目次
はじめに
このドキュメントは、企業研修や教育現場で使えるコミュニケーション向上のためのゲームをまとめています。ゲームを通じて学ぶ利点や実施方法、具体的なゲーム例をわかりやすく紹介します。
本書の目的
ゲームを用いた研修の効果を実感し、実際に取り入れられるようにすることを目的とします。短時間のアイスブレイクからチームビルディングまで、幅広く使える手法を扱います。
対象読者
研修担当者、教師、チームリーダー、コミュニケーションを改善したい職場の方。特別な知識は不要です。実践的な手順と注意点を中心に説明します。
本書の構成
全8章で構成します。第2章は重要性、第3章は実施の流れ、第4章はゲームの種類、第5〜8章で具体的な事例を紹介します。現場ですぐ使えるヒントも盛り込みます。
コミュニケーション研修でゲームを活用することの重要性
なぜゲームが有効か
コミュニケーション力は座学だけで伸びにくいです。ゲームは緊張を和らげ、失敗を恐れずに試せる場を作ります。楽しみながら繰り返すことで学習が定着しやすくなります。
主な利点
- 参加意欲が高まる:ルールや競争要素があると積極的に参加します。
- 実践的な練習になる:役割を演じることで、実際の対話に近い経験ができます。
- 観察で個性が見える:発言の仕方や行動からリーダー性や配慮の傾向が分かります。
具体例でイメージ
たとえばペアで情報を伝えるゲームは、聞き手の確認方法や話し手の説明力を短時間で鍛えます。制限時間を設けた課題は優先順位や簡潔さを促します。
進め方のポイント
- 目的を明確に伝える:何を学ぶかを最初に示します。
- ルールを簡潔にする:複雑だと学習が散漫になります。
- 振り返りを必ず行う:何がよかったか、次にどう改善するかを共有します。
- 安全な場を作る:否定的なコメントを避け、挑戦を歓迎します。
ゲームを取り入れると研修が生き生きとし、受講者の気づきが増えます。適切に設計すれば、職場で使えるコミュニケーション力を効率よく育てられます。
コミュニケーション研修でゲームを実施する流れ
はじめに
効果的な研修は準備と振り返りが肝心です。以下の5つのステップで進めると実践につながりやすくなります。
1. 実施するゲームを決める
研修の目的(例:聞く力向上、チームワーク強化)に合わせてゲームを選びます。参加人数や所要時間、オンラインか対面かも考慮します。
2. ゲームの目的を伝える
開始前に目的を明確に伝えます。目的が伝わると参加者の意識が変わり、学びが深まります。具体的な行動目標も示すと良いです。
3. 分かりやすくルールを説明する
資料やお手本を用意し、簡潔に説明します。オンラインではチャットにルールを残す、短いデモを見せると理解が早まります。
4. ゲームを実施する
時間配分を守り、進行役は観察と必要な介入を行います。グループごとにメモを取らせると振り返りがしやすくなります。
5. 有意義な振り返りを実施する
ただ感想を言うだけでなく、「職場でどう使うか」を言語化させます。具体的な行動宣言やペアでの練習を取り入れると定着します。
実施時のポイント
- 目標に沿ったゲーム選びを最優先にする
- ルールは短く、デモを必ず行う
- 振り返りは実践につながる問い(誰が、いつ、どのように)にする
- オンラインは時間短縮とチャット活用を心がける
これらを意識すると、研修が学びから行動変容につながりやすくなります。
コミュニケーション研修で活用できるゲームの種類
この章では、研修で使える代表的なゲームの種類と、それぞれの目的や効果、実施時のポイントをわかりやすく紹介します。
協力型ゲーム
- 概要:チームで共通の目標を達成することに焦点を当てます。互いに助け合う場面が多く、信頼関係や役割分担の学びが得られます。
- 代表例:タワービルディング、脱出ゲーム型ワークショップ
