プロジェクトマネジメント

JR東日本のプロジェクトマネジメントオフィス最新動向と今後の展望

目次

はじめに

本記事の目的

本記事では、JR東日本のプロジェクトマネジメントオフィス(以下、PMO)がどのように多様なプロジェクトを支え、地域や社会に価値を生み出しているのかを、分かりやすくご紹介します。鉄道の安全や快適さを守る工事はもちろん、地域課題の解決やデジタル化の推進まで、PMOが果たす役割を具体例とともにお伝えします。

PMOとは何か(やさしい説明)

PMOは、プロジェクトの進め方を整え、関係者と調整し、計画どおりに進むよう支える専門チームです。たとえば駅のバリアフリー化では、設計、工事、周辺交通への配慮、工事後の維持管理までをつなぎ、ムダや手戻りを減らします。豪雨対策の設備更新や、デジタル技術を使った点検の効率化でも、同じように全体を見渡して動きます。

JR東日本PMOの特徴(本記事で扱う範囲)

  • 広い担当エリア:東京、東北、上信越に分かれて、地域の実情に合わせて支援します。
  • 一貫した支援:計画づくりから施工、維持管理までをつなげて進めます。
  • 社会とのつながり:駅前の再整備や防災など、地域の課題解決にもかかわります。
  • 外部への展開:グループ外のプロジェクトでも、PM(プロジェクト運営支援)やCM(施工管理支援)の力を提供します。
  • 人材と技術:現場力にデジタルの知恵を重ね、学び続ける仕組みで人を育てます。

この記事の読み方

本記事は、PMOの成り立ちや役割、具体的な事例、技術や資格、人材育成、そして今後の展望までを順にたどります。専門用語は可能な限りかみくだき、実例や比喩を交えて説明します。鉄道に詳しくない方でも、PMOの価値がイメージできるように心がけます。

こんな方に役立ちます

  • 鉄道やまちづくりの裏側で、プロジェクトがどう動くのか知りたい方。
  • 工事や設備更新にデジタルがどう効くのか気になる方。
  • 企業や自治体で、複雑なプロジェクトの進め方を学びたい方。

用語を先にひとこと

  • PM(プロジェクト運営支援):目的、期限、費用のバランスを取りながら、計画と実行を進めること。
  • CM(施工管理支援):工事の品質・安全・工期・費用を管理すること。
  • DX(デジタル変革):紙や人手に頼っていた仕事を、デジタル技術でより良くすること。例:ドローンで橋梁を点検し、画像から劣化を見つける。

社会的価値への視点

PMOは、目の前の工事を終えるだけでなく、「安全に乗れる」「暮らしが便利になる」「地域が元気になる」といった価値につなげます。駅や線路といったインフラは長く使います。だからこそ、今日の判断が10年後、20年後の安心につながるよう、全体最適を考えて進めます。

次の章に記載するタイトル:JR東日本のプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)とは

JR東日本のプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)とは

前章からのつながり

前章では、本記事のねらいと読み進め方を確認しました。本章では、その土台を踏まえ、JR東日本におけるPMOの全体像を分かりやすく紹介します。

PMOの基本像

JR東日本のPMOは、社内の「総合エンジニアリング部門」です。駅や線路、橋りょう、電気設備、駅ビルや周辺施設まで、鉄道事業と生活サービス事業に関わる多様な建設・インフラの計画から完成までを一気通貫で進めます。プロジェクトの目的を明確にし、関係者と調整し、品質・コスト・工期・安全をバランスよく管理する役割を担います。

3つの建設PMO体制

JR東日本は、地域の特性に合わせて以下の3つの建設PMOを配置しています。
- 東京建設PMO:人口が多く、工事中も列車本数が多いエリアで、夜間作業の計画や周辺環境への配慮が欠かせません。
- 東北建設PMO:広いエリアでの長距離設備や、雪・低温など自然条件への対策を重視します。
- 上信越建設PMO:山間部や積雪地と都市部が混在し、地形や気候に合わせた工法や工程づくりが求められます。
それぞれのPMOが地域の課題を把握し、最適な進め方でプロジェクトを担当します。

