リーダーシップとマネジメントスキル

プロジェクト成功に欠かせない管理手法と実践チェックリストの極意

目次

プロジェクトマネジメントの基本と5つのプロセス

プロジェクトマネジメントとは?

プロジェクトマネジメント(プロジェクト管理)は、決められた期間内に目標を達成するための計画や管理、そして調整を行う活動です。たとえば、新しい商品を作る、イベントを開催するなど、一回限りの特定の目的に向かってチームや資源を動かす場合に使われます。

なぜ必要なのか?

プロジェクトは予算や納期、質など、守るべき決まりが多くなりがちです。そのため、行き当たりばったりでは上手くいきません。計画をたて、進み具合を確認し、必要に応じて軌道修正することで、目標達成の可能性を高めます。

5つのプロセス群を押さえよう

プロジェクトマネジメントは、次の5つのプロセスに分かれています。

  1. 立ち上げ(イニシエーション)
  2. プロジェクトの目的、予算、納期を決めます。どこまでやるか(スコープ)や、成功と言える基準も定めておきます。

  3. 計画立案(プランニング)

  4. 作業内容や日程、どのように仕事を進めるかを細かく決めます。WBS(作業分解図)というツールを使い、全体を具体的な作業に分け、計画の土台を作ります。

  5. 実行(エクスキューション)

  6. 計画の通りに作業を進め、必要な資源や人の調整を行います。

  7. 監視・調整(モニタリング&コントロール)

  8. スケジュール通りか、予算を使いすぎていないか、定期的に進捗をチェックします。もし問題があれば、計画の見直しや対策も行います。

  9. 完了(クロージング)

  10. 成果物を評価し、チームで振り返りをします。トラブルや成功事例などをまとめ、次に活かせるよう知識を共有します。

実務のポイント

  • 目的やスコープ、成功基準は最初にはっきりさせる
  • 計画づくりは、WBSを用いて細かな作業まで分解
  • 定期的な進捗チェックで早めの問題発見
  • ナレッジ共有で次へつなげる

次の章では、プロジェクトマネジメントの標準「PMBOK」における10の管理項目について解説します。

PMBOK準拠:10の管理項目(知識エリア)

PMBOKで扱う10の管理項目とは

プロジェクトマネジメントの世界では、さまざまな要素をバランスよく管理することが求められます。その指標として広く採用されているのが、国際的なガイドラインである「PMBOK(ピンボック)」です。PMBOKでは、プロジェクト成功のために押さえるべき10の管理項目(知識エリア)を定めています。これらは単なる理論ではなく、実際の計画書や日常の業務運用で具体的に活用できるものです。

10の管理項目の全体像

  1. 統合管理
    プロジェクト全体の方針や進め方をまとめ、一貫性を持たせるための管理です。プロジェクトの始まりから終わりまで全体像をつかみ、各工程を調整します。
  2. スコープ管理
    プロジェクトで「何をやるのか・やらないのか」を明確に決める作業です。目標や作業範囲をはっきりさせることで、途中での“やりすぎ”や“やり忘れ”を防ぎます。
  3. スケジュール管理
    工程ごとの作業計画や納期を管理します。カレンダーやガントチャート(工程表)などの例を使って、遅れやダブルブッキングを予防します。
  4. コスト管理
    予算の決定や費用の使いみちを見える化し、無駄な出費を防ぐ役割を持ちます。見積もりを立てる例もここに当たります。
  5. 品質管理
    成果物や作業の出来栄えを一定の基準でチェックします。「納品物にミスがないか」「使い勝手に問題がないか」など、品質の目を光らせます。
  6. 資源/組織管理
    必要な人材・設備・材料を適切に割り当て、無駄や人手不足を防ぐための管理です。人員配置例や分担表作成などが含まれます。
  7. コミュニケーション管理
    関係者への情報伝達の流れや、連絡方法を決めておきます。「誰に・何を・いつ伝えるか」を整理し、認識ズレや意思疎通の失敗を防ぎます。
  8. リスク管理
    予想されるトラブルや障害を洗い出し、どう対応するか事前に準備します。例としては「遅延リスク」「技術的不具合」などがあります。
  9. 調達管理
    外部業者や材料を調達する際の手順や契約管理を行う分野です。見積もり依頼や納品管理もここに入ります。
  10. ステークホルダー管理
    プロジェクトに関係する全ての人(上司、チーム、クライアントなど)の立場や要望を整理し、適切に関与してもらう手順を考えます。

知識エリアは計画書の章立てにも役立つ

これら10の管理項目は、実際のプロジェクト計画書を作成する際にも「必要な章」としてそのまま流用できる特徴があります。各項目を埋めることで、計画や運用の抜け・漏れを防ぐことができます。

次の章では、プロジェクト成功の基本指標である「QCDの管理」についてご紹介します。

成功の基本指標:QCDの管理

QCDとは何か?

QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の3つの指標を指します。プロジェクトが成功したかどうかを測るとき、この3つの項目がしっかり守られているかはとても大切です。

  • 品質(Quality):成果物がどれだけ要求されている内容や期待を満たしているかを評価します。例えば、家のリフォームであれば、設計通りの仕上がりになっているか、使いやすいかなどが該当します。
  • コスト(Cost):決められた予算内でプロジェクトを実施できているかを確認します。途中で余分な支出が発生していないか、計画通りに資金を使えているかがポイントです。
  • 納期(Delivery):あらかじめ決めた期日までに必要な成果物を納品できているかを見ます。納期遅れは信頼低下や追加コストの原因になるので注意が必要です。

QCD管理の実務面でのポイント

QCDを管理するうえで大切なのは、まず3つのバランスを意識することです。たとえば『品質を向上させる』と『コストが膨らむ』場合や、『納期を短くする』と『品質が下がる』というようなトレードオフが発生することも珍しくありません。

このため、プロジェクト開始前に、関係者間でスコープ(最終的な成果物・やるべきことの範囲)とQCD基準をしっかり決めておくことが重要です。たとえば『最低限必要な品質ライン』や『超えてはいけない予算』『絶対に守るべき納期』などを例示し、合意します。

ベースラインと逸脱管理

QCDそれぞれの基準値(ベースライン)を決めたあとは、日々の進行中に逸脱がないか管理します。もしズレが発生した場合は、速やかに状況を確認して対応策を協議することが大切です。たとえば、作業の遅れが発覚した時は、追加リソース投入や、並行作業の調整など具体的な対策が求められます。

QCD管理と変更対応

プロジェクトでは要望の追加や外部環境の変更がよく起こります。こうした変化が起きた場合、QCDのどこにどんな影響が出るのかを確認し、関係者と新しい落としどころを再度合意する必要があります。たとえば新機能追加の要望があった時、その分納期や費用がどう変化するのかも同時に検証します。

次の章に記載するタイトル:管理プロセスを機能させる代表的手法とフレーム

管理プロセスを機能させる代表的手法とフレーム

プロジェクトマネジメントの実務では、単に計画を立てるだけでなく、その運用を支えるさまざまな手法やフレーム(枠組み)が欠かせません。ここでは、特に現場でよく活用されている代表的な方法を抽出し、それぞれのポイントを分かりやすく紹介します。

WBS(作業分解構造)でやるべきことを明確にする

WBSは、「作業分解構造」と呼ばれる手法です。大きなプロジェクトを、小さな作業単位に細かく分けることで、抜け漏れなく全体像を把握できます。例えば引っ越しを例にすると、「荷造り」「運搬会社の手配」「新居の掃除」「引っ越し当日の立ち合い」といった一連の作業に分けてタスクを管理します。分解することで、どこまで進んだかや滞っている部分も明確になります。

PERTで工程の遅れやすさを分析する

PERT(パート図法)は、各作業の所要時間を「最短・最長・標準」として見積もり、全体のズレやすさを予測します。例えば「A作業は最短2日、最長5日、その平均を標準値に」といった形です。作業同士の“つながり”も図示するため、どこが遅れると全体に響くかが分かりやすくなります。

CCPM(クリティカルチェーン)でリソース制約を考慮する

CCPMは、与えられた人やモノ(リソース)が限られている状況下で、全体の流れが滞らないようバッファ(余裕)を持たせて進める流儀です。例えば一人の担当者が複数の工程に関わる場合、それぞれにバッファを設定し、遅れが他へ波及しにくくします。

PPMで多数のプロジェクトを管理する

PPMは「プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント」の略で、複数の案件が並行する場面で使います。「どのプロジェクトにどれだけ人員・予算を振り分けるか」を見直し、総合的な最適化を目指す考え方です。

