目次
プロジェクトマネジメントは体験で定着する—ボードゲーム研修の意義
プロジェクトマネジメントはなぜ難しい?
プロジェクトマネジメント(PM)は、多くのビジネスパーソンに必要なスキルですが、座学だけで理解し身につけるのは簡単ではありません。なぜなら、現実のプロジェクトでは様々な出来事が同時に起こり、計画どおりに進まないことも多いからです。意思決定や資源配分、リスクへの対応など、書籍や講義で知識を得るだけでは「実践で役立つ力」として定着しにくいという課題があります。
体験型学習の強み
そこで注目されているのが、「体験」を通じて学ぶ方法です。その代表がボードゲームを活用した研修です。ボードゲームでは、複数人でひとつの課題に挑戦したり、互いに相談や駆け引きをしながら状況に対応したりします。この過程で自然と意思決定やリスクマネジメント、資源の分配などのPMスキルを疑似体験できます。たとえば、「限られた予算をどの作業に割り当てるか」といったゲーム内の決断は、実際のプロジェクト現場に近い感覚を味わえます。
全体像とゲームの選び方
プロジェクトマネジメントの範囲はとても広く、計画立案から進捗管理、メンバーとのコミュニケーションやトラブル対応まで多岐に渡ります。ひとつのボードゲームで、こうしたすべての領域を学ぶのは難しいため、各ゲームが特に強い「学習領域」に注目して選ぶことが大切です。たとえば、あるゲームはコミュニケーション強化に、別のゲームはリスク対応の練習に適しているなど、それぞれの特徴を活かした使い方が効果的です。
次章予告
次の章では、プロジェクトマネジメント研修に特化した代表的なビジネスゲーム「プロジェクトテーマパーク」の特徴についてご紹介します。
代表格「プロジェクトテーマパーク」—PM研修に特化したビジネスゲーム
「プロジェクトテーマパーク」は、実際にプロジェクトマネジメント(PM)の基礎と実践力を身につけるために開発されたボードゲーム形式のビジネス研修用ツールです。このゲームはヌーラボが企画・開発しており、遊園地を企画・運営するという楽しいテーマで進行します。参加者は3~5人のチームに分かれ、約30分間を1セッションとしてプロジェクトを模擬体験します。
ゲームの核心は「現場あるある」を巧みに盛り込んだ設計です。たとえば、「観覧車やローラーコースターを完成させるために必要な予算や時間を見積もる」「アトラクション建設中に急なトラブルが発生しチームで対応策を検討する」など、リアルなPMシーンを体感できる仕組みになっています。これにより、スコープ(作業範囲)の明確化、スケジュール設定や遅延対策、リスク予測と対応、さらにはコスト感覚やチーム内の連携力など、仕事で求められる実践的な力が身に付きます。
研修の現場では、参加者同士の活発なコミュニケーションが自然に生まれ、自分の意見を伝える力や他者と協力して最適な判断を下すプロセスを体験できます。実際に約70社以上で導入されており、「とても楽しく学べた」「知らないうちにPMの本質が理解できた」と高い評価を得ています。受講者満足度も4.91/5と非常に高い水準です。
手軽に導入できる点も魅力です。半日研修の中心に据えることができ、多人数・短時間で実施可能なので、従業員研修や管理職候補者向けのPM学習にも適しています。
次の章では、「一般ボードゲームをPM学習に応用する—Ticket to Rideの研修活用」についてご紹介します。
一般ボードゲームをPM学習に応用する—Ticket to Rideの研修活用
Ticket to Rideとは?
Ticket to Rideは、世界中で人気の鉄道ネットワーク構築ボードゲームです。プレイヤーは自分の路線を完成させることを目指し、列車カードを集めて指定ルートをつないでいきます。ゲームはシンプルなルールながら、限られたリソースと競争要素のバランスが絶妙で、毎回異なる展開となる点が魅力です。
プロジェクトマネジメント(PM)に通じるポイント
このゲームをPM学習に活用するとき、注目すべきはいくつかの意思決定ポイントです。例えば、獲得できる列車カードには限りがあり、その中から何を優先するかが重要な判断となります。また、短期間で達成できるルートを選ぶのか、リスクはあるが高得点を狙う長期路線に挑戦するのか、プロジェクトで言う短期目標と長期目標のバランスが問われます。ほかのプレイヤーの動きを観察し、自分の計画が阻害されそうな場合は軌道修正を判断するリスク対応の要素も現れます。
研修設計のポイント
