目次
はじめに
目的
本記事は、職場のコミュニケーションを改善し、業務の安全性と効率を高めることを目的としています。特に「報連相(報告・連絡・相談)」と、報連相を促す合言葉として提案される「おひたし」を軸に、医療現場を念頭に置いた実践例やポスター作成のポイントをわかりやすく紹介します。
対象読者
職場での情報共有に課題を感じている方、医療現場のスタッフ、教育担当者、または職場の啓発物を作成したい方に向けた内容です。専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明します。
本記事の構成
第2章で報連相の基本行動を整理し、第3章で「おひたし」の意味と使い方を解説します。第4章では医療現場での具体的な活用法と啓発活動を紹介し、第5章でポスターの作成事例を示します。第6章で効果的なポスター作成のポイントをまとめます。
この章の位置づけ
本章は導入として、読者が全体の流れと目的を把握できるようにまとめました。以降の章で具体的な方法や事例を順に説明します。ご自身の職場に取り入れる際の参考にしてください。
報連相とは何か?~ビジネス・医療現場での基本行動
報連相は「報告」「連絡」「相談」の略で、職場で必要な情報共有の基本行動です。簡潔に事実を伝え、連携を取り、迷ったときは相談することでミスを減らし業務を円滑にします。
主な役割
- 報告:起きた事実や経過、結果を伝えます(例:納期遅れ、検査結果)。
- 連絡:関係者に必要な情報を速やかに伝えます(例:交代時間の変更、予定変更)。
- 相談:判断に迷う点や支援が必要なときに早めに共有します(例:患者の急変、対応方針)。
ビジネスと医療での具体例
- 企業:担当が納期に間に合わないと分かったら、すぐに上司と関係部署に報告・連絡し、対応策を相談します。
- 医療:看護師が患者の容体変化を見つけたら、観察した事実を簡潔に報告し、医師へ相談します。これにより早期対応が可能になります。
実践のポイント
- いつ:異常や変更は気づいたら速やかに伝えます。
- 何を:事実と時間、影響、必要な支援を明確に伝えます(状況・経過・要望)。
- 誰に:関係者全員に漏れなく伝えます。
- どう伝える:口頭で要点を伝え、必要に応じ文書で記録します。
よくある障害と対策
- 遠慮や上下関係で声を上げにくい場合は、職場で「報連相は歓迎される」文化を作り、上司が受け入れる姿勢を示します。忙しさで後回しにしやすい場合は、連絡ルールや簡単なフォーマットを決めます。
簡単チェックリスト
- 事実を簡潔に伝えたか
- いつまでに何が必要か伝えたか
- 関係者に伝えたか
日常の積み重ねで、報連相は信頼と安全を育てます。
「おひたし」とは?~報連相を促進する新たな合言葉
「おひたし」とは
「おひたし」は報連相(ほうれんそう)をより実践的にするための覚えやすい合言葉です。上司や受け手が安心して報告や相談を受けられる雰囲気を作るために使います。言葉は短く覚えやすく、日常の接し方の指針になります。
各要素の意味
- お=怒らない:まず感情的に叱らないで話を聞きます。例:ミス報告に対して即座に叱るのではなく、状況を確認します。
- ひ=否定しない:否定から入らず受け止めます。例:提案にまず「なるほど」と共感してから改善点を話します。
- た=助ける:困っている人には手を差し伸べます。具体的に何をしてほしいかを一緒に考えます。
- し=指示する:必要な指示は明確に、具体的に伝えます。誰が何をいつまでに行うかを示します。
実践例(業務・医療)
- 業務:進捗遅れの報告では「まず状況」を聞き、次に課題を一緒に整理して支援策を決めます。
- 医療:業務中の懸念を挙げた看護師に対して、否定せず状況を確認し必要な指示と支援を出します。
上司と受け手のコツ
- 上司:聞く時間を確保し、具体的な支援を示します。
- 受け手:報告は事実と希望を簡潔に伝え、必要な助けを明示します。
期待される効果
安心感が生まれ、早期の報告や相談が増えます。結果としてミスの早期発見やチームの連携向上につながります。
医療現場での「報連相」と「おひたし」活用と啓発活動
概要