開発管理:ウォーターフォールとアジャイル

開発系の現場では、「ウォーターフォール型」(全工程を順番に積み上げる)と「アジャイル型」(短い期間で繰り返し改良する)という異なる管理方法があります。システム開発の背景や規模、チームの性格に応じて使い分けています。ウォーターフォールは計画重視、アジャイルは変化への柔軟さが特徴です。

ツールやフレームで高める品質とチーム力

どの手法にも共通するのは、「一人で抱え込まず、見える化して全員で管理すること」が成功のかぎです。プロジェクト管理ツールの導入や、WBS・PERTなどの図をチームで共有すると、抜けやズレへの気づきが早くなります。また、チーム内の信頼構築も忘れてはなりません。

次の章に記載するタイトル:計画書・運用で押さえるべき具体的管理項目(実務チェックリスト)

計画書・運用で押さえるべき具体的管理項目(実務チェックリスト)

管理項目を徹底するポイント

実際のプロジェクト運営や計画書作成時には、“何を押さえるべきか”が現場で迷いやすい部分です。ここでは、実務で重視したい管理項目をチェックリスト形式で整理しました。各管理項目ごとに「目的」「体制」「手順」「指標」「成果物」に分けて、分かりやすく解説します。


1. 統合管理

  • 目的:複数の活動や計画を1つのプロジェクト全体像としてまとめ、目的にズレが出ないよう統制します。
  • 体制:プロジェクトマネージャーが指揮をとり、各担当が状況を報告する体制を整えます。
  • 手順:定期的な進捗会議を開き、最新状況を確認しましょう。
  • 指標:全体の進み具合・課題の有無・大きな方針変更の数が指標になります。
  • 成果物:統合計画書、進捗報告書があります。

2. スコープ管理

  • 目的:やるべき作業範囲を明確にし、余計な追加作業(手戻り)を防ぎます。
  • 体制:各工程のリーダーと連携し、決まった範囲を守る意識を持ちましょう。
  • 手順:要件確認→作業分解→担当割り当て、と段階的に進めます。
  • 指標:未着手・完了タスクの数、要件変更回数など。
  • 成果物:スコープ記述書やWBS(作業分解構成図)。

3. スケジュール管理

  • 目的:決まった期間でプロジェクトを進めるため、作業やイベントの時期を管理します。
  • 体制:スケジュール担当者を置き、全体共有の場で日程を確認しましょう。
  • 手順:計画作成→進捗確認→ずれの調整、と段階的に実施します。
  • 指標:遅延タスク数、マイルストーン達成状況。
  • 成果物:ガントチャートや日程表。

4. コスト管理

  • 目的:予算オーバーを防ぎ、適切な資金調達と運用を実行します。
  • 体制:経費担当者や管理者が細かく管理をします。
  • 手順:計画段階で予算設定し、支出ごとに記録することがポイントです。
  • 指標:累計支出額、予算との差額。
  • 成果物:予実管理表や報告資料。

5. 品質管理

  • 目的:お客様や関係者の満足度向上を目指し、出来上がる成果物の品質を維持・向上します。
  • 体制:品質担当者やチェック担当が検査を行います。
  • 手順:事前に基準を決めて、作業ごとにチェックやテストを入れます。
  • 指標:不具合件数、合格率。
  • 成果物:品質基準書、検査記録。

6. 資源(要員)管理

  • 目的:人手や設備を適切に配置し、役割分担の明確化やサポート体制を整えます。
  • 体制:メンバー表や担当割りを文書化します。
  • 手順:リスト化・進捗に応じてシフト調整を行います。
  • 指標:作業負荷、遅延の発生件数。
  • 成果物:要員配置表、体制図。

7. コミュニケーション管理

  • 目的:関係者との情報伝達ミスを防ぎ、全員が状況を理解できるようにします。
  • 体制:連絡先リストや定例連絡会を用意します。
  • 手順:定期配信や進捗共有をルール化しましょう。
  • 指標:会議出席率、共有資料数。
  • 成果物:議事録、連絡表。

8. リスク管理

  • 目的:問題発生前に予防策を立て、損害を最小限に抑えます。
  • 体制:リスク一覧や担当者決めが有効です。
  • 手順:洗い出し→対策計画→状況モニタリング。
  • 指標:リスク発生数、未対応リスク数。
  • 成果物:リスク管理表、対応記録。

