目次
はじめに
プロジェクトマネジメントは
「限られた時間や予算の中で、チームと協力して成果物をつくり上げる」
とてもやりがいのある仕事です。
ただ、始めたばかりの頃は、どうしてもうまくいかないことや、思いがけない失敗を経験するものです。でも、その失敗は決して無駄ではありません。なぜ起きたのかを振り返り、次に活かせる形に整えていくことで、着実に成長していくことができます。
この記事では、プロジェクトマネジメント初心者がつまずきやすいポイントをやさしく整理し
「よくある失敗」と「どのように対策すれば改善できるのか」
を具体的にまとめました。
失敗を恐れず、一歩ずつ経験を積んでいけるような内容になっていますので、ぜひ気軽に読み進めてみてください。
この記事でわかること
- プロジェクトマネジメント初心者が陥りやすい典型的な失敗事例
- 計画不足・リソース不足・コミュニケーション不足の原因と影響
- 各失敗を防ぐための具体的な実践ステップと改善策
- リスク管理・変更管理の重要性と正しい進め方
- 成功するプロジェクトマネージャーに共通する行動指針と心構え
計画不足によるスケジュールの遅延

よくある失敗のお話(ケース紹介)
ある中小企業で、新しいウェブサイトを作るプロジェクトがスタートしました。
プロジェクトマネージャー(PM)は、早くスケジュールを作らなければと焦ってしまい、プロジェクト全体の流れやタスクの細かな内容をしっかり確認しないまま、大まかなスケジュールだけを作成してしまいました。
最初は順調に見えたものの、実際に作業が始まると問題が次々と発生していきます。
スケジュールがざっくりしすぎていた問題
- デザインや開発に必要な専門メンバーの人数が足りない
- 使用するツールや技術的サポートが十分ではない
- タスクにかかる時間が想定より長くなる
こうした「リソースの見積もり不足」が重なって、早い段階で作業に遅れが出始めました。
しかし、詳細な計画がなかったため、どこで遅れているのかもすぐには把握できず、気づいた時にはスケジュール全体に影響が広がってしまったのです。
遅れの連鎖が起きてしまう
タスクが遅れると、それを補うための時間が必要になります。
しかし、当初のスケジュールには余裕がなかったため遅れはどんどん蓄積し、最後には「予定の納期にはどうしても間に合わない」という状況に。
結果として、クライアントにも納期変更をお願いせざるを得ず、プロジェクト全体が苦しい状況になってしまいました。
このケースからわかるのは
スケジュール作成の段階での“ちょっとした見落とし”が後の大きな遅れにつながる
ということです。
スムーズに進めるためのやさしい対策
タスクを小さく分けてみる
まずは、プロジェクトの作業を小さなタスクに分けて、ひとつずつ必要な時間を見積もります。
例えばウェブサイト制作なら、
- デザイン(レイアウト、色、モックアップ作成)
- コーディング(HTML・CSS・JavaScript)
- テスト(動作確認・修正)
- コンテンツ作成(文章・画像の準備)
このように細かく分けることで、実際に必要な時間や優先順位がわかりやすくなります。
アクション
・プロジェクト開始時にタスクを細かく洗い出す
・それぞれのタスクに必要な時間をざっくりでもよいので記録する
必要なリソースを早めに確保する
タスクごとに、どんなスキルを持った人が何人必要なのか、どんなツールが必要なのかを確認します。
例
デザインに2人必要 → 他の作業に流用せず確保する
開発ツールが有料 → 予算内で確実に準備しておく
リソース不足は遅延の大きな原因になるため、「あとで考える」ではなく、最初にしっかり押さえることが大切です。
アクション
・タスクごとに必要な人・予算・ツールを事前に明確にする
・確保したリソースを途中で流用しない
少しだけ余裕を持たせる(バッファ)
プロジェクトには予期せぬ出来事がつきものです。
スケジュールに10%程度の余裕を持たせておくと、急な変更にも対応しやすくなります。
例
2ヶ月の計画 → 実質1.8ヶ月で終える想定で組む
アクション
・全体のスケジュールに10%前後の余裕をつける
・想定されるリスクを簡単にメモし、備えておく
