目次
はじめに
本書の目的
本記事は、効果的なプレゼンテーションの「構成」に焦点を当て、実践で使えるフレームワークをわかりやすく説明します。目的は、伝えたい内容を聴衆に届く形で整理できるようになることです。初心者から経験者まで役立つ構成例を幅広く取り上げます。
誰に向けた記事か
- 企画や報告のプレゼンを作る人
- 会議や面接での説明を改善したい人
- 分かりやすい話し方を身につけたい人
具体例を交えながら丁寧に解説しますので、プレゼンの場数が少ない方も安心して読み進めてください。
本記事の構成と使い方
本書は全11章で構成します。まず基本となる「三段構成」やPREP法を説明し、問題解決型やストーリー型など目的別の組み立て方を紹介します。各章では、構成の考え方、具体的な組み立て方、スライドや話し方への応用例を示します。章ごとに実践で使えるテンプレートや注意点も挙げます。
読み進めるコツ
まずは第2章の基本を押さしてください。基礎が身につくと、後の章で紹介する応用フレームワークを自分の目的に合わせて選びやすくなります。まずは一つずつ試して、実際の場面で使うことをおすすめします。
プレゼン構成の基本「三段構成」
序論(イントロ)
プレゼンの始めは聴衆を引き込むことが最優先です。テーマと目的を最初に明示し、自分の主張(結論)を簡潔に伝えます。つかみには短いエピソード、驚きの数字、問いかけを使います。例:「売上が昨年比30%減。今日はその原因と改善策を提案します。」
ポイント:
- 最初の30秒で主張を出す
- 聴衆の関心に直結する話題を選ぶ
本論(展開)
主張を支える理由や根拠を順序立てて示します。各ポイントは「結論→理由→具体例」の順で述べると分かりやすくなります。データや図表、具体的な事例を使い説得力を高めましょう。一般的には2〜4の主要ポイントに絞ります。
実践例:
1. 原因分析(データ提示)
2. 改善案の比較(メリット・デメリット)
3. 実行計画(スケジュール・担当)
時間配分の目安:本論に約60〜70%を割くと丁寧に説明できます。
結論(クロージング)
最初に述べた主張を再確認し、要点を3つ以内にまとめます。聴衆に期待する行動(次のステップ)を明確に提示してください。最後は印象に残る一言や未来像で締めると効果的です。
締めの例:「まずは来月からA案を試行し、3か月後に効果を評価しましょう。」
注意点とコツ
- 冗長にならないよう主要点に絞る
- スライドは1枚に1メッセージ
- 聴衆の知識レベルに合わせて言葉を調整する
この三段構成はどんな場面でも基本となる骨組みです。まずはこの型を意識して組み立てると、伝わるプレゼンが作りやすくなります。
定番フレームワーク:PREP法
概要
PREP法はPoint(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論・再提示)の4段階で構成されます。最初に結論を示すため、聞き手が主旨をすぐに理解できます。交渉や提案、説得を重視した場面で特に有効です。
各パートの役割と作り方
- Point(結論): 端的に主張を述べます。1文で分かりやすく伝えると効果的です。
- Reason(理由): なぜそう言えるのかを示します。根拠はデータや論理で簡潔にまとめます。
- Example(具体例): 実例や事例、図で説得力を補強します。聞き手がイメージできる具体性を重視します。
- Point(再提示): 最初の結論を繰り返して締めます。聞き手の記憶に残す役割です。
スライド作成のコツ
各スライドは1パートに絞ると分かりやすいです。結論は冒頭スライドで示し、理由は箇条書き、具体例はグラフや短い事例紹介で見せます。最後の結論は次のアクションにつなげてください。
よくある失敗例と対策
- 結論があいまいになる: 最初に「何を伝えたいか」を1文で整理します。
- 具体例が抽象的すぎる: 数値や短いストーリーで具体性を出します。