9. 調達管理

  • 目的:外部委託や必要物品の調達を計画的に行い、納期・品質トラブルを防ぎます。
  • 体制:契約・発注・納品の担当窓口を明確にしましょう。
  • 手順:業者選定→契約→納品・検収。
  • 指標:遅延発生件数、発注金額。
  • 成果物:契約書、発注書、納品記録。

10. ステークホルダー管理

  • 目的:関係者それぞれの期待・要求を把握し、協力を得ながら進めます。
  • 体制:関係者リストやヒアリング記録を作成します。
  • 手順:定期的なヒアリングやアンケートの実施。
  • 指標:意見反映数、参加率。
  • 成果物:関係者リスト、要望整理表。

システム開発や各種プロジェクトの現場では、これらの管理項目をドキュメントや議事録でしっかり“記録・共有”し、管理に「抜け」「漏れ」が出ないように注意しましょう。クラウドやバージョン管理の活用も、情報管理には有効です。

次の章に記載するタイトル:各管理項目の要点と主要アウトプット(PMBOK準拠)

各管理項目の要点と主要アウトプット(PMBOK準拠)

この章では、前章で紹介した具体的な管理項目ごとに、実務で押さえるべき要点や重要アウトプットを、PMBOKの考え方に沿ってわかりやすく説明します。

1. 統合管理の要点とアウトプット

プロジェクトを一つのまとまりとしてマネジメントするために、計画書の作成、進行中の変更の管理、全体の最適化などが求められます。代表的なアウトプットは「プロジェクト憲章(プロジェクトの目的や制約条件の明記)」や「プロジェクト・マネジメント計画書」「変更管理記録」などです。実例として、プロジェクト開始時に簡単な合意文書を作る場面がこれにあたります。

2. スコープ管理の要点とアウトプット

「何を作るか」を明確にし、抜け漏れなく定義します。作業を細かく分解した「WBS(作業分解図)」や、「スコープ記述書(成果物や前提条件の明記)」が主なアウトプットです。例えば、製品開発プロジェクトならば、機能単位で作業リストを作ることで対象を明確にします。

3. スケジュール管理の要点とアウトプット

作業の順序や所要時間をはっきりさせ、現実的なスケジュールを作り、進捗を管理します。アウトプットには「スケジュール表」や「ガントチャート」「スケジュールベースライン」などがあります。たとえば、プロジェクトの全体カレンダーや週次進捗表の作成がこの管理の具体例です。

4. コスト管理の要点とアウトプット

費用を見積もり、予算を決め、計画と実績を比較して管理します。成果物として「コスト見積書」「コストベースライン」「実績記録」などがあります。イメージしやすい例では、イベント準備費用を最初に見積もり、都度管理することが挙げられます。

5. 品質管理の要点とアウトプット

要求された品質を満たすための基準設定や、計画、実施、評価を行います。アウトプットは「品質計画書」「検証記録」「チェックリスト」などです。たとえば、チェックリストで作業の抜け漏れがないか確認する工程が該当します。

6. 資源管理の要点とアウトプット

人や物、設備などプロジェクトに必要なリソースとその役割を整理し、チーム運営や要員手配を行います。「資源計画書」「体制図」「役割分担表(RACI)」などがアウトプットです。実際には、班編成表や役割分担リストのイメージです。

7. コミュニケーション管理の要点とアウトプット

誰がどのように情報連絡するか、情報の流れを整理します。「コミュニケーション計画書」「報告資料」「ミーティング議事録」などが主なアウトプットです。例えば、定例会議の開催案内や議事録作成が該当します。

8. リスク管理の要点とアウトプット

起こり得るリスクを想定し、対応策を準備します。代表的アウトプットには「リスク登録簿」「リスクマトリクス」があります。天候不順などのリスクを書き出して一覧管理することが実践例です。

9. 調達管理の要点とアウトプット

外部から必要なものを調達する際の方針や手続きを明確化します。「契約書」「発注書」「調達方針書」などがアウトプットです。業者選定や契約締結、納品物の検収などが含まれます。

