プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントとコンサルの違いを詳しく解説

目次

はじめに

本記事の目的

本記事は、プロジェクトマネージャー(PM)と、プロジェクトマネジメントコンサルタント、ITコンサルタント、PMOコンサルタントの違いを、業務内容・求められるスキル・責任範囲・キャリアパスの観点で整理します。まずは用語の意味をそろえ、実際の現場を思い浮かべやすい具体例で理解を深めます。

想定する読者

  • 配属や転職で職種選びに迷っている方
  • 「PMとコンサルの違い」を短時間で掴みたい方
  • 現場で役割が曖昧になりがちで、線引きを学びたい方

用語のシンプルな定義

  • PM(プロジェクトマネージャー): 目的達成に向けて日々の判断と調整を担う現場の責任者です。例)納期と品質の折り合いを決め、関係者に依頼し、障害を取り除きます。
  • プロジェクトマネジメントコンサルタント: プロジェクト運営の「やり方」を設計し、改善を助言・実装まで支援します。例)進め方の型づくり、会議体の設計、リスク管理の仕組み導入を手伝います。
  • ITコンサルタント: 事業や業務の課題をITで解く道筋を描きます。例)どのシステムを入れるか、投資の優先順位を提案します。
  • PMOコンサルタント: 複数のプロジェクトを横断して支え、共通ルールや見える化を整えます。例)進捗レポートの統一、課題の上申ルートづくりを支援します。

具体例でイメージをそろえる

「納期が遅れそう」という場面を考えます。
- PM: 工程を組み替え、応援要員を確保し、関係者と合意を取ります。
- プロジェクトマネジメントコンサル: 計画の見直し手順を示し、現場と一緒に再計画します。
- ITコンサル: 要件の優先順位を整理し、今回はやらない範囲を提案します。
- PMOコンサル: 影響範囲を横断で整理し、意思決定者に報告する場を整えます。

比較の観点と読み方

本記事では、以下の4点で違いを解説します。
1) 業務内容(毎日の動き)
2) 求められるスキルセット(得意にすべき力)
3) 責任範囲(どこまで背負うか)
4) キャリアパス(次の一歩)
したがって、自分の今の役割や目標に近い観点から読むと、理解が早まります。

前提・注意点

役割名や守備範囲は会社や業界で異なります。同じ肩書でも期待が違うことがあります。この記事は一般的な傾向として整理します。必要に応じてご自身の状況に当てはめて調整してください。専門用語は最小限にし、必要な場面では具体例で補います。プロジェクトの規模やフェーズによっても動き方は変わります。なお、外部支援と内製の体制差も影響しますが、ここでは基本像を押さえます。

得られること

  • 自分に合う職種の方向性が見える
  • 面接や社内調整で役割説明がしやすくなる
  • 学ぶべきスキルの優先順位が分かる

プロジェクトマネジメントとコンサルの違い

プロジェクトマネジメントとコンサルの違い

前章のふりかえり

前章では、本記事の目的と対象読者を確認し、プロジェクトマネージャー(PM)とコンサルタントが混同されやすい理由を示しました。両者は「課題を解く」点で似ていますが、関わり方と責任の置き場所が違うことを予告しました。

立ち位置の基本

PMはプロジェクトの現場を動かす総責任者です。予算・納期・品質を守るために、計画を立て、進捗を確認し、問題が起きたら即座に手を打ちます。コンサルタントは、課題の見える化と解決策の提案、意思決定の支援を担います。実行の手を動かすよりも、「どこに問題があり、どう進めるべきか」を明らかにします。しかし、契約や状況により支援の深さは変わり、会議運営や調整まで伴走するケースもあります。

時間軸と関与フェーズの違い

PMは計画から実行、完了まで通しで関わり、日々の判断を積み重ねます。コンサルタントは上流の現状調査、課題特定、施策設計に比重がかかりやすいです。プロジェクトマネジメントコンサルタントは、PMの進め方や会議体、ルールづくりを整える役割を担い、現場のチームを直接指揮するのはPMです。

成果物の違い

  • PMの主な成果物:計画書、進捗レポート、リスク対応策、最終成果物の納品。
  • コンサルタントの主な成果物:課題一覧、改善案、ロードマップ、意思決定資料。
  • プロジェクトマネジメントコンサルタントの主な成果物:ガバナンス設計、会議体の設計、テンプレートやKPIの設計、運営ルールの提案。

