目次
はじめに
本資料の目的
本資料は、職場や教育現場でコミュニケーション能力を高めたい方のために、研修で使えるゲームの考え方と実践方法を分かりやすくまとめたものです。実際に使える具体例と進め方を示し、研修設計の参考にしていただけます。
対象読者
研修担当者、人事・教育担当、チームリーダー、教員など、実践的にコミュニケーション研修を企画・実施する方を想定しています。初心者でも使いやすい説明を心がけています。
本資料で扱う内容
ゲームの種類や目的ごとの使い分け、進行の手順、オンライン対応の工夫、導入時の注意点などを網羅します。具体的なゲーム例は後半で紹介し、すぐに使えるリストも付けます。
読み方と使い方
まず本章で全体像をつかみ、続く章で目的別のゲームや実施手順を確認してください。研修の準備時には、対象と目的を明確にしてからゲームを選ぶと効果的です。
コミュニケーション研修で使えるゲームの全て
コミュニケーション研修にゲームを取り入れると、参加者が楽しみながら学べます。ここでは目的から実施方法まで、現場で使える要点を丁寧にまとめます。
ゲーム導入の目的
- 緊張をほぐし参加意欲を高める
- 実践的な対話や傾聴の機会を作る
- チームワークや役割分担を体験的に学ぶ
実際に体験することで理論より定着が早くなります。短時間で成果を感じやすい点が魅力です。
期待できる効果
- 自然な発言が増え、相互理解が深まる
- 問題解決や意思決定のプロセスを共有できる
- 信頼関係の構築につながる
ゲームの種類(使い分けの目安)
- アイスブレイク:自己紹介や場づくり(例:共通点探し)
- 協力型:協調を促す(例:制限時間内のタワー作り)
- 競争型:速さや精度を競う(例:情報伝達ゲーム)
- ロールプレイ:役割演習で実践力を養う(例:クレーム対応)
- 問題解決型:議論と合意形成を学ぶ(例:資源配分ワーク)
実施前の準備と配慮
- 目的を明確にし時間配分を決める
- 参加者の人数・体力・性格を考慮する
- ルールは簡潔に提示し安全配慮を行う
振り返り(デブリーフィング)の進め方
- 事実の共有→感情の確認→学びの抽出の順で進める
- 具体的な現場応用につなげる質問を投げる(例:「明日から何を変えますか?」)
- ポジティブな気づきを強調して次の行動を促す
これらを踏まえれば、研修の目的に合わせた適切なゲーム選びと効果的な実施が可能です。
コミュニケーション研修で人気のゲーム例と特徴
アイスブレイク系ゲーム
・Talking in the Park(公園での会話): 参加者がペアで短い場面設定を演じ、話しやすさを作ります。時間は5〜10分、人数は小〜中規模向け。目的は緊張ほぐしと自己開示の促進です。
・嘘つき自己紹介: 自分に関する3つのうち1つだけ嘘を混ぜて紹介します。誰が嘘か当てることで観察力と質問力が高まります。
・共通点探しゲーム: 小グループで共通点を3つ以上見つけます。短時間でつながりを生み、会話の糸口を作ります。
チームビルディング・協働型ゲーム
・バスは待ってくれない(優先順位付け): 限られたアイテムをチームで選びます。意思決定と合意形成の練習に最適です。
・The 商社: 架空の商品を売買し、交渉と役割分担を学びます。コミュニケーションと戦略が試されます。
・NASAゲーム: 危機対応で重要な情報を共有する訓練です。情報整理と発信の明確さが学べます。
伝達力アップ系
・伝言ゲーム: 情報がどのように変わるか体感します。聞き取り・要約力の改善に役立ちます。
・ジェスチャーゲーム: 言葉以外の表現を鍛え、非言語コミュニケーションへの意識が高まります。
・条件プレゼン: 制約付きで短時間に説明する練習です。要点を絞る訓練になります。
オンライン・遠隔対応ゲーム
・リモ謎: オンラインで解く謎解き。協働と画面共有の使い方を学べます。
・ワード連想リレー: ターン制で連想語をつなげ、即応力と発想力を鍛えます。
・オンライン宝探し: 指示をもとに各自が情報を探すことで指示伝達とフォローの重要性が分かります。
各ゲームは目的(緊張緩和・合意形成・伝達力向上など)を明確にして選ぶと効果が上がります。時間配分や人数、準備物を事前に確認してください。
ゲームを使ったコミュニケーション研修の進め方
1. 目的の共有と対象の確認
研修前にねらいを明確にします。習得したいスキル(傾聴、伝達、合意形成など)と参加者の特性(新入社員、管理職、部門混合など)を把握すると、適切なゲーム選びができます。
2. ゲーム選定のポイント
時間、人数、場所、物資の可用性を基準に選びます。学びの深さを重視するなら討議型、雰囲気づくりを望むなら軽めのゲームが向きます。目的に直結する結果が出るゲームを選びます。
3. 導入時の説明とルール設定
目的を伝え、期待する行動を明示します。ルールは簡潔に示し、練習ラウンドや質問の時間を設けます。失敗を許容する雰囲気を作ると参加しやすくなります。
4. 安全な場づくりと進行のコツ
心理的安全性を優先し、否定的な発言は避けるルールを共有します。ファシリテーターは観察を行い、困っている人には個別に声をかけて支援します。時間配分を守り、参加者のエネルギーを見ながら調整します。