10. ステークホルダー管理の要点とアウトプット

関係者の把握と、その期待値を調整しながら関わり方を管理します。「ステークホルダー名簿」「関与計画書」「関係図」などが主なアウトプットです。実際には、主要担当者のリストアップや、意見を集約するための会合計画などが該当します。

次の章に記載するタイトル:キー概念と用語の基礎

キー概念と用語の基礎

プロジェクトとは何か

プロジェクトとは、ある目的を達成するために決まった期間と限られたリソースで行う活動のことです。たとえば、新商品を立ち上げる・社内システムを更新する・店舗を開設するなど、明確なゴールに向けてチームで取り組む活動を指します。

プロジェクトマネージャー(PM)

PMは、プロジェクト全体の指揮をとる人物です。成果物の品質や納期を守り、関係者と調整しながら計画を進めていきます。現場では「まとめ役」や「司令塔」と呼ばれることも多いです。

よく使われる用語の解説

  • スコープ:プロジェクトで“何を、どこまでやるか”の範囲。たとえば、Webサイト制作なら「トップページ+問い合わせフォームまで」といった具体的な作業内容を指します。
  • コスト:プロジェクトに必要なお金や人員など。見積もりや費用管理も重要な役割です。
  • スケジュール:作業をいつまでに終わらせるかの計画です。工程ごとに「この日までに完了」と決めて、進行を管理します。
  • ステークホルダー:プロジェクトに関係する人たち。依頼主やメンバー、外部協力者も含まれます。
  • コミュニケーション:情報共有や相談、報告のやりとり全般を指します。成功へ向けて密な連携が不可欠です。
  • リスク:予想外の問題やトラブルの芽です。たとえば「納期が遅れるかも」「メンバーが急に休むかも」といったことになります。

ToDo管理と成果物(デリバラブル)

スコープ管理においては、“やることリスト(ToDo)”と“完成した成果物(デリバラブル)”を分けて考えると、作業の可視化や進捗確認がしやすくなります。ToDoは日々の細かなタスク管理、成果物はプロジェクトの最終的なゴールです。

次の章に記載するタイトル:すぐ使える実務テンプレ的ヒント

すぐ使える実務テンプレ的ヒント

プロジェクト立ち上げ時の定番テンプレート

プロジェクトのスタート段階では、いくつかの基本情報をテンプレートとして押さえておくとスムーズに進みます。まず「目的(何のためのプロジェクトか)」と「達成すべき成功基準」を明確にしましょう。また、プロジェクトで対応する範囲(スコープ)と、その境界線も最初に記載します。いつまでに何を終えるべきかを示す「主要マイルストーン」、考慮すべき「リスク」、担当者や体制も書き出しておきます。情報共有や意思決定の流れ(コミュニケーション設計)も忘れずに整理してください。

ベースラインの設定方法

計画を実行・評価・修正していくためには「ベースライン(三種)」の設定が大切です。これは以下の3点です。
- スコープ(やるべき作業の範囲)
- スケジュール(いつまでに何をやるか)
- コスト(どのくらいの予算か)

これらのテンプレートを作っておき、変更があった際は最初のベースラインと比較して管理できるようにします。

週次報告の定型化

進捗管理のコツは「週次で共通フォーマットの報告書」をメンバーから集めることです。報告内容にはQCD(品質・コスト・納期)、現在の進み具合、問題・リスク、変更事項、そして次週の行動計画を含めます。このテンプレートを用意することで、報告ミスや抜け漏れが防げます。

ドキュメントと情報の管理ルール

ドキュメントは中央のリポジトリ(例えば共有ドライブ)で一元管理しましょう。ファイル名や保存場所のルールをテンプレート化すると便利です。また、資料のレビュー(確認)手順や権限設定、操作履歴(監査ログ)を整理しておくと、後で何かあった場合も安心です。

チーム運営のテンプレート例

RACI(責任・承認・協力・説明)という役割分担表を使えば、各メンバーの責任や役割が明確になります。定例会議のアジェンダと進行表、意思決定の窓口や連絡先リストもまとめておくと良いでしょう。プロジェクトの振り返り(レトロスペクティブ)のテンプレートを使うことで、継続的に改善サイクルが回せます。

