プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド第7版+標準、pmi日本支部監訳

はじめに

本シリーズ記事は、PMBOKガイド第7版とPMI日本支部監訳の日本語版を分かりやすく解説します。第7版の特徴や第6版からの主な違い、他のプロジェクトマネジメント標準との関係、入手方法、実務や試験での活用法まで、実務者や受験者が知っておきたいポイントを網羅します。

なぜ読むべきか

プロジェクトマネジメントの実務は業界や現場で変わります。第7版は従来の「手順書」的な構成から、価値の実現に焦点を当てた説明に変わりました。本記事を読むと、現場での適用例や試験対策に役立つ視点が得られます。

具体例でイメージ

第6版がレシピ本だとすると、第7版は材料と道具を示し、現場で最適な作り方を選ぶガイドです。例えば、同じ成果を目指すプロジェクトでも手法や進め方を柔軟に選べます。

本記事の読み方

まず第2章で第7版の全体像をつかみ、続く章で特徴や活用法を順に確認してください。実務で試す際のチェックリストや、翻訳版の入手方法も紹介します。

PMBOKガイド第7版とは何か?

概要

PMBOKガイド第7版は、PMIが発行するプロジェクトマネジメントの最新ガイドです。正式名は「Project Management Body of Knowledge」で、2021年に第7版が出ました。プロジェクトを成功に導くための考え方や指針を集めたものです。日本語訳はPMI日本支部が監訳しています。

何が目的か

第7版は「やり方(プロセス)」よりも「価値を生み出す仕組み」に重きを置きます。たとえば、同じ建設プロジェクトでも、現場の状況やチームの経験で手法を変えます。ガイドは原則やパフォーマンス指標を示し、現場で適切に調整(テーラリング)することを促します。

具体例で理解する

ソフトウェア開発では短いサイクルで動く成果を示すことが重視されます。一方、インフラ工事では工程管理と品質確認が中心です。第7版は両者に共通する価値の考え方を示し、手法はプロジェクトに合わせて選ぶよう助けます。

日本語訳の利点

日本語版は用語や説明が日本の現場に馴染むよう訳されています。原文と合わせて読むことで理解が深まります。

第7版の主な特徴と第6版からの変更点

概要

第7版はプロジェクト管理の視野を広げ、組織全体での価値創出を重視します。これにより、単一のプロジェクトだけでなくプログラムやポートフォリオの観点も扱います。

主な変更点(ポイントごとに簡潔に)

  • 原則への移行:従来の10の知識エリアから12の原則(プリンシプル)へ移りました。原則は“どう振る舞うか”に重きを置き、状況に合わせて適用します。
  • 手法のテーラリング:一律のプロセスではなく、組織やプロジェクト特性に合わせた手法選びを推奨します。たとえば、IT開発でアジャイルと従来型を混ぜる運用が想定されます。
  • 適用範囲の拡大:組織の戦略や環境を踏まえたマネジメントを求めます。管理すべき範囲が広がる分、利害関係者との調整が重要になります。
  • アジャイル・ハイブリッド対応:アジャイルを前提としたガイダンスが増え、ハイブリッド型プロジェクトへの示唆も豊富です。

実務での具体例

  • 建設現場:安全や品質の優先順位を原則で判断し、作業手順を現場に合わせて変えます。
  • ソフト開発:短いイテレーションと長期的なポートフォリオ目標を両立するために、作業方法を組み合わせます。

何が変わるか(短く)

第7版は「型」ではなく「考え方」を示します。プロジェクトごとに最適な手法を選び、組織全体の価値に結び付ける点が最大の違いです。

価値実現システムの概念

価値実現システムとは

PMBOK第7版は、組織が価値を生み出す仕組みを「価値実現システム」として示します。プロジェクトだけでなく、プログラム、ポートフォリオ、日常業務が一体となって戦略目標を達成する流れを重視します。価値は単なる成果物ではなく、組織にもたらす変化や利益です。

構成要素と役割

  • ポートフォリオ: 経営戦略と投資を結びつけ、どこに資源を配分するか決めます。たとえば、企業がDX推進に資金を振り向ける決定です。
  • プログラム: 関連する複数のプロジェクトを調整し、相乗効果を出します。例はERP導入の一連の取り組みです。
  • プロジェクト: 一時的な活動で成果物を作ります。新製品開発や機能追加が該当します。
  • 定常業務: 日々の運用で、プロジェクトの成果を現場に定着させ、実際の価値を生みます。カスタマーサポートや製造ラインが例です。

価値の流れとフィードバック

ポートフォリオが方針を定め、プログラムが調整し、プロジェクトが成果を出し、定常業務が利益を実現します。実績は評価され、戦略や投資判断にフィードバックされます。これにより継続的な改善が進みます。

実務で意識するポイント

  • 経営層との定期的な確認で戦略をすり合わせる。
  • 成果と価値を測る指標(例: 顧客満足度、収益増)を初期に決める。
  • 定常業務を早期に巻き込んで運用性を高める。

PMI日本支部監訳版の入手方法と特徴

入手方法

PMI日本支部の会員になると、会員ページから日本語版PMBOKガイド第7版(監訳版)をPDFでダウンロードできます。会員登録は年会費制で、会員特典として教材や論文も利用できます。会員でない場合は、楽天やAmazonなどの書店で紙の監訳版を購入できます。中古市場でも出回りますが、版・付録の有無を確認してください。