5. 振り返りと現場への定着
ゲーム直後に短い振り返り(何を学んだか、職場でどう活かすか)を行います。行動目標を設定し、フォローアップ(簡単なアンケートや実践報告)で定着を促します。
ゲーム導入のポイントと注意点
1. 目的と期待効果を明確にする
研修で何を達成したいかを最初に決めます。例えば「報連相の促進」「チームでの意思決定力向上」など、具体的な行動変容を定義すると、ゲーム選びや振り返りがぶれません。
2. 単なるレクリエーションにしない工夫
楽しさだけで終わらせないため、ゲーム後に必ず振り返り(ふりかえり)を設けます。問いは「何を学んだか」「普段の仕事でどう活かすか」を中心にし、具体的な次の一歩を決めます。
3. 参加しやすさの配慮
初対面や多様な年齢層がいる場合は短時間でルールが簡単なものから始めます。役割を割り当てる、観察役を置くなどで参加のハードルを下げます。
4. オンライン導入時の注意点
ツール操作の簡単な説明を事前に共有し、ブレイクアウトルームやチャットの使い方を伝えます。発言機会を均等にするために順番を決める、小グループでの成果を全体共有する仕組みが有効です。
5. 安全性と心理的配慮
失敗や批判を恐れない雰囲気作りを優先します。強制参加は避け、観察や傍聴の選択肢を用意すると安心感が高まります。
6. 実務への落とし込み
振り返りで出た学びを具体的な行動目標に落とし込み、フォローの仕組み(チェックインや短い報告)を設定します。そうすることで学びが研修場面だけで終わりません。
実際に使える代表的なゲームリスト
嘘つき自己紹介
- 目的・特徴:自己紹介に工夫を加え、観察力と質問力を高めます。1つだけ嘘を混ぜ、他者が当てます。
- 推奨人数:6〜20人
- 所要時間:1人あたり1〜2分、合計15〜30分
- オンライン:可(順番に話す、チャット投票)
伝言ゲーム
- 目的・特徴:情報の受け渡しで起こるズレを体験し、正確な伝達の重要性を学びます。
- 推奨人数:6人以上
- 所要時間:1ラウンド5〜10分
- オンライン:可(音声またはチャットで実施)
共通点探し
- 目的・特徴:短時間で親近感を作るワーク。制限時間内に多くの共通点を見つけます。
- 推奨人数:3〜8人(グループ分け推奨)
- 所要時間:1ラウンド5〜10分
- オンライン:可(ブレイクアウト使用可)
ジェスチャーゲーム
- 目的・特徴:非言語コミュニケーションを鍛え、表現力と観察力を高めます。
- 推奨人数:4〜20人
- 所要時間:1人1〜2分、合計10〜20分
- オンライン:可(カメラ必須)
The 商社
- 目的・特徴:交渉・役割分担・戦略立案を体験するロールプレイ。架空の商品や条件で商談します。
- 推奨人数:8〜30人(複数チーム)
- 所要時間:30〜60分
- オンライン:可(資料共有・ブレイクアウト推奨)
ピンポン玉リレー
- 目的・特徴:協力と手順の工夫を促す体験型ゲーム。物理的な連携が鍵です。
- 推奨人数:6〜30人(チーム分け)
- 所要時間:1ラウンド10〜20分
- オンライン:難しいが、代替ルールで実施可(紙渡し等)
バスは待ってくれない
- 目的・特徴:優先順位や意思決定を議論で可視化。価値観共有に向きます。
- 推奨人数:5〜15人
- 所要時間:20〜30分
- オンライン:可(討論・投票機能利用)
ワード連想リレー
- 目的・特徴:発想力とスピード、連携を鍛える短時間ゲーム。連想のつながりを楽しみます。
- 推奨人数:4〜20人
- 所要時間:1ラウンド5〜10分
- オンライン:可(順番制チャット・音声)
各ゲームは目的に合わせて時間や人数を調整してください。準備物やルール説明を明確にすると効果が高まります。
まとめ:ゲーム型コミュニケーション研修の可能性
序文
ゲーム型研修は楽しさだけで終わりません。体験を通じて実践的なスキルを身につけ、対話を促し、チームの信頼を高める力があります。企業の研修でも個人の成長でも有効に働きます。
主な効果
- コミュニケーションの活性化:役割を通して発言しやすくなります。
- チーム力の向上:協力して課題を解く経験が信頼につながります。
- 学びの定着:体験と振り返りで行動変容が起こりやすくなります。
設計のポイント
- 目的を明確にする(目標行動を定める)。
- 参加者の層に合わせてゲームを選ぶ(難易度や時間配分)。
- 振り返り(ファシリテーション)を必ず組み込む。
オンラインでの活用
ブレイクアウトルームやホワイトボード機能を活用すると効果的です。事前にルールを共有し、進行役を明確にするとスムーズに進みます。
効果測定と改善
観察や簡単なアンケートで定量・定性の両面を測り、次回に反映してください。短期の行動変化と長期の習慣化の両方を見ます。
注意点
心理的安全性を損なわない配慮、過度な競争の抑制、時間管理を意識してください。全員が参加しやすい雰囲気作りが大切です。
結びに:小さな実験から始め、振り返りと改善を繰り返せば、ゲーム型研修は組織の雰囲気改善や業務効率化、個々の成長につながります。ぜひ取り入れてみてください。