要件定義は、プロジェクトの成功・失敗を左右する最重要フェーズです。
PMBOKでいうところの 計画プロセス群 × スコープマネジメントの中心 に位置し、
「何を作るのか」を明確にする段階です。
しかし実務では、この要件定義が曖昧なまま進められ、
後半で手戻り・予算超過・納期遅延などが起こるケースが非常に多いです。
ここでは、初心者でも理解できるように
要件定義の基本・流れ・よくある落とし穴・成功のコツ
を体系的に整理します。
要件定義とは何か?
要件定義とは
「顧客が求める成果物の内容・機能・条件を明文化する作業」
のことです。
言い換えれば、
“何を作るのか”を曖昧さゼロで決める工程。
PMBOKでは主に以下の範囲に該当します:
スコープマネジメント
要求事項の収集
スコープ定義
WBS作成
要件定義は、プロジェクトの“設計図”となるため、
この段階でのブレは後半ですべてコストとなって跳ね返ります。
要件定義の流れ(PMBOKの手順に沿って整理)
ステークホルダーの特定
誰がプロジェクトに影響するのか明確にします。
(←本編 第1章・第6章と連動)
要求事項の収集
ヒアリング・インタビュー・既存資料を使い、
「顧客が必要としていること」を漏れなく拾います。
要件の分類(機能要件 / 非機能要件)
- 機能要件:何ができるか(画面・機能・動作)
- 非機能要件:品質・セキュリティ・性能・拡張性
スコープ定義
計画として成立するレベルまで要件を具体化します。
「何を作る/作らない」を明確にするのがポイント。
WBSの作成
スコープを構造化し、
プロジェクト全体のタスクと粒度を揃えます。
(←本編「WBS不十分の落とし穴」にリンク)
スコープベースラインの確定
変更があれば、変更管理プロセスで判断するための基準になります。
要件定義でよくある落とし穴
これは本編「実務の落とし穴」と強くリンクする部分です。
落とし穴1:顧客の要求とプロジェクトのスコープを混同する
要求=希望であり、
スコープ=実際にやること。
ここを混同すると、後半で必ず炎上します。
落とし穴2:抽象的な言葉で合意してしまう
「使いやすくしたい」
「見た目をキレイに」
「スピード改善したい」
これらはすべてNGワードです。
落とし穴3:非機能要件が抜け落ちる
特に
・レスポンス速度
・セキュリティ
・バックアップ
は忘れられがちで後半に問題化します。
落とし穴4:WBSが粗い
本編でも触れた通り、
粒度が荒いと進捗管理できず、遅延の原因になります。
落とし穴5:変更管理が無い
要件定義の不足は後半に“変更要求”として現れます。
これを無秩序に受けると崩壊します。
要件定義を成功させるコツ(現場で必須)
成功基準(What does success look like?)を最初に定義する
立ち上げフェーズとつながるポイント。
ユースケース・業務フローで共通認識を作る
文章だけでは誤解が生まれるため、図解は必須。
“作らないもの”を明確にする(非スコープ)
プロジェクトの安定度が跳ね上がるポイント。
WBSは細かすぎるくらいでちょうど良い
プロジェクト管理費の記事とも整合。
変更要求は必ず統合変更管理で判断
本編「第5章・第6章」で強調した通り。
5. 要件定義書に含めるべき項目チェックリスト
プロジェクト目的
成功基準
スコープ(含めるもの/含めないもの)
機能要件
非機能要件
業務フロー・画面フロー
利害関係者
制約条件・前提条件
WBS
リスク一覧
変更管理フロー
このチェックリストは、実務の品質とプロジェクト安定度を大幅に向上させます。
要件定義とプロジェクト管理費の関係
内部リンク先(プロジェクト管理費の割合)と直結する部分です。
要件定義が曖昧だと、
手戻り
再作業
仕様追加
調整の増加
などが発生し、管理費が膨らみます。
逆に、要件定義がしっかりしているほど、
PM費は抑えられ、プロジェクト成功率も上がります。
まとめ:要件定義は“成功するプロジェクトの通行証”
要件定義は、プロジェクトの成否を最初に決めるフェーズです。
・スコープを明確にする
・WBSで構造化する
・変更管理の基準を作る
これらを押さえることで、
プロジェクトは計画どおり・予算どおりに進めることができます。
本編(PMBOKプロセス群・知識エリア)と合わせて読むと、
要件定義の位置づけがよりクリアになります。
- → プロジェクト管理費の割合とは?
(管理費が増える/減る理由を理解するならこちら) - → PMBOKプロセス群を完全整理|5つのステップと10の知識エリアを図解で理解
(要件定義がプロセス群のどこにあるか分かります)