プロジェクトマネジメント

プロジェクト工数の見積もり方|PMが使う3つの実務手法と精度を上げるコツ

プロジェクトの遅延・コスト超過の多くは、「工数の見積もりが甘いこと」 が原因です。

思ったより作業が増える
想定以上に手戻りが発生する
上流で漏れたタスクが後半に影響する

こうした問題は、正しい見積もりプロセス を踏むだけで大幅に改善できます。

この記事では、PMが実務で必ず使う3つの工数見積もり手法精度を高める具体的なコツ を体系的にまとめます。


  1. 工数見積もりの基本プロセス
  2. PMが使う3つの見積もり手法
  3. 見積もり精度を高める判断基準
  4. リスク・バッファの考え方
  5. チームレビューでズレをなくす方法
  6. 工数見積もりに使えるテンプレート

工数見積もりとは?

プロジェクトの「時間 × リソース」の予測作業

工数見積もりは

プロジェクトのスケジュール
必要なリソース(人・スキル)
コスト(予算)
納期遵守の確率

を確定させるための核心プロセスです。

正しい工数見積もりは

WBS → 見積もり → スケジュール作成 → 進捗管理

という一連のプロセスの基盤になります。


PMが使う工数見積もり手法

実務で最も再現性が高い3つ


① ボトムアップ見積もり(最も精度が高い)

WBSでタスクを細分化し
1タスクごとに時間を見積もり → 積み上げる方法

特徴

  1. 精度が最も高い
  2. 中〜大規模プロジェクト向け
  3. 再現性・透明性が高い

手順

  1. WBSでタスクを分解する
  2. 各タスクの担当者に時間を見積もらせる
  3. 粒度を揃える(1〜2日以内)
  4. タスク時間を積み上げる

向いているケース

  1. 要件が明確
  2. 手戻りが少ない
  3. 過去に実績のあるプロジェクト

② 類推見積もり(似たプロジェクトを参考)

過去の類似プロジェクトからそのまま or 補正して見積もる方法

特徴

  1. スピードが早い
  2. 小〜中規模で有効
  3. 新規プロジェクトにも使える

手順

  1. 過去のプロジェクトを選ぶ
  2. スケール(ページ数・機能数)を比較
  3. 増減補正し、工数を算出

向いているケース

  1. 新規プロジェクト
  2. ざっくり見積もりが必要
  3. 企画段階でざっくり予算を提示したいとき

③ パラメトリック見積もり(数字で計算する)

「1ページあたり◯時間」「機能1つあたり◯日」など、単位と工数の関係を数式化 して見積もる方法。

特徴

  1. 定量的でブレが少ない
  2. Web/開発/制作でよく使う
  3. 中大規模プロジェクトに強い

  1. Webサイト → 「1ページ=2時間」
  2. アプリ開発 → 「機能1つ=3日」
  3. デザイン制作 → 「1ページ=4時間」

向いているケース

  1. 量産型プロジェクト
  2. タスクが定型化している
  3. 同じチーム・同じスキルで回している

見積もり精度を高める「7つのコツ」


① タスクの粒度を揃える(最重要)

粒度がバラバラだと精度が崩れます。1タスク=4〜16時間(1〜2日) が理想。


② 依存関係を必ず整理する

  1. Aが終わらないとBが始められない
  2. 外部レビューが必要
  3. 他チームへの受け渡しがある

こうした依存関係を無視すると、
見積もりがズレてスケジュールが破綻します。


③ 楽観見積もりを避ける(人は必ず盛る or 甘く見る)

PMBOK・CCPMでも指摘されるように、
人は見積もりが必ず歪む 特性があります。

  1. 楽観バイアス
  2. 学生症候群
  3. パーキンソンの法則

これを避けるため、
複数人でレビュー するのが必須。


④ 過去実績のデータベースを作る

見積もりは経験とデータが命。

  1. 過去プロジェクトの一覧
  2. スケジュール実績
  3. 実際にかかった工数
  4. 手戻り率

これを蓄積するだけで精度が劇的に上がります。


⑤ バッファを“個別ではなく全体”にまとめる

各タスクに安全余裕を持たせるのはNG。

推奨は

  1. CPM:日程余裕の可視化
  2. CCPM:プロジェクトバッファに一元化

⑥ レビュー工程・テスト工程を必ず入れる

最も漏れやすいのが

  1. 手戻りリスク
  2. テスト工数
  3. 承認プロセス

WBSに必ず組み込むこと。


⑦ 外部要因(待ち時間・承認・外部依頼)を含める

  1. クライアントの確認待ち
  2. 外部ツールの承認待ち
  3. 他部署との調整

こうした“タスクではない工数”が実務では非常に重い。


バッファの設計

見積もりとセットで必須


■ 方式①:タスクごとに数% →  小規模向け、ざっくり用

■ 方式②:プロジェクトバッファ(CCPM方式) →  大規模・遅延リスクが高い案件向け

■ 方式③:フィーディングバッファ →  クリティカルパス以外の遅延用


工数見積もりのテンプレート(例)

■ 工数見積もりテンプレート(表形式)

タスク名作業時間担当者依存関係コメント
要件定義16hPMヒアリング2回含む
設計24hSE要件定義
実装A40hDev1設計API仕様要確認
実装B32hDev2設計
テスト24hQA実装A/Bバグ修正時間考慮
リリース8hPMテスト承認待ちあり

WBS(作業分解)の作り方を完全解説|誰でも抜け漏れなくタスク化できる方法
(補足:工数見積もりはWBSの粒度が揃っていることが大前提です)


まとめ

工数見積もりはプロジェクト成功の“核心スキル”

正しい工数見積もりは、

  • 予算
  • 納期
  • スケジュール
  • リソース管理
  • 手戻り削減

すべての基盤になります。

3つの手法を使い分けながら、

  • WBSで粒度を揃える
  • 過去実績を使う
  • バッファを適切に設計する

これらを徹底すれば、
工数の見積もり精度は大幅に向上します。

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