- 期待効果:結束力の向上、役割理解、協力的な課題解決力の育成
- 実施ポイント:目標を明確にし、振り返りで役割や意思疎通の良し悪しを具体的に話し合うこと。
コンセンサス型ゲーム
- 概要:意見のすり合わせや合意形成のプロセスを重視します。多様な価値観を取り入れ、議論の進め方を学びます。
- 代表例:NASAゲーム、コンセンサスゲーム研修
- 期待効果:傾聴力、論点整理力、合意形成の技術習得
- 実施ポイント:時間配分を管理し、ファシリテーターが議論の構造化を支援すること。結論よりプロセスを評価する視点を持つと効果的です。
共創型ゲーム
- 概要:参加者が一緒に何かを創り上げることで、アイデア出しや表現力を高めます。創造的な協働の体験が得られます。
- 代表例:共同ストーリーメイキング、プロトタイプ作成ワーク
- 期待効果:発想の多様化、意見交換の活性化、主体性の向上
- 実施ポイント:評価基準を明確にせず自由に発想させる時間と、成果を共有する時間を両立させること。
各タイプは目的に応じて組み合わせ可能です。研修のゴールに合わせて選び、振り返りを忘れずに行うと学びが深まります。
具体的なコミュニケーションゲーム事例:嘘つき自己紹介
概要
集合研修・オンライン集合研修で実施する短時間のアイスブレイクです。4~30人、所要時間は約30分。A4用紙と太めのペンを使い、紙を折って4つの枠を作り名前と自己紹介キーワードを記入します。キーワードのうち1つだけ嘘を混ぜ、チーム内で順に説明して嘘を見破ります。
目的
観察力・質問力・説得力・傾聴の強化と、チーム内の信頼づくりを狙います。短時間で緊張をほぐし、互いの意外な一面を知る効果があります。
対象・人数・時間
対象:新人研修やチームビルディング。人数:4~30名。時間:30分程度(人数に応じ調整)。
準備物
A4用紙(参加者1人1枚)・太めのペン。オンラインではチャットまたは共有ホワイトボードを用意します。
実施手順
- 紙を縦に折りさらに横に折り4つの枠を作る。各枠に「名前」「趣味」「得意なこと」「最近の出来事」などキーワードを書き、うち1つだけ嘘にする。2. 小グループ(4~6人)に分け順番に自己紹介。1人3分以内で説明し、残りのメンバーは質問して嘘を見破る。3. 真偽を発表し、なぜそう判断したかを短く共有する。
オンラインでの工夫
ブレイクアウトルームで小グループに分け、共有ホワイトボードやチャットにキーワードを貼らせます。進行役はタイムキーパーと公平な発言の促しを行います。
進行上のポイント
- 時間厳守でテンポを保つ。- 一人が話しすぎないよう促す。- 判断の理由を聞き、観察や質問の仕方を振り返る。- スコア制はゲーム性を高めるが、批判的にならない配慮をする。
振り返りの問い例
「どの情報に注目しましたか?」「どんな質問が有効でしたか?」「非言語の手がかりは何でしたか?」
このゲームは短時間で対話の質を高め、楽しく学べる演習です。
具体的なコミュニケーションゲーム事例:人狼ゲーム
概要
集合研修・オンライン研修で実施できます。役割カードを配り、3~100人(推奨5~18人)で10~30分程度行います。参加者は役を演じながら発言と沈黙を読み取り、説得力と観察力を高めます。
目的
- 発言の裏にある意図を読み取る力を養う
- 自分の考えを短時間で伝える技術を磨く
- チームワークとリーダーシップを体感する
準備物
役割カード(村人、人狼、占い師など)、タイマー、メモ用紙。オンラインは役割を配る仕組み(チャットや配信ツール)を用意します。
実施の流れ
- 役割配布とルール説明(3分)
- 夜のフェーズ:人狼が相手を決める(3分)
- 昼のフェーズ:議論と投票(7~20分)
- 結果発表と振り返り(5~10分)
ファシリテーションのポイント
