はじめに
この資料は、コーチング式タイプ分け診断について分かりやすくまとめた入門編です。
本資料の目的
コーチング現場でのコミュニケーションをより効果的にすることを目的としています。具体的には、タイプごとの特徴を理解し、相手に合わせた接し方を身につけることで、信頼関係の構築や目標達成を助けます。例えば、会議での進行や1対1の面談での対応にすぐ役立つ実践的な視点を重視しています。
対象読者
・コーチ、マネージャー、人事担当者
・チームリーダーやプロジェクト責任者
・自己理解や対人スキルを高めたい方
本資料の構成と読み方
第2章で診断の仕組みを説明し、第3章で4つのタイプを示します。第4〜7章で各タイプの特徴と有効なコーチング手法を詳述します。第8章では日常の会話や観察からタイプを見極める具体的な方法を紹介します。章ごとに事例を交えているので、実際の場面を想定しながら読み進めてください。
大切にしてほしいこと
タイプ分けは「相手を分類する道具」であり、決めつけのためのものではありません。相手の変化や状況に応じて柔軟に使うことで、より良いコミュニケーションが生まれます。
コーチング式タイプ分け診断とは
概要
コーチング式タイプ分け診断は、株式会社コーチ・エィが開発したコミュニケーション傾向を診るツールです。臨床心理学や組織行動学の知見を取り入れ、日常のやり取りで現れやすい行動パターンに着目します。単なる性格分類ではなく「対人場面でどう振る舞うか」を明らかにします。
2軸の考え方
診断は「自己主張（主導性）」と「感情表現（感受性）」の2つの軸で構成します。自己主張が強いか控えめか、感情を率直に表すか抑えるかの組み合わせで4つのタイプに分類します。図や具体例を使うと、自分や他者の傾向が分かりやすくなります。
目的と特徴
主な目的はコミュニケーション改善と相互理解の促進です。チームビルディングやコーチングの場面で、やり取りのズレを減らすために使います。簡潔な設問で傾向を把握でき、実務に結び付けやすい点が特徴です。
活用例と注意点
面談や会議の役割分担に活用できますが、診断結果がすべてを決めるわけではありません。状況や成長で変わる部分があるため、結果を固定化せず参考に使うことをおすすめします。
4つのタイプの分類
診断はコントローラー、プロモーター、サポーター、アナライザーの4タイプに分かれます。それぞれモチベーションの源泉や意思決定の仕方が異なりますので、日常の行動や仕事の進め方に合わせた接し方が大切です。
コントローラー
モチベーション：目標達成と効率。結果を出すことに力を注ぎます。
意思決定：速く、責任を取る形で決めます。リスクをとる場面も多いです。
行動例：締め切り前にリードして進める、短時間で結論を出す。
長所と短所：決断力と推進力が強みですが、詳細や感情面を軽視することがあります。
接し方のコツ：要点を簡潔に示し、成果や期限を明確に伝えます。
プロモーター
モチベーション：新しいアイデアや注目を集めること。人との交流が活力になります。
意思決定：直感的で柔軟、変化を好みます。
行動例：プレゼンで場を盛り上げる、新企画を次々と試す。
長所と短所：創造性と説得力が魅力ですが、計画の詰めが甘くなることがあります。
接し方のコツ：自由度を与えつつ、実行のための枠組みを一緒に作ると効果的です。
サポーター
モチベーション：安定した関係と協力。人を支えることに喜びを感じます。
意思決定：慎重で協調的。周囲の意見を取り入れて判断します。
行動例：チームの調整役、相手のフォローに回る。
長所と短所：信頼性と協調性が高い一方、変化に戸惑いやすい面があります。
接し方のコツ：安心感を伝え、変化時は段階的に説明します。
アナライザー
モチベーション：正確さと根拠。データや論理を重視します。
意思決定：情報を集めて慎重に検討してから決めます。
行動例：資料を詳細にチェックする、リスクを事前に洗い出す。
長所と短所：客観性と分析力が強みですが、決断が遅れることがあります。
接し方のコツ：根拠やデータを示し、十分な時間を確保すると協力を得やすいです。
コントローラータイプの特徴
概要
コントローラータイプは、速い意思決定と結論を先に示す話し方が特徴です。目的を明確にし、短時間で行動に移ります。
行動特性
- 決断が早く、選択肢を比較して即断します。
- 必要最低限の説明で要点を伝えます。
- 結果や効率を重視して動きます。
強み
- リーダーシップを発揮して物事を前に進めます。
- プレッシャー下でも冷静に判断できます。
- 目標達成に向けて行動を促します。
注意点（弱点）
- 詳細や感情面を軽視しがちで、周囲が置き去りになることがあります。
- 指示が強く感じられ、人を萎縮させることがあります。
コーチングのポイント
- 具体的でシンプルなアクションプランを提示してください。短く要点を示し、選択肢を2〜3つに絞ると効果的です。
- 決定権は本人に委ね、サポート役に回ると信頼を得やすいです。
