プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントと7つ道具の基本活用術完全ガイド

目次

はじめに

この章の目的

プロジェクトには、遅延・手戻り・コミュニケーション不足など、日々の小さなつまずきが積み重なります。道具を使って事実を見える化し、原因を整理し、打ち手を選ぶと、無理なく改善できます。本記事は、日本の品質管理で磨かれてきた「QC七つ道具」と「新QC七つ道具」を、プロジェクトマネジメントにそのまま持ち込める形で紹介します。

なぜ今、QCの道具なのか

QCの道具は、現場で誰でも使えるように作られています。難しい統計や専門用語を極力使わず、紙とペン、スプレッドシート、オンラインホワイトボードがあれば始められます。意思決定の根拠を数字や図に置き換えることで、感覚や経験に偏らないチーム運営がしやすくなります。

どんな課題に効くのか(身近な例)

  • タスクが遅れる:遅延理由を一覧にし、件数の多い順に並べると、どこから手を打つべきか分かります(例:重要度順に並べた棒グラフ=パレート図)。
  • 不具合が繰り返す:起きた状況・人・モノ・方法などに沿って原因候補を広げ、関連を整理すると、再発防止の糸口が見つかります(例:原因を書き出して枝分かれで整理する図=特性要因図)。
  • 認識が食い違う:事実と意見を分けて時系列に並べると、合意形成が進みます(例:出来事を線で並べる=時系列管理の図)。

本記事で得られること

  • 主要な道具の意味と、プロジェクトでの使い所
  • 会議や日次運営にすぐ組み込める手順
  • 小さく試して効果を測るための考え方

読み方と進め方

  • まず全体像をつかむ:各道具の役割を軽く把握します。
  • 手元の課題に合わせて選ぶ:遅延・品質・合意形成など、目的に合うものから一つ試します。
  • 小さく回す:1〜2週間のミニ実験として使い、結果を見て続けるか調整します。
  • チームで共有する:図や表を見ながら話す時間を設け、合意を得て次の一手を決めます。

最初に押さえたいポイント

  • 事実ベース:感想ではなく、件数・日時・頻度などのデータで語ります。
  • 見える化:図や表で一目で状況が伝わる形にします。
  • 絞り込み:全部に手を出さず、影響が大きい少数に集中します。
  • 継続:一度で完璧を狙わず、改善→確認→調整のサイクルを回します。

ミニケース:週次会議のやり直し

あるチームは、週次会議が長く結論が出ませんでした。まず議題ごとの時間超過理由を集め、件数の多い順に並べました。トップは「情報不足」。そこで、会議前に必ず準備するチェックリストを作り、1か月運用しました。会議時間は平均で20%短縮し、決定待ちのタスクも減りました。このように、データ化→可視化→一点集中→効果確認の流れを、小さく回すだけで改善が進みます。

この先の流れ

次章では、現場で長く使われてきた基本の道具を、目的別に分かりやすく紹介します。名前だけ聞いたことがある方も、図と具体例で使いどころがすぐ分かるように整理します。

QC七つ道具とは?

QC七つ道具とは?

前章の振り返り

前章では、この連載の狙いと、品質を高める考え方が日々の仕事やプロジェクトの成功に役立つことをお伝えしました。難しい理論よりも、現場で使える道具を学ぶ方が成果につながりやすいという流れを示しました。

QC七つ道具の全体像

QC七つ道具は、身の回りの問題を「見える化」して、原因を探り、次の一手を決めるための基本ツールです。製造業で広まりましたが、サービスやオフィス業務、プロジェクトマネジメントでも活躍します。大きな特徴は、特別なソフトや高度な統計を使わずに、紙とペンや身近な表計算で始められることです。

対象となる7つの道具は次の通りです。
- グラフ(折れ線や棒グラフなど)
- パレート図
- ヒストグラム
- 散布図
- 管理図
- 特性要因図(フィッシュボーン)
- チェックシート