- ルールを簡潔に説明する
- 発言時間を制限して緊張感をつくる
- 全員が発言できるよう促す
オンラインでの工夫
ブレイクアウトルームで小グループに分け、役割は個別メッセージで配布します。発言は順番制にして混乱を避けます。
期待できる効果
短時間で論理的に伝える力、相手の感情や矛盾に気づく観察力、説得の技術が向上します。
注意点
対立が強くなりやすいので、振り返りで感情面のケアを行い、ゲームは学びの手段であることを強調してください。
具体的なコミュニケーションゲーム事例:ジェスチャーゲーム
目的
非言語の伝達力を高め、観察力と想像力を養います。チーム内での役割理解や短時間での意思疎通の練習に適しています。
準備と所要時間
参加人数:3〜8人
所要時間:約10分(説明・実施・振り返し含む)
道具:お題カード(紙に書いた簡単な単語で可)、タイマー
ルールと進め方
- チームを作り、順番を決めます。観客役を設定するとより盛り上がります。
- 出題者が無作為にお題を引き、ジェスチャーだけでそれを伝えます。声は出しません。
- 観客やチームメイトが制限時間内(例:60秒)に当てます。正解なら次の人に交代します。
- 全員が一度ずつ行ったら終了です。
お題例
動物(猫、象)、職業(医者、消防士)、日常動作(掃除、電話をかける)、感情(驚き、悲しい)など。
バリエーション
- チーム戦:制限時間内に多く当てたチームが勝ちます。
- 連想リレー:一人がジェスチャーを始め、次の人はその答えを元に別のお題を表現します。
- 禁止ジェスチャー追加:よく使う身振りを禁止して難易度を上げます。
ファシリテーションのコツ
- ステップごとに実演してルールを明確にします。
- 初めは簡単なお題から始め、自信がついたら難易度を上げます。
- 盛り上がるように時間や得点を調整します。
学び・気づきの引き出し方
- どういう動きが伝わりやすかったかを参加者に聞きます。
- 観察したポイント(目線、体の使い方、テンポなど)を具体的に挙げさせます。
振り返り質問例
- 今回、うまく伝えられた理由は何ですか?
- 誤解が生じた場面はどこで、どう改善できますか?
- 日常の仕事で今回の気づきをどう活かせますか?
具体的なコミュニケーションゲーム事例:条件プレゼン
目的
チームでお題を工夫して伝えることで、役割分担・情報共有・表現力を高めます。仲間同士の理解が深まり、雰囲気が和みます。
準備
- 人数:4~6人程度のチームが望ましい
- 用具:お題カード、タイマー、メモ用紙、簡単な小道具(任意)
- お題例:商品の紹介、旅行プラン、架空のサービスなど
- 条件例:必ず3つのキーワードを入れる、30秒以内にまとめる、身振りを2回以上使う
進め方
- チームごとにお題カードを引く。
- 制限時間(例:10分)で企画を練る。役割を決めると効率が上がります。
- 順番にプレゼン(例:1チーム3分)。条件を満たしているか審査する人を置く。
- 発表後、他チームから質問を受ける。短いフィードバックを行います。
時間配分の目安
- 準備:10分
- 発表:チームあたり3分
- フィードバック:発表ごとに2分
評価とフィードバック方法
- 観点:条件達成度、分かりやすさ、創造性、協力の様子
- 投票やチェックリストで可視化すると盛り上がります。
注意点と工夫例
- 条件は難しすぎないように調整する。
- 内向的な人が発言しやすい役割(資料作成やアイデア出し)を用意する。
- 笑いを取りに行くと雰囲気が緩みすぎる場合は時間や評価でバランスを取る。
バリエーション
- 制約を増やして難度を上げる(言葉数制限、異なる視点でのプレゼン)
- 全員が一文ずつ付け加えていく即興プレゼン形式
以上の流れで、条件プレゼンはコミュニケーションを活性化し、チームワークを育てます。