目次
はじめに
「プロジェクトマネジメントの体制は、どのように作ればよいのだろう」
「PM・PL・PMOは何が違うのか分からず、役割を整理できない」と悩んでいませんか。
新しくプロジェクトを立ち上げることになったときや、体制図の作成を任されたときは、それぞれの役割や関係性を正しく理解していないと、誰が何を担当するのか決められず迷ってしまうことがありますよね。
この記事では、PM・PL・PMOの違いや、それぞれの役割、分かりやすい体制図の考え方や作り方まで順を追って説明していきます。
プロジェクトマネジメントの体制とは?

プロジェクトマネジメントでは、計画やスケジュールだけでなく、「誰が何を担当し、どのように連携するのか」を明確にした体制づくりが欠かせません。
ここでは、プロジェクト体制の基本的な考え方から、関連する用語の違い、体制を決めない場合に起こりやすい問題まで順を追って説明します。
プロジェクト体制の基本的な考え方
プロジェクト体制とは、プロジェクトを進めるために、誰が何を担当し、どこまでの権限を持つのかを明確に決めた役割の仕組みです。
例えば、プロジェクトマネージャーが全体の進行を管理し、各担当者が設計や開発、テストなどの業務を担当し、責任者が重要な判断を行うというように、役割と責任を事前に整理します。
担当範囲や報告先が明確になることで、判断の遅れや作業の重複を防ぎ、プロジェクトを計画どおりに進めやすくなります。
体制・役割分担・組織図の違い
体制は、プロジェクト全体をどのような役割と指揮命令の関係で運営するかという仕組みを指します。
役割分担は、プロジェクトマネージャーや開発担当、テスト担当など、それぞれの担当業務や責任範囲を決めることです。組織図は、それらの役割や報告先、指揮命令の関係を図で見える化したものを指します。
つまり、体制が全体の仕組み、役割分担が担当内容、組織図がそれらを図で表したものという違いがあります。
体制を決めないと起こりやすい問題
プロジェクト体制を決めないまま進めると、担当者が曖昧になり、「誰が対応するのか」「誰が最終判断をするのか」が分からなくなります。
その結果、同じ作業を複数人が進めたり、重要な作業が誰にも対応されなかったりすることがあります。また、確認や承認の流れも定まらないため、判断が遅れ、スケジュールの遅延につながりやすくなります。
こうした問題を防ぐためにも、プロジェクト開始前に体制を明確にしておくことが重要です。
プロジェクトマネジメントでよくある役割一覧
プロジェクトを円滑に進めるためには、それぞれの立場が担う役割を正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、プロジェクトマネジメントでよく使われる主な役割について、それぞれの仕事内容や責任の違いを順を追って見ていきましょう。
PM(プロジェクトマネージャー)の役割
PM(プロジェクトマネージャー)は、プロジェクト全体の進行を管理し、納期・予算・品質を計画どおりに進める役割です。
スケジュールを作成し、担当者へ作業を割り当て、進捗を確認しながら遅れや課題があれば対応を判断します。
また、顧客や経営層への報告、メンバー間の調整、重要事項の意思決定も担当します。プロジェクト全体を把握しながら、計画どおりに完了できるよう管理することがPMの役割です。
PMがプロジェクト全体を管理するといわれても、実際にPMの下にはどのような役職や担当者が配置されるのか気になる方は、こちらも参考にしてください。
▶PMの下の役職とは?PM・PL・PMOとの違いや役割を分かりやすく解説
PL(プロジェクトリーダー)の役割
PL(プロジェクトリーダー)は、担当チームの作業をまとめ、現場で業務が円滑に進むよう管理する役割です。
担当メンバーへ作業を指示し、進捗や課題を確認しながら、予定どおりに作業が進むよう調整します。
また、現場で発生した問題を整理してPMへ報告し、必要な対応を進めます。担当チームの進行を管理し、現場とPMをつなぐことがPLの役割です。