7つの道具を一言で

  • グラフ:数値の増減や比較をひと目で把握します。例)月ごとの問い合わせ件数の推移。
  • パレート図:影響が大きい原因を上位から並べます。例)クレームの種類を並べ、上位2~3項目に集中対策。
  • ヒストグラム:値のばらつき方を見ます。例)納期遅れ日数がどの範囲に集中しているかを確認。
  • 散布図:2つの項目の関係を探ります。例)テスト時間と不具合件数の関係を見る。
  • 管理図:工程や作業が安定しているかを監視します。例)毎日の処理時間が許容範囲内かを確認。
  • 特性要因図:問題の原因を広く洗い出します。例)遅延の原因を「人・方法・道具・環境」などに分けて整理。
  • チェックシート:抜け漏れを防ぎ、データを簡単に集めます。例)作業手順の完了チェックや不具合の発生場所の記録。

なぜ役立つのか

  • 状況を共通の見方で共有できます(感覚のズレを減らします)。
  • 重要な箇所に資源を集中できます(ムダな対策を減らします)。
  • 原因と結果を切り分けやすくなります(思い込みの議論を減らします)。
  • 簡単に始められ、すぐに次のアクションへつなげられます。

どんな場面で使うか

  • 立ち上げ時:チェックシートで現状データを集め、グラフで全体像をつかみます。
  • 計画時:パレート図で優先課題を決め、特性要因図で対策の方向性を整理します。
  • 実行時:散布図で施策の効き目を探り、管理図で安定運用を見守ります。
  • 振り返り時:ヒストグラムでばらつきを確認し、次回の改善点を特定します。

よくある誤解とコツ

  • 工場以外でも有効です。問い合わせ対応、社内申請、開発の進捗管理など、どの業務でも使えます。
  • データが少なくても始められます。まずはチェックシートで集め、簡単なグラフにして見ることが第一歩です。
  • 道具は組み合わせて使います。例)チェックシートで集める→パレート図で優先度を決める→特性要因図で原因を深掘りする、の順で進めます。

使い方の基本フロー

1) データを集める(チェックシートなど)
2) 見える化する(グラフ、パレート図、ヒストグラム、散布図)
3) 安定性や異常を点検する(管理図)
4) 原因を整理する(特性要因図)
5) 対策を決め、効果を再測定する

次の章に記載するタイトル:各道具の詳細と使い方

各道具の詳細と使い方

前章では、QC七つ道具の全体像と役割をざっくり紹介し、「現場の状況を見える化し、原因を探り、改善へつなげる基本セット」であることを確認しました。本章では、それぞれの道具を具体的にどう使うかを、手順と小さな例で解説します。

グラフ(折れ線・棒・円など)

目的:データの傾向や変化、構成比を直感的に把握します。

主な使いどころ
- 折れ線グラフ:時間とともに増減を見る(例:週ごとの問い合わせ件数)
- 棒グラフ:項目ごとの大きさを比較(例:店舗別売上)
- 円グラフ:全体に対する割合(例:費用の内訳)

使い方の手順
1) 目的を一つに絞る(増減を見るのか、構成比を見るのか)。
2) 尺度と期間を決め、データを整える。
3) 軸や凡例を簡潔にし、必要最小限の色で描く。

小さな例
- 月別の問い合わせ件数を折れ線で並べ、繁忙期や落ち込みの時期を把握します。

コツ
- 1つのグラフにメッセージは1つ。補助線や注釈は最小限で要点に集中します。

パレート図

目的:影響が大きい少数の要因を見つけ、優先順位を付けます。

使い方の手順
1) 問題の分類を決める(例:不具合の種類、問い合わせの理由)。
2) 件数または損失額を数え、降順に並べる。
3) 棒グラフと累積比率の線を同じ図に描く。
4) 山の前半(累積80%前後)に集中して対策を考える。

小さな例
- 返品理由を並べると「サイズ違い」「発送遅れ」で全体の7割を占める。まずこの2点に資源を集中します。

コツ
- 分類は現場で迷わず選べる粒度に。曖昧だと効果がぼけます。

ヒストグラム

目的:数値データのばらつきや偏りを見つけ、安定化や標準化のヒントを得ます。

使い方の手順
1) 測定対象と単位を決め、十分な件数を集める。
2) 幅(ビン)を決めて度数分布を作る。
3) 形を観察する(左右非対称、山が複数、極端値の有無など)。