定期的に進捗をチェックする
計画を立てた後も、プロジェクトが進む中で「いまどこにいるか?」を確認することが大切です。
- 毎週のミーティング
- タスク管理ツールでの共有
- 遅れが見つかったらすぐに調整
こうした習慣が、スケジュール崩壊を防ぐ大きな助けになります。
アクション
・定期的に状況を見直す時間を設ける
・遅れを見つけたら早めに改善策を検討する
計画を丁寧に立てることが成功への近道
計画不足は、プロジェクト遅延のもっとも多い原因です。
だからこそ、最初の段階で丁寧に計画を立てるだけで、スムーズに進む確率はグンと高まります。
- タスクを細かく分ける
- リソースを早めに確保する
- バッファを持つ
- 進捗をこまめに確認する
こうした基本をおさえておくことで、予定通りに進みやすくなり、クライアントとの信頼関係も大きく向上します。
リソース不足が引き起こすトラブル

リソースが足りなかった、とあるプロジェクトのお話
別の企業では、新製品の開発プロジェクトに取り組んでいた際、
「人・お金・設備」といったリソースの準備が十分ではなかったことから、大きな問題が起きてしまいました。
プロジェクト開始直後は順調に見えたものの、いざ作業を進めようとすると、
- 必要なツールが揃っていない
- 予算が想定より不足している
- 開発に必要な設備が確保できていない
といった状況が次々に明らかになりました。
リソース不足に気づいたのはプロジェクトが動き始めてからで、その時にはすでに開発チームの作業が滞り始めていたのです。
不十分なリソース準備が招いた影響
この企業では、初期の予算設定が曖昧だったため、必要な設備やツールを用意するための資金が足りず、開発チームは十分な環境を整えることができませんでした。
その結果
- 必要なソフトウェアが購入できない
- 開発機材が不足して作業ができない
- 生産性が大きく低下する
という状況に陥り、スケジュールに大きな遅れが出てしまいました。
作業が進まないまま、納期だけが迫っていく
リソースが揃わない中で作業を進めようとしても、効率は上がりません。
遅れは少しずつ積み重なり、最終的には「予定していた機能がすべて実装できない」という事態に。
当然ながら、クライアントへの納期も守れず、信頼関係にも悪影響を及ぼす結果となりました。
この事例からわかるのは
プロジェクト開始前の“リソース計画”がいかに大切か
ということです。
リソース不足を防ぐためのやさしい対策
必要なリソースをできるだけ正確に見積もる
まず大切なのは、プロジェクト全体を見渡し、
「どのタイミングで、何がどれだけ必要か」を丁寧に予測することです。
たとえば
- 使う技術やツールを事前に決める
- 必要なライセンスやハードウェアを早めに確保する
- タスクごとに必要な人員や時間を見積もる
こうした準備が整っているだけで、リソース不足の多くは防ぐことができます。
アクションプラン
・タスクごとに必要な人・時間・予算を先に洗い出す
・ツールや設備は早めに準備し、抜け漏れをなくす
足りない時は柔軟に調整する
プロジェクトが進む中で「どうしてもリソースが足りない」という場面は起こり得ます。そんな時は、
- ほかのプロジェクトで余っているリソースを一時的に借りる
- 外部の専門家やベンダーに依頼する
- 一部のタスクを外注する
といった選択肢を検討することが大切です。
“足りないまま頑張る”のではなく、足りないと分かった時点で早めに手を打つことが重要です。
アクションプラン
・リソース不足に気づいたらすぐに追加調整を検討する
・外部リソースの活用をためらわず選択肢に入れる
重要なタスクから優先してリソースを配分する
リソースは無限ではありません。
だからこそ、限られたリソースを「どこに優先して使うか」がとても重要です。
例えばウェブサイト開発なら、
- もっとも重要なUIや主要機能
- 次に重要なコンテンツやテスト工程
というように、重要度の高い順にリソースを配分します。
これにより、プロジェクト全体として必要な品質を保ちつつ、最も効果的にリソースを活用できます。
アクションプラン
・プロジェクトの“最重要タスク”を明確にする
・重要度と緊急度に応じてリソース量を調整する