PMOの役割
PMOは、PMがプロジェクト全体を管理しやすいように支援する役割です。
進捗状況や課題を整理し、会議資料や報告資料を作成したり、スケジュールや課題管理表を更新したりします。
また、プロジェクトのルールが守られているかを確認し、複数のプロジェクトで管理方法を統一する業務を担当することもあります。
PMの管理業務を支え、プロジェクト運営を円滑に進めることがPMOの役割です。
メンバー・担当者の役割
メンバー・担当者は、自分に割り当てられた作業を計画どおりに進める役割です。
設計や開発、テスト、資料作成など担当業務を実施し、進捗や問題が発生した場合はPLやPMへ速やかに報告します。また、決められた期限や品質基準を守りながら作業を進め、必要に応じて他の担当者と情報共有や連携を行います。
担当業務を確実に完了させることが、メンバー・担当者の役割です。
ステークホルダーの役割
ステークホルダーは、プロジェクトに関わる利害関係者として、必要な判断や確認を行う役割です。
顧客や発注者、経営層、利用部門などが含まれ、要件の確認や成果物の承認、重要事項の意思決定を担当します。また、プロジェクトの進捗報告を受け、必要に応じて方針変更や追加の判断を行うこともあります。
プロジェクトを円滑に進めるために必要な意思決定を行うことが、ステークホルダーの役割です。
プロジェクト体制図の基本構成
プロジェクト体制は、役割を決めるだけでは十分ではなく、体制図として関係性や指揮命令系統を見える形にすることも重要です。
ここでは、基本的なプロジェクト体制図の構成や、運用しやすい体制を作るために押さえておきたいポイントを順を追って説明します。
基本的なプロジェクト体制図の例

基本的なプロジェクト体制図では、最上位に意思決定を行う責任者やスポンサーを配置し、その下にプロジェクト全体を管理するPMを置きます。
PMの配下にはPLやPMOを配置し、さらに各チームのメンバー・担当者を配置する構成が一般的です。
役職ごとの上下関係や報告先を線で結び、誰が誰へ報告し、どの役割がどの範囲を担当するのかを一目で分かるように示します。
指揮命令系統を明確にするポイント
指揮命令系統を明確にするには、各担当者が誰から指示を受け、誰へ報告するのかを体制図で統一して示すことが重要です。
1人の担当者に複数の指示系統を持たせると、優先順位が分からず判断が遅れやすくなります。
そのため、報告先と指示を出す責任者を役割ごとに明確に定め、日常業務でもその流れに沿って運用することが必要です。
誰が意思決定するかを決める重要性
誰が意思決定するかを事前に決めておくことで、課題や仕様変更が発生した場合でも、判断を速やかに進められます。
意思決定者が曖昧なままでは、複数人に確認が必要になり、承認までに時間がかかる原因になります。
そのため、予算やスケジュール、仕様変更など、判断が必要な項目ごとに責任者を明確に定め、迷わず判断できる体制を整えることが重要です。
報告ルート・相談先を統一する
報告ルートと相談先は、役割ごとにあらかじめ統一しておくことが重要です。
進捗報告や課題の相談を毎回異なる相手へ行うと、情報が分散し、対応の遅れや認識のずれが発生しやすくなります。
そのため、担当者はPLへ、PLはPMへ報告するなど、報告先と相談先を体制図どおりに運用することで、情報共有と問題対応を円滑に進めやすくなります。
兼務が発生する場合の注意点
兼務が発生する場合は、1人がどの役割を担当し、それぞれでどこまで責任を負うのかを明確にしておくことが重要です。
役割の境界が曖昧なままでは、判断者と実務担当者の区別がつかず、確認漏れや対応漏れが起こりやすくなります。
そのため、体制図には兼務している役割を明記し、それぞれの役割ごとの責任範囲を事前に整理して運用することが必要です。
プロジェクト規模別の体制例
プロジェクトに適した体制は、すべて同じではありません。