- 理由が長くなる: 2〜3点に絞り、要点を明示します。
応用例
短時間プレゼンではPoint→Reason→Pointで簡潔に伝えます。複雑な提案ではExampleを複数用意して説得力を高めます。場面に合わせて柔軟に使ってください。
問題解決型構成「問題→原因→解決策」
概要
問題解決型構成は、現状の課題を分かりやすく示し、その原因を論理的に説明して具体的な解決策を提示する流れです。ビジネス提案やプロジェクト報告で説得力を持たせたいときに適しています。
構成の流れ(基本)
- 問題(Problem): 誰にとってどんな困りごとかを短く示します。影響範囲や緊急度を数字で示すと分かりやすいです。
- 原因(Cause): 事象の背後にある要因をデータや観察で裏付けます。複数ある場合は因果関係を整理します。
- 解決策(Solution): 実行可能な対策を提示し、期待される効果や必要なコスト、リスク対策まで示します。
資料作成のポイント
- 問題は具体的に: 「成果が伸びない」ではなく「直近3か月で売上が15%減少」などと示します。
- 証拠を出す: グラフ、アンケート結果、ログなどで原因を支持します。
- 原因は仮説を立てて検証: 5Why(なぜを繰り返す)やデータ照合で深掘りします。
- 解決策は実行性重視: 費用、期間、担当を明示し、優先順位をつけます。
- 成果指標を設定: いつまでに何をどう改善するか(KPI)を示します。
- スライドは1メッセージ1スライド: 視覚で伝える図表を中心にします。
具体例(簡潔)
問題: 月次のECコンバージョン率が2%から1.5%に低下。原因調査: 商品ページの読み込み時間が平均3秒増加、スマホ経由の離脱率上昇。解決策: 画像最適化とキャッシュ導入(3週間、想定コストX円)、導入後のCVR改善をKPIに設定。
注意点
- 原因を一つに絞り込み過ぎないでください。複合要因が多いことを前提に分析します。
- 責任追及のトーンは避け、改善に向けた建設的な提案にします。
- データ不足は仮説として明示し、追加調査の計画を提示してください。
ストーリー型構成
1. 状況設定(導入)
場面や登場人物、背景をはっきり示します。聞き手が共感しやすい情報を選び、具体的な数字や短いエピソードで状況を描写します。例:小売店の売上が半年で20%減少した顧客の声紹介。
2. 展開(葛藤・課題)
問題が深刻になる過程や利害の対立を示します。原因や障壁を順序立てて説明し、聞き手の関心を高めます。具体例や短い対話形式を挟むと臨場感が出ます。
3. クライマックス(転換点)
解決に向かう決定的な気づきや施策を提示します。ここで主張の核を明確にし、根拠や期待される効果を示します。ビフォー・アフターを比較すると説得力が増します。
活用のポイント
- ペース配分を意識し、導入は短め、展開で深掘り、クライマックスで力を入れます。
- ビジュアルは場面を補強する写真や図を中心に使います。
- 聴衆の想像を促す言葉を使い、参加を促す問いかけを入れます。
スライド例(短い流れ)
- タイトル+状況の一行
- 登場人物と背景
- 問題の具体例
- 原因の分析
- 転換点と提案
- 期待される効果と次のアクション
注意点:物語が冗長にならないよう要点を常に意識してください。
トピカル構成
概要
トピカル構成は、テーマの全体像を簡潔に示し、その後に複数のトピックを順に詳しく説明し、最後に関連性や全体像を明確にする流れです。製品の機能紹介や市場要素の比較など、情報量が多い場面に向きます。
使う場面と利点
- 複数の項目を分かりやすく並べたいとき
- 聴衆が各トピックを個別に理解する必要があるとき
利点は、各トピックに深掘りする余地を残しながら全体像を保てる点です。
構成の流れ(基本)
- 冒頭で全体マップを示す(何を扱うかを箇条書き)
- 各トピックを順に解説(目的→要点→具体例)
- トピック間の関連を示す(つなぎの文を用意)
- 最後に全体の意味を整理する