どんなプロジェクトを担当するのか

PMOが扱う主な分野の例です。
- 鉄道事業:駅の改良、ホームの安全設備の整備、線路や橋りょうの更新、電気・信号設備の更新、バリアフリー化など。
- 生活サービス事業:駅ビルの改修や新設、商業・オフィス・住まいが一体となる開発、防災・減災設備の強化、省エネルギー設備の導入など。
これらを単独ではなく、地域のまちづくりやお客さまの動線改善と結びつけて進めます。

モットーが示す価値

PMOのモットーは「ニーズに応え、より良いものを、より安く、より早く、安全に」です。現場では次のような行動に置き換わります。
- より良いもの:利用者の動きやすさを観察し、段差解消や案内表示の改善などを丁寧に設計します。
- より安く:共通部材の活用や、作業手順の見直しでムダを減らします。
- より早く:関係者で情報を共有し、作業の順序を工夫して停電や運休の時間を短くします。
- 安全に:事前の危険予測と訓練、現場の見回りを徹底し、沿線や周辺の安心も守ります。

関係者と進める体制

PMOは、社内の各専門部署に加え、設計者、施工会社、自治体、近隣のみなさまとの橋渡し役を務めます。工事の影響が最小になる時間帯の設定、騒音・振動への配慮、交通や避難経路の確保など、地域とともに進める視点を大切にします。

PMOがあることで生まれる効果

  • お客さまにとって:安全で快適な駅や乗り換えやすい動線が実現します。
  • 地域にとって:駅前のにぎわいづくりや防災力の向上に貢献します。
  • 現場にとって:経験と知見が蓄積され、次のプロジェクトに活かせます。

PMOの主な業務範囲と役割

PMOの主な業務範囲と役割

前章のふり返り

前章では、JR東日本のPMOがプロジェクトを横断して支える専門チームであり、現場と本社、関係先をつなぐ役割を持つことを紹介しました。本章では、そのPMOが日々どのような業務を担い、どんな価値を生み出しているのかを具体的に説明します。

業務全体像:計画から完成後まで一貫支援

PMOは、工事だけを見るのではなく、計画づくりから発注、設計・施工、現場監理、完成後の維持管理や解体撤去まで、プロジェクトの一生を通じて支援します。駅のバリアフリー化や線路の改良、施設の更新など、テーマが変わっても「一貫して伴走する」姿勢は共通です。

フェーズ別の主な役割

  • 計画立案
  • 目的や効果、予算、期間を整理し、実行可能な計画に落とし込みます。
  • 例:混雑緩和と安全性向上を両立させるホーム改良の基本方針づくり。
  • 発注者支援
  • 必要な手続き、スケジュール、契約条件の整理を行い、社内外の調整を進めます。
  • 例:工事区間を分けて発注し、運行への影響を抑える調達計画づくり。
  • 設計・施工計画の確認・助言
  • 提出された図面や施工手順を第三者の目で点検し、改善提案を行います。
  • 例:夜間作業の段取り見直しや、騒音・振動への配慮の追加。
  • 工事発注手続きのサポート
  • 公募・評価・契約までの流れを整え、必要書類の作成や評価会議の運営を支援します。
  • 例:評価基準を明確化し、品質と価格のバランスが取れた選定を実現。
  • 現場施工監理
  • 進捗、品質、安全を現地で確認し、設計意図とのずれを早期に是正します。
  • 例:施工順序の入れ替えで作業時間を確保し、遅延を回避。
  • 鉄道運転保安への配慮
  • 列車の安全運行を守るためのルールと手順を守り、作業と運行を両立させます。
  • 例:列車見張りの配置計画や、切替工事の詳細手順の事前検証。
  • 品質・コスト・工程・安全の管理
  • 目標値を設定し、定例会議と現場点検でギャップを素早く埋めます。
  • 例:材料試験の抜き取り強化で再施工リスクを低減。
  • 維持管理・解体撤去の支援
  • 完成後の点検方法や更新計画を整え、寿命まで見据えた資産管理を支えます。
  • 例:老朽化施設の段階的な更新や、解体時の近隣配慮計画の作成。