参加人数や業務の複雑さ、関わる部門の数によって、必要な役割や組織の構成は変わります。
ここでは、小規模から複数部門が関わるプロジェクトまで、それぞれの規模に応じた体制例と特徴を順を追って紹介します。
小規模プロジェクトの体制例
小規模プロジェクトでは、PMがPLを兼務し、数名のメンバーを直接管理する体制がよく採用されます。
専任のPMOを置かず、進捗管理や会議資料の作成もPMが担当することが一般的です。
役割を増やしすぎると確認や報告の手間が増えるため、必要最小限の役割で構成し、担当範囲と報告先を明確にして運営する体制が適しています。
中規模プロジェクトの体制例
中規模プロジェクトでは、PMが全体を管理し、その下に複数のPLを配置してチームごとの進行を管理する体制が一般的です。
進捗管理や課題管理の負担が増えるため、必要に応じてPMOを配置し、管理業務を支援することもあります。
役割を分担することで、PMは全体管理に集中し、PLは担当チームの進行管理に専念しやすくなります。
複数部門が関わる場合の体制例
複数部門が関わるプロジェクトでは、PMが全体を管理し、各部門ごとに責任者やPLを配置する体制が一般的です。
各部門の責任者が進捗や課題を取りまとめてPMへ報告することで、情報が一元化されます。
また、部門ごとに役割と責任範囲を明確にしておくことで、担当の重複や対応漏れを防ぎ、部門間の連携を円滑に進めやすくなります。
プロジェクトの役割分担で決めておくべきこと
役割分担は担当者の名前を決めるだけではなく、責任の持ち方や判断の範囲まで明確にしておくことが重要です。
ここでは、役割分担を決める際に押さえておきたい基本的なポイントを順を追って説明します。
責任者を曖昧にしない
責任者は、業務や成果物ごとに1人へ明確に割り当てることが重要です。
責任者が複数いる状態では、お互いに対応を任せ合い、判断や対応が遅れる原因になります。
そのため、仕様決定や成果物の承認、課題対応など、判断が必要な項目ごとに責任者を決め、誰が最終的な責任を負うのかを事前に明確にしておくことが必要です。
責任者を複数にしない
責任者は、1つの業務や成果物に対して1人だけに設定することが重要です。
複数人を責任者にすると、判断のタイミングがそろわず、確認や承認に時間がかかる原因になります。また、問題が発生した際にも、誰が対応を主導するのか分からなくなります。
そのため、最終的な判断と責任を負う担当者を1人に定め、関係者全員が共通認識を持てるようにしておくことが必要です。
責任範囲を整理する方法
責任範囲を整理するには、業務を設計、開発、テスト、承認などの作業単位に分け、それぞれの担当者と責任者を対応付けて決めます。
あわせて、誰が実施し、誰が最終判断を行い、誰へ報告するのかを役割ごとに明確にします。
作業ごとの責任範囲を事前に整理しておくことで、担当の重複や対応漏れを防ぎ、プロジェクトを円滑に進めやすくなります。
役割分担を決めた後は、作業をどのように整理して担当へ割り振るかで迷うこともあります。実際の進め方を知りたい方は、こちらも参考になります。
WBSとは?プロジェクトマネジメントでの作り方と具体例をわかりやすく解説
現場と管理側の認識を合わせる
現場と管理側の認識を合わせるには、役割ごとの担当業務と責任範囲を関係者全員で確認しておくことが重要です。
現場と管理側で役割の認識が異なると、対応すべき業務や報告先にずれが生じ、作業の遅れや対応漏れにつながります。
そのため、プロジェクト開始前に役割分担を共有し、担当内容や報告ルートを共通認識としてそろえておくことが必要です。
プロジェクト体制でよくある失敗例
プロジェクト体制は役割を決めるだけでは十分ではなく、実際に運用できる形になっていることが重要です。
ここでは、プロジェクト体制で起こりやすい代表的な失敗例と、その原因になりやすいポイントを順を追って説明します。
PMに業務が集中してしまう