例えで理解する:家づくり

家づくりに例えると、PMは現場監督です。工期や費用を守り、大工さんや業者の動きを調整します。コンサルタントは建築アドバイザーのような存在で、家族の要望を整理し、最適な間取りや進め方を提案します。プロジェクトマネジメントコンサルタントは、現場監督が使うチェックリストや打ち合わせの型を整える役割です。

現場での関わり方

  • PM:毎日の進捗確認、課題の切り分け、優先順位づけ、緊急時の判断とエスカレーション。
  • コンサルタント:インタビューやワークショップで課題を洗い出し、分析して打ち手を設計。必要に応じて意思決定会議を設計。
  • プロジェクトマネジメントコンサルタント:会議運営の型づくり、役割と権限の整理、ツール導入の提案と定着支援。

成功の測り方の違い

PMは「納期・予算・品質」を守れたかで評価されます。コンサルタントは「提案が実行可能で効果が見込めるか」「意思決定の質が上がったか」で評価されます。プロジェクトマネジメントコンサルタントは「運営の無駄が減ったか」「手戻りが減ったか」「見える化が進んだか」で評価されます。したがって、同じプロジェクトに関わっても、見る指標と責任の線の引き方が違います。

よくある誤解と線引き

  • 「コンサルは手を動かさない=何もしない?」:いいえ。実装はしませんが、判断の質を高め、失敗確率を下げ、遠回りを避けるのが仕事です。
  • 「PMは戦略を考えない?」:いいえ。戦略も考えますが、現実に回る形へ落とし込み、日々の運転を止めないことに重心があります。
  • 提案で終わらせないために:コンサルは優先度、効果見込み、ロードマップまで示します。
  • 走りながら混乱しないために:PMはリスクと変更管理をセットで回し、関係者と早く共有します。

次の章に記載するタイトル:業務内容の違い

業務内容の違い

前章のふり返り

前章では、PMはプロジェクトの達成に責任を持つ役割、コンサルタントは課題を見つけて解決策を示す役割という全体像を整理しました。その上で、両者が同じ現場にいても、日々の動き方と作る成果が異なる点に触れました。

PM(プロジェクトマネージャー)の主な業務

  • 進行管理:全体の作業計画を作り、誰がいつ何をするかを見える化します。遅れが出たら、優先度の入れ替えや人員の再配置で立て直します。
  • メンバー調整:設計、開発、テストなど担当ごとに役割をはっきりさせ、困りごとをその場で解消します。短い打ち合わせをこまめに開き、情報の行き違いを減らします。
  • 納期管理:重要な区切りの日付(マイルストーン)を決め、達成状況を毎週確認します。遅延が見えたら、範囲の見直しや追加対応で間に合わせます。
  • リスク対応:起こりそうな問題をリスト化し、「もし起きたらどう動くか」を先に決めます。たとえば、外部の会社の作業が遅れた場合は、先に別工程を進めるなどの回避策を用意します。
  • 品質確認:レビューやテストの状況を点検し、不具合が出たときの原因と再発防止をその日のうちに決めます。
    具体例:ECサイトに新機能を追加する場面では、PMは開発日程、テスト期間、リリース日を整え、関連部門(販売、サポート)と周知のタイミングまで調整します。

コンサルタントの主な業務

  • 現状の見える化:担当者へのヒアリングや、作業時間・件数などのデータを集め、今のやり方を図や表で整理します。
  • 課題の抽出:無駄な手戻りや待ち時間を見つけます。たとえば、承認が三段階あり処理が滞っている、同じ情報を二度入力している、などです。
  • 改善提案:やり方の変更、手順の簡素化、ツール導入などの具体策を示します。提案は費用・効果・現場負担を並べ、選びやすくします。
  • 導入支援:提案を机上で終わらせず、定例会の設計、見える化ボードやテンプレートの準備、試行期間の段取りまで伴走します。
  • 成果の測定:導入前後で処理時間やミス件数などの指標を比べ、追加の手直しを提案します。
    具体例:問い合わせ対応の遅れが課題なら、質問の分類を見直し、よくある質問の回答集を作り、一次対応を自動で振り分ける仕組みの導入まで支援します。

時間軸の違い

  • PMは「今週・今月、予定通りに進むか」を見ます。日々の調整と意思決定が中心です。
  • コンサルタントは「そもそもの流れは適切か」「半年後に同じ問題が起きないか」を見ます。仕組みづくりと定着が中心です。