リソース計画はプロジェクト成功の土台づくり
リソース不足は、プロジェクトの停滞や納期遅延を招く大きなリスクです。
だからこそ、
- 事前に丁寧に見積もる
- 足りない時は柔軟に調整する
- 本当に大事な部分に優先して配分する
という3つの基本を押さえておくことが、プロジェクト成功のカギになります。
プロジェクトを安心して進めるためにも
「始まる前の準備」こそが最も大切
という意識を持っておくと、失敗をぐっと減らすことができます。
ステークホルダーとのコミュニケーション不足が招くトラブル
要求変更が重なってしまったプロジェクトのケース
あるプロジェクトでは、進行の途中でクライアントからの「やっぱりここを少し変えたい」「この機能も追加したい」という要求変更が何度も発生しました。
こうした変更自体はどのプロジェクトでもよくあることですが、その“受け止め方”と“伝え方”を間違えると、大きなトラブルにつながってしまいます。
このケースでは、プロジェクトマネージャー(PM)がクライアントと十分に対話をせず、
「その変更がプロジェクト全体にどんな影響を与えるのか」を丁寧に確認しないまま進めてしまいました。
変更内容をちゃんと整理できていなかった
クライアントからの変更依頼が入るたびに
- どんな追加作業が必要になるのか
- どれくらい工数が増えるのか
- スケジュールや予算にどの程度影響するのか
といった点をきちんと評価しないまま、「なんとか対応します」と進めてしまった結果、少しずつ負担が積み重なっていきました。
特に、クライアント側の要望がふんわりしていたり、後から修正が入ったりする場合こそ、
PMがこまめに確認し、影響範囲を言語化して共有することがとても大切です。
しかしこのプロジェクトでは、その一手間が抜け落ちていました。
納期の遅れと予算オーバー
要求変更に対して「影響の見積もり」と「合意形成」をしないまま対応してしまった結果、
- 作業量は増えているのにスケジュールはそのまま
- 必要なリソースも増えているのに予算は据え置き
という、いわば「無理を前提にした進め方」になってしまいました。
その結果
- スケジュールは徐々に遅れはじめ
- 追加対応がかさみ、最終的には予算もオーバー
という状況に陥ります。
本来であれば
「この変更を受けると、◯日納期が延び、◯◯万円の追加コストがかかります」
と早い段階で伝え、クライアントと一緒に調整していくことができたはずです。
信頼関係が少しずつ失われていく
もうひとつ大きな問題だったのが、「状況共有の遅さ」でした。
- 進行が厳しくなっていること
- 予算や工数が想定より膨らんでいること
- リスクが見え始めていること
これらを、PMがクライアントに十分伝えないまま進めてしまったため、
クライアント側は「今、本当に大丈夫なのか?」という不安を強く感じるようになりました。
結果として
- 納期は遅れる
- 予算はオーバーする
- そのうえ、途中経過の説明も少ない
という、クライアントから見ると「任せて大丈夫なのか?」と思われてしまう状況になり、最終的には信頼関係の大きな損失につながってしまいました。
この事例から分かるのは
要求変更そのものが悪いのではなく、「変更をどう説明し、どう合意していくか」がとても重要
ということです。
ステークホルダーとのコミュニケーション不足を防ぐコツ
定期的な打ち合わせの「枠」を最初に決めておく
コミュニケーション不足を防ぐための第一歩は、
「話す時間をあらかじめ決めておくこと」です。
プロジェクト開始時に
- 週1回の定例ミーティング
- 月1回のマイルストーンレビュー
など、クライアントや社内の関係者と話す機会をスケジュールとして組み込んでおきます。
この「定例の場」があることで、
- 進捗報告
- 懸念点の共有
- 要求変更の相談
を自然な流れで行うことができ、問題が大きくなる前にキャッチしやすくなります。
アクションプラン
・プロジェクト開始時に、定例ミーティングの頻度と参加メンバーを決めておく
・議題を簡単に決めておき、「進捗・課題・変更点」は毎回必ず触れる
期待値をすり合わせる(できること・できないことをきちんと伝える)
クライアントや関係者とのやり取りでは
