目次
はじめに
本記事の目的
本記事は、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)におけるプロジェクトマネジメント(PM)の実態をわかりやすく伝えることを目的としています。日本総研のPM組織がどのように機能し、どんな強みや課題があるかを具体例を交えて解説します。
誰に向けた記事か
プロジェクトマネージャーを目指す方、現場でPM支援をするエンジニア、転職を検討する方、人事や育成担当の方に役立ちます。例えば「現場での進め方が知りたい」「育成の仕組みを知りたい」といった疑問に答えます。
本シリーズの読み方
全8章で構成し、順に読むと組織の全体像と実践的なノウハウが身につきます。第1章は全体の導入、第2〜4章で現場の特徴や育成、第5章で最新技術の活用、第6〜7章で働き方や現場の声、第8章で総括を行います。気になる章だけ先に読むのもおすすめです。
本記事で得られること
実務に活かせる視点や、キャリア設計のヒントを提供します。具体例を交え、読みやすく丁寧に説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
日本総研におけるプロジェクトマネジメントの特徴
概要
日本総研はSMBCグループを中心とした大規模システム開発を多数手掛ける総合シンクタンク・ITソリューション企業です。IT部門では社内の要件定義と外部ベンダーの実装をつなぐ役割を担い、プロジェクト管理の実践が強みになっています。
主な特徴
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パートナー中心の協業体制
PMは複数ベンダーのエンジニアをまとめ、進捗や品質を管理します。例えば、銀行の勘定系システムではベンダーごとに担当範囲が分かれ、調整の頻度が高くなります。 -
大規模・複雑なプロジェクト運営
スコープや利害関係者が多いため、段階的な計画と細かな進捗管理が不可欠です。リスク管理や変更管理の仕組みを現場レベルで運用しています。 -
品質・ガバナンス重視
金融分野の要件に合わせて、レビューやテストの基準を厳格に設定します。ドキュメント管理や承認フローも整備しています。
課題と取り組み
技術力の維持・向上が継続的な課題です。現場では設計レビューへの参加や社内勉強会、外部研修で技術力を補っています。PMはマネジメントと技術の両面でバランスを取りながら、プロジェクトを前に進めています。
プロジェクトマネージャーの役割と求められるスキル
役割
日本総研のPMは、数億〜数十億円規模のプロジェクトを最上流からリードします。要件の整理や利害関係者の合意形成、全体計画の策定が初動です。進行中はリスク評価、対策立案、進捗のモニタリング、影響範囲の判断を行い、必要な調整を即座に指示します。社内研修やガイドライン作成にも関わり、組織全体の管理力向上を図ります。
求められるスキル(具体例付き)
- リスク判断力:問題の兆候を早期に見つけ、代替案を提示します(例:要員不足時の外部調達案)。
- コミュニケーション力:経営層・顧客・開発チームをつなぎ、情報の齟齬を防ぎます(例:定例会での要点共有)。
- 調整力:スケジュールや予算の変更時に優先順位を決めて折衝します(例:機能削減の合意形成)。
- 計画立案力:実行可能な工程表を作り、KPIで管理します(例:マイルストーン設定)。
- 技術理解:技術的なリスクを把握し意思決定に活かします(例:アーキテクチャの選択判断)。
- 指導力・育成力:若手の成長を促し、ナレッジを蓄積します(例:レビューや勉強会の実施)。
日常の行動例
週次のリスクレビュー、ダッシュボードでの進捗確認、重要決定時のステークホルダー会議、研修企画・実施などを通じて、現場を安定させます。
スキル向上の方法
実プロジェクトでのOJT、事例検討、先輩からのフィードバック、社内外の研修を繰り返すことで着実に伸びます。具体的な場面で判断を繰り返すことが最短の近道です。
ITエンジニア・PM育成プログラムとキャリアパス
プログラム概要
日本総研は2024年度に高度技術者候補育成プログラムを立ち上げ、エンジニアとPMの両面での成長を支援しています。目的は技術力の底上げと、多様なキャリア選択肢の提供です。内製開発を重視し、社員主導のチームが設計から開発、リリースまで一貫して担当できる環境を整えています。
教育・育成の仕組み
- 初期研修:基礎技術、ソフトウェア開発の流れ、プロジェクト管理の基礎を短期集中で学びます。
- OJTとメンター制度:現場での実務経験を重視し、先輩が個別に支援します。
- ハンズオン機会:小規模プロジェクトで設計〜リリースを経験し、成果を提示する場(デモデイ)を設けます。
- 継続学習支援:外部研修・資格取得の補助、社内勉強会の運営を支援します。
キャリアパスの例
- PMルート:ジュニアPM→PM→シニアPM→プログラムマネージャー。主な成長項目は計画作成、見積り、対外折衝、チーム育成です。
- 技術エキスパートルート:開発者→テックリード→アーキテクト/スペシャリスト。設計力や技術選定、性能改善が中心です。
両ルートで成果に応じた評価・報酬制度を用意しています。
内製開発と実務経験の活かし方
RPAや基幹システム統合など、実際の案件でPM経験を積める配属を意図的に行います。小さな担当から段階的に責任を増やし、早期にリリースや運用まで携わることで現場力を鍛えます。
キャリア入社者への配慮
異業種や中途入社者にはブリッジ研修や専任メンターを用意し、経験を活かせるプロジェクトへスムーズに配置します。多様なバックグラウンドを歓迎する文化をつくり、早期戦力化を後押しします。
生成AIなど最新技術の活用とプロジェクト管理の効率化
概要