かかわり方の違い

  • PMはチームの内側に入り、意思決定と指示を行います。現場の声を直接受け取り、その場で判断します。
  • コンサルタントは外部の立場で第三者の視点を提供します。部門間の利害を整理し、合意形成を助けます。決定は依頼主やPMと連携して進めます。

成果物(アウトプット)の違い

  • PMの主な成果物:作業計画、進捗レポート、問題・懸念の一覧、テストやリリースの手順書、引き継ぎ資料。
  • コンサルタントの主な成果物:調査レポート、改善の道筋を示す計画書、作業の流れ図、比較表、研修資料や運用ルール。

同じプロジェクトでの役割の違い(例)

請求業務を改善するプロジェクトの場合:
- PMは、開発会社との日程調整、テスト期間の確保、リリース判断、関係部門への周知を担当します。
- コンサルタントは、請求書作成までの手順を洗い出し、二重入力の削減や承認ステップの短縮案をまとめます。さらに、毎週の会議の進め方や記録の型を整え、定着まで支援します。

よくある誤解

  • 「コンサルタントは手を動かさない」→実際は、資料作成、会議設計、ワークショップ運営、簡単な試作などを行い、導入まで伴走します。
  • 「PMは提案をしない」→PMも現場で改善提案を行います。ただし最優先は、決めた範囲と日程で成果を出すことです。

次の章に記載するタイトル:求められるスキルセットの違い

求められるスキルセットの違い

前章の振り返りと本章のねらい

前章では、PMは現場の実行を動かし、コンサルタントは課題を見つけて解決案を設計する役割だと整理しました。その流れを踏まえ、本章では両者に求められるスキルの中身を、日常の場面に落として具体的に説明します。

PMに求められるスキル

  • 計画づくりと進捗管理
  • 目的から逆算して道筋を描き、誰がいつ何をするかを明確にします。例:全体スケジュールを作り、週ごとの優先順位を更新する。
  • チームマネジメントとリーダーシップ
  • 役割分担を決め、メンバーの困りごとを早めに拾い、やる気を引き出します。例:短い1on1で障害を取り除く。
  • 調整力・交渉力
  • 部門や外部ベンダーの利害をそろえ、品質・納期・コストの折り合いをつけます。例:追加要望が出た際に、納期への影響を説明し合意を得る。
  • 実務遂行力
  • 会議体の運営、課題の切り分け、ToDoの締め切り管理など、手を動かして前に進めます。

コンサルタントに求められるスキル

  • 論理的思考・分析力
  • 事実を集め、原因と結果を整理します。例:売上低下を「客数」「客単価」に分けて要因を特定する。
  • 問題解決力と提案力
  • いくつかの選択肢を示し、メリット・デメリットと実行手順まで描きます。例:窓口の待ち時間を短縮するための配置見直し案を3案提示する。
  • 業界知識
  • その業界なら当たり前の指標や慣習を理解します。例:小売なら在庫回転、製造なら歩留まりといった基礎指標。
  • データ分析・戦略立案
  • 表計算やBIツールで数字をまとめ、将来の方向性とロードマップを描きます。例:過去データから需要の波を読み、出店計画を作る。

共通する基礎スキルと“重み”の違い

  • 伝わるコミュニケーション
  • 目的と結論を先に示す資料づくり
  • 会議の進行と合意形成
    どちらにも共通します。しかし重心は異なります。PMは「実行を止めない力」に重みがあり、コンサルタントは「課題を解き、選択肢を示す力」に重みがあります。

シーンで比べるスキルの使い方

  • 朝会の場面
  • PM:今日やる作業、詰まっている点、支援が必要な人を即決します。
  • コンサル:詰まりの原因を分類し、再発を防ぐための仮説を出します。
  • 経営報告の場面
  • PM:進捗・リスク・必要な決定事項を簡潔に提示し、承認を得ます。
  • コンサル:選択肢を比較し、採用すべき案と理由、期待効果を示します。
  • トラブル発生時
  • PM:現場を束ね、優先順位を切り替えて復旧を指揮します。
  • コンサル:原因を深掘りし、再発防止の仕組みを設計します。