実践のコツ
- トピックは論理的かつ時間的に並べる
- ひとつのスライドに情報を詰め込みすぎない
- 各トピックで同じサイクル(問題→解決例→結論)を繰り返すと聞きやすくなります
よくある失敗と対策
- 順序がばらばら:最初にマップを示し優先度で並べ直す
- 詳細が偏る:各トピックに割く時間を決めて管理する
チェックリスト
- 全体マップはあるか
- 各トピックに目的と結論があるか
- トピック同士のつながりは示したか
階層的・体系的構成
概要
階層的・体系的構成は、情報を「全体→主要項目→詳細」という階層で整理して伝える方法です。複雑な組織図、製品機能、業務フローなどで使うと分かりやすくなります。まず全体像を示し、次に各階層を順に説明します。
活用シーン
- 組織紹介や役割分担の説明
- 製品の機能分解やサービス構成の提示
- システムや業務プロセスの流れの説明
作り方(手順)
- 全体マップを用意する:まず1枚で全体構造を示します。視覚的に関係性が分かる図にします。
- 階層ごとにスライドを分ける:各スライドで1つの階層に集中します。詳細は箇条書きで整理します。
- 深掘りは一方向に行う:上位→下位の順で説明し、戻りながらの枝分かれは最小限にします。
スライド作成のコツ
- 図はシンプルに:線やボックスを統一したデザインにします。
- ラベルを明確に:誰が何をするか、どの機能かを一言で示します。
- 色で階層を区別する:同じ色は同じ階層と認識させます。
具体例
製品説明なら「製品概要(全体)→コア機能→各機能の利点と使用例」の順にスライドを作ります。組織説明なら「組織図(全体)→部門ごとの役割→主要メンバー紹介」とします。
この構成は聞き手が全体像を把握しつつ、必要な部分だけ深掘りできる点で有効です。
その他のフレームワーク
以下では、プレゼンで使えるそれぞれの短いフレームワークを分かりやすく説明します。
DESC法(Describe → Express → Suggest → Choose)
Describe:まず事実や状況を具体的に描写します。明確で主観を避けます。
Express:自分の感じたことや影響を伝えます。感情と理由を短く述べます。
Suggest:改善案や提案を示します。実行可能な案に絞ります。
Choose:選択肢を提示して相手に選んでもらいます。
例:会議での進行遅延について、事実→影響→改善案→選択肢を示す。
IREP法(Issue → Reason → Evidence → Point)
Issue:議論の争点を最初に示します。
Reason:主張の理由を簡潔に述べます。
Evidence:データや事例で裏付けます。
Point:結論を明確にまとめます。
使用場面は意思決定や説得が必要な場面です。例として新規導入の是非を論証する構成があります。
FAB法(Features → Advantages → Benefits)
Features:製品やサービスの特徴を示します。
Advantages:他と比べたときの優位点を説明します。
Benefits:受け手が得られる具体的な利益を伝えます(ここが最も重要です)。
例:バッテリー長持ち(特徴)→持ち運びやすい(優位)→外出先で充電不要で業務が止まらない(便益)。
使い分けのポイント
DESCは対話的で合意形成に向きます。IREPは論理的な説得に強く、FABは製品・営業向けに最適です。いずれも結論を先に示し、具体例や数字で裏付けると伝わりやすくなります。
プレゼン構成の選び方・アレンジ
まず目的をはっきりさせる
プレゼンの目的を最初に決めます。説得したいのか、説明したいのか、共感を得たいのか、情報を正確に伝えたいのかで構成は変わります。例えば「製品を買ってもらう」ならPREPや問題→解決策が有効です。技術的な仕組みを説明する場合はトピカルや階層的構成が適しています。
聴衆を意識して選ぶ