実際の研修では、まず「どのルートを最優先するのか」「手持ちの資源でどう目標を組み立てるか」など、プロジェクトでよく直面する課題をKPIや成果基準として設定します。その後、チームに分かれてゲームを進行。プレイが終わったら、なぜその選択をしたのかを言語化してもらいます。例えば「このカードが不足するリスクを最初に見込んだ」「他の人の妨害をどう予測したか」などを振り返ることで、実践的なPM思考が育まれます。
具体的な学習効果
Ticket to Rideの研修を通じて、「限られた資源での意思決定」「優先順位付け」「リスク管理」「チームでの話し合いと調整」など、PMに不可欠なスキルを疑似体験できます。ただのゲームで終わらせず、振り返りまで丁寧に設計することで、日常業務にも応用しやすくなるのがこの手法の大きなメリットです。
次の章に記載するタイトル:研修向けボードゲームの厳選紹介—目的別の使い分け
研修向けボードゲームの厳選紹介—目的別の使い分け
目的別にボードゲームを選ぶポイント
ボードゲームを研修で使う場合、大切なのは「どんな学びを得たいか」を明確にすることです。例えば、チーム内のコミュニケーションを円滑にしたいのか、リーダーシップや交渉力を磨きたいのか、それともプロジェクトマネジメントの実践力を高めたいのか。それぞれの目的に合ったゲームを選ぶことで、学習効果が高まります。
問題解決力に特化したゲーム
問題解決力を伸ばしたい場合、参加者が自ら考え、選択し、結果を振り返る…そんな設計のボードゲームが適しています。代表例として挙げられるのは「プロジェクトテーマパーク」です。このゲームは限られたリソースで最良の結果を目指すという課題を設定しています。ゲーム中は想定外のトラブルが発生し、それに対してチームで策を講じる体験ができます。実際のプロジェクト現場で直面する課題を、遊びながら疑似体験できます。
予算管理とリスク対応を鍛えるゲーム
ビジネスに欠かせない“お金”や“リスク”の管理も、ボードゲームで体感的に学べます。「プロジェクトテーマパーク」では、コスト配分や予備費の重要性、起こりやすいリスクとその対応を考えさせます。また、それ以外にも「パンデミック」や「モノポリー」など、予算や資産を管理しながら全体の流れを読む必要があるゲームも、研修でよく活用されています。これらを用いることで、ただ教科書を読むよりも実践的な知恵が身につきます。
コミュニケーションや交渉力に強いゲーム
コミュニケーションや交渉の力を養いたい場合、「ディクシット」や「カタンの開拓者たち」「犯人は踊る」などがおすすめです。これらのゲームは、相手の考えを推測したり、説得する力、状況を読み取る力が試されます。プロジェクトマネジメントにおいては、意見の違うメンバーと折り合いをつけたり、合意形成をする場面がよくあるため、このようなゲームで“対話力”を磨くのも有効です。
目的ごとに複数ゲームも有効
1つのゲームだけでなく、目的や段階に応じて複数のタイトルを組み合わせることで、さまざまな能力をバランス良く鍛えることができます。例えば、午前中は問題解決に特化したゲーム、午後はコミュニケーション重視のゲームと使い分ける、といった形です。実際の研修現場でも、目的と時間、参加者の特性に合わせて柔軟にプログラムを構成することが重視されています。
次の章では、「導入の実務ポイント—人数・時間・振り返りデザイン」について解説します。
導入の実務ポイント—人数・時間・振り返りデザイン
最適な人数と運営方法
ボードゲーム型のプロジェクトマネジメント研修では、参加人数の調整が学びの質を左右します。たとえば、「プロジェクトテーマパーク」は3~5人の少人数テーブルで行うのが最適です。これにより、全員が役割を持ちやすく、活発な意見交換が期待できます。人数が多い場合は、複数卓を同時に進行し、進行役(ファシリテーター)を配置する方法が有効です。
研修時間配分の工夫
1回のプレイは約30分程度を見込むと、集中力を持続しやすくなります。半日研修の場合は、最初にルール説明と1回目のプレイをおこない、その直後に振り返りの時間を設けます。この振り返りで学びを整理し、改善点や気づきを共有します。希望や必要に応じて、再度ゲームをプレイすることで、すぐに新しい行動を試せるため、理解が深まります。
学習要素の可視化と振り返りのポイント
プレイ前にプロジェクトマネジメントに必要な要素を一覧にした資料(例:PMBOKの対応領域)を配布します。これにより、参加者は「今学んでいる内容」が何に結びついているのかを意識しやすくなります。
振り返りでは、以下のような問いかけが効果的です。
- 成功した進め方やつまずきの原因は何か?
- チーム内の意思疎通や調整方法はどうだったか?
- 実際の業務にそのまま活かせそうな気づきは?