スキルを伸ばす具体的な練習

  • PM向け
  • 作業を細かく分けて見える化する練習(期限・担当・完了条件をセット)。
  • 定例会のアジェンダを事前共有し、決めることを1枚にまとめる。
  • リスクと対策の一覧を毎週更新する。
  • コンサル向け
  • 「現状→原因→打ち手」でメモを構造化する癖をつける。
  • 小さなテーマで仮説を立て、数字で検証する(例:問い合わせ件数の時間帯別分析)。
  • 事例記事から良い提案書の型を写経する。

よくある勘違い

  • 「PMは会議を調整するだけ」ではありません。現場の段取りと意思決定を前に進めます。
  • 「コンサルは口だけ」ではありません。実行可能性と費用対効果まで設計します。
  • 「論理が強ければPMもできる」とは限りません。人を動かす配慮や段取りは別の鍛錬が必要です。

組み合わせると強くなる

PMが課題設定と提案の型を身につけると、意思決定が速くなります。コンサルタントが現場の段取り感覚を持つと、提案の実現性が高まります。両者は役割の重心が違うものの、学び合うほど価値が増します。

次の章のタイトル: 責任範囲の違い

責任範囲の違い

前章の振り返り

前章では、PMは計画づくりと調整の力、コンサルタントは課題発見と提案を組み立てる力が軸だとお伝えしました。どちらにも人を動かすコミュニケーションが欠かせない点も共有しました。この違いを踏まえ、今回は「誰がどこまで責任を持つのか」を整理します。

責任の基本構図

PMはプロジェクトの成功に対して最終責任を負います。納期・品質・コストに加え、範囲の管理、リスク対応、関係者の合意形成までを自ら引き受けます。たとえばテストで重大な不具合が出たら、PMは計画を引き直し、追加要員の手配や作業範囲の見直し、費用・期間の再承認までを主導します。
一方、コンサルタントは助言の質に責任を持ちます。提案が現実的で、根拠が明確で、前提条件がはっきりしているかを担保します。実行するかどうかの判断や、その結果の責任はクライアントやPMにあります。

PMの責任範囲(具体例)

  • 納期の達成:遅延が見えたら、工程の組み替えや優先順位の変更を決めます。
  • 品質の確保:品質基準を定め、検査の方法と合格ラインを決めます。
  • コスト管理:予算超過の兆しを早期に捉え、削減策や追加予算の承認を取りにいきます。
  • リスク対応:問題が起きる前に手を打ち、起きた後は復旧計画を実行します。
  • 合意形成:仕様変更や体制変更を説明し、関係者から承認を得ます。

コンサルタントの責任範囲(具体例)

  • 助言の品質:調査の方法と根拠を示し、再現性のある結論を出します。
  • 実現可能性の確認:必要な人員・期間・費用の目安を明記し、前提を開示します。
  • 選択肢の提示:A案・B案の長所短所や影響度を比較して意思決定を支援します。
  • 中立性と倫理:特定の利害に偏らず、機密を守ります。
  • 成果物の明確化:レポートや計画書の目的と限界を記します。

境界が曖昧になる場面と見分け方

現場では、コンサルタントが計画作りや課題管理まで手伝うことがあります。作業は支援しても、最終決定を下すのが誰かで責任の所在が決まります。決裁権を持つ人が「採用する」「変更する」と承認した瞬間、その結果責任は承認者に移ります。逆に、コンサルタントが実行まで請け負う契約なら、その範囲では実行責任が発生します。

契約と意思決定が線引きになる

  • 完成を約束する仕事(例:決められた成果まで作り切る)は実行側の責任が重くなります。
  • 時間と知恵を提供する仕事(例:調査・分析・提案)は助言の質に責任が集中します。
  • どの契約でも、最終決定権者と承認プロセスを文書で明らかにすると混乱を防げます。

リスク対応の違い

  • PM:影響を見積もり、代替案を決め、体制やスコープを変えてでも目標達成に寄せます。
  • コンサルタント:リスクの早期発見を助け、選択肢と影響度を示し、判断材料をそろえます。

小さなケーススタディ

販売管理システムの刷新で要件が膨らみました。PMは「今期に必須の機能だけ先に出す」案を調整し、納期と品質を守ります。コンサルタントは「先出し案の影響(運用負担、追加費用、顧客への説明ポイント)」を整理し、意思決定を助けます。採用を決めたのが誰かで、結果の責任の所在が確定します。