価格と形態

日本語の監訳版は紙書籍の価格が英語版よりやや高めに設定されることが多いです。電子版が出ている場合は割安ですが、監訳版のPDFは会員向けに無料で提供される点が大きな利点です。

監訳版の特徴

監訳版は専門用語や表現を日本語の読者向けに整えています。例えば“value delivery”を「価値の提供」といった具合に一貫性を持たせています。そのため日本語で学ぶ場合に理解が速くなります。一方で、直訳を避けた結果に違和感を覚える箇所が出ることがあります。

英語原本との使い分け

英語に慣れている方は原文も併用すると利点があります。原文のニュアンスや細かな定義を直接確認でき、試験対策やグローバルな実務で役立ちます。日本語版は理解の土台作りに最適です。

利用上の注意

最新版の改訂や付録の有無を確認してください。試験対策では用語の対訳をメモし、日英両方の表現に触れると効果的です。印刷版は持ち運びや索引参照で便利ですが、最新情報は公式サイトで確認してください。

プロジェクトマネジメント標準との違い・関係性

標準とガイドの位置付け

第7版では「標準(Standard)」が全体の根幹として配置されます。標準はプロジェクト運営の指針であり、普遍的な原則と価値基準を示します。一方、後半に整理されたガイド部分は、現場で使える実践例やツール・テクニックの集まりです。

具体例で見る違い

・原則(標準):価値を提供することを最優先にする、利害関係者を関与させる等の考え方を示します。例えると「地図」です。
・ガイド:ステークホルダーマネジメントのチェックリストやリスク対応のテンプレートなど、実務で使える道具一式です。例えると「コンパスや測量器具」です。

両者の関係性と使い分け

標準は判断の基準を示します。ガイドはその基準に基づき具体的にどう動くかを示します。実務ではまず標準の原則を理解し、プロジェクトの状況に応じてガイドのツールを適用します。したがって、両方を組み合わせて使うことで柔軟かつ一貫した運営が可能になります。

実務上のポイント

・新しいプロジェクトでは標準を最初に確認する。目的や価値観を定めます。
・日常の作業やドキュメント作成ではガイドのテンプレートや事例を参照する。
・組織やプロジェクトの特性に合わせて、ガイドの方法を選択・改変してください。

実務・試験での活用と勉強法

学習の全体像

PMP受験にはPMI認定の35時間研修が必須です。PMBOKガイドは必携ではありませんが、第7版を読むと考え方が深まります。公式の最新情報はPMI日本支部で確認してください。

実務での活用法(具体例)

  • 朝礼で「価値」を基準に優先順位を再確認します。例えば、顧客の要望が変わったら納期より価値を優先する判断をチームで議論します。
  • リスクは定期的に見直し、発生時の対応手順を小さな練習で確認します。実際の障害対応で手順が有効か検証します。
  • ステークホルダーとは短い定例と成果物のデモを繰り返し、期待値を合わせます。

試験対策の具体的方法

  • 日本語のテキストと問題集で基礎を固めます。問題は必ず時間を計って解き、間違えた理由をノートに残します。
  • 模試は本番の時間配分に慣れるため週1回は実施します。正答だけでなく選択肢の理由を理解します。
  • ケース問題に強くなるため、実務での判断を言語化する練習をします(なぜその選択か、代替案は何か)。

学習スケジュール例(8〜12週)

  • 週1: 基本概念の読解
  • 週2–6: 各領域の問題演習と解説確認
  • 週7–10: 模試と弱点克服
  • 最終週: 総仕上げと休養

リソースと注意点

  • 日本語テキスト、問題集、PMI認定研修、模擬試験を組み合わせます。最新の受験要件は必ずPMI日本支部で確認してください。

まとめと今後のポイント

PMBOKガイド第7版は「柔軟性」「原則」「価値」を重視します。形式や手順だけでなく、成果が組織やステークホルダーにもたらす価値を常に意識することが核心です。現場では第6版との違いを理解し、原則を日常の判断基準に取り入れてください。

主要なポイント
- 原則優先:ルールより目的を明確にし、その目的に合う方法を選びます。例:品質向上が目的なら、短期間で試して学ぶ小さな改善を繰り返します。
- 文脈適応:プロジェクト環境に合わせて手法を組み合わせます。例:開発はアジャイル、調達は従来型と併用することも可能です。
- 価値測定:成果を定量・定性で追跡します。週次レビューで顧客満足や納品物の利用状況を確認すると効果的です。

今後の実務アクション(すぐできること)
- プロジェクト開始時に価値基準を一つ設定する。例えば「リリース後3カ月で利用率20%」など。
- 小さな実験を計画し、学びを次に反映するサイクルを回す。
- チームに原則を共有し、意思決定時のチェックリストにする。

学習と定着のコツ
- ケーススタディを用いて具体的場面での判断を練習する。
- 試験対策だけで終わらせず、社内小プロジェクトで第7版の考え方を試してください。

最後に
第7版は固定解を示しません。チームと組織が価値を出すための道具です。まず小さく始め、効果を見て広げていく姿勢が成功の鍵です。

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