医療安全管理室は「報連相」と「おひたし」を職員研修に取り入れ、確認会話や復唱などの行動を定着させます。言葉だけで終わらせず、具体的な場面で使える形に落とし込みます。
研修での導入方法
・ロールプレイで実践練習を行います(受付での予約確認、ナース間の引き継ぎなど)。
・具体例を示して短いフレーズを共有します。例:予約時間の念押し「明日は○時でお間違いないですか?」
現場での具体例
・予約確認:来院前日に電話で念押し、来院時も確認して記録します。
・投薬や点滴:投薬前に患者名と薬剤を声に出して復唱します。
・引き継ぎ:重要事項を短く要約して復唱を求めます。
啓発活動と習慣化
・ポスターやチェックリストで視覚的に示します。
・月例の安全ミーティングで成功事例や失敗事例を共有します。
・先輩によるモデル行動を見せることで自然に身につけます。
評価と改善
・定期的に観察やアンケートで実施状況を確認します。
・問題があれば手順を簡素化したり、研修内容を更新します。
ポスターによる啓発とその作成事例
概要
研修の一環として作るポスターは、短い時間で注意を引き、行動を促します。病院の掲示板や休憩室など視線が届きやすい場所に貼り、日常業務で使える具体的な言葉や図を中心にまとめます。
作成の目的
・「報連相」「おひたし」を職場の共通語にする
・気づきやすく、実行しやすい行動を提示する
・現場の声を反映して現実的にする
デザインのポイント
・見出しは大きく短く:一目で主旨がわかる
・色使いは抑えめにして重要箇所を強調
・イラストやアイコンで動作を示す(電話、ペン、メモなど)
・実際の声や事例を吹き出しで載せると親しみが増す
メッセージ例とイラスト案
・短いメッセージ:『報告は早めに、簡潔に』『分からなければ声をかける』
・おひたしフレーズを一行で:『お(お知らせ) ひ(ひとことで)…』など
・イラスト:場面ごとのワンカット(ナースステーションでのやり取り、カルテのチェック)
作成プロセス(事例)
- 現場アンケートで困りごとを収集
- キーメッセージを決定し試作を作成
- 現場スタッフに意見をもらい修正
- 小規模掲示で反応を観察し改善
- 全館掲示と定期的な更新
掲示場所と活用法
・勤務動線上と休憩室に複数枚配置
・朝礼やカンファで取り上げ、内容を定着させる
・QRコードで詳しい手順や研修動画に誘導する
効果測定と改善
・定期アンケートやインシデント報告数の変化で効果を確認
・短期間で反応が薄ければ文言や配置を見直す
・現場の声を継続的に取り入れて、実効性を高める
報連相・おひたし啓発ポスターのポイントと効果
- はじめに
ポスターは「見て分かる行動指針」を目標に作ります。短い言葉とイラストで、誰でもすぐ行動できることを示します。
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デザインのポイント
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視認性:文字は大きく、重要な語句は色やアイコンで強調します。例:「報告は30秒以内」など具体的に示します。
- シンプルさ:情報は3〜5項目に絞ります。長文は避け、箇条書きにします。
- 行動示唆:報連相だけでなく確認会話や指差し呼称、ダブルチェックなど具体動作を図解します。
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配置と頻度:現場の目につく場所に掲示し、定期的(例:四半期ごと)に更新して現場の課題を反映させます。
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温かみのある表現
堅苦しくない言葉や親しみやすいイラストで、新人もベテランも抵抗なく受け入れられます。成功例や短い声かけ例を載せると効果的です。
- 効果と測り方
ポスター導入後は、報告件数、ヒヤリ件数、スタッフの満足度アンケートで変化を追います。増えた報告や減ったミスはコミュニケーション向上の証拠です。
- 運用のコツ
掲示だけで終わらせず、朝礼やケース共有でポスターを引用します。意見を集めて改善案を反映すればマンネリ化を防げます。