コントロールプロセス群
実行の結果をモニタリングし、計画との差分を調整するステップ。
進捗・コスト・品質・リスクなどのズレを検知し、是正処置を加えて軌道修正します。
立ち上げ・終結はPDCAの外側に位置づく
・立ち上げプロセス群=PDCAのスタート準備
・終結プロセス群=PDCAの締めと成果の評価
という“前後の重要ステップ”に相当します。
PDCAを理解していると、プロセス群の役割を自然に整理でき、試験でも実務でも迷わなくなります。
QCD(品質・コスト・納期)から見るPMBOKの本質
プロジェクトが失敗する原因の多くは、QCD(Quality / Cost / Delivery)のいずれかです。
PMBOKは、このQCDを安定して達成するための「管理体系」として理解すると非常に分かりやすくなります。
計画時点でQCDの基準(ベースライン)を決める
品質、コスト、納期の3つは、計画プロセス群で「ベースライン」として明文化されます。
これが曖昧なままだと、実行時に“判断基準がない”状態となり、トラブルの大半はここから発生します。
実行中にベースラインとの差分を管理する
監視・コントロールプロセス群では、常にQCDの状態をチェック。
予定より遅れていないか?
予算はどれくらい消化したか?
品質は基準を満たしているか?
こうした差分を見つけて、必要な処置を打つのがPMの重要な役割です。
変更管理を徹底することでQCDが安定する
プロジェクトにおけるQCD崩壊のほとんどは「無秩序な変更」が原因です。
要求変更、仕様追加、手戻り――。
これらを無制限に受け入れると、品質もコストも納期も崩壊します。
PMBOKでは、変更要求をすべて管理し、影響を分析し、正式に承認しない限り進めない仕組み(統合変更管理)があります。
この“変更ゲート”を守れるかどうかで、プロジェクトの安定度はまったく変わります。
第6章:実務でよくある落とし穴と成功のコツ
PMBOKを理解しても、実務では「理屈どおりに進まない」場面が多くあります。
ここでは、プロジェクト現場で頻出する落とし穴と、その対策(成功のコツ)をプロセス群ごとに整理します。
立ち上げフェーズの落とし穴とコツ
立ち上げが曖昧だと、後半でほぼ確実にトラブルになります。
よくある落とし穴
・目的(Why)が“抽象的なスローガン”になってしまう
・関係者の洗い出しが不十分で、後から強い要求が追加される
・成功基準が曖昧で、何をもって完了か定義されていない
成功のコツ
立ち上げでは、プロジェクトの「土台」を固めます。
目的・成功条件・関係者の利害を明確にし、憲章の段階で“曖昧さをゼロにする”意識が重要です。
計画フェーズの落とし穴とコツ
計画は長く感じますが、実は失敗を未然に防ぐ最重要フェーズです。
よくある落とし穴
・WBSが粗く、作業単位が大きすぎて進捗管理できない
・リスク計画が「テンプレだけ存在する」状態で実運用されない
・各種サブ計画を作成しても、計画書の棚に眠ったまま
・見積もりの根拠(Assumption)が弱く、調整に耐えられない
成功のコツ
作業を細分化し、根拠のある見積もりを作ること。
また、リスク・品質・コミュニケーションなどの“サブ計画”は、実際に運用される形にすることが重要です。
実行フェーズの落とし穴とコツ
計画が優秀でも、現場の動き次第でいくらでも崩れます。
よくある落とし穴
・情報共有が不足して、担当者ごとの属人化が進む
・進捗報告が遅く、手戻りが増える
・調達管理(外注・購買)が後手に回る
成功のコツ
情報共有は“多すぎるくらい”でちょうど良いです。
また、調達は遅れると致命的なので、早めに着手し進捗を常にモニタリングすることが大切です。
監視・コントロールの落とし穴とコツ
PMの腕が最も問われるポイントがここ。
よくある落とし穴
・計画(ベースライン)と比較しないためズレに気づかない
・問題が表面化するまで時間がかかる
・変更要求を承認なしで受け入れ、計画が崩壊する
成功のコツ
“進捗・コスト・品質”の差分を見る「定点観測」を徹底します。
特に変更管理は、非公式変更(ゴールドプラティング)を防ぐためにもルール化が必須です。
終結フェーズの落とし穴とコツ
終わり方が雑なプロジェクトは、次に活きません。
よくある落とし穴
・教訓(Lessons Learned)を残さず、同じ失敗を繰り返す
・レビュー会を開かないまま終わらせる
・成果物の受入チェックが甘く、後で不具合が発覚する
成功のコツ
終結は“未来への投資”フェーズです。
教訓まとめ・レビュー・成果物の最終チェックを丁寧に行うことで、組織全体のプロジェクト品質が大きく向上します。
第7章:PMBOK第7版の要点
PMの初心者が必ずつまずくポイントが
「PMBOK第6版と第7版の違いって何?」
という部分です。
結論から言うと——
第6版=手順書、第7版=考え方(思想)
という役割分担になっています。
この2つをセットで理解すると、プロジェクト管理の全体像が一気につながります。
■ PMBOK第7版は“原則ベース”で作られている
第7版は、それまでの“プロセス中心(手順)”から大きく方向転換し、
「価値を提供するプロジェクトとは何か?」
を原則としてまとめたガイドになりました。
その特徴をわかりやすく整理すると次の通りです。
手順ではなく「原則」で動く
第7版では12個の原則を軸にします。
例えば、「ステークホルダーと協働する」「品質を内包させる」など、
状況に応じて最適解を選べる柔軟なフレームワークです。
価値提供・柔軟性を重視
「計画どおりに作れた」ではなく、
“顧客価値を最大化できたか?”