よくある誤解と対処

  • 「助言どおりにやったのに」:助言には前提があります。前提が崩れたら再評価が必要です。
  • 「一緒に作業しているから責任も同じ」:決裁の所在が違えば責任は同じではありません。
  • 「コンサルが指揮しているように見える」:指示権を正式に委譲していない限り、最終責任はPM側にあります。

責任を分ける実務のコツ

  • 役割表を作る:「誰が決める・誰が準備する・誰に相談する・誰に知らせる」を一覧化します。
  • 会議体と議事録:承認者名、承認内容、前提を毎回記録します。
  • 期待値の文章化:依頼時に成果物の範囲と限界を明記します。
  • 言い回しの工夫:指示ではなく選択肢として提案し、最終決定者を明確にします。

PMOコンサルタント・ITコンサルタントとの違い

PMOコンサルタント・ITコンサルタントとの違い

前章の振り返り

前章では、PMとコンサルの責任範囲を整理しました。PMは納期・品質・コストの達成に直接責任を持ち、現場を動かす意思決定を行います。コンサルは課題の見立てや提案、実行の後押しに重心を置き、意思決定を助ける立場でした。

PMOコンサルタントとは

PMOコンサルタントは、プロジェクトを円滑に回す「運営の専門家」です。PMを支え、チーム全体が同じ地図で動けるように土台を整えます。
- 進行管理:予定と実績を見える化し、遅れの芽を早めに共有します。
- データ管理:課題や変更点の記録を一本化し、探し物をなくします。
- 標準化:会議の進め方や報告書の形をそろえ、引き継ぎを楽にします。
- 調整:関係者の予定や意見をそろえ、決めごとを前に進めます。
具体例:サイト刷新プロジェクトで、PMOは週次レポートを作成し、全ベンダーの進捗を1枚のダッシュボードにまとめます。仕様の変更依頼が来たら、影響範囲を整理し、関係者が短時間で判断できる材料を用意します。

PMOコンサルタントとPM・一般コンサルの違い

  • PMとの違い:PMは「どこに向かうか」を決め、人や予算を動かします。PMOはその決定が滞りなく実行されるように仕組みと運営を整えます。
  • 一般コンサルとの違い:一般コンサルは業務のやり方や戦略を変える提案に力点があります。PMOは提案よりも、合意した方針を確実に回す運営に力点があります。

ITコンサルタントとは

ITコンサルタントは、ITを使って事業や業務の課題を解く「設計の専門家」です。技術の話だけでなく、現場の動きと数字の両方を見て道筋を作ります。
- 課題の見立て:現場ヒアリングやデータ確認で、何がボトルネックかを特定します。
- 改善案づくり:業務の流れを描き直し、必要なシステムやルールを組み合わせます。
- ソリューション設計:具体的な機能の優先度、導入の順番、費用感を整理します。
- ベンダー選定の支援:候補の比較表を作り、意思決定を後押しします。
具体例:在庫が合わない小売企業で、ITコンサルは入荷から販売までの手順を洗い出し、スキャンの抜けや二重入力を減らす案を提示します。小さく試す段階を設け、効果が出たら全店に広げる計画を作ります。

ITコンサルタントとPM・PMOの違い

  • PMとの違い:PMは合意された計画を期限内に形にします。ITコンサルは「何を作るべきか」「本当に解くべき問題は何か」を明らかにします。
  • PMOとの違い:PMOは進め方を整えます。ITコンサルは解決策の全体像を描きます。プロジェクト前半の設計色が濃いのがITコンサル、実行局面の運営色が濃いのがPMOです。

役割の境界線と重なり

同じプロジェクトでも、立ち位置が少しずつ違います。たとえば「在庫管理システムの導入」では次のように分かれます。
- ITコンサル:在庫差異の原因を特定し、必要な機能と運用ルールを定義します。
- PM:スケジュールと体制を決め、資源を配分し、優先順位を決定します。
- PMO:進捗会議を運営し、課題・変更・リスクの記録と周知を徹底します。
重なる部分もあります。ITコンサルが初期の要件をまとめ、PMOがその記録を運営用の台帳に移し、PMが意思決定に使います。この連携で迷子が減ります。