このプロセスを通じて、ゲーム体験が単なる楽しさで終わらず、仕事への具体的な行動変容につながりやすくなります。
次の章に記載するタイトル:選定基準—自社課題とPM領域のマッピング
選定基準—自社課題とPM領域のマッピング
スキルギャップの洗い出しから始める
ボードゲーム型プロジェクトマネジメント(PM)研修を導入する際、まず自社の課題や受講者の現状を明確にすることが大切です。例えば「計画を立てるのが苦手」「優先順位付けがうまくできない」など、具体的なスキルギャップを洗い出しましょう。
適切なゲームの選び方
スキルギャップが明確になったら、目的に合ったボードゲームを検討します。たとえば、
- 「計画」と「優先順位」がテーマなら、『Ticket to Ride』が効果的です。路線を決めて列車を配置していく中で、計画性や段取り力を自然と学べます。
- 複数のPMスキル(企画、交渉、実行、全体把握など)を一度に体験したい場合は、『プロジェクトテーマパーク』のような総合演習型ボードゲームを選ぶとよいでしょう。
受講者のロールごとの設計
受講者の職種や役割によっても、使うべきゲームを工夫します。たとえば、営業部門向けには交渉や顧客対応が学べるもの、エンジニア向けなら納期管理やリソース配分を体験できるゲームが適しています。事前に受講者のロールや業務内容を把握し、現場感にあった設計を心がけましょう。
実績・満足度・サポート体制の確認
導入前には、各ボードゲームの導入実績や利用した企業の評価も確認すると安心です。多くの企業や教育機関で利用されているゲームは、運営サポートも充実していることが多いです。マニュアルや事例集の有無、サポート対応などもチェックするとよいでしょう。
次の章に記載するタイトル:新作探索・入手性のヒント—クラウドファンディング/専門サイト
新作探索・入手性のヒント—クラウドファンディング/専門サイト
クラウドファンディングで見つける最新作
最近の国産ボードゲームや教育向けボードゲームは、クラウドファンディングサイトから情報を得るのが有効です。特に、「Makuake」や「CAMPFIRE」といった国内サービスには、教育現場やビジネス研修で使える新作が日々掲載されています。これらのプラットフォームでは、プロジェクトごとにルールの独自性や教材としての工夫を細かく記載しているため、導入前に内容をじっくり検討できます。たとえば、プロジェクトテーマパークのようなPM特化型以外にも、進行管理やチーム作業、課題発見型の新作が次々と発表されています。実際の研修テーマとマッチする作品に出会いやすいのが最大の魅力です。
専門サイトでの比較・事例検索
ボードゲーム専門ショップや解説サイトも活用できます。代表的な例として「ゲームマーケット公式通販」や「BoardGame Geek 日本語ページ」が挙げられます。ここでは在庫状況やレビュー、難易度、学習要素ごとの分類が充実しています。エンジニアリング思考やネットワーク構築、リソース管理といったPM領域の補助教材を比較検討するのもおすすめです。それぞれの作品の得意分野や使いどころを、カテゴリーやタグ検索機能を使って探せます。
購入の注意点とアドバイス
新作ボードゲームは流通数量が限られている場合も多いです。気になるタイトルが見つかった場合はクラウドファンディングのプロジェクト期間中に支援・予約を検討しましょう。また、専門ショップでは再入荷お知らせなどの機能がありますので、活用して情報を逃さないようにすると安心です。
次の章に記載するタイトル: 参考になる実務データ—導入実績と満足度
参考になる実務データ—導入実績と満足度
豊富な導入実績が証明する信頼性
プロジェクトマネジメントのボードゲーム研修で代表的な「プロジェクトテーマパーク」は、2025年6月時点で約70社が導入しています。これは多種多様な業界に活用の輪が広がっていることを示しており、信頼のおける教材として評価されています。実際に人材育成を担う管理職向けの研修にも用いられているため、階層別の学習ニーズにも合致しています。
受講者満足度の高さ
このゲーム型研修の受講者満足度は、5段階評価のうち4.91です。受講後のアンケートでは、「実際の業務に応用できる」「楽しみながら学べた」といった声が多く寄せられ、体験型の強みが数字としても裏付けられています。ボードゲームという形式が、抽象的になりがちなプロジェクト管理のポイントを分かりやすく体得できる点が高評価につながっています。
外部ファシリテーターの活用が容易
この分野では、導入を支援する研修会社やファシリテーターも充実しています。自社にノウハウがない場合や、客観的な進行役が必要な場合も安心して利用できます。研修提供企業のサポートが受けられるため、初めての試みにもハードルが低いのが魅力です。
次の章に記載するタイトル:よくある質問(FAQ)—短時間/多人数で回すには
よくある質問(FAQ)—短時間/多人数で回すには
大人数で運営する場合の工夫
ボードゲーム研修を大人数で実施するときは、3~5人を1グループとし、同時に複数のグループ(卓)でゲームを進めます。例えば20人の場合、4~5卓に分けてそれぞれでゲームを実施すると、全員がプレイに参加できるだけでなく、各卓で異なる気付きや工夫が生まれます。全体での振り返りタイムを設けることで、それぞれのグループで出た意見やポイントを共有し、学びを深めていくことがポイントです。
短時間で進行したい場合
限られた時間内で研修を行いたい場合は、1ゲーム当たりのプレイ時間を30分程度に設定し、終了後に20分ほどの振り返りタイム(リフレクション)を確保するのがおすすめです。2サイクルこれを繰り返すと、理解がより深まります。また、「Ticket to Ride」などの有名なゲームなら、短縮された特別シナリオを採用することで、特定の学習テーマに絞って効率よく学ぶ方法もあります。
学びの定着と業務への活用
ゲーム終了後の振り返りでは、KPT(Keep:続けたいこと、Problem:問題点、Try:次回試すこと)や、プロジェクトマネジメントの観点別チェックリストを活用します。これにより、単なる遊びで終わらずに、実際の業務へ生かせる“学びの移植”が明確になります。例えば「チーム内の情報共有がうまくいかなかった」「タスクの優先順位づけに課題があった」など、具体的な気付きを言語化することで、研修後の行動につながります。