次の章に記載するタイトル:よくある落とし穴と回避策

よくある落とし穴と回避策

スコープの曖昧さを防ぐ方法

プロジェクトの目標や範囲が不明確なままで進んでしまうと、最終的に「こんなはずじゃなかった」となりがちです。この落とし穴を避けるには、WBS(作業分解構成図)で作業内容を細かく洗い出し、プロジェクトの受け入れ条件(最終的に何ができていれば完了か)を明文化しておくことが有効です。また、要件に変更が出た時は、都度「統合変更管理」というルールに従い関係者で話し合い、記録を残して進めることが大切です。

コスト・納期の過度な楽観視

「たぶん大丈夫」「このくらいで終わるだろう」などの楽観的な見積もりは、後でスケジュールや予算超過につながります。こうした場合は、見積もり手法としてPERT(3点見積もり)やCCPM(クリティカルチェーン法)の考え方を活用し、見通しの幅をきちんと持たせます。また、万一のためにリスク対応のバッファ(余裕)を設定しておくと安心です。加えて、定期的にEVM(出来高管理)を使って現在の進捗とコストを数値で把握し、問題を早めに発見することも有効です。

チーム内でのサイロ化・情報伝達の遅れ

部署や担当ごとに情報が止まってしまう「サイロ化」や、関係者への情報共有が遅れると、重要な判断ができずに後手に回る原因となります。こうならないためには、コミュニケーション計画で「誰が誰に何を伝えるか」をあらかじめ決め、単一の情報共有場所(オンラインのプロジェクトルームや共有ドキュメントなど)を活用しましょう。

ステークホルダーと期待値の食い違い

プロジェクトの成果物や進め方について、関係者ごとに異なる期待がある場合、後々のトラブルを招きます。これを避けるには、初期段階からステークホルダーとなる関係者を巻き込み、関与計画を立てることが重要です。また、定期的な進捗レビューを設けて、期待や意見のすり合わせをこまめに行いましょう。

ツールや仕組みの未整備

せっかく管理項目を決めても、実際の運用ツールや可視化の仕組みがなければ、計画倒れに終わることがあります。そこで、必要な管理項目に対応したツールやダッシュボードを選び、誰でも使えるように設定しておくことが役立ちます。必要な情報がワンクリックで見られる状態を目指しましょう。

次の章に記載するタイトル: ツール・手法の選び方(実務の勘所)

ツール・手法の選び方(実務の勘所)

プロジェクトの性質でツールを選ぶポイント

案件によって必要な手法やツールは異なります。たとえば、要件変更が頻繁なシステム開発では、計画を柔軟に見直せる「アジャイル開発」が向いています。これは小さな単位で開発し、利用者の声を反映しながら段階的に完成させる方法です。逆に、仕様が最初からはっきり決まっている建設工事やパッケージ導入のような案件では、「ウォーターフォール型」を用いると効率的です。最初に計画を立てて上から下へ順に作業を進めます。どちらも一長一短があるため、「ハイブリッド型」といった折衷案も実務では有効です。つまり、変更頻度や業務の熟度で選択がカギとなります。

複数プロジェクトの管理にはPPM

同時に複数の案件を抱える場合は「プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」が役立ちます。これは、各案件の重要性や戦略との整合性を見て、リソース(人や予算)をバランスよく割り振る考え方です。業務の優先順位づけや、投資効果の高いプロジェクト選びに適しています。現場ではエクセルや専用の管理ソフトを使い、一覧表やガントチャート(横棒グラフ)をつくって全体像を「見える化」すると便利です。

個別案件管理の工夫

1つの案件については、PMBOK(国際的な標準)に従いながら「WBS(作業分解構成図)」や「PERT図(作業順序の図式化)」、「CCPM(工期短縮の手法)」を適宜組み合わせると、管理しやすくなります。具体的には、大きな作業を小さく分けるWBSで「何が必要か」を洗い出し、PERT図で「作業の流れや順番」を整理。そして納期短縮にはCCPMのような考え方を加えると、実務で余裕を持った工程設計が可能です。

成功に必要な2つの柱

ツールや手法をうまく使うだけでなく、「チームの信頼関係づくり」も成功には不可欠です。たとえば、計画変更時には理由を丁寧に説明しチームと認識合わせを繰り返すと、現場の安心感が増します。ツールを使うのは「手段」であり、その運用を支えるのが「人の信頼」です。この2つを並行して意識できると、どんな手法を選んでも安定した成果につながります。

-リーダーシップとマネジメントスキル