依頼するときの目安

  • PMOコンサルに向くケース:
  • 会議は多いのに決定が進まない。
  • どの課題が重要か分からず、同じ話が繰り返される。
  • 進捗や変更点を一箇所で把握できない。
  • ITコンサルに向くケース:
  • 何を導入すれば良いか決め切れていない。
  • 現場の不満は多いが、根本原因がはっきりしない。
  • 事業の方向性とIT投資のつながりを示したい。

成果物の例

  • PMOコンサル:週次レポート、課題・変更の一覧、会議体の運営手順、標準テンプレート一式。
  • ITコンサル:現状診断レポート、将来像の図、機能の優先度一覧、導入ロードマップ、比較表。

誤解しやすいポイント

  • 「PMOは事務作業だけ」ではありません。運営の設計と改善で、プロジェクトの速度と品質に直結します。
  • 「ITコンサルはツール導入の窓口だけ」ではありません。課題の本質を見極め、業務とITの両面から解き方を設計します。

次の章に記載するタイトル:キャリアパス・適性の違い

キャリアパス・適性の違い

前章では、PMOコンサルタントとITコンサルタントの役割や立ち位置、PMや現場との関わり方を整理しました。支援の範囲と責任の重なりを解きほぐし、誰が何を担うのかを具体例で確認しました。これを踏まえて、本章ではキャリアパスと適性の見極め方を解説します。

キャリアパスの全体像

  • PM(プロジェクトマネージャ)
  • スタート: 小規模案件のリーダーやサブPMを担当します。進捗管理や会議運営を任されます。
  • 中盤: 本格的なPMとなり、複数チームを束ねます。予算や品質も自分で決めて動かします。
  • 上流: プログラムマネージャや事業責任者に進みます。複数プロジェクトを横断で統括します。
  • コンサルタント
  • スタート: アナリストとして情報収集や資料作成を担います。仮説づくりの土台を作ります。
  • 中盤: コンサルタント/マネージャとして提案をまとめ、クライアントの意思決定を支援します。
  • 上流: プリンシパルやパートナー、または事業会社の変革リーダーへと広がります。

適性チェック(当てはまる数が多い方が向いています)

  • PM向き
  • 決める役割が好きで、期限を守ることに達成感を覚えます。
  • 人や部署の調整をいとわず、現場で起きた問題にその場で手を打ちます。
  • 不確実な状況でも優先順位をつけ、チームの背中を押します。
  • コンサル向き
  • 物事の原因を探るのが好きで、比較検討して筋道立てて話します。
  • ヒアリングや観察から気づきを得て、短い文章や図でわかりやすく伝えます。
  • 新しい業界やテーマを短期間で学ぶことにワクワクします。

働き方とやりがいの違い

  • PMは、納期・品質・コストという目に見える成果で評価されます。チームがゴールに到達した瞬間の一体感がやりがいです。
  • コンサルは、課題の発見と打ち手の設計が中心です。お客様の意思決定を助け、変化のきっかけを作ることに喜びを感じます。

未経験からの入口と学び方

  • PM志望
  • 社内の小さな改善プロジェクトで「進捗表づくり」「会議の目的と結論の明確化」を練習します。
  • 作業分解図(WBS)やカンバンで仕事を見える化します。遅れが出たら早めに助けを求めます。
  • 議事録は「決定・宿題・期限」の3点だけでも即日共有します。
  • コンサル志望
  • 課題メモ→仮説→検証という流れを徹底します。小さな案件でも数値と現場の声を必ずセットにします。
  • 1枚スライドで結論を伝える練習を重ねます。根拠は補足に回し、まず全体像を示します。
  • インタビューでは事実と意見を分けて記録します。

つまずきやすい点と乗り越え方

  • PMの落とし穴: 何でも自分で抱え込む、決めない会議、曖昧な依頼。
  • 対策: 役割と締切をはっきり言語化し、会議は「決める議題」から始めます。依頼は範囲と完了条件を明記します。
  • コンサルの落とし穴: 机上の提案、資料の作り込み過多、伝わらない言い回し。
  • 対策: 現場で観察し、数字と現物で裏を取り、要点は1枚で先に示します。相手の言葉で説明します。

行き来できるキャリア

  • PM→コンサル: 現場で培った実行知見を横展開し、PMOコンサルとして複数社を助ける道があります。
  • コンサル→PM: 提案で磨いた論点整理力を武器に、実行側で成果を出す道があります。プロダクトマネジメントへの発展も可能です。
  • 併走型: 事業会社の変革推進室や社内コンサルとして、提案と実行を一体で担う働き方もあります。