横断的なコミュニケーション設計

PMOは、関係者が多い鉄道プロジェクトで意思疎通の渋滞を減らします。
- 会議体の設計:目的別に会議を分け、議題と決定プロセスを明確にします。
- 情報の見える化:工程表、リスク一覧、設計変更履歴を共有し、判断を速くします。
- 合意形成の支援:利用者、自治体、近隣の皆さまへの説明資料づくりを支援します。

リスクと変更のコントロール

現場条件や周辺環境は変わることがあります。PMOは、想定外に備える仕組みを用意します。
- 早期警戒:遅れやコスト超過の兆しを指標で捉え、対策会議を即時開催します。
- 代替案の準備:複数の施工手順や夜間作業の組み合わせを事前に検討します。
- 設計変更の管理:変更理由、影響、費用を整理し、最小の影響で実施します。

社外への支援の広がり

JR東日本で培った技術や進め方を、鉄道事業者や地方自治体などの外部案件にも提供しています。プロジェクト全体を管理する支援や、発注者の立場を助けるコンサルティングを通じて、地域のインフラ整備を後押しします。

具体的なプロジェクト事例と地域社会への貢献

具体的なプロジェクト事例と地域社会への貢献

前章では、PMOが企画から設計・工事・運用引き渡しまでを横断して支え、社内外の関係者をつなぐハブとして品質・コスト・工程を整える役割を担うことを説明しました。本章では、その役割が現場でどのように生きるのかを具体事例でご紹介します。

駅と街をつなぐ新駅・自由通路の整備

新駅の設置や駅をまたぐ自由通路の整備では、駅前広場や商業施設との動線を一体で設計します。PMOは、鉄道部門・商業部門・自治体・設計者を集め、混雑箇所や雨天時の安全確保などを事前に洗い出します。合意形成を進めることで、回遊性が高まり、乗り換えや買い物がしやすい駅空間が生まれます。

線路と交差する道路・橋梁の新設・改良

踏切の渋滞や安全リスクを減らすため、アンダーパスや跨線橋の新設・改良を進めます。列車運行への影響を最小限にするため、夜間作業の計画や資機材搬入の順序をPMOが細かく調整します。工事中の歩行者動線や地域イベント時の交通計画も合わせて検討し、日常生活への影響を抑えます。

バリアフリー化でだれもが使いやすい駅へ

エレベーター・エスカレーターの設置、点字ブロックの整備、多機能トイレの更新などを進めます。既存駅はスペースに限りがあるため、柱や梁を避けた機器配置や、工事中も使える仮設ルートの確保が重要です。PMOが利用実態の調査と現場協議を重ねることで、高齢の方やベビーカーを利用する方も移動しやすい環境を実現します。

グループ外向けビジネスの本格化:IGRいわて銀河鉄道の事例

2024年9月、IGRいわて銀河鉄道株式会社と土木施設改良に関するCM業務(工事全体を発注者の立場で管理・支援する仕組み)の委託契約を締結しました。PMOは計画・コスト・品質・安全を見える化し、工事の段取りと関係者調整を担います。JR東日本で培った知見を地域鉄道にも展開し、広域での安心・安全な移動を支えます。

鉄道を起点としたまちづくり提案

駅前広場の再編、歩行者ネットワークの整理、バスや自転車との乗り継ぎ改善などを一体で提案します。PMOは、イメージ図や簡易な効果試算を用いて、住民や事業者とゴールの共有を図ります。駅の出入口配置やサイン計画を見直すだけでも、街中の回遊性が上がり、日々の移動が快適になります。

DX推進と教育支援で現場力を底上げ

図面・工程・写真などの資料をデジタルで共有し、関係者間の認識のズレを減らします。eラーニングによる鉄道安全教育も提供し、現場の安全意識を高めます。したがって、手戻りやヒヤリハットの発生を抑え、工期短縮と品質向上の両立につなげます。

