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プロジェクトマネジメントのスペシャリストとは何か
プロジェクトマネジメントのスペシャリストとは、一言でいえば、プロジェクトを成功へ導くための専門知識と技術を持った人のことです。最近では、組織や企業が複雑なプロジェクトを扱う機会が増えています。その中で、特定の目標に向かって進める「プロジェクト」を、計画通りに、かつ効率的にやり遂げるには専門的なスキルが欠かせません。
プロジェクトマネジメントのスペシャリストには、大きく分けて2つのタイプがあります。1つ目は「プロジェクトマネージャー(PM)」です。PMは、プロジェクトの全体責任者であり、品質・コスト・納期といった成果のQCD(Quality・Cost・Delivery)を管理し、チーム全体をまとめてプロジェクトのゴールへと導きます。例えば新しいシステムの開発や、イベントの立ち上げなど、さまざまな現場で活躍しています。
2つ目は「プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)」です。PMOは、複数のプロジェクトを組織全体で管理しやすくするよう標準的なルールを作ったり、PMの仕事をサポートしたりする専門集団です。PMOは、現場で直接手を動かすのではなく、より横断的な立場からプロジェクトの進行を支えます。例えばプロジェクトの進め方をマニュアル化したり、トラブルが起きないような体制づくりに力を入れたりするのが主な役割です。
これらのスペシャリストは、「PMBOK」などのグローバルな標準に基づいた手法を身につけ、プロジェクトを計画、実行、統制する力を発揮します。PMとPMOはいずれも、組織にとって欠かせない存在と言えるでしょう。
次の章では、PM(プロジェクトマネージャー)の役割と業務について詳しくご紹介します。
PM(プロジェクトマネージャー)の役割と業務
1. プロジェクトマネージャーとは
プロジェクトマネージャー(PM)は、プロジェクトを成功に導くためのリーダーです。PMはただ指示を出すだけでなく、プロジェクトの計画から実行、完了まで全体を管理します。また、関係者とのコミュニケーションやトラブル対応も重要な役割です。
2. 具体的な業務内容
PMの業務は多岐にわたります。
- 目的やゴールの設定:まずプロジェクトで何を達成したいのか、目標を明確にします。たとえば「新しいウェブサイトを3か月で公開する」「売上を前年より20%伸ばす」などです。
- 計画の立案:いつまでに誰がどの作業を担当するか、具体的なスケジュールと計画を作成します。エクセルやガントチャートといったツールもよく使います。
- チーム編成と役割分担:プロジェクトに必要なメンバーを集めて、それぞれの強みに合わせて役割を決めます。ITプロジェクトなら、システムエンジニアやデザイナー、テスターなどが入ります。
- 進捗管理と品質チェック:プロジェクトが計画通りに進んでいるかをこまめにチェックします。また、成果物の品質が基準を満たしているかも確認します。
- リスク管理:問題が起こる前に予想し、あらかじめ対応策を考えておきます。例えば「納期遅れの可能性」「予算超過」などを事前に洗い出します。
- 利害関係者の調整:プロジェクトには、クライアントや社内上層部、協力会社など多くの関係者がいます。全員が納得できるように橋渡しするのもPMの大切な仕事です。
3. ITプロジェクトにおけるPMの責任
IT業界では、PMは要件定義(何を作るかまとめる)や設計、開発、テスト、導入までプロジェクトの全工程に関与します。たとえば、顧客から「こういうアプリがほしい」と依頼があれば、まず詳細を聞き出し、必要な人材や工程を計画します。途中で仕様変更やトラブルが発生したときも、迅速に対応しなければなりません。
4. 求められるコミュニケーション力
PMは関係する多くの人たちに、自分の考えやプロジェクトの進み具合を分かりやすく伝える力が求められます。もし問題が起きても、冷静に説明し、関係者と協力して解決に導く必要があります。
次の章に記載するタイトル:PMのコアスキル(PMBOK領域に紐づく)
PMのコアスキル(PMBOK領域に紐づく)
プロジェクトマネージャーはさまざまなスキルを組み合わせてプロジェクトを成功へと導きます。ここでは、実務で特に重視されるコアスキルについて、わかりやすくご紹介します。
要求定義
プロジェクトのスタートでは、要件や目標をしっかり固めることが大切です。お客様や関係するメンバーからヒアリングし、どんな成果物を目指すか明確にします。例えば、システム開発なら「どんな機能が必要か?」をリストアップするイメージです。
WBS化(作業分解)
WBSはWork Breakdown Structureの略で、作業全体を小さな単位に分解して整理します。これにより、やるべきこと・担当者・スケジュールを見える化できます。家づくりを細かく「設計」「基礎工事」「内装」などに分けて管理するのと似ています。