小さな例
- 作業時間の分布を描くと二つ山。新人と熟練で手順が違う可能性に気づき、標準手順を整えます。

コツ
- ビンを細かくしすぎるとギザギザで読みにくくなります。概ね10区間前後から試します。

散布図

目的:二つの変数の関係(相関)を視覚的にとらえます。

使い方の手順
1) 関連がありそうな二つを選び、対(ペア)でデータを集める。
2) 横軸・縦軸を決め、点を打つ。
3) 点の向きや広がりを観察し、関係の強さと方向を判断する。

小さな例
- 広告費と申込数の散布図で右上がりの傾向。一定額を超えると伸びが鈍る範囲も見えて、予算配分の目安になります。

コツ
- 点が帯状に並べば関係が強め、円形に広がれば関係は弱め。外れ値は別途確認します。

管理図

目的:工程や業務の状態が安定しているか、異常がないかを継続的に見張ります。

使い方の手順
1) 時系列でデータを集める(例:日々の不良率、処理時間)。
2) 平均の線(中心線)と上下の目安線(管理の上限・下限)を引く。
3) 点が線の外に出ていないか、同じ側に続いていないか、同じ方向に連続していないかを確認する。

小さな例
- 毎日のコール待ち時間を管理図で監視。数日連続で上振れのサインを捉え、要員計画を前倒しで見直します。

コツ
- 単なる増減ではなく「いつもと違う動き」を早く見つける道具です。点が外れた日だけでなく、直前の変化の流れも見ます。

特性要因図(魚の骨・石川ダイアグラム)

目的:問題の原因候補をもれなく洗い出し、真因に近づきます。

使い方の手順
1) 右側に「問題(特性)」を書き、左から背骨を引く。
2) 太い骨として主な切り口を置く(例:人・方法・機械・材料・環境・測定)。
3) 各骨に思いつく要因を付箋などで出し切り、さらに「なぜ?」を重ねて深掘りする。

小さな例
- 納期遅れをテーマにすると、「引き継ぎの抜け」「部材発注の遅れ」「テスト待ち」などが可視化。影響が大きい根っこに対策を集中します。

コツ
- 会議では批判を控え、量を優先して出し切ると良い案が出ます。その後で絞り込みます。

チェックシート

目的:点検や確認事項を見える化し、抜け漏れを防止します。

使い方の手順
1) 目的を明確にし、現場で使う紙やフォームに項目を並べる。
2) 記入方法を統一する(○×、数、日付、イニシャルなど)。
3) 実施の頻度と保管方法を決め、誰でも同じように使えるようにする。

小さな例
- 出荷前チェックシートで「品番・数量・梱包・伝票」の4項目を確認。作業者がその場で印を付け、記録を残します。

コツ
- 現場で書きやすいレイアウトに。後で集計できるよう、自由記述は最小限にします。

道具の選び方のヒント

  • 傾向を見たい:グラフ
  • 重点項目を見極めたい:パレート図
  • ばらつきを知りたい:ヒストグラム
  • 関係性を探りたい:散布図
  • 安定性を監視したい:管理図
  • 原因を洗い出したい:特性要因図
  • 抜け漏れを防ぎたい:チェックシート

プロジェクトマネジメントでの活用事例

プロジェクトマネジメントでの活用事例

前章の振り返りと本章のねらい

前章では、QC七つ道具それぞれの目的、作り方、読み取り方の基本を整理しました。用語を覚えるだけでなく、データを集めて見える化し、事実で話す姿勢が大切だと確認しました。本章では、その道具をプロジェクトマネジメントの現場でどう使うかを、製造業とサービス業の事例で具体的に紹介します。