ミニストーリー

  • Aさん(PM型): サブPMから始め、障害対応で判断を先送りにせずに信頼を獲得。今は複数チームを束ね、品質と納期を両立しています。
  • Bさん(コンサル型): アナリストとして現場観察を徹底。1枚で要点を伝える提案が刺さり、実行支援まで任されるようになりました。

選び方のコツ

  • 好きな活動: 会議で決めて動かすのが好きならPM、調べて考え抜くのが好きならコンサル。
  • 時間の使い方: 人と調整する時間が多い方が疲れにくいならPM、資料づくりや分析の集中時間が心地よいならコンサル。
  • 成果の出し方: 目標を切り盛りして着地させる実感を求めるならPM、答えのない課題に筋道をつける手応えを求めるならコンサル。
  • 迷ったら90日お試し: 小さな社内案件でPM役を担い、同時に別テーマで課題整理メモを週1で提出してみます。続けやすい方を選びます。

次に記載するタイトル: まとめ

まとめ

前章では、キャリアパスと適性を比べ、PMは現場で物ごとを動かす力、コンサルは論理的に考え課題を見つける力が重要とお伝えしました。本章では、ここまでの要点を一気に振り返ります。

この記事の要点(おさらい)

  • 役割のちがい
  • プロジェクトマネージャー(PM)は、計画を立て、人やお金や時間を調整し、成果に直接の責任を持ちます。
  • コンサルタントは、現状を分析し、課題を見つけ、解決策を提案・助言します。実行そのものの責任は原則持ちません。
  • 業務内容のちがい
  • PM:計画づくり、進捗管理、リスク対応、関係者調整、現場の意思決定。
  • コンサル:ヒアリング、現状整理、課題特定、解決策の設計、提案、必要に応じた伴走支援。
  • 求められる力のちがい
  • PM:実務を前に進める力、調整力、現場判断力、ファシリテーション。
  • コンサル:論理的思考、仮説づくり、伝える力、資料化の精度。
  • 責任範囲のちがい
  • PM:納期・品質・コストなど成果全体の責任。
  • コンサル:分析や提案の質への責任。実行の結果責任は基本的に持ちません。
  • 近しい職種とのちがい
  • PMOコンサル:PMを支える仕組みづくりや運営支援が中心。自ら成果に直接責任を負う立場とは異なります。
  • ITコンサル:技術やシステムの知見を軸に課題解決を行います。PMはその解決策を実行面から形にします。

身近な例でイメージする

  • 新しいアプリを出す場合:
  • コンサルは「ユーザーが離脱する場面」「改善の打ち手」を整理し、必要な機能や進め方を提案します。
  • PMは提案をもとに計画を引き、設計・開発・テスト・公開までを段取りし、関係者を動かして進めます。
  • 部門横断の業務改革:
  • コンサルは現場の声を集め、無駄な手順を洗い出し、あるべき流れを設計します。
  • PMは部署間の調整を行い、移行スケジュールを決め、教育や運用定着までやり切ります。

自分に合う選び方のヒント

  • PMが向いている人
  • 手を動かして前進させるのが好き
  • 人やタスクを整理し、約束を守るのが得意
  • 現場で判断して道を作るのが楽しい
  • コンサルが向いている人
  • 物事の筋道を立てて考えるのが好き
  • 課題の本質を見抜き、分かりやすく伝えるのが得意
  • 新しい選択肢を比較し、最適解を描くのが好き
  • 迷うなら小さく試す
  • 小規模な案件でリーダーを務める(PMの手触り)
  • 提案書作成や課題整理に参加する(コンサルの手触り)
  • したがって両方の経験を重ねると、自分の軸が明確になります。

両者は補完関係です

PMが実行で道を切り開き、コンサルが地図を描きます。両方がかみ合うほど、プロジェクトは迷いなく前に進みます。片方だけに偏らず、互いの視点を持つことが成果の近道です。

各職種の特徴と現場での役割

各職種の特徴と現場での役割

前章では、記事全体の要点を振り返り、PMと各種コンサルの違いを整理しました。その流れを受けて、本章では「現場で誰が何をするのか」を具体例でイメージできるように解説します。

プロジェクトマネージャー(PM)