スケジュール管理(ガントチャートとクリティカルパス)
作業をいつまでに、誰が、どこまでやるか計画するのがスケジュール管理です。ガントチャートと呼ばれる横棒グラフを使って全体を見渡し、特に手順が遅れると他に影響が出る部分(クリティカルパス)は慎重に見守ります。
品質管理(品質基準とレビュー体制)
納品物の品質を確保するため、チェックルール(品質基準)を作り、節目ごとにレビューする体制を設計します。実際にシステムを作る現場では「動作テスト」や「コードレビュー」を定期的に実施することが多いです。
コスト管理(見積り・原価管理)
無駄な出費がないよう、必要な費用を見積り、進行中もかかったコストをしっかり管理します。例えば旅行の幹事が、予算内で宿・交通・食事をやりくりするのと同じです。
資源/調達管理(人員アサイン・外部発注)
プロジェクトで必要な人やモノを確保し、適切なタイミングで割り当てます。必要に応じて外部へ依頼(調達)も行います。
リスク管理(課題の発見と対応計画)
問題の芽や起こりそうなトラブル(リスク)を洗い出し、どう対応するか事前に計画します。例えば「重要な部品が遅れるかも?」と予測できれば、代替案も考えておきます。
コミュニケーション・ステークホルダー管理
関係者(ステークホルダー)の意見をよく聞き、全員が納得できる形でプロジェクトを進めます。情報共有や会議運営も大きなポイントです。
これらのスキルをバランスよく活用し、全体の品質(Q)、コスト(C)、納期(D)をコントロールすることが、プロジェクトマネージャーの価値となります。
次の章に記載するタイトル:PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の役割
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の役割
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)は、現場のプロジェクトマネージャー(PM)が円滑に仕事を進められるように裏方でサポートする専門チームです。主な役割は、社内のプロジェクトマネジメントのルールや方法を分かりやすく整理し、組織全体で同じ品質・やり方を目指す土台を整えることです。
PMOの具体的な取り組み例
大規模なプロジェクトや複数のプロジェクトが同時進行している会社では、それぞれの現場でバラバラな管理方法を使うと、全体の取りまとめや情報共有が難しくなります。そこでPMOが中心となり、以下のような仕組みを導入・整備します。
- プロジェクト計画書のテンプレートを統一し、「何を」「いつまでに」「誰が」実施するかを明確にします。
- 進捗や課題、仕様変更などの管理方法やルールを決め、全プロジェクトで同じやり方を適用します。
- 一定の工程が終わったら、組織内で成果をチェックする「レビュー」や「ゲート」と呼ばれる仕組みを設定し、品質を守ります。
- プロジェクトの状況を分かりやすくまとめるレポートの形や提出タイミングを決めます。
PMOの支援範囲
PMOは現場へのアドバイスやトレーニングも行います。たとえば、新任PMへの初歩的な研修や、困っているプロジェクトチームへの個別ヒアリングなどです。また、会社の方針や市場の変化に合わせて業務手順を見直すことも重要な仕事です。これらを通じて、プロジェクト管理の知恵を組織全体に広げていきます。
次の章に記載するタイトル:PMとPMOの違い(意思決定 vs 標準化・支援)
PMとPMOの違い(意思決定 vs 標準化・支援)
プロジェクトマネジメントの現場では、PM(プロジェクトマネージャー)とPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の役割の違いを知っておくことがとても大切です。ここでは、それぞれの役割について具体的に説明します。
PM(プロジェクトマネージャー)の役割
PMは、ひとつのプロジェクトの成功に責任を持つリーダーです。たとえば、システム開発であれば、「納期までに必要な機能を完成させる」というゴールに向かい、作業の進捗や品質、コストなどを日々チェックします。
PMは現場の最前線に立ち、課題があれば即座に判断し、解決策を考えてチームに指示を出します。つまり、意思決定の中心人物です。メンバーやリーダー(PL)、関係者をまとめて、目標達成に導きます。
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の役割
一方、PMOはプロジェクト全体の運営を標準化したり、PMを支えるサポート役を担います。
たとえば、複数プロジェクトが同時に進んでいる場合、「どのチームでも使いやすい進捗管理のルールを作る」「新メンバーの教育計画を立てる」「作業時間や休暇のルールを決める」など、プロジェクトがスムーズに回る仕組み作りをします。