事例1:製造業の不良削減プロジェクト

  • 目標設定:出荷不良率1.5%を3か月で0.5%へ。コストと再発防止も重視します。
  • 進め方の流れ:
    1) 立ち上げ:プロジェクト憲章を簡潔に作り、工場長・品質・生産の合意を取ります。
    2) 計画:ライン別・時間帯別にデータを集める計画を決め、担当を割り当てます。
    3) データ収集:チェックシートで不良の種類、発生時間、場所、担当工程を現場が記録します。
    4) 重点化:パレート図で不良の上位要因(例:ハンダ不良が全体の56%)を特定します。
    5) 原因探索:特性要因図で「人・機械・方法・材料・測定・環境」に分けて真因を洗い出します。
    6) 対策実行:治具の固定方法を改善、部材の受入基準を明確化、作業手順の教育を実施します。
    7) 効果確認:管理図でばらつきと異常を監視し、改善後も安定しているかを週次で確認します。
  • 現場の工夫例:
  • チェックシートは1枚1工程で午前/午後に分けると記入漏れが減ります。
  • パレート図は累積比率80%の境目に線を引き、上位要因に集中します。
  • 管理図は「線を越えたら即確認」「連続で同じ方向なら注意」などの簡単ルールを掲示します。
  • 成果イメージ:不良率0.4%達成、手直し時間30%減、教育手順の標準化を他ラインへ横展開。

事例2:サービス業(コールセンター)の応答時間改善

  • 目標設定:平均応答時間90秒を45秒へ。顧客満足とオペレーター負荷の両立を狙います。
  • 進め方の流れ:
    1) データ可視化:ヒストグラムで応答時間のばらつきを表示。時間帯や曜日で形の違いを確認します。
    2) 関係分析:散布図で「手順の遵守度」「スクリプトの長さ」「新人/ベテラン」と応答時間の関係を見ます。
    3) 対策実行:ピーク時間のシフト再配置、スクリプトの分岐を簡素化、要件ヒアリングの順番を入れ替えます。
    4) 効果確認:ヒストグラムの山が左に寄るか、長い尾が短くなるかを週次で確認。必要に応じて管理図で安定性も見ます。
  • 現場の工夫例:
  • ダッシュボードに直近1週間のヒストグラムを掲示し、朝会で1分だけ振り返ります。
  • 散布図で相関が弱い施策は無理に続けず、効果の高い組み合わせに資源を集中します。
  • 成果イメージ:平均45秒達成、一次解決率+8%、教育期間を2週間短縮。

プロジェクトマネジメントへの落とし込み

  • 品質計画とコントロール:
  • どの指標を改善するか(不良率、応答時間など)を明確にし、対応する道具を選びます。
  • レビューの頻度(例:週1回のグラフ更新)をスケジュールに組み込みます。
  • リスクと前提:
  • データの偏り(忙しい時間帯の記録漏れなど)を想定し、サンプル数と期間を事前に決めます。
  • 変更の影響(対策で別の工程に負荷が移るなど)を監視項目に入れます。
  • コミュニケーション:
  • グラフをA3一枚にまとめ、誰が見ても同じ結論になる状態を作ります。
  • 会議では「事実→解釈→行動」の順で話し、論点を整理します。

導入のコツ(小さく始めて早く学ぶ)

  • 目的・指標・期間を1枚に書く。
  • チェックシートは記入時間30秒以内の設計にする。
  • グラフは現場の目線の高さに掲示する。
  • 対策は2週間で小さく試し、翌週のグラフで良否を判断する。

失敗を避けるチェックリスト

  • 指標の定義は全員同じか(例:「不良」の数え方)。
  • サンプル数と期間は足りているか。
  • 上位要因に集中しているか(80%の線を越えたら一旦やめる)。
  • 対策前後のグラフを必ず並べて比較しているか。
  • 維持の仕組み(標準書、教育、監視)があるか。

効果の測り方と定着

  • 定量:不良率、手直し時間、応答時間、再発率、クレーム件数、コスト削減額。
  • 定性:会議時間の短縮、現場の納得感、属人化の低減。
  • 成果は月次で1枚に集約し、別チームへ横展開します。

新QC七つ道具とは?

新QC七つ道具とは?