地域社会にもたらす主な効果

  • 安全性の向上:踏切事故リスクや工事中の転倒・接触リスクを低減します。
  • 移動の快適さ:段差解消や分かりやすい動線で乗り換えがスムーズになります。
  • 地域のにぎわい:駅と街をつなぐ導線が増え、周辺商店の立ち寄りが増えます。
  • 災害時の備え:橋や通路の冗長性が高まり、避難や復旧の動線を確保しやすくなります。

生活への配慮と対話の重視

工事は生活に影響を与えます。騒音や通行規制が避けられない場面もあります。しかし、PMOは事前の説明会やお知らせ、問い合わせ窓口の明確化、苦情対応の手順づくりを通じて、地域の皆さまと丁寧に向き合います。こうした対話が、プロジェクトの納得感と完成後の使われ方を大きく左右します。

技術力・ノウハウの特徴と資格体制

技術力・ノウハウの特徴と資格体制

前章では、具体的なプロジェクト事例を通じて、JR東日本のPMOが地域社会へどのように価値を届けているかをご紹介しました。その流れを受け、本章では、その活動を下支えする技術力とノウハウ、そして資格体制についてお伝えします。

資格・認定が示す信頼性

JR東日本のPMOは、次の資格・認定を備え、公共性の高い事業を安心して進める体制を整えています。
- 認定鉄道事業者(鉄道土木施設):線路や橋りょう、盛土など、列車が走るための土木構造物を扱う責任と能力を示します。例えば、老朽化した高架の点検や補強、線路切替時の安全計画などを適切に実施します。
- 一級建築士事務所:駅舎や商業施設の設計・監理を行える体制です。使いやすい動線や避難計画、耐震性などを総合的に設計します。
- 宅地建物取引業者:用地取得や賃貸・売買、権利調整を適正に進めるための資格です。駅前再整備での用地交渉や、工事ヤードの確保などに力を発揮します。
これらがそろうことで、土木・建築・不動産を横断した一体のプロジェクト運営が可能になります。したがって、計画から設計、工事、周辺まちづくりまで、切れ目なく責任を持って推進できます。

技術力の柱(設計・施工管理・安全)

  • 設計力:利用者の安全性と使いやすさ、将来の運用や保守のしやすさまで見通して形にします。例として、雨水のたまりにくいホーム形状や、段差の少ない乗換動線の計画を行います。
  • 施工管理力:工事の計画づくり、工程・コスト・品質の管理を徹底します。終電後から始発までの短い時間に安全に作業を終える段取りや、近隣への配慮を組み込んだ工事方法を選びます。
  • 運行保安と安全対策:人のミスを前提に事故を防ぐ「フェイルセーフ」の考え方を徹底します。線路近接での立入管理、電気の断電手順、見張員の配置などを具体的に計画します。

鉄道特有のノウハウ(具体例)

  • 列車運行との両立:列車を止められない時間帯があります。しかし安全を最優先に、工事を細かく分け、夜間に必要な資機材を事前に配置し、短時間で確実に作業を完了します。
  • 線路近接工事のリスク低減:仮設の防護柵で人と機械の動線を分け、電車線の取り扱い手順を標準化します。万一に備えた復旧手順も事前に準備します。
  • 振動・騒音への配慮:騒音の小さい機械を選び、作業時間帯を工夫します。学校や病院が近い場合は、計測機で状況を見える化し、住民の方へ丁寧に説明します。
  • 自然災害への備え:大雨や地震を想定し、排水や耐震補強の計画を進めます。点検の頻度や緊急時の連絡体制も、現場ごとにあらかじめ決めます。

資格体制と人材育成のしかけ

資格を持つだけでなく、現場で発揮できる力に結び付ける仕組みを整えています。
- ロール別の必須資格を明確化:現場を統括する担当、設計を担当する技術者など、役割ごとに必要な資格と経験年数を定めます。
- メンター制度とOJT:若手がベテランとペアになり、計画書づくりから現地確認、関係者調整までを通して学びます。
- ダブルチェックと技術審査:重要な設計や工程は第三者の立場で再確認します。見落としを減らし、改善提案を積極的に取り入れます。
- 外部研修と更新管理:建築士や宅地建物取引士などの法定講習を計画的に受講し、最新の基準に沿って知識を更新します。