「何がどこまでできるのか」
を正しく伝えることがとても大切です。
- 進捗が遅れているときは、その理由と今後の見通しを正直に伝える
- 変更依頼があったときは、「工数・期間・コスト」への影響をセットで説明する
- 難しい要望に対しては、ただ断るのではなく、代替案を提案する
このように、期待値を“いい意味でリアルに整える”ことで、後から大きな不満につながるのを防げます。
アクションプラン
・変更依頼を受けたら、「影響まとめ(工数・納期・費用)」を簡単なメモで共有する
・良いことだけでなく、リスクや懸念点もあわせて伝える
問題やリスクは「早く・小さいうちに」共有する
トラブルやリスクは、「隠す」のではなく「早く出す」ことが重要です。
- 予算がオーバーしそう
- 納期が厳しくなってきた
- 要求の範囲が当初より膨らんできている
こうした兆候に気づいたら、完璧な資料がなくても、
まずは一言共有しておくだけでも状況は大きく変わります。
「実は少し厳しくなりそうなので、次回のミーティングで相談させてください」
といった一言があるだけで、クライアントの受け止め方はかなり柔らかくなります。
アクションプラン
・問題が見えたら、“次の定例まで待たずに”早めに一報を入れる
・困りごとは一人で抱え込まず、チームやクライアントと一緒に解決策を考える前提にする
「よく話すこと」がプロジェクト成功の近道
ステークホルダーとのコミュニケーション不足は、
- 納期遅延
- 予算オーバー
- 信頼関係の悪化
といった、プロジェクトにとって大きなダメージにつながります。
だからこそ、
- 定期的なミーティングで状況を共有する
- 期待値をこまめにすり合わせる
- 問題やリスクを早めにオープンにする
という、シンプルだけれどとても大事な「対話の習慣」が、プロジェクト成功のカギになります。
「何かあったら話す」ではなく、
「何もなくても話す」くらいのスタンスでコミュニケーションを続けていくことで、
ステークホルダーとの信頼関係は自然と強くなっていきます。
リスク管理の甘さが招くトラブル

想定外トラブルに振り回されたプロジェクトの例
あるシステム開発プロジェクトで、プロジェクトマネージャー(PM)がリスク管理を十分に行わなかったために、予期しない問題への対応が遅れ、大きな納期遅延につながってしまった事例があります。
このプロジェクトでは、進行中に
- システムのバグ
- サーバーダウン
といった技術的なトラブルが何度も発生しました。ところが、こうした問題が起きたときにどう対応するかという事前の準備がほとんどなかったため、チームはそのたびに「まず何から手をつけるべきか」を考えるところから始めなければならず、作業が止まってしまいました。
本来であれば、システム開発では一定の不具合や障害が起こり得ることは想定できます。にもかかわらず、事前のリスク洗い出しや、対応フロー・バックアップ体制の準備を後回しにしていたことが、後々の大きな遅れにつながってしまったのです。
リスクを「想像していなかった」ことが遅れの原因に
このプロジェクトでは、特に次のような点が問題となりました。
- プロジェクト開始前に、想定されるリスクをリストアップしていなかった
- システム障害が起きたときの対応手順や連絡フローが決まっていなかった
- バックアップ環境や予備のサーバーなど、代替手段が用意されていなかった
その結果、
- 障害が起きるたびに「どうする?」から議論がスタートする
- 対応に時間がかかり、他の作業もストップする
- 問題が解決しても、また別のトラブルが起きて振り出しに戻る
という悪循環が続き、最終的には納期に間に合わず、クライアントに延期をお願いせざるを得ない状況になりました。
「トラブルが起きたこと」そのものよりも、
“起きたときの準備がなかったこと” が遅れの一番の原因だったと言えます。
トラブルに強いプロジェクトにするためのリスク対策
まずはリスクを書き出してみる(リスクの特定と整理)
リスク管理の第一歩は、プロジェクト開始前に
「どんな問題が起こりそうか?」を一度立ち止まって考えてみることです。
たとえばシステム開発であれば、
- システム障害・サーバーダウン
