ログ監査とは、
システムやデータベースで発生した操作・アクセス履歴を記録し、分析する仕組み のことです。
不正アクセスや内部不正は「いきなり大きな事件」になるわけではありません。
その前段階として必ず“兆候”があります。
その兆候に 最速で気づける仕組み がログ監査です。
この記事では、
「ログ監査とは何か → なぜ必要なのか → どう運用するのか」
を初めて担当する人でも理解できるように解説します。
目次
ログ監査とは?
ログ監査とは、
誰が・いつ・どのデータに・どんな操作を行ったかを記録し、異常を検知するための仕組み です。
主に次のログが対象になります。
- データベースの操作ログ(SELECT/UPDATE/DELETE など)
- ログイン・ログアウトの履歴
- アプリケーションログ
- ネットワークアクセスログ
- 管理者操作ログ
これらのログを監査することで、
日常の正常な操作と、不審な動きを見分けられるようになります。
なぜログ監査が必要なのか?
理由は次の3つです。
● 不正アクセスを早期に発見できる
大量データ取得、深夜の異常なアクセス、同一IPの連続失敗など、
不正の兆候を“事後ではなく途中で”見つけられる のが最大のメリットです。
● 内部不正の抑止になる
ログが残ることで、
「不正をしても必ず記録される」状態が生まれるため、抑止力が働く。
内部不正は外部攻撃よりも被害が大きいため、特に重要です。
● インシデント時に原因追跡ができる
何が起きたのか、どのアカウントが操作したのかを追跡できます。
その結果、
- 影響範囲を特定
- 対応を迅速化
- 再発防止に活用
が可能になります。
監査すべきログの種類
企業・システム問わず、最低限以下のログは必須です。
● 認証ログ
- ログイン成功・失敗
- パスワード変更
- MFA設定変更
異常なログインを発見する最も重要なログです。
● データベース操作ログ
- SELECT(大量取得)
- UPDATE/DELETE(不正変更)
- DDL操作(テーブル変更)
DBが狙われているかどうかがダイレクトに分かります。
● 管理者操作ログ
root・adminの操作は影響が大きいため必ず記録します。
● アプリケーションログ
フォーム入力、画面遷移、実行処理など
アプリの「使われ方」がわかります。
● ネットワークアクセスログ
- 接続元IP
- 通信量
- ブロックされたアクセス
攻撃の前兆 detection に役立ちます。
ログ監査を成功させるポイント(運用のコツ)
ログを“集めるだけ”では不正検知はできません。
運用するための仕組みが重要です。
● 監査ルールを明確にする
- どのログを
- 誰が
- どの頻度で
- 何を判断するのか
を明確化しておくことが必須。
● SIEMで自動分析・アラートを設定
代表的なSIEM例
- Splunk
- Elasticsearch (ELK Stack)
- Azure Sentinel
- AWS GuardDuty / CloudWatch Logs
特徴:
大量ログから異常パターンを自動検知できる。
● ログ保管期間を明確に
一般的には 90日〜1年 が目安。
不正が後から発覚するケースを考えると、長めが安心。
● 改ざん防止(WORMストレージなど)
ログそのものを消されたら意味がありません。
WORM(Write Once Read Many)など改ざん不可の仕組みを利用します。
● アクセス権限を最小化
ログ閲覧権限を持つ人は最低限にする。
(内部不正の温床になりやすいため)
ログ監査のチェックリスト
すぐに確認できる項目をまとめました。
- ログが取得されているか
- ログの保管期間は適切か
- 管理者操作ログは分離されているか
- SIEMやアラート設定があるか
- 改ざん防止対策はしているか
- 定期点検(週 or 月)の仕組みがあるか
まとめ
ログ監査は、
不正アクセスを早期に発見し、被害を最小限に抑えるための核心対策 です。
- 不正の兆候を検知できる
- 内部不正を抑止できる
- インシデント時に原因追跡できる
- ゼロトラストの前提に必須
といったメリットがあり、
どんな企業規模でも導入すべき「セキュリティの基本」といえます。
まずは、
- 認証ログ
- DB操作ログ
- 管理者操作ログ
の3つから監査を始め、
必要に応じてSIEMや改ざん防止の仕組みを組み合わせていくのがおすすめです。