プロジェクトを成功させるために必要な「計画 → 実行 → 管理 → 終了」の流れを体系的にまとめたのが PMBOK(Project Management Body of Knowledge)です。
PMBOKは、「何となくプロジェクトを進める」のではなく“再現性のある進め方” を提供してくれるフレームワーク。
特に PMBOK が定義する 5つのプロセス群(プロセスフロー) と10の知識エリア を理解しておくと、プロジェクト全体を迷わず進められるようになります。
この記事では、PMBOK の基本構造を初心者にもわかりやすく体系的に整理し、「実務ではどう使えばいいの?」という視点までしっかり解説します。
この記事で分かること
PMBOK が何をまとめたフレームワークなのか
5つのプロセス群(立ち上げ・計画・実行・監視・終結)の役割
10の知識エリアの意味と実務での活かし方
プロジェクト成功率を高める「PMBOKの活用ステップ」
新任PM・未経験PM がまず理解すべき最重要ポイント
目次
PMBOKとは何か?
プロジェクト管理を体系化した世界標準ガイド
PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)は、
「プロジェクトを成功に導くための共通言語」をまとめた標準フレームワークです。
特徴は以下の通り:
- プロジェクトの共通プロセスを標準化している
- 各プロセスで何を決め、何をアウトプットすべきかが明確
- 業種に関係なく全プロジェクトに適用できる
- 新任PMの「迷い」を減らす体系的な枠組み
PMBOK はプロジェクト管理を 「5つのプロセス群 × 10の知識エリア」 に整理しています。
PMBOKの全体像
5つのプロセス群と10の知識エリア
ここからは PMBOK の中心となる構造を整理します。
5つのプロセス群(Process Groups)
PMBOKでは、プロジェクトの全工程を以下の5つに分類します。
- 立ち上げ(Initiating)
- 計画(Planning)
- 実行(Executing)
- 監視・コントロール(Monitoring & Controlling)
- 終結(Closing)
プロジェクトは「スタート → 計画 → 実行 → 監視 → 終了」の流れで進み、
この5つのプロセス群が全体の骨組みになります。
10の知識エリア(Knowledge Areas)
PMBOK では、プロジェクトを構成する要素を 10 の領域に分類しています。
- 統合管理(Integration)
- スコープ管理(Scope)
- スケジュール管理(Schedule)
- コスト管理(Cost)
- 品質管理(Quality)
- 資源管理(Resource)
- コミュニケーション管理(Communication)
- リスク管理(Risk)
- 調達管理(Procurement)
- ステークホルダー管理(Stakeholder)
プロセス群は「プロジェクトの流れ」知識エリアは「管理すべき内容」を示しています。
プロセス群を順番に解説
実務では何をするのか?
① 立ち上げプロセス
プロジェクトの目的と方向性を決める
立ち上げでは、プロジェクトの存在意義を明確にします。
- プロジェクト憲章の作成
- ステークホルダーの洗い出し
- 目的・ゴール・成功基準の明確化
この段階を曖昧にするとプロジェクト全体が迷走しやすくなるため、最重要フェーズです。
② 計画プロセス
成功確率を最大化する“設計図”をつくる
計画フェーズでは、プロジェクト成功のために必要な全要素を決めていきます。
主な作業:
- スコープ定義(何をする/しないの線引き)
- WBS作成とタスク分解
- スケジュール作成(ガントチャートなど)
- コスト見積もり
- リスク分析と対応計画
- コミュニケーション計画
計画の精度がプロジェクト成功率の80%を決めると言われています。
③ 実行プロセス
計画を現場で実行する
- タスクの実施
- メンバーアサイン
- 調達の実施
- コミュニケーションの円滑化
“段取り8割” の通り、計画が甘いほど実行で問題が起こります。
④ 監視・コントロールプロセス
ズレを早期に検知して軌道修正する
- スケジュール遅延のチェック
- コスト超過の管理
- リスク発生の監視
- 進捗報告の確認
- 変更が必要な場合の調整
ここが弱いと「気づいたら遅れていた」「末期でトラブル」が起きやすくなります。
⑤ 終結プロセス
プロジェクトに正式な終わりを与える
- 成果物の受け入れ・検収
- 契約終了
- 振り返り(Lessons Learned)
- 文書化とナレッジ化
終結が曖昧だと「何が終わったのか?」が不明確になり、責任範囲があいまいになります。
実務で特に重要な3つの知識エリア
PM初心者がまず押さえるべき部分
① スコープ管理
“やること” と “やらないこと” の線引きをする
トラブルの多くがスコープ不明瞭により発生。
要件定義
スコープ記述書
WBS作成
この3つがセットです。
※スコープの固め方を詳しくまとめた記事はこちら
▶ 要件定義の基本と進め方|プロジェクトを失敗させない準備のすべて
(補足:プロジェクト計画の前提となる「作るものの定義」を明確化できます)
② スケジュール管理
遅延しないための管理を仕組み化する
PMが最も苦しむテーマがこれ。
- クリティカルパスの特定
- リソースの割り当て
- 遅延の早期検知
※CPMの理解があるとさらに深く理解できます
▶ クリティカルパス法(CPM)とは?仕組み・計算法・実務での使い方をわかりやすく解説
(補足:CCPMとの違いも理解しやすくなります)
③ リスク管理
起きる前に備える
- 発生確率と影響度の評価
- 回避・低減・転嫁・受容の方針
- リスク対応計画の策定
計画がどんなに完璧でも、リスク管理が甘いと簡単に破綻します。
PMBOKの流れを実務で活かす方法
現場ですぐできる5ステップ
ステップ1:WBSでタスクを分解
プロジェクト全体をツリー構造にして見える化する
▶ WBS(作業分解)の作り方を完全解説|誰でも抜け漏れなくタスク化できる方法
(補足:PMBOKの計画プロセスの基礎として重要)
ステップ2:スケジュールとリソースを設計
工数・順序・リソースを整理して現実的な計画を作る
ステップ3:リスクと課題を可視化
管理表で一元管理すると精度が上がる
ステップ4:実行状況を定期レビュー
「遅れ」が起きた瞬間に検知できるようにする
ステップ5:終結でナレッジ化
組織全体のプロジェクト力を底上げする
まとめ
PMBOKはプロジェクト管理の“地図”
PMBOK はプロジェクト全体の流れを体系化し、
初心者でも「迷わない進め方」を教えてくれるフレームワークです。
- 5つのプロセス群で“流れ”を理解する
- 10の知識エリアで“管理すべき内容”を理解する
- 実務では WBS・スケジュール・リスクが特に重要
プロジェクト管理の基礎として、PMBOKはどんな業界でも使える強力な武器になります。