また、PMOの中には全体を監督するリーダー(PMO責任者)がいて、複数プロジェクトを横断して調整したり、困っているPMの相談に乗ることもよくあります。
どちらに向いているかを考えるヒント
PMは、自分の判断と責任でプロジェクトを動かしたい人に向いています。一方で、PMOは組織全体を見渡し、「みんなが働きやすい仕組み」を整える立場です。
この違いを理解することで、自分がどちらの役割に興味があるのか、将来のキャリアを考えやすくなります。
次の章では、PMOの職種レベルと求められるスキルについて解説します。
PMOの職種レベルと求められるスキル
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の役割には複数の職種があります。大きく分けると「PMOアドミニストレータ」「PMOエキスパート」「PMOマネージャー」の3段階です。それぞれの特徴や求められるスキルを紹介します。
PMOアドミニストレータ
PMOアドミニストレータは、日々の業務を円滑に進めるために事務作業を中心に担当します。たとえば、会議の議事録を正確に作成したり、プロジェクト資料を整理したりします。また、メンバーがすぐに必要な情報を見つけられるように、ファイル管理や共有フォルダの整備も大切な仕事です。正確さや細かい気配り、期限を守るタイムマネジメント力が必要とされます。
PMOエキスパート
PMOエキスパートは、プロジェクトで使うルールや手順の標準化を進めます。たとえば、似たような作業手順を統一すれば、誰もが同じ水準で仕事ができます。また、プロジェクト内で使うドキュメントのテンプレートを作ったり、効率化のアイデアを現場に導入したりします。プロジェクトを広い視点で見て、品質を一定に保ち、全体のコストを下げる工夫が重要です。課題発見力や改善提案力が求められます。
PMOマネージャー
PMOマネージャーは、PMO全体の方針を決めたり、経営者やプロジェクトマネージャーと戦略について協議したりする仕事です。たとえば、複数のプロジェクトを見ながら、メンバーの配置やスケジュールを調整したりします。人材育成や目標達成に向けたサポートも重要な役割です。強いリーダーシップやコミュニケーション力、全体を俯瞰してバランスよく調整する力が求められます。
このように、PMOの職種ごとに求められるスキルの種類やレベルはさまざまです。次の章では、PM/PMOに役立つ資格の全体像をご紹介します。
PM/PMOに役立つ資格の全体像
プロジェクトマネージャー(PM)やプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)で活躍したい方にとって、資格は知識や経験の証明になります。ここでは代表的な資格と、その特徴についてご紹介します。
国家資格:プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、日本の国家資格です。この試験は出題範囲が広く、難易度も高めです。マネジメント技法やIT知識だけでなく、実際の業務経験に基づいた論述も求められるため、幅広い力が問われます。難関資格ですが、取得すると高度なマネジメント能力を客観的に示せます。
国際資格:PMP(Project Management Professional)
PMPはアメリカのPMI協会が運営している国際資格です。PMBOKというガイドラインに基づき、世界各国で通用します。一定の実務経験と知識を学び、英語での受験が可能なので海外プロジェクトも視野に入る方におすすめです。やや難易度は高めですが、国際的な活躍を目指すなら大きな武器になります。
プログラム/ポートフォリオ管理資格:P2M
P2Mは日本発の資格で、複数のプロジェクトや大規模な事業全体をどうマネジメントするかを学びます。試験は複数あり、初級から上級まで段階的に挑戦できます。企業の組織全体のPMOに携わりたい方や、より上流の視点に関心がある方には有力な選択肢です。
PMOスペシャリスト認定資格
PMOスペシャリストは、プロジェクトを支援し標準化する力を証明できる資格です。現場のPMの力を最大限に引き出すための知識やフレームワークを学びます。この資格があれば、「支援」「標準化」に強みがあることを客観的に示せます。
このように、PMやPMOには多様な資格があり、目標やキャリアによって選択肢も変わってきます。
次の章に記載するタイトル:PMOスペシャリスト認定資格のメリットと学習範囲
PMOスペシャリスト認定資格のメリットと学習範囲
PMOスペシャリスト認定資格とは何か
