リーダーシップとマネジメントスキル

リスクマネジメント, ISOで詳しく解説するISO31000規格の全貌

はじめに

概要

本資料はISO規格に基づくリスクマネジメント、特にISO 31000を分かりやすく解説します。ISO 31000は組織が多様なリスクを体系的に扱うための指針です。日常業務で直面する製品の不具合、自然災害、法令変更などを例に、考え方や構成要素を説明します。

本資料の目的

  • ISO 31000の基本を理解する。
  • 「リスク」の定義と考え方を把握する。
  • 規格の原則・枠組み・プロセスを実務に活かす糸口を得る。

誰に向いているか

  • リスク対策を始めたい管理者や担当者
  • ISOの導入を検討する経営者
  • 学び直しをしたい学生や専門職

読み方のポイント

各章は実務で使えるよう具体例を交えて進めます。専門用語は最小限にし、すぐ実践できる視点を重視します。まずは全体像をつかみ、興味のある章を深く読んでください。

ISOリスクマネジメントとは何か

リスクマネジメントの意義

ISOリスクマネジメントとは、組織が直面する不確実性を体系的に扱う考え方と仕組みです。目的は被害を減らし、機会を活かすことです。共通の枠組みを使うと、部署や拠点でばらつきのない対応ができます。

対象となる主なリスク(例)

  • 自然災害:洪水や地震で工場や物流が止まるリスク
  • 情報セキュリティ:サイバー攻撃で顧客情報が流出するリスク
  • 健康・感染症:従業員の大量欠勤で事業が停滞するリスク
  • 法規制・コンプライアンス:法改正で事業モデルが影響を受けるリスク
  • 市場・信用:売上減少や取引先の信用不安によるリスク

考え方の特徴

  • 一貫性:同じ基準で評価・対応します
  • 組織横断性:経営層から現場まで関係者が参加します
  • 継続性:状況の変化に合わせて見直します
  • 意思決定支援:リスク情報を経営判断に活かします

実務の簡単な手順(例)

  1. 文脈を定める:対象範囲や目的を明確にする
  2. リスクの特定:どんな事象が起こり得るか洗い出す(例:洪水で出荷停止)
  3. 評価:発生頻度や影響度を見て優先順位を付ける
  4. 対応策の実行:予防や軽減、移転、受容などを選ぶ
  5. 監視と見直し:効果を確認し必要に応じ改善する

導入時のポイント

  • 経営のコミットメントを得る
  • ステークホルダーと情報を共有する
  • 小さく始めて徐々に範囲を広げる
  • ドキュメント化して教育を行う

これらを実践すると、突発的な損失を抑え、事業の安定性と回復力を高められます。

ISO 31000とは:リスクマネジメントの国際標準規格

概要

ISO 31000はリスクマネジメントに関する一般的な指針を示した国際標準規格です。初版は2009年、改訂版は2018年に発行され、業種や規模に関係なくあらゆる組織を対象としています。認証を取るための規格ではなく、考え方や原則、プロセスを示すガイドラインです。

目的と役割

ISO 31000は組織がリスクを効果的に管理し、事業の持続可能性や価値の保護・創出を支援します。リスクを単に排除するのではなく、機会を捉えつつ損失を減らすというバランスを重視します。

採用される理由(利点)

  • 組織全体でリスク管理の基準がそろい、レベルが向上します。
  • 国際的に通用する考え方なので、対外的な信頼性や説明責任が強まります。
  • 経営判断にリスクの視点が入ることで、目標達成の助けになります。

実務での使い方(簡単な例)

  • 病院では患者安全のリスクと資源配分の機会を整理します。
  • 中小企業では生産ラインの停止リスクを特定し、優先順位をつけて対策します。
  • ITプロジェクトでは要件変化のリスクを早期に検出し、対処策を計画します。

導入の進め方(ポイント)

  1. 現状のリスク管理を評価し、ギャップを把握します。
  2. 組織の方針やガバナンスに組み込みます。
  3. リスクの特定、評価、対応、監視・見直しを継続的に行います。
  4. 関係者との対話(コミュニケーション)を大切にします。

ISO 31000は柔軟で拡張性があります。各組織が自分たちの状況に合わせて取り入れることで、実務に役立てられます。

ISO 31000における「リスク」の定義と考え方

リスクの定義

ISO 31000はリスクを「目的に対する不確かさの影響」と定義します。ここでの重要点は、リスクは必ずしも悪いことだけを指さない点です。不確かさが生じた結果がマイナスであれば損失、プラスであれば機会(チャンス)として捉えます。

ポジティブなリスク(機会)の例

新商品の市場反応が予想以上に良ければ売上増となります。これもリスクとして扱い、取り組みを早めることで利益を拡大できます。

目的を起点にする理由

リスクは「何に対する」不確かさかを明確にしないと評価できません。プロジェクトや組織の目的を最初に定めることで、どの不確かさが重要か判断できます。

実務上の考え方

リスク評価は発生確率と影響の両方を見ます。影響は財務だけでなく評判や安全も含めます。対策は回避・低減・共有・受容・活用(機会の追求)などを選びます。目標に照らして優先順位をつけ、定期的に見直してください。

ISO 31000の構成:原則・枠組み・プロセス

はじめに

ISO 31000は、効果的なリスクマネジメントを実現するために「原則」「枠組み」「プロセス」の三つを中心に据えています。ここではそれぞれを分かりやすく説明します。

原則(Principles)

原則はリスクマネジメントの基本的考え方です。主な例を挙げると:
- 統合:リスク対応を日常業務や意思決定に組み込みます(例:新規事業の計画段階でリスク評価を行う)。
- 体系的・包括的:全体を漏れなく扱うことで、見落としを減らします。
- 組織への適合:組織の規模や文化に合わせて方法を変えます(小規模企業なら簡素化)。
- ステークホルダー参画:従業員や顧客の意見を反映します。
これらは有効な運用の指針になります。

枠組み(Framework)

枠組みはリスクマネジメントを支える仕組みです。責任や役割、方針、資源配分、情報の流れを定めます。例えば、リスクを担当する部署を決め、定期的に報告する仕組みを作ることで継続的に運用できます。

プロセス(Process)

プロセスは具体的な手順です。通常、次の流れで進めます:
1. 目的と範囲の設定
2. リスクの特定(何が起こり得るか洗い出す)
3. リスク分析(発生確率と影響を評価)
4. リスク評価と優先順位付け
5. 対応策の選定と実施(回避・軽減・移転・受容)
6. 監視・見直し(状況変化に応じて調整)
具体例:製品開発では、設計段階で故障リスクを特定し、対策を設計に反映します。

相互関係と運用のコツ

原則は考え方、枠組みは仕組み、プロセスは実行手順です。三つを揃えて初めて効果が出ます。まず小さく始めて、慣れたら範囲を広げると定着しやすいです。

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