PMに業務が集中すると、進捗管理や顧客対応、課題管理、資料作成などを1人で抱えることになり、判断や対応が遅れやすくなります。
その結果、重要な課題への対応や意思決定に十分な時間を確保できなくなることがあります。
PMだけに業務を集中させず、PLやPMOへ管理業務を分担する体制を整えることが重要です。
意思決定者が多く判断が遅れる
意思決定者が多い体制では、仕様変更や課題対応のたびに複数人の承認が必要になり、判断までに時間がかかりやすくなります。
また、意見が分かれると結論がまとまらず、作業を進められない状況も発生します。
判断が必要な項目ごとに最終的な意思決定者を1人に定め、承認の流れを事前に決めておくことが重要です。
相談先が分からず対応が止まる
相談先が決まっていないと、課題やトラブルが発生した際に誰へ確認すればよいか分からず、作業が止まりやすくなります。
また、複数人へ同時に相談すると、異なる指示を受けて対応が混乱する原因にもなります。
役割ごとに相談先と報告先を事前に決め、体制図に沿って運用することが重要です。
役割の境界線が曖昧になる
役割の境界線が曖昧になると、同じ業務を複数人が担当したり、反対に誰も対応しなかったりする状況が発生しやすくなります。
また、問題が起きた際にも責任の所在が分からず、対応や判断が遅れる原因になります。
役割ごとの担当業務と責任範囲を事前に明確にし、関係者全員で共通認識を持って運用することが重要です。
プロジェクトマネジメントの体制を整える手順
プロジェクト体制は、一度役割を決めて終わりではなく、順番に整理しながら構築することで運用しやすくなります。
ここでは、プロジェクトマネジメントの体制を整える基本的な手順を順を追って説明します。
必要な役割を洗い出す
必要な役割を洗い出すには、プロジェクトで実施する業務を整理し、それぞれを担当する役割を決めます。
進行管理を担当するPM、現場を管理するPL、実務を担当するメンバーなど、必要な役割を業務内容に合わせて設定します。
最初に必要な役割を明確にすることで、担当漏れや役割の重複を防ぎ、体制を整えやすくなります。
責任者と決裁者を決める
責任者と決裁者は、業務や判断項目ごとに事前に決めておくことが重要です。
責任者は担当業務の進行と結果に責任を持ち、決裁者は予算や仕様変更、重要事項などの最終判断を行います。
それぞれの役割を明確に分けておくことで、判断の遅れや責任の曖昧さを防ぎ、プロジェクトを円滑に進めやすくなります。
体制図を作成する
体制図は、役割ごとの上下関係や報告先、指揮命令系統が分かるように作成します。
PMやPL、PMO、メンバーなどを配置し、誰が誰へ報告し、誰が指示を出すのかを線で明確に示します。
体制図を作成して関係者全員で共有することで、役割や報告ルートの認識を統一しやすくなります。
運用しながら見直す
プロジェクト体制は、一度決めたら終わりではなく、運用しながら必要に応じて見直すことが重要です。
進行中に業務量の偏りや役割の重複、報告ルートの問題が見つかった場合は、担当者や役割分担を調整します。
実際の運用状況に合わせて体制を改善することで、プロジェクトを円滑に進めやすくなります。
まとめ
プロジェクトマネジメントの体制は、役職を並べるだけではなく、誰が何を担当し、誰が判断し、どのように連携するのかを明確にすることが重要です。
PM・PL・PMO・メンバー・ステークホルダーそれぞれの役割を整理し、責任範囲や報告ルートを明確にすることで、判断の遅れや作業の重複、対応漏れを防ぎやすくなります。
また、プロジェクトの規模や関係する部門に合わせて体制を構成し、体制図として共有することで、関係者全員が同じ認識で業務を進めやすくなります。
さらに、実際の運用状況に応じて役割や体制を見直し、改善を続けることも欠かせません。
まずは必要な役割を洗い出し、責任者と決裁者を決めたうえで体制図を作成し、自分のプロジェクトに合った運用しやすい体制づくりを進めていきましょう。