リーダーシップとマネジメントスキル

PMBOKガイド第6版を徹底解説!基礎から応用までわかりやすく紹介

PMBOKガイド第6版徹底解説:10の知識エリアと5つのプロセス群で学ぶ世界標準のプロジェクトマネジメント

皆さんは「プロジェクトマネジメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。複数の人が関わり、一定の期間内で目標を達成するためには、きちんとした進行管理が欠かせません。そんな“プロジェクト運営のコツ”を体系的にまとめたものが、PMBOK(ピンボック)ガイドです。PMBOKガイドは、アメリカのプロジェクトマネジメント協会(PMI)が世界中の実務家の知見をもとに作った、世界標準の参考書とも呼べる存在です。

第6版は2017年に登場し、主に10の「知識エリア」と5つの「プロセス群」という2つの柱でプロジェクト管理を整理しています。これにより、どのような業種や規模のプロジェクトでも、混乱せずに円滑な進行ができるようガイドしています。

具体的に「知識エリア」とは、プロジェクトを運営するうえで押さえておきたい分野(たとえば、スケジュール管理やコスト管理など)です。そして「プロセス群」は、プロジェクト開始から終了までに行うおおまかな行動の流れのことです。たとえば「計画を立てる」「実際に行動する」など、皆さんにも馴染み深い活動に置き換えることができます。

このように、PMBOKガイドは幅広い守備範囲で世界中のプロジェクト管理の土台となってきました。次の章では、第6版が持っている大きな特徴について詳しく紹介します。

PMBOKガイド第6版の特徴

PMBOKガイド第6版では、プロジェクトマネジメントの知識を「10の知識エリア」と「5つのプロセス群」にきれいに分類しています。この枠組みのおかげで、複雑なプロジェクト管理の考え方を整理しやすくなっています。

10の知識エリアというのは、たとえば「スケジュール管理」や「コスト管理」、「リスク管理」など、プロジェクトを運営する上で欠かせない要素です。一つひとつ掘り下げられているため、それぞれの分野でどんな作業や考え方が求められるのかが分かりやすく学べます。

一方、5つのプロセス群は、プロジェクトの始まりから終わりまでを「どの順番で何をすればよいか」に分けたものです。たとえば、計画を立てる段階と実際に作業する段階を分けているため、それぞれの場面で必要な管理手法が明確です。これにより、仕事の流れや段取りをイメージしやすくなります。

第6版は約1,000ページ以上にもわたっていて、現場での具体的なノウハウや実例、注意点なども盛り込まれています。そのため、初心者はもちろん、経験豊富なプロジェクトマネージャーでも参考にできる幅広さがあります。また、現在のPMP(Project Management Professional)試験でも、この体系化された知識が重要な出題範囲として扱われています。

次の章では「10の知識エリア」について詳しくご紹介します。

10の知識エリア

1. 統合マネジメント

統合マネジメントは、プロジェクト全体をまとめて最適な方向に導く役割を担います。例えば複数の計画や変更が発生したとき、プロジェクトリーダーがバランスを取りながら調整するイメージです。目的は、すべての作業が無駄なく連携し、思い描いたゴールに近づくことです。

2. スコープマネジメント

スコープマネジメントでは「何を作るか」「どんな作業が必要か」を明確にします。たとえば家を建てる場合、どんな間取りにするか、設備は何が必要か、といった具体的な範囲をはっきりさせるイメージです。これにより、後から「こんな作業も必要だった」といった抜け漏れを防ぎます。

3. スケジュールマネジメント

スケジュールマネジメントでは、プロジェクト内の作業をいつまでに終わらせるかを計画し、管理します。例えば旅行の計画表を作るとき、目的地ごとの滞在時間や移動時間を調整するようなものです。遅れが出ないよう工夫が求められます。

4. コストマネジメント

コストマネジメントは、プロジェクトにかかるお金を計算し、使いすぎないように管理します。住宅建設の場合、予算を決めて材料費や人件費をチェックする作業です。予想外の出費を避けるためにも欠かせません。

5. 品質マネジメント

品質マネジメントは、完成品の品質を保つために必要です。例えば料理でレシピや味見を行うことで、期待どおりの味を守るのと同じです。基準を決め、きちんと守られているかを確認します。

6. 資源マネジメント

資源マネジメントは、必要な人やモノを計画し、効率よく使います。大きなイベント準備でスタッフの人数や必要な道具を揃えるのと同じく、人員配置や物資調達を管理します。

7. コミュニケーションマネジメント

コミュニケーションマネジメントは、関係者全員に情報が正しく伝わるようにします。例えば学校で学級通信を配布するのと同じく、情報の伝達手段やタイミングを考えます。

8. リスクマネジメント

リスクマネジメントは、万が一のトラブルに備えておく作業です。天気が急変する予報が出たときに対策を立てるように、起こりうる問題を予測し、事前に準備します。

9. 調達マネジメント

調達マネジメントは、外部の会社やサービスに作業を頼むときのルールづくりです。部品をお店で買う、作業を専門業者に外注するなど、必要なモノやサービスを円滑に調達します。