聴衆の知識量、関心、立場でアレンジします。初心者が相手なら導入と背景を丁寧に、専門家が相手なら結論を先に示し詳細に入ります。時間が短ければ三段構成で簡潔に伝えます。
フレームワークの組み合わせ方
複数の枠組みを組み合わせると効果的です。例:
- 冒頭はストーリーで興味を引き、その後PREPで説得する
- 問題→原因→解決策を示した後、トピック毎に深掘りする
組み合わせる際は流れを単純に保ち、章ごとの目的を明確にします。
アレンジの具体例
- 営業:導入で共感(ストーリー)→問題提示→解決策(メリット強調)→行動喚起
- 社内報告:結論→根拠(階層的)→リスクと対策→次のステップ
- セミナー:イントロ(興味付け)→トピカル分割で学びを整理→まとめで応用例紹介
実務的なチェックリスト
- 目的に対して一番伝えたいポイントを1つに絞る
- 聴衆の反応を想定してスライドを調整する
- 時間配分を決め、各パートに割り当てる
- つなぎ言葉を用意して流れを滑らかにする
- 結びで次の行動を明確にする
最後に
構成は型どおりに使うより、聴衆と目的に合わせて柔軟に変えると伝わりやすくなります。まずは1つのフレームワークを基礎にして、少しずつ自分流のアレンジを加えてみてください。
プレゼン資料作成時のポイント
アウトライン作成
目的(伝えたい結論)を最初に明確にします。聴衆と時間を想定して、冒頭→本論→結論の流れを箇条書きで作ります。各スライドの目的を一行で定義すると構成がぶれません。
スライドごとの役割
- タイトル(誰が何を)
- 目次(流れの提示)
- 現状・課題(なぜ伝えるか)
- 提案・解決策(要点を先に)
- 根拠・事例(図表や数値で裏付け)
- 実行計画・次の一手(具体的なアクション)
- まとめ・質疑案内(締めと連絡先)
デザインの基本
色は原則3色までに抑え、背景と文字は高いコントラストにします。フォントは読みやすいものを選び、サイズ差で見出しと本文を明確にします。余白を活かして情報を整理し、統一したテンプレートを使います。
視覚要素と文字量
図表は簡潔に注目点を強調します。写真やアイコンは意味を補うものだけ使います。スライドは「一枚一メッセージ」を心がけ、本文は短い箇条書きで要点を示します。
最後のスライドと準備
最後は要点の再提示と具体的な次のアクション、連絡先や質疑の案内で締めます。発表前に時間配分を確認し、PDF化・フォント埋め込み・バックアップを用意しておくと安心です。
有名企業やAI活用の構成例
はじめに
ChatGPTなどAIと、有名企業の資料デザイン例を組み合わせると、用途別に使いやすいテンプレートが作れます。営業提案、社内研修、学会発表といった目的ごとに構成を用意すると便利です。
有名企業の構成の特徴(参考例)
- Apple風:メッセージを絞り、ビジュアルで見せる。スライドは少なく、キーとなるフレーズを強調します。
- Google風:データとストーリーを両立。根拠となる数値を図表で示し、論理的に進めます。
- マーケティング系企業:課題→インサイト→施策→効果予測の流れで説得力を高めます。
AI(ChatGPT等)を使った構成テンプレート例
- 営業提案用プロンプト例:"目的・課題・提案・費用・次のアクションの5項目で、10枚分のスライド構成案を作ってください。各スライドに要点を3つずつ挙げてください。"
- 社内研修用プロンプト例:"入門向け60分研修の構成を作成。導入・理論・演習・Q&Aの時間配分とスライド要点を示してください。"
- 学会発表用プロンプト例:"口頭発表10分の構成を、背景→目的→方法→結果→考察でまとめ、各パートのキーメッセージを作成してください。"
実践手順
- 目的を明確にする。2. 参考企業の“見せ方”を選ぶ。3. AIに大枠を作らせる。4. 自分のデータと色味に合わせて調整。5. 最後に実際に声に出して練習する。
注意点
AIの出力はあくまで下書きです。事実確認と受け手への言葉合わせを必ず行ってください。また、デザインは著作物に配慮しつつ参考にしてください。