に視点を置くのが第7版の思想です。
アジャイルやハイブリッドと相性が良い
ウォーターフォールに縛られず、
スクラム・リーンなどのアジャイル文化と自然に融合できる形になっています。
「環境に合わせて進め方を選ぶ」という、現代的なプロジェクトマネジメントに近づきました。
では、PMBOK第6版は古いのか?
結論は 「今でも必要。むしろ実務では超重要」 です。
理由はシンプルで、
第7版は原則(考え方)、第6版はプロセス(手順)だから。
● 第6版=具体的な作業と流れ
・5つのプロセス群
・10の知識エリア
・49のプロセス
これらは実務の「段取り」そのものです。
● 第7版=判断の基準・価値観
・どう価値を出すか
・どこにリソースを割くか
・変化にどう対応するか
こうした“考え方”を整理した内容です。
両者の役割分担は、車で例えると以下のようになります。
第6版=運転マニュアル(アクセル・ブレーキの踏み方)
第7版=安全運転の原則(状況判断・優先順位)
どちらか片方だけでは運転は成立しません。
初心者にとっての理解ステップ
混乱しないための理解順序はこれです。
第6版で、プロジェクトがどう動くか“手順”を理解する
第7版で、“どんな価値を出すべきか”という視点を持つ
実務では6版の手順を基盤にしつつ、7版の原則で最適化する
この流れを押さえると、「6版/7版どっちを勉強すべきか?」という悩みは完全になくなります。
第8章:PMP試験でよく出る領域
PMP試験は範囲が広いため、無計画に勉強すると“全部薄く広く”の状態になってしまいます。
しかし実は、出題の多くは 実務で特に重要な領域に集中 しています。
ここでは、必ず押さえておくべきテーマをまとめて解説します。
試験で問われるポイント
・5つのプロセス群の流れ
・統合マネジメントの7プロセス
・スケジュール作成(クリティカルパス法)
・変更管理の流れ
・ステークホルダー分析
・リスクの定性・定量評価
プロセス群の流れ(5つのステップ)
PMPでは「どの活動がどのプロセス群に属するか?」が頻出です。
特に “計画 → 実行 → 監視” のつながり が理解できているかがチェックされます。
統合マネジメント(7プロセス)は最重要
統合は、PMの“司令塔”のような役割を持つ分野で、
変更管理・計画書作成・作業指揮など プロジェクト全体を束ねる領域 のため出題率が高いです。
スケジュール作成(クリティカルパス法)
クリティカルパス(CPM)は、試験でも実務でも必須。
・最短工期の求め方
・フロート(余裕時間)の意味
などが問われます。
変更管理の流れ
「変更要求 → 影響分析 → 統合変更管理 → 承認 → 更新」
この一連の手順はほぼ毎年出題されます。
実務でも最重要なので、理解しておく価値があります。
ステークホルダー分析
誰が影響力を持ち、誰がプロジェクトにどう関わるのか。
関係者の分類・管理は、試験でも高頻度で問われます。
リスクの定性評価・定量評価
・定性評価=優先度付け
・定量評価=数値化
この2つの違いを理解しているかも頻出ポイントです。
よく混同される用語
・ライフサイクル vs フェーズ
・プロセス群 vs 知識エリア
・要求事項 vs スコープ
PMP試験では、似た言葉の違いを正しく理解しているかがよく問われます。
特に以下の3つは、ほぼ毎回ひっかけとして出るレベルです。
ライフサイクル vs フェーズ
・ライフサイクル=プロジェクト全体の流れ
・フェーズ=ライフサイクル内の区切り
試験では、“何の話をしているのか”を文脈で判断する必要があります。
プロセス群 vs 知識エリア
・プロセス群=いつ(流れ)
・知識エリア=何を(管理対象)
この違いを曖昧に理解していると、高確率で誤答します。
要求事項(Requirements) vs スコープ
・要求事項=顧客が求めていること
・スコープ=プロジェクトで“実際にやること”
要求事項のすべてがスコープに含まれるわけではない点が重要です。
■ この章のまとめ
PMP試験は範囲が広くても、
よく出る領域は決まっている のが特徴です。
とくに
・プロセス群
・統合マネジメント
・スケジュール(クリティカルパス)
・変更管理
・リスク
このあたりを押さえるだけで、得点源が一気に増えます。
まとめ
本記事では「5つのプロセス群 → 10の知識エリア → マトリクス → 実務 → 第7版 → 試験」と、PMBOKの全体像を一気に理解できるように整理しました。プロジェクト管理は複雑に見えますが、流れと構造がわかれば一気に理解が進みます。この1本を軸に、実務・学習のベースとして活用してください。
・プロジェクト管理費の割合とは?
(要件定義が曖昧だと手戻りでPM費が膨らむ理由を解説)
・要件定義の基本
(何を作るかが曖昧なまま進めるとPM費が増える理由が理解できます)
・見積書トラブルの防ぎ方
(要件定義→見積の流れで起きる典型的な問題が理解できます)