- 結果に関するタイムラインや評価基準を明示してください。
実際の会話例
- 「3つの選択肢があります。Aは最速、Bは安全重視、Cはコスト節約です。どれを優先しますか？」
- 「まず来週までにこれを試して、数値で報告してください。問題があれば次の手を検討しましょう。」
すぐに使えるチェックリスト
- 提案は結論から伝えたか？
- 選択肢は2〜3に絞られているか？
- 評価基準と期限を示したか？
これらを意識してコーチングすれば、コントローラーの力を引き出しつつ、周囲との協働を促せます。
プロモータータイプの特徴
概要
プロモータータイプは直感的で感情表現が豊かです。話すスピードが速く抑揚があります。相手の反応を敏感に察し、場を盛り上げるのが得意です。人間関係を重視し、会話で相手の意見や感情を引き出すことに力を入れます。
強み
- エネルギーがあり場を活性化します。例：会議で雰囲気を和らげ、意見交換を促す。
- 人の気持ちに寄り添い共感を示せます。例：悩みを打ち明けられたとき、安心感を与える。
- 即断即決で動き出せます。新しい取り組みを始めやすいです。
注意点
- 話が早すぎて相手が置いていかれることがあります。ゆっくり要点を整理して伝える工夫が必要です。
- 感情に左右されやすく、詳細や根拠を軽視しがちです。事実確認を意識してください。
コミュニケーションのコツ
- 相手の言葉を繰り返して確認すると信頼を深められます（例：「つまり〜ということですね？」）。
- 重要な指示は書面でも補足することで誤解を防げます。
職場での活かし方
- チームのムードメーカーやプレゼンで力を発揮します。営業や広報など、人と接する職務で成果を出しやすいです。
- 分析や事務は専門家と協力して補うとバランスが取れます。
サポータータイプの特徴
特徴
サポータータイプは穏やかで協力的です。決断は慎重に行い、相談しながら進めます。口調は優しく、相手の気持ちを重視します。信頼関係が行動の原動力です。
コミュニケーションのポイント
- 聞く姿勢を明確に示します。
- 感情に寄り添う言葉を使います（「不安に感じますか？」など）。
- すぐに結論を急がず、考える時間を確保します。
コーチングでの具体的な対応例
- まず安心感を作ります。「いつでも話してください」と伝えます。
- 質問は感情と価値観に向けます（「それが大切に思えるのはなぜですか？」）。
- 小さな選択肢を提示して、一緒に検討します。
使うと効果的なフレーズ
- 「どう感じていますか？」
- 「もう少し時間を取って考えましょう」
注意点
- プレッシャーをかけると防御的になります。
- 変化を急がせないでください。ゆっくり伴走する姿勢が信頼を深めます。
アナライザータイプの特徴
概要
アナライザータイプは事実やデータを重視し、冷静で論理的に話します。感情表現は控えめで、結論に至る過程や根拠を明確にすることを好みます。じっくり情報を整理してから答える傾向があります。
コーチングでの接し方
・会話は構造的に進め、事前にアジェンダや目的を伝えます。短い箇条書きや図表を用いると理解が早まります。
・根拠やデータを示して質問すると安心します。例：「どの数値で判断しましたか？」と具体的に尋ねます。
・考える時間を必ず設けます。即答を求めず、後で返信できる余地を残すと信頼が高まります。
具体例
・提案時は要点→理由→データの順で説明します。
・選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットを短くまとめます。
注意点
・分析に偏りすぎて決断が遅れることがあります。期限や次のアクションを明確にして、決める場面を支援してください。
・感情面の確認を忘れずに。論理だけでなく「やりたいか」を穏やかに尋ねるとバランスが取れます。
タイプを見極める方法
初回ヒアリングで見るポイント
初回の面談では「意思決定の仕方」「話すスピード」「声のトーン」「表情や視線」「身振り」の順に観察します。意思決定が速ければコントローラーやプロモーター、慎重ならアナライザーやサポーターの傾向が出ます。話の速さや声の強さは内向・外向の手がかりになります。
診断ツールの活用
短い質問票やチェックリストを使うとタイプが明確になります。観察とツール結果を照合して判断します。ツールは補助と考え、必ず会話で裏取りを行ってください。
質問例と観察例
- 「今日の決め方はどうしましたか？」→ すぐ決める：コントローラー、理由を詳述：アナライザー
- 「誰と話すのが楽ですか？」→ 人間関係を重視：サポーター、場を盛り上げる話：プロモーター
発言の長さ、具体性、感情の出し方も手がかりになります。
対応のコツ（実践チェックリスト）
- まず傾聴し、相手のペースに合わせる
- 要点は短く整理して確認する
- 疑問は具体的に一つずつ聞く
- 共感は場面に応じて示す
- 診断は仮説として伝え、相手に確認する
これらを組み合わせると初回で実用的なタイプ判別ができます。