日本総研では生成AIを用いてプロジェクト管理を効率化しています。目的は業務時間の短縮、属人化の解消、ナレッジ共有基盤の強化です。まず小さな領域で検証(PoC)を行い、段階的に適用範囲を広げます。
具体的な活用例
- Jiraでの自然言語検索・自動生成
- 例: 要件文からチケットを作成し、関連する既存チケットを検索します。日報や会議メモからタスク候補を自動生成する運用が可能です。
- タスク分解とスキルに応じた割り当て
- 例: 大きな作業を小さなタスクに分解し、担当者のスキルに基づいて自動で候補を提示します。
- サービス運用ツールでの説明文自動生成・顧客感情分析
- 例: 問い合わせ対応の定型文を生成し、顧客のコメントから感情を判定して優先度を判断します。
- ナレッジ共有ツールによるドキュメント要約
- 例: 長い仕様書や会議録を要約し、検索しやすい形式で保存します。
運用と品質管理
導入時は人のレビューを必須にして誤生成を防ぎます。チェックリストや承認フローを整備し、定期的に生成結果の精度を評価します。モデルやテンプレートはバージョン管理します。
トレーニングと定着支援
現場で使えるテンプレートやハンズオン研修を用意します。運用ルールを明確にして、ユーザーからのフィードバックを継続的に取り入れます。
セキュリティとデータガバナンス
個人情報や機密情報は除外して学習・生成に利用します。ログとアクセス管理を行い、外部サービス利用時は契約条件を確認します。
評価指標(KPI)の例
- チケット作成工数の削減率
- タスク割当までの時間短縮
- ナレッジ検索頻度の向上
- 自動生成の誤り率
推奨アプローチ
まず小さな領域でPoCを行い、現場の声を元に改善しながら段階的に拡大してください。人の監督を残すことで安全で効果的な運用が実現できます。
働き方・求められる人物像・キャリアアップ
働き方の特徴
日本総研は内販100%で、自社勤務とリモート勤務を柔軟に選べます。オフィス出社の日と自宅作業の日を組み合わせるハイブリッドが基本です。ドレスコードは自由で、成果と働きやすさを重視する職場環境です。
求められる人物像
チームワークとコミュニケーション力を大切にします。複雑な課題を構造的に分解して優先順位を決め、速やかに対策を講じる判断力が求められます。技術志向とマネジメント志向の両方を持ち、学び続ける姿勢が重要です。例えば、技術的な実装とスケジュール管理の両方を担える人材は高く評価されます。
キャリアアップの道筋
初期はエンジニアやPM補助として実務を経験し、実績を積んでプロジェクトリーダーへ進みます。リーダー経験を経て、上級PMや部門横断のマネージャーへと昇進します。専門性を高める選択肢(アーキテクト、データ専門職)とマネジメント重視の道が並行して用意されています。
日常で意識すべきこと
新しい技術や手法を積極的に試し、チームへ共有する習慣を持つと成長が早まります。定期的な振り返りで課題を明確にし、小さな改善を積み重ねていくことがキャリア形成につながります。
採用・評価のポイント
成果だけでなく、協調性と学習意欲を重視します。リモート環境での自己管理能力や、説明力・説得力も評価の対象です。
現場インタビュー・転職者の声
インタビュー抜粋
・「内製で自分でも手を動かしながら進められるので、設計の意図が現場に伝わりやすいです」――現場PM
・「技術力を保ちながらマネジメント力も求められるため、両方を伸ばせます」――転職者A
・「RPAの導入や大規模案件の進行で、短期間で成長を実感しました」――エンジニアB
日常の実感
現場ではPMが手を動かしてプロトタイプを作る場面が多くあります。仕様を試作して確認することで認識のズレが減り、決定が早くなります。定例では技術的な細部まで議論し、解決策を共有します。
転職後の変化
多くの転職者が「成果が見えやすい」「裁量が増えた」と話します。技術を活かして要件定義や品質管理まで携われるため、キャリアの幅が広がります。RPAや大規模案件を担当すると、計画立案や調整力が格段に高まります。
転職希望者へのアドバイス
- 手を動かせる姿勢を示すと評価されます。具体的な成果物を持参すると良いです。
- 技術とコミュニケーション両方の経験を意識して積みましょう。現場での即戦力になります。
- 大きな案件では調整力が鍵です。関係者の目的を早めに整理してください。
現場の声は具体的で実務に直結しています。興味があれば、現場での1日の流れや具体的な案件例をさらにお伝えできます。
まとめ:日本総研のPM組織は何が強みか
全体像
日本総研のPM組織は、企画段階の最上流から関与し、戦略と実行をつなげる点が最大の特徴です。上流で意思決定にかかわることで、顧客価値を見据えたプロジェクト運営を実現します。
強み1:最上流からの関与と一貫性
要件定義や企画の段階からチームが参加します。これにより方針がぶれず、後工程での手戻りを減らせます。結果として品質と納期の両立がしやすくなります。
強み2:組織的な育成とキャリア多様性
全社での育成プログラムと現場でのOJTを組み合わせ、技術とマネジメントの両方を育てます。専門性を深める道とマネジメントに集中する道、どちらのキャリアも描けます。
強み3:技術革新の取り込みによる効率化
生成AIなどの新ツールを業務に取り入れ、定型作業の自動化やドキュメント整備を進めています。属人化を抑え、ナレッジを組織で共有しやすくしています。
強み4:働き方の柔軟性と現場重視
リモートや時短など柔軟な働き方を認めつつ、現場での協働も大切にします。個人のライフステージに合わせた働き方を支援します。
どんな人に向くか
技術とマネジメントの両方を学びたい人、上流から事業貢献したい人に向いています。成長機会が多く、学びながら成果を出したい方に適した環境です。