  • 役割の核: 目的達成に向けて計画を立て、チームを動かし、期限と品質を守ります。意思決定の最終責任を持ちます。
  • 現場の1日例:
  • 朝: 進捗確認ミーティングで障害(遅れの原因)を洗い出します。
  • 昼: リスクの芽をつぶすため、担当者と打ち手をその場で決めます。
  • 夕方: 変更要望の優先順位を決め、スケジュールを更新します。
  • 主な成果物: 計画書、スケジュール、課題・リスク一覧、変更履歴、リリース計画。
  • 価値が出る瞬間の例: 仕様変更が連続した場面で、範囲を絞り MVP(最小限の価値)を定め、デッドラインを守る判断を下すとき。

プロジェクトマネジメントコンサルタント

  • 役割の核: プロジェクト運営のやり方を良くします。手法やプロセスの改善を提案し、実行は現場に任せます。
  • 介入のタイミング例:
  • 失敗が続く組織に対して、計画づくりやリスク管理の型を設計します。
  • 複数プロジェクトのばらつきを減らすため、共通テンプレートを作ります。
  • 主な成果物: 改善提案書、ガイドライン、チェックリスト、教育資料、評価レポート。
  • 価値が出る瞬間の例: 「遅れの理由が毎回バラバラ」という現場に、原因の拾い方と定例の回し方を導入し、翌月から遅延が見える化・縮小したとき。

PMOコンサルタント

  • 役割の核: PMを支える仕組みづくりと日々の運転を担います。会議体の設計、進捗の集計、標準の維持が中心です。
  • 現場の仕事例:
  • 進捗・課題の集計とダッシュボード更新。
  • 重要会議のアジェンダ設計と議事メモ作成、決定事項のフォロー。
  • テンプレートの配布と使い方のレクチャー。
  • 主な成果物: 進捗レポート、会議体運営資料、標準ドキュメント、品質チェック結果。
  • 価値が出る瞬間の例: バラバラだった報告様式を統一し、経営が週次で全体像を一目で把握できるようになったとき。

ITコンサルタント

  • 役割の核: 事業課題を整理し、ITを使った解決策を描きます。どの仕組み・サービスを使うか、投資対効果や実行順序まで提案します。
  • 現場の仕事例:
  • 現行の業務の流れを図にし、ムダや手戻りの原因を特定します。
  • クラウドやパッケージの比較を行い、選定の基準をつくります。
  • 少人数で試作(小さな実験)を提案し、効果を数字で示します。
  • 主な成果物: 課題整理メモ、将来像(To-Be)案、要件のたたき台、選定評価、ロードマップ。
  • 価値が出る瞬間の例: 現場の紙作業をアプリ化し、承認時間を半分にする道筋を示せたとき。

現場での連携パターン

  • 大規模プロジェクトの例:
  • ITコンサルが「何を作るか」を描き、PMが「どう進めるか」を決めます。
  • PMOコンサルが標準と報告の流れを整え、PMの判断を支えます。
  • プロジェクトマネジメントコンサルタントが運営の弱点を見つけ、改善策を提案します。
  • 中小規模の例:
  • PMが複数の役割を兼務し、必要に応じて短期間だけ各コンサルを招きます。

よくある線引き(誤解を避けるコツ)

  • 「誰が決めるか」: 最終判断はPM。コンサルは選択肢と根拠をそろえます。
  • 「誰が手を動かすか」: 実行はPMとチーム。コンサルはやり方と型を作ります。
  • 「窓口は誰か」: 利害関係者との調整はPM。広い社内調整はPMOが支援します。
  • 現場例: リリース延期の要否はPMが決め、PMOが影響範囲の整理を助け、コンサルが再発防止の型を提案します。

現場で価値を出すポイント(役割別)

  • PM: 目的・優先順位・期限を毎日言語化し、意思決定を早くします。
  • プロジェクトマネジメントコンサルタント: 「すぐ効く小さな改善」と「根本改善」を分け、段階導入を提案します。
  • PMOコンサルタント: データの定義をそろえ、同じ数字を誰が見ても同じ意味になるようにします。
  • ITコンサルタント: 現場で試せる小規模な実験を設計し、効果を数値で示します。

以上を踏まえると、現場では「PMが前線で動かし、各コンサルが視界と足場を整える」関係が基本軸になります。規模や状況に合わせて役割を重ねたり、期間限定で強化したりすることで、成果を安定させられます。

-プロジェクトマネジメント
-, ,