PMOスペシャリスト認定資格は、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の運営に必要な知識や実務スキルを学び、それを証明できる資格です。この資格を持つことで、「PMOのプロフェッショナル」として客観的に認められるため、転職活動や新しい案件の獲得時、さらには給与や単価交渉の場面でも優位に立つことができます。
どんなメリットがあるのか
大きなメリットは、自分の知識やスキルを『形』として証明できる点です。たとえば、同じ経験年数の2人がいた場合、資格を持っている方が「専門知識を体系的に学んでいる」という安心感を与えます。結果として、企業やクライアントからの信頼が高まり、仕事のチャンスが広がります。また、資格取得を通してPMO業務の全体像や基礎から応用まで整理でき、実務でも迷いなく行動できるようになります。
学習範囲とその内容
学習範囲は、単なる知識ではなく「実装・実践」に重きが置かれています。具体的には、PMO導入の最初のステップである『課題の洗い出し』やプロジェクトの『目標・KPIの設定』、どのような支援をするかを定める『支援内容の設計』などを学びます。また、「自分たちPMOがどこに位置づけられるべきか」や、実際にPMOを組織に作るプロセスまで理解できます。
さらに、ITやWeb業界で必要な幅広いPM(プロジェクトマネジメント)知識が体系立てて整理できる点も特徴です。たとえば、進行管理、コミュニケーション、品質チェック、リスク対策など、実務で頻繁に直面する領域を効率よく学習できます。実際のプロジェクト現場で役立つ「すぐに使える知識」が身につくため、資格取得後は仕事の幅が格段に広がります。
次の章に記載するタイトル:実務で押さえるべきPMBOK領域の具体像
実務で押さえるべきPMBOK領域の具体像
プロジェクトマネジメントの現場で求められる知識や手法は、多岐にわたります。ここでは、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)における主要な領域について、実際の動きやすい形でご紹介します。
スコープ管理
現場では最初に「何をつくるのか」「どこまでやるのか」を明確にすることが大切です。これを要件ヒアリングや打ち合わせを通じて整理し、「ここまでがプロジェクトの範囲です」と定めます。もし途中で「これも追加してほしい」と要望が増えた場合、その影響(追加作業やコスト増など)を確認し、関係者全員と再度合意する流れが必要です。
スケジュール管理
スケジュールを確実に守るため、まずは大きな作業全体を細かく分けた「作業分解構成(WBS)」を作成します。それぞれの作業の順番や必要な期間を見積もり、どの工程が遅れると全体がズレる「クリティカルパス」なのかを見極めます。その上で計画のベースライン(基準となる計画)を定め、進捗管理に役立てます。
品質管理
「できあがったものが求める基準を満たしているか」を確認するために、最初に品質基準やテスト方法を明確にします。現場ではダブルチェックやレビュー体制を整えたり、不具合が出た場合にも迅速に改善策を考えます。
資源・調達管理
プロジェクトには人材やツール、必要によっては外部パートナーも求められます。各工程に「どんな人」「どんなもの」が必要か洗い出し、適切に割り当てたり調達します。たとえば、専門知識がいる作業は外部に依頼することも。契約書の取り交わしや調整も重要です。
コスト管理
かかる費用を見積もり、使いすぎないようコントロールします。計画とのズレを「EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)」などで定期的に確認し、予算内に収まるよう調整します。
リスク管理
想定外のトラブルに備えるのも重要です。最初にリスクを洗い出し、どれが重大かを評価。発生を防ぐ方法や、もし起きたらどう対応するかを計画し、都度状況を見直します。
コミュニケーション管理
プロジェクトを進めるうえで、関係者同士の情報共有は欠かせません。重要な関係者を把握し(マッピング)、どのように会議や報告を行うか、そのルールや仕組みを整え、漏れなく進行します。
次の章に記載するタイトル:PM/PMOのキャリアパス設計
PM/PMOのキャリアパス設計
プロジェクトマネジメントの分野でキャリアを築く際、多くの方がどのような道を進めばよいか悩みます。はじめはPMOアドミニストレータやプロジェクトリーダー補佐など、基礎的なポジションから経験を積むのが一般的です。実務を通して、プロジェクト運営の基本、関係者とのコミュニケーション、タスク管理の大切さを学びます。
その後、PMOエキスパートやプロジェクトリーダーなど、さらに責任あるポジションへ進む道があります。開発プロジェクトをまとめる力や、プロジェクト横断課題を解決するスキルもこの段階で磨かれます。
キャリアの分岐点として大切なのは、自身がどの役割に向いているか、どんな意思決定をしたいかを考えることです。決裁や事業収益の責任を担いたい場合はプロジェクトマネージャー(PM)を目指すのが王道です。一方で、組織全体のガバナンスや標準化、複数プロジェクトの最適運営にやりがいを感じるならPMOマネージャーへ進む選択肢もあります。