前章では、QC七つ道具を使って数値データから傾向をつかみ、工程の遅れや不良の改善につなげる事例を紹介しました。データの見える化で課題を発見し、次の一手を決める流れを学びました。

新QC七つ道具の全体像

新QC七つ道具は、言葉で集めた情報や、要因が複雑にからむ状況を整理して見える化するための手法です。アンケートの自由記述、会議のメモ、現場の声、施策アイデアなど、数値にしにくい素材を扱います。目的は、ばらばらの情報から「関係」「優先」「道筋」をつくり、合意形成と実行計画に結びつけることです。

7つの手法と役割(やさしい例つき)

  • 親和図法:似た内容の意見や事実をグループにまとめ、テーマを見つけます。例)カスタマーレビューを付箋に書き出し、「操作が分かりにくい」「配送が遅い」などのまとまりを発見します。
  • 連関図法:原因と結果のつながりを矢印でたどり、核心に近づきます。例)「納期遅延」→「見積もり甘い」→「要件不明確」→「ヒアリング不足」のように、因果の筋道を描きます。
  • 系統図法:目標を達成する手段を枝分かれで掘り下げます。例)「顧客満足向上」→「問い合わせ対応の質向上」→「標準回答の整備」「応答時間短縮」→「チャットボット導入」など、実行策まで分解します。
  • マトリックス図法:二つ以上の観点で項目を交差させ、関係や優先を比べます。例)「施策」×「コスト・効果・リスク」で◎○△を付け、バランスの良い選択を見つけます。
  • アローダイアグラム:作業の順番と依存関係を矢印で表し、重要な経路(クリティカルな流れ)を把握します。例)「設計→試作→評価→修正→量産」の流れを描き、全体所要時間を見積もります。
  • PDPC法(プロセス決定計画図):計画の各ステップで起こりうる問題を想定し、あらかじめ対策を用意します。例)「出荷テスト」→「機材不足の恐れ」→「予備機材を手配」のように、転ばぬ先の杖を用意します。
  • マトリックスデータ解析法:マトリックス表の数値から関係の強さを見つけます。例)「満足度項目」×「利用頻度」の表を集計し、満足度に効く項目を特定します。

どんな場面で効くのか

  • 問題の正体があいまいで、まず整理が必要なとき
  • 関係者や要因が多く、話がかみ合わないとき
  • 計画の抜け漏れやリスクを事前に洗い出したいとき
  • 複数の選択肢から、納得感のある優先順位を決めたいとき

QC七つ道具とのちがい(使いどころ)

  • QC七つ道具:数値の傾向をとらえるのが得意。例)ばらつき、頻度、相関を見る。
  • 新QC七つ道具:言葉の情報や複雑な関係を構造化するのが得意。例)原因の筋道、実行計画、選択肢の比較を明確にする。
    両者をつなぐと、発見(数値)から設計・実行(構造化)まで流れが滑らかになります。

進め方の基本ステップ

  1. 目的を一文で決めます(例:「遅延の原因を整理し対策案を出す」)。
  2. 素材を集めます(発言メモ、アンケート、ログなど)。
  3. 個人で書き出します(1カード1情報、主語と動詞を入れる)。
  4. チームで整理します(グループ化、矢印や軸で並べ替え)。
  5. 図に仕上げます(写真に残し、清書は必要最小限)。
  6. 結論と次のアクションを決め、担当と期日を付けます。

成果を出すコツ

  • 矢印や記号の意味を最初に決め、途中で変えない
  • 抽象語は具体例に置き換える(例:「品質向上」→「不具合を30%減らす」)
  • 色分けで役割を明確にする(原因=赤、対策=青など)
  • 時間を区切って前進させる(発散15分、収束20分など)
  • 途中で結論に飛びつかず、まず全体像を描く

よくあるつまずきと回避策

  • 情報量が多すぎて迷子になる:目的文に立ち返り、不要なカードを駐在箱に退避します。
  • 言葉がふわっとして伝わらない:数値や具体的な名詞に言い換えます。
  • 因果関係が混線する:時間の順番で並べ直し、矢印の向きをそろえます。
  • 図を作って満足してしまう:最後に「誰が・いつまでに・何をする」を必ず決めます。