- 重要メンバーの欠員(退職・休職・長期不在)
- 予算オーバー・見積もりの甘さ
- 納期遅れにつながる仕様変更
など、想定されるリスクをリストにしていきます。
そのうえで
- そのリスクが起こる「可能性は高いか・低いか」
- 起きてしまったときの「影響は大きいか・小さいか」
をざっくり評価して、優先的に対策すべきものを見極めます。
アクションプラン
プロジェクト開始前に、チームで「起こりそうなトラブル出し」の時間をとる
起こる確率と影響をざっくり分類し、「これはさすがに対策しておこう」というものを決める
起きたときの「次の一手」をあらかじめ決めておく
次に大事なのが、
「もし起きたら、どう動くか?」を事前に決めておくことです。
たとえば
- システムダウン → すぐに切り替えられるバックアップサーバーを用意しておく
- キーパーソンが不在 → 代わりに対応できるメンバーを事前にアサインしておく
- 予算オーバーのリスク → 予備費(バッファ予算)をあらかじめ設定しておく
といった具合に、「起こりそうなリスクごとに最低限の対策」を用意しておきます。
こうしておくことで、いざ問題が起きても、ゼロから考えるのではなく “準備しておいたプランを実行するだけ” にできます。
アクションプラン
- 優先度の高いリスクそれぞれに「対応パターン」を1つずつ用意しておく
- バックアップ環境や予備の人員など、“すぐ動かせる備え”を物理的に用意しておく
進行中も「リスクの見張り役」を続ける(監視と見直し)
リスク管理は、計画を作って終わりではありません。
プロジェクトが進むにつれて、状況やリスクの中身も少しずつ変わっていきます。
そのため、
- 定期的な進捗確認の場で「リスクの状況」もセットで確認する
- 新しく見えてきたリスクは、その場でリストに追加する
- 実際に起こったトラブルは、「次回以降の教訓」として対策を更新する
といった“見張りとアップデート”を続けていくことが大切です。
問題が起きたときに、「これは想定外だった」で終わらせず、
「次からはどう備えるか」までセットで振り返ることで、同じ失敗を繰り返しにくくなります。
アクションプラン
週次・定例ミーティングで「リスク・課題」の確認項目を1つだけでも入れておく
起きてしまったトラブルは、原因と対策を簡単にメモし、次のプロジェクトにも流用する
リスク管理は「安心して進めるための保険」
リスク管理というと、少し堅苦しく感じるかもしれませんが、実際のところは
「もしもの時のために、少しだけ先回りしておくこと」に過ぎません。
- リスクをあらかじめ想像しておく
- 起きたときの対応を軽く決めておく
- 進行中も、ときどき見直す
この3つを押さえておくだけでも、
「予期しないトラブルでプロジェクトが止まってしまう」リスクはぐっと小さくなります。
リスク管理は、チームが落ち着いて仕事に集中できるようにするための“安心の土台”です。
少しの準備と習慣づけで、プロジェクト全体の安定感は大きく変わっていきます。
変更管理の不備
口頭ベースの変更が招いた混乱(失敗事例)
プロジェクトの途中で、クライアントから「この機能を追加したい」「ここを少し変えたい」といった要望がいくつか出てきました。
こうした要求変更自体はよくあることですが、このプロジェクトでは、プロジェクトマネージャー(PM)が変更管理をきちんと行わなかったことで、少しずつ歯車が噛み合わなくなっていきました。
変更は主に「口頭」で伝えられ、
- 「では追加で対応しますね」と、その場で受けてしまう
- 変更内容をメモやチケットに残さない
- 影響(工数・予算・納期)を評価しないまま進めてしまう
といった対応が続きました。
その結果、「どのタイミングで、どの内容が、どのように変わったのか」が後から追えなくなり、
何が決定事項で、何が単なる相談レベルだったのかも曖昧になってしまいました。
変更が文書に残らないと起きること
変更が正式に記録されていないことで、次のような問題が発生しました。
- 開発チームは「どの仕様が最新なのか」が分からない
- メンバーごとに「聞いている内容」が微妙に違う
- どの作業を優先すべきか判断できず、手戻りが増える