不動産・建築・鉄道をつなぐプロデュース力

駅改良では、線路の切替、駅舎の拡張、駅前広場や商業施設の整備が同時に動きます。PMOは、工事の安全とスケジュールを守りながら、周辺の土地活用やテナント計画とも歩調を合わせます。これにより、便利でにぎわいのある駅空間と、持続的に使い続けられるインフラの両立を実現します。

次章への橋渡し:デジタル活用の基盤

図面や工程、コスト、現地の状況を一元的に扱うため、データの見える化を進めています。例えば、3Dモデル(建物や構造物を立体で表すデータ)で完成形を共有すると、関係者の理解がそろい、手戻りが減ります。次章では、こうした取り組みをさらに広げるDXと、人材育成との連携をご紹介します。

DX推進とデジタル人材育成との連携

DX推進とデジタル人材育成との連携

前章からのつながり

前章では、PMOが培ってきた技術力と現場ノウハウ、そして資格や研修の仕組みが、プロジェクトの品質と安全を支えていることを紹介しました。ここから一歩進めて、その力をデジタルの分野にどう結び付けるかをお伝えします。

DXプロジェクトマネジメントオフィスの体制

JR東日本は「DXプロジェクトマネジメントオフィス」の体制を整え、各PMOにDX専任担当を配置しています。専任担当は現場に入り、課題の洗い出しから施策の実行、定着までを伴走します。企画と現場が離れないことで、実用性の高いデジタル化を進めやすくなります。

現場デジタル化の進め方

現場では、次の3つの流れで無理なく進めます。
- 見える化:紙や口頭での報告を、タブレット入力や共有フォルダに置き換え、情報を一か所に集めます。
- 標準化:入力項目や手順をそろえ、誰が使っても同じ品質になるようにします。
- 自動化:定型作業は自動通知や集計で置き換え、担当者は判断や対話に時間を割けるようにします。

データ活用の基本

集めたデータは、日々の運行や設備、工事、業務効率に関する指標として使います。たとえば、進捗状況を色分けした一覧、遅延の傾向、点検の実施率、問い合わせの対応時間などを画面で見えるようにします。現場が自分の数字を見てすぐ行動できる形に整えることがポイントです。

デジタル人材育成の設計(3万人育成に向けて)

2027年度末までに3万人のデジタル人材を育成する目標に向け、段階的に力を伸ばします。
- ベーシック人材:日常業務でデジタルツールを使いこなせる層です。短時間の学習と現場での小さな改善を積み重ね、紙の削減や転記の削減など、目に見える効果を出します。
- ミドル人材:現場のハブとなる層です。部署の課題を整理し、ツール選定や簡易な仕組みづくりを主導します。DX専任担当と組み、他部署にも展開します。
学びは座学だけで終わらせず、実課題を題材に「作って使う」流れで定着させます。

Microsoft 365等のツール活用を徹底

身近で使いやすいツールを軸に、素早く成果を出します。
- コラボレーション:会議の準備・議事・資料を一か所で共有し、メールの往復を減らします。
- ワークフロー:申請や承認をオンライン化し、進捗がどこでも分かるようにします。
- データ可視化:日報や点検記録を自動集計し、ダッシュボードで状況を確認します。
- ナレッジ共有:マニュアルや動画を集約し、新人でも迷わず作業できる環境をつくります。
ツールは難しい設定に頼らず、テンプレートと共通ルールで素早く広げます。

専任担当の伴走とコミュニティ

DX専任担当は、現場と一緒に小さな成功事例を作り、効果が出たら周辺業務へ広げます。社内の交流会や事例共有の場を設け、他の現場でも同じ型で再現できるようにします。現場の声を集めてテンプレートや手順を更新し、次のプロジェクトに生かします。