次の章に記載するタイトル:新QC七つ道具のプロジェクトマネジメントでの応用

新QC七つ道具のプロジェクトマネジメントでの応用

前章では、新QC七つ道具の全体像やねらい、主な手法(親和図法、連関図法、系統図法、マトリックス図、マトリックスデータ解析、アローダイアグラム、PDPC法)の特徴を概観しました。本章では、それらを実際のプロジェクトでどの場面にどう当てはめるかを、手順と具体例で説明します。

親和図法で要件のバラつきを整える

  • 使う場面: キックオフ直後の意見出しや、顧客ヒアリング後の要件整理に向いています。
  • 手順:
    1) 参加者が1枚1アイデアで付箋に書き出す 2) 発言を控えて静かに似たもの同士を寄せる 3) まとまりに短い名前(テーマ)を付ける。
  • 例: 「アプリが重い」「画面が分かりづらい」「ログインで迷う」などの声を、「性能」「導線」「認証」の3グループに整理します。
  • 成果: 3〜6個のテーマに集約でき、次の優先順位づけが楽になります。
  • コツ: 解決策を書かずに“現象・事実”を短文で書きます。時間制限と沈黙ルールを決めると集中できます。

連関図法で因果を見抜く

  • 使う場面: 遅延や品質低下の“なぜ”を見極めたいときに有効です。
  • 手順:
    1) 現象をカードで並べる 2) 「原因→結果」の向きで矢印を引く 3) 矢印が集中する結節点を主要因候補として丸で強調します。
  • 例: 「設計変更が多い」→「再テスト増加」→「テスト遅延」。一方で「レビュー欠如」→「手戻り増加」→「実装遅延」。矢印が集まる「変更管理の弱さ」が主要因と分かります。
  • 成果: 主要因の優先順位が明確になり、対応の順番を決めやすくなります。
  • コツ: 主観ではなく事実で裏づけます。矢印の太さや記号で影響の強さを表すと議論が進みます。

系統図法で戦略から作業へ落とし込む

  • 使う場面: 目標から実行計画(タスク)までを一気につなげたいときに使います。
  • 手順:
    1) 一番左に目的を書く(例: 「オンボーディング期間を30日短縮」) 2) 目的を実現するための手段を右へ枝分かれ 3) それぞれの手段をさらに具体的な作業に割る、の順で3層程度まで展開します。
  • 例: 「教育内容の見直し」→「動画教材化」→「撮影」「編集」「配信設定」。同時に「現場支援強化」→「FAQ整備」「チャット対応時間延長」など。
  • 成果: WBSのたたき台ができます。各末端の作業に担当と期日を貼れば、すぐに実行へ移せます。
  • コツ: 枝は“名詞+動詞”で短く書き、重複は統合します。

アローダイアグラムで工程と重要経路を明確にする

  • 説明: 作業同士のつながりと所要日数を線で表し、最も長い道筋(クリティカルパス)を見つけます。ここが遅れると全体が遅れます。
  • 手順:
    1) 作業一覧を出す 2) 先に終わっていないと始められない関係を矢印で結ぶ 3) 各作業に所要日数を入れる 4) 最長経路を色で示します。
  • 例: 「設計(5日)→実装(10日)→結合テスト(7日)→リリース」の線が最長なら、そこに人員を優先配置します。
  • 活用: 締切可否の判断、並列化の検討、休暇や外部要因の影響評価に役立ちます。週1で更新すると現実とずれません。
  • コツ: バッファを別タスクで可視化し、節目(マイルストーン)に日付を入れます。

PDPC法で「もしも」に備える

  • 説明: 基本の手順に、起こりうる問題と対処を枝で描き足す方法です。事前に考えた“対応表”を現場に渡せます。
  • 手順:
    1) 標準の進め方を左から右へ並べる 2) 各工程で想定されるトラブルを下に枝分かれ 3) それぞれに予防策・対処策・判断条件・連絡先を付記します。
  • 例: 「外部APIが落ちる」→ 予防: 監視とアラート設定、対処: フォールバック画面表示、判断条件: 5分以上応答なし、連絡: ベンダー窓口とCSリード。
  • 成果: 迷いなく切り替える基準ができ、復旧までの時間を短縮できます。
  • コツ: “起こる確率×影響度”で優先度を付け、上位だけ詳細化します。