PM自身も、クライアントからの要望を正しく整理できていなかったため、
- タスクの優先順位づけができない
- 「本来のゴール」がぼやけてくる
- チームに一貫した指示が出せない
という状況に陥り、プロジェクト全体の方向性がだんだん不明確になっていきました。
クライアント側でも、
- 「あの追加はお願いしたつもりだったのに、反映されていない」
- 「どこまでやってもらえる約束だったのか分からない」
といった不満が生まれ、認識のズレが大きくなっていきました。
じわじわ効いてくる予算とスケジュールへのダメージ
変更のたびに「どれくらいの工数が増えるのか」「他のタスクにどんな影響が出るのか」を評価していなかったため、
- 気づいたら想定より多くの作業を抱えていた
- いつの間にかスケジュールに無理が出ていた
- 追加対応により、実質的に赤字に近い状態になっていた
という状況になりました。
本来であれば、
- 変更の都度、必要な時間やコストを試算する
- 納期や予算への影響をクライアントと相談する
- 必要に応じて、スコープ・予算・納期のいずれかを調整する
といったステップを踏むべきところを、“なんとなく対応し続けてしまった”ことが、結果として納期遅延と予算オーバーにつながりました。
最終的には、
- スケジュールどおりに完了できず、納期延期をお願いすることになった
- 追加費用も発生し、クライアントにとって納得しづらい形になった
ことで、信頼関係にも大きなダメージを与えてしまいました。
この失敗から見える「変更管理」の大切さ
この事例から見えてくるポイントは、とてもシンプルです。
- 変更は「必ず記録する」こと
- 変更の「影響をきちんと評価する」こと
- 合意した内容を「関係者全員で共有する」こと
これらを怠ると、
- プロジェクトのゴールがぼやける
- チーム内の認識がバラバラになる
- 予算とスケジュールのコントロールが効かなくなる
という状況に陥りやすくなります。
変更要求は「書く・評価する・決めたプロセスで進める」
変更管理をうまく回すためには、次のような基本を押さえておくことが大切です。
変更要求は必ず文書に残す
- 変更内容
- 変更理由
- どの部分に影響するか
をできるだけ具体的に書き起こし、チケットや変更要求書として残します。
「言った・言わない」を防ぎ、後から振り返ることもできるようになります。
アクションプラン
- 変更依頼は、メール・チケット・フォームなど“形が残る方法”で受ける
- 口頭での依頼は、その場でメモにし、クライアントにも簡単に文章で確認する
2. 影響(スコープ・工数・予算・納期)をセットで評価する
変更を受ける前に、
- どれくらいの追加工数が必要か
- 他タスクにしわ寄せが出ないか
- 予算や納期をどう調整する必要があるか
を一度立ち止まって考えます。
アクションプラン
変更ごとに「影響メモ(工数・費用・スケジュール)」を短くまとめる
影響が大きい場合は、クライアントと相談したうえで正式に合意を取ってから着手する
3. 変更管理のルールを最初に決めておく
プロジェクト開始時に、
- 変更依頼はどの窓口から受けるのか
- 誰が承認するのか
- 承認後、どのようにタスクへ反映するのか
といった「変更管理フロー」をあらかじめ決めておくと、変更が発生しても慌てずに対応できます。
アクションプラン
「変更が発生したときの手順」を簡単なフロー図やチェックリストにしてチームと共有する
チーム全員が同じルールで動けるよう、キックオフ時に説明しておく
変更はプロジェクトに付きものですが、
「なんとなく受けて、そのまま進める」のではなく、
「書いて・評価して・合意してから進める」というひと手間をかけることで、
プロジェクトの方向性と信頼関係を守りながら、安心して進められるようになります。
まとめ

プロジェクトマネジメントにおける失敗は誰にでもありますが、それを学びとして次に生かすことが重要です。今回紹介した失敗事例とその対策を実践することで、プロジェクトの管理能力が向上し、次回のプロジェクトではよりスムーズに進行できるようになります。計画、リソース、コミュニケーション、リスク管理、変更管理を徹底することで、プロジェクト成功の確率を高めていきましょう。