多くの企業や現場では、PMとPMOの経験を両方持ち、知識体系としてPMBOKに準拠した資格を保有している人材が高く評価されています。実務経験と資格を組み合わせることで、転職や社内での活躍の幅が広がります。将来的には、部門のリーダーや経営層として活躍する道も開けてきます。
次の章では、現場で具体的にどんなタスクが発生するか、IT開発の例を交えながら説明します。
現場での具体的タスク例(IT開発の文脈)
IT開発プロジェクトにおいて、プロジェクトマネージャー(PM)とプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)が実際にどのような業務を担当しているのか、イメージしやすいように具体的なタスク例をご紹介します。
PMの主なタスク例
PMは、開発プロジェクト全体をリードし、最終的な成果物を納品する責任を担います。代表的なタスクは以下のとおりです。
- 要件定義の合意形成:顧客や関係各所と丁寧に目的や要件をすり合わせ、プロジェクトの進むべき方向を固めます。
- 計画の策定:メンバーの役割分担や作業スケジュールを組み立て、全体像を明らかにします。
- チームの編成・指導:スキルや経験を考慮し、適切なメンバー構成を決定。開発途中も、進捗を見ながら適宜アサイン調整を行います。
- 進捗・品質・課題管理:日々の作業や成果物の品質チェック、発生した課題の解決指示を行います。
- 変更とリスクの統制:途中で仕様変更やトラブルが発生した際、その影響をチーム・顧客双方に説明し、対応案を考えて進行を調整します。
- 顧客折衝:進捗報告を行ったり、スケジュールや品質についての顧客調整を行います。
たとえば、週次の進捗会議を主導したり、スケジュール遅延が発生した際には迅速に関係者と代替案を検討し、合意を形成し直すような動きも重要です。
PMOの主なタスク例
PMOは、プロジェクト運営が円滑に進むよう、裏方として多岐にわたる支援を行います。具体的なタスクは以下のようなものです。
- 標準テンプレートの整備:企画書や進捗レポート、議事録などの共通フォーマットを準備し、担当者が作業しやすくします。
- 会議体・レポーティングの設計:定例会議の設置や報告書の提出ルールを決め、情報共有の流れを最適化します。
- 課題・リスク台帳の管理:部門横断で発生しうる課題やリスクを一元管理し、PMが見落とさないようサポートします。
- ドキュメントレビューとゲート運用:進行上のチェックポイント(ゲート)で資料内容を確認し、抜け漏れがないかを精査します。
- 教育やナレッジ管理:プロジェクトに必要な知識やノウハウを共有・蓄積し、初心者でも迷わず実務に取り組める環境を整備します。
- メトリクス/KPIの設定・モニタリング:進捗や品質の客観的指標(例:バグ件数、納期遵守率など)を定義し、定期的に分析・報告します。
例えば、複数のプロジェクトで共通の課題が繰り返し発生する場合、PMOがその情報を集約し、共有対策会議を開催するなど、組織横断の問題解決を推進します。
次の章に記載するタイトル:PM/PMOの成功に直結するソフトスキル
初学者が踏むべき学習ステップ(推奨ルート)
1. 全体像の把握から始めましょう
まずは、プロジェクトマネジメントの全体像をつかむことが重要です。本や入門記事を読むことで、PM・PMOの役割や必要なスキルの概要を知るところから取り組みましょう。例えば「PMBOKガイド」や初心者向けの解説書が役立ちます。
2. 基本用語と考え方に慣れる
次に、作業分解、スケジュール管理、リスク対応など、現場でよく使う基本用語に親しみましょう。実際のプロジェクト事例やシンプルなケーススタディなどを読むと、言葉がどのような場面で使われるかイメージしやすくなります。
3. 小規模な実践で経験を積む
研修や模擬プロジェクト、グループワークなど、身近な小規模案件でまず実践してみましょう。失敗から学ぶことも多く、小さな成功体験の積み重ねが自信につながります。
4. ソフトスキルを意識的に磨く
ファシリテーションやコミュニケーションなどは、日常生活や他の活動でも磨くことができます。会議で意見をまとめるなど、普段から練習してみましょう。
5. 資格取得にチャレンジする
ある程度慣れてきたら、PMOやPMに関連する資格の勉強を始めるのもおすすめです。体系的な知識や一定の実力を証明できるため、キャリアアップにも効果的です。
次の章に記載するタイトル:よくある疑問とポイント
よくある疑問とポイント
よくある疑問とその回答
プロジェクトマネジメントやPMO周辺の学習をはじめると、多くの方が疑問や不安を感じる場面があります。ここでは、初心者がよく抱く質問とそのポイントを解説します。
Q1. プロジェクトマネジメントの学習は何から始めればよいですか?