マトリックス図・マトリックスデータ解析の簡易活用

  • マトリックス図: たとえば「要件×部署」「リスク×影響度」を表にして関係を見える化します。空欄は責任不明や抜けのサインです。
  • マトリックスデータ解析: 難しい計算に踏み込まず、ヒートマップや平均・最大値で偏りを見つけます。例: 「不具合件数×モジュール」で赤が集中している箇所に重点を置きます。

1日の進め方サンプル(ワークショップ)

  • 午前: 親和図法で意見を整理→連関図法で主要因を特定。
  • 午後: 系統図法で施策を分解→アローダイアグラムで工程化。
  • 夕方: PDPC法で“もしも”を具体化→マトリックス図で責任と期日を確認。
  • 目安: 6〜10人、各60分。用意するものは付箋、ペン、タイマー、オンラインホワイトボードです。

成功のチェックリスト

  • 因果(なぜ起きるか)と対策(どうするか)を混ぜずに描けたか。
  • 文は短く、事実と数字を入れたか(例: 7日、20%など)。
  • 担当者・期日・判断条件を図面に書き込んだか。
  • 更新ルール(頻度・責任者)を決めたか。

QC七つ道具・新QC七つ道具の使い分けと組み合わせ

QC七つ道具・新QC七つ道具の使い分けと組み合わせ

前章のふり返り

前章では、新QC七つ道具をプロジェクトマネジメントに当てはめ、意見を集めて整理し、因果関係を見える化し、計画やリスクに落とし込む手順を紹介しました。会議で合意をつくり、初期計画の質を上げる活用法が中心でした。

基本の考え方:数字はQC、言葉は新QC

  • 数字で現状をつかむ場面はQC七つ道具が得意です(例:不良件数、遅延日数、満足度スコア)。
  • 意見やアイデアを整理する場面は新QC七つ道具が得意です(例:要望の分類、原因関係の整理、計画とリスクの設計)。
  • 決めたいことが「どれからやるか」なら、パレート図(大きい山の特定)やマトリックス図(評価軸で比較)が役立ちます。

PDCAでの使い分け

  • Plan(計画)
  • 新QC:親和図(付箋で意見をまとめる)、連関図(原因・結果のつながりを描く)、系統図(目的→手段を段階化)、マトリックス図(選択肢×評価軸の比較)、PDPC(計画の落とし穴と対策)、アローダイアグラム(工程順序と所要時間)
  • QC:チェックシート(現場で取るデータ項目の設計)
  • Do(実行)
  • 新QC:アローダイアグラムで工程管理とボトルネック把握
  • QC:チェックシートで記録、層別で条件ごとに切り分け
  • Check(確認)
  • QC:ヒストグラム(ばらつき)、散布図(関係の強さ)、パレート図(重点選定)、管理図(プロセスが安定か)
  • 新QC:マトリックス図で評価基準の見直しやバランス確認
  • Act(改善)
  • 新QC:PDPCで再発防止の仕組みを設計
  • QC:管理図で標準化後の安定性を監視

よく使う組み合わせレシピ

  • 顧客の不満を減らす
    1) 親和図で声を分かりやすく束ねる
    2) 連関図で原因のつながりを把握する
    3) マトリックス図で対策案を評価する
    4) パレート図で取り組みの順番を決める
    5) 管理図で効果の定着を確認する
  • 品質のばらつきを抑える
    1) チェックシートで測定項目を決めて集める
    2) 層別で条件ごとに整理する
    3) ヒストグラムで分布を把握する
    4) 散布図で関係性を確かめる
    5) 特性要因図で漏れなく原因を洗い出す
    6) 管理図で維持・管理する
  • 新サービスを立ち上げる
    1) 系統図で目的から手段へ落とし込む
    2) マトリックス図で選択肢を比較する
    3) アローダイアグラムで計画を組む
    4) PDPCでリスク対策を先取りする
    5) チェックシートで現場確認項目を整える