10. ステークホルダーマネジメント

ステークホルダーマネジメントは、プロジェクトに関わる全員――発注者や利用者、作業スタッフなど――の要望や意見をうまく取り入れます。みんなの協力が得られるようにすることが大切です。

次は、5つのプロセス群についてご説明します。

5つのプロセス群

PMBOK第6版では、プロジェクトを進める手順を「立上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」の5つのグループで整理しています。これにより、プロジェクトを段階ごとにわかりやすく管理できるようになります。ここでは、それぞれのプロセス群について、日常の例えも交えてご紹介します。

立上げ(Initiating)

プロジェクトのスタート地点です。「何を」「なぜ」やるのか、最初に目的やゴールを明らかにします。例えば、学校の文化祭を開催する時、どんなイベントにしたいか方針を決めるイメージです。

計画(Planning)

目標を達成するために、具体的な手順やスケジュール、必要な人やお金を考えます。たとえば文化祭なら、出し物の内容、予算、準備スケジュールをみんなで話し合って計画を立てます。

実行(Executing)

決めた計画に沿って、実際に作業を進めていきます。文化祭の準備期間に、装飾を作ったり、リハーサルをしたりといった作業にあたる部分です。

監視・コントロール(Monitoring and Controlling)

計画どおり進んでいるか、問題は発生していないかを常にチェックします。遅れやトラブルがあれば、早めに対処策を考えて修正します。文化祭準備で、スケジュールが遅れていないかを確認し、必要なら友達に協力を頼んだりするイメージです。

終結(Closing)

プロジェクトが終わった後の片付けとふり返りです。うまくいった点や改善点をまとめ、次につなげます。文化祭の後に反省会を開き、来年に向けて記録を残すのと同じです。

これらの5つのプロセス群は、プロジェクトを計画的かつ効率的に進めるために欠かせません。次は「PMBOK第6版の活用法と注意点」についてご紹介します。

PMBOK第6版の活用法と注意点

1. PMBOK第6版を使うメリット

PMBOK第6版は、プロジェクトマネジメントの「手順書」として利用できる点が大きなメリットです。たとえば、初めてプロジェクトをリードする場合でも、10の知識エリアや5つのプロセス群に沿って進めれば、何をどう進めるべきか明確に分かります。現場で困ったときにも、該当する知識エリアを参照することで、課題解決の手がかりを見つけやすいです。

2. 注意すべきポイント

一方で、PMBOK第6版は「プロセス重視」です。決まった流れや資料づくりを優先する場面が増えやすく、急な仕様変更や、イレギュラーなトラブル対応には少し弱さがあります。つまり、チェックリストに沿った“型”を守る場面には強い反面、「予想外」の出来事には対応力が問われます。

3. 上手な活用のコツ

実際の職場では、「第6版の手順をベースにしながら自分の現場に合わせてアレンジする」ことが大切です。たとえば、タイムマネジメントを重視する現場ならスケジュール管理プロセスを厚めにしたり、メンバー間の調整が多い場合はコミュニケーションマネジメントを工夫したりできます。また、現場ならではの“成功事例”や“失敗体験”も加えることで、より実用的に活用できます。

4. 公式リソースの活用方法

PMI会員になれば公式サイトから日本語PDF版のPMBOK第6版を無料でダウンロードできます。PDFは電子検索が可能なので、知りたい用語やトピックをその都度ピンポイントで調べるのも便利です。

5. 今後も価値が続く理由

2021年に第7版が出て、体系が大きく変わりましたが、第6版の「実務に直結する手順やコツ」は今も現場で役立っています。固定化されたフローや工程管理が重視されるプロジェクトでは、第6版の知識がベースとなる場面が多いといえます。

次の章に記載するタイトル:第6版と第7版の違い(参考情報)

第6版と第7版の違い(参考情報)

PMBOK第6版と第7版の主な違い

PMBOKガイド第6版は、プロジェクト管理の「何を」「どのように」進めればよいかを、具体的な知識エリアやプロセスとして詳しく整理しています。たとえば、スケジュールの立て方やリスク管理など、日々の業務で役立つ方法が豊富に載っています。

一方、第7版は「どのような価値を生み出すか」「原則に基づいて行動する」という考え方を重視しています。手法や手順よりも、プロジェクトの成果や柔軟な対応力に重点を置き、従来の枠にとらわれないアプローチも積極的に取り入れています。

具体的な変更点とその背景

第6版では10の知識エリアや49のプロセスが整理されていましたが、第7版ではこうした枠組みがなくなり、代わりに12の原則と8つのパフォーマンス領域が柱になりました。これにより、現実の複雑なプロジェクトに柔軟に適用できる指針になったと言えます。

たとえば、第6版で重視されていたスケジュール管理や品質管理は、第7版ではパフォーマンス領域の一部として扱われ、それぞれのプロジェクトにふさわしい方法を自分たちで選べるようになりました。

両者を学ぶメリット

PMP試験や実際の現場では、今も第6版の詳細なプロセスが参考にされるケースが多いですが、第7版の柔軟な考え方もますます重要になっています。特に多様な働き方や予想外の変化への対応力を高めたい方には、第7版もあわせて学ぶことをおすすめします。

これらの違いを知っておくことで、あなた自身のプロジェクト管理スキルをひと回り広げることができるはずです。

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