基本用語やプロセスの全体像を知ることが第一歩です。入門書や公式ガイドで、まず「どんな工程や役割があるか」をざっくりと掴むのがおすすめです。細かい知識は実践と並行して徐々に身につきます。
Q2. 未経験でもPMOやPMになれますか?
最初は小さな案件のアシスタントや日々の進捗管理から始めるのが現実的です。現場でOJTや周囲のサポートを受けながら、徐々に業務範囲を拡げていくことで、経験を積めます。
Q3. 資格はどれくらい重要ですか?
資格は知識の体系化やスキルの証明に役立ちますが、現場での実践経験も同じくらい重要です。両輪で学習と実務を積むのが理想的です。
Q4. IT以外の業種にもPM・PMOは必要ですか?
はい、どんな分野でも「計画を立ててみんなで協力して進める」仕組みがあればPM/PMOの考え方は役立ちます。建設、製造、イベント運営など様々な現場で応用されています。
Q5. 成功するPM/PMOとそうでない人の違いは?
知識だけでなく、調整力やコミュニケーション、冷静な判断、信頼構築などソフトスキルも大切です。困難に直面しても柔軟に対応できる人が、活躍しやすい傾向にあります。
次の章に記載するタイトル:よくある疑問とポイント
よくある疑問とポイント
PMとPMO、どちらが自分に向いているのか
プロジェクトの現場では、自分がPM(プロジェクトマネージャー)とPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)のどちらを目指すべきか迷う方が多いです。PMは、プロジェクト全体の意思決定を行い、成果責任を直接負います。たとえば「納期を守るためどう動くか」「予算内で収めるための方針決定」といった実践的なリーダー業務を担います。自身で前に出て判断し、結果を出すことにやりがいを感じる方はPM向きです。
一方、PMOは複数のプロジェクト全体に目を配り、社内の共通ルールや成功パターンをつくる役割です。仕組み化や標準化した運用を整え、継続的な改善に力を発揮します。組織全体がうまく回ること、自分の工夫を広く役立てたい方にはPMOの道が向いています。
PMOスペシャリスト資格とPM業務の関連性
「PMOスペシャリスト資格を取ったらPMにも役に立つのか?」という疑問はよくあります。答えは「はい」です。PMOで学ぶ標準化や品質管理、プロジェクト運営の体系的な知識は、そもそもPMが現場で質の高い仕事をするうえでの強力な武器です。たとえばリスクの見える化、会議運営の効率化、課題管理の仕組みづくりなど、両者で生かせるノウハウが多くあります。
未経験から始める突破口
未経験でこの分野に飛び込む場合、「PMOアドミニストレータ」としての基礎業務が最初の一歩としておすすめです。具体的には、会議の議事録作成や資料整理、進捗を一覧管理する台帳の整備など、プロジェクト運営の“裏方”ですが非常に重要な役割です。これらの業務で精度高く実績を積み、信頼を得ることで、より高度なプロジェクト管理業務にステップアップしやすくなります。
今回ご紹介した内容が、皆さん自身の選択やキャリアの気づきに役立つことを願っています。