切り替えのタイミングの目安

  • 議論が散らかる時は、親和図で一度「見える化」します。
  • 意見が出そろったら、マトリックス図で選ぶ段階に移ります。
  • 対策が決まったら、チェックシートに変換して測れる形にします。
  • どこから手を付けるか迷う時は、パレート図で大きな山を見ます。
  • 効果が安定しない時は、管理図でプロセスの状態を確かめます。

小さく速く回すコツ

  • 60分で1ラウンドの区切りをつくり、決める/測るを前に進めます。
  • 手書きで十分です。付箋と白紙で始め、後から清書します。
  • 図は「見せるため」ではなく「決めるため」に使います。
  • 会議では新QC中心、現場ではQC中心に置くと進みが速いです。
  • 使うツールは2〜3個に絞り、次のアクションに直結させます。

よくある迷いと対処

  • データがない:仮の基準でマトリックス図を作り、次に取るデータを決めます。
  • 結論が出ない:判断基準を先に合意し、重み付けして比較します。
  • ツールが増えすぎる:今決めたいことに戻り、不要な図は捨てます。
  • 人が多くて進まない:小グループで親和図→代表が連関図に集約します。

次に記載するタイトル:まとめ

まとめ

前章では、目的とデータの性質に合わせてQC七つ道具と新QC七つ道具を使い分け、組み合わせる考え方を紹介しました。冒頭では「数で確かめる」「言葉で関係を整理する」を軸に、プロジェクトの段階ごとに道具を選ぶコツを押さえました。

本シリーズの要点のおさらい

  • QC七つ道具は、数で現状をつかみ原因を絞り込みます(例:チェックシート、グラフ、散布図、パレート図、管理図など)。
  • 新QC七つ道具は、言葉や関係を整理して合意形成を助けます(例:親和図、連関図、系統図、マトリクス図など)。
  • プロジェクトマネジメントでは、段階に応じて使い分けます。立ち上げは親和図で論点出し、計画は系統図で方針整理、実行はパレート図で優先度決め、監視は管理図でブレ確認、終結は特性要因図で振り返り、という流れが使いやすいです。
  • 1つの問いに対して「旧1+新1」を基本ペアにすると考えやすいです。
  • 小さく早く回し、図から次の一手を必ず決めます。したがって、完璧を目指すより試しながら進める方が成果につながります。

明日から使える3ステップ

  1. テーマを1文で決めます(例:「問い合わせ対応が遅い理由を知り、翌月に平均1日短縮する」)。
  2. 道具を選びます(旧:チェックシートやパレート図/新:親和図や連関図)。
  3. 30〜60分で作成→事実と解釈を分けて読み取り→誰がいつ何をするかを決めます。

よくあるつまずきと対策

  • 図を作ることが目的化する:最初に目的を紙の上部に1文で書きます。過去形で「〜が分かったら成功」と具体化します。なお、見た目を整えるのは最後で十分です。
  • データの粒度がバラバラ:定義(単位・期間・数え方)を先に決め、例外は備考に分けます。
  • 根拠の弱い結論になる:図から読み取れる「事実」と「解釈」を分けて箇条書きにします。
  • 作って終わりになる:図の下に「次の一手」を1つだけ書き、期限と担当を入れます。
  • 道具選びで迷う:迷ったら「数(旧)+関係(新)」のペアから始めます。例えばチェックシート+親和図です。
  • 会議が長引く:図を壁に貼り、黙って3分書き出してから発言します。話が散る前に視線を図へ戻します。
  • しかし、用語にこだわり過ぎると前に進みません。名前より「問いに答えるか」を基準にします。

現場で役立つチェックリスト

  • 問いが1文で具体的に書かれている
  • データの定義(単位・期間・数え方)が揃っている
  • 図から読み取れる事実と解釈を分けて記録した
  • 次の一手(誰が・いつまでに・何を)が決まった
  • 学びをチームに共有する場を設定した

さいごに

道具は、感覚に頼らず対話を進めるための共通の「紙」です。チームで1枚作るだけでも、問題の見え方が揃い、合意が早まります。まずは身近なテーマで「旧1+新1」を試し、短いサイクルで改善を重ねてください。続けるほど、現場の問題解決力と進行管理力が確かに高まります。

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