効果の見える化と定着

取り組みの効果は、作業時間の短縮、紙の使用量、問い合わせ対応のリードタイム、教育にかかる時間など、身近な数字で測ります。数字で確認し、改善点をすぐ反映することで、デジタル化が一時的な施策で終わらず、日常のやり方として根付きます。

今後の展望とPMOの進化

今後の展望とPMOの進化

前章では、DXの進め方とデジタル人材育成を結びつけることで、現場の意思決定が速くなり、働き方や品質が高まることを紹介しました。この流れを踏まえ、本章ではPMOが描く次の一歩と進化の方向を具体的にお伝えします。

1. 重点領域の拡大

  • 鉄道施設・インフラの新設・改良:
    駅の使いやすさ向上、ホームの安全性強化、設備更新などを計画段階から伴走します。利用者の動線や地域の交通計画を踏まえ、完成後の運用まで見据えて支援します。
  • 自治体・民間発注への対応:
    学校や公共施設の改修、再開発プロジェクトなどで、必要な手続き整理、関係者調整、コストと工期の見通しづくりを担います。プロジェクトの企画から完成までを支える仕事(PM/CM)として、発注者の不安を減らし、進め方を分かりやすくします。
  • まちづくり・安全教育支援:
    通学路や駅周辺の安全点検、避難訓練のサポート、地域イベントでの安全啓発など、暮らしに近い領域にも取り組みます。地域の声を集め、計画に反映します。

2. 進化するPMOの働き方

  • 早期の合意形成:
    企画の初期から関係者を集め、目的・予算・スケジュールを見える化します。後戻りを減らし、現場の負担を軽くします。
  • データにもとづく判断:
    進捗やリスクを一目で確認できるダッシュボードを整え、タイムリーに対策を打ちます。紙の報告を減らし、現場の時間を生むことを大切にします。
  • 標準と柔軟性の両立:
    手順やテンプレートをそろえつつ、地域や案件の事情に合わせて調整します。定石を守りながら、現地の知恵を活かします。

3. 技術と人のかけ算

  • 現場を支えるデジタル:
    3Dモデルや遠隔での確認、写真と位置情報の自動整理など、道具として使いやすい技術を取り入れます。難しい言葉は最小限にし、使い方を簡単にします。
  • 人材育成の強化:
    メンター制度や現場での学び(OJT)、資格取得の支援を続けます。ベテランの勘どころを記録し、チーム全体の力に変えます。

4. レジリエンスとサステナビリティ

  • 強いインフラづくり:
    事前の点検計画、訓練、代替ルートの検討などで、止まりにくい仕組みを整えます。想定外に備える準備を積み重ねます。
  • 環境への配慮:
    資材や工法の選び方、工事中の騒音・廃材の抑制、長く使える設計など、ライフサイクル全体で無駄を減らします。

5. 共創とガバナンス

  • 産官学・地域との連携:
    自治体、企業、学校、住民と定期的に対話し、課題と目標を共有します。小さな実験を一緒に行い、成果を広げます。
  • 透明性の確保:
    進捗や費用、意思決定の経緯を見える化し、説明責任を果たします。信頼を積み上げ、協力の輪を広げます。

6. ロードマップ(たたき台)

  • 1年目:
    モデル案件での試行、デジタル道具の基本整備、学びの仕組みづくり。
  • 3年目:
    成果の横展開、標準手順の定着、地域連携の定期化。
  • 5年目:
    自治体・民間を含む広域の支援体制を確立し、複数案件を同時に安定運用。

7. 期待される価値

  • 利用者にとって:
    乗り換えやすさ、安全性、災害時の安心感が高まります。
  • 地域にとって:
    交通とまちづくりが結びつき、にぎわいと雇用が生まれます。
  • 発注者にとって:
    進め方が明確になり、コストと工期の見通しが立ちやすくなります。
  • 社会全体にとって:
    持続的に使えるインフラが増え、将来世代への負担が軽くなります。

PMOは「すべての人の心豊かな生活」を目指し、地域課題の解決と社会インフラの持続的な発展に寄与します。現場に寄り添い、データで支え、人でつなぐ。この姿勢を軸に、役割をさらに広げてまいります。

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