目次
はじめに
概要
本資料は、楽しく質問力を鍛えるためのゲームやアクティビティ集です。ビジネス研修、チームビルディング、教育現場などで使える具体的な遊び方と効果を紹介します。
本資料の目的
質問の質を高めることで、対話の深さや理解力を向上させます。短時間で実践できるゲームを通して、主体的に質問する習慣を育てます。
想定読者と活用場面
- 研修担当者、チームリーダー、教師
- 新入社員研修、ワークショップ、授業の導入
使い方と進め方のポイント
- 目的(情報収集・関係構築・発想支援)を明確にする。
- 参加者の人数や時間に合わせてゲームを選ぶ。
- ルールは簡潔にし、フィードバックの時間を必ず設ける。
注意点
安全で尊重ある雰囲気を作ることが大切です。恥ずかしさや否定が生まれないよう配慮してください。
以降の章で、具体的なゲームの流れ・準備物・期待される効果を順に説明します。ご自身の目的に合わせてアレンジしてお使いください。
質問の達人ゲーム
概要
「質問の達人」は、発問の種類やスキルを実践で身につけるグループワークです。3~8人でテーマカードを使い、講師役が指定された質問を投げ、回答者が答え、全員でフィードバックします。実践を繰り返すことで質問の幅と深さを育てます。
準備物と人数
- 人数:3~8人(多すぎると回転が遅くなります)
- 時間:1セッション30~60分
- 用意するもの:テーマカード(例:旅行、仕事、人間関係)、発問カード(例:事実確認、感情、未来志向)、タイマー、記録用紙
進め方(基本)
- 役割分担:講師役1名、回答者1名、観察者(残り)
- 講師役は発問カードで指定された種類の質問を3~5回投げる
- 回答者は自然に答える(制限時間30~60秒)
- 観察者は質問の良さ・改善点を具体的にフィードバック
- 役割を交代して複数ラウンド行う
バリエーション
- タイムアタック:制限時間内にできるだけ多くの種類で質問する
- ランダム発問指定:くじ引きで質問種類を決める
- テーマチェンジ:回答者の立場を変えて問い直す
効果・期待できる力
- 発問のバリエーションが増える
- 相手の思考を深める質問力が向上する
- 他者視点でのフィードバック力と傾聴力も鍛えられる
ポイント・注意点
- 評価は具体的に行う(例:「何が良かったか」+「改善案」)
- 質問は閉じすぎないように注意し、オープンな言葉を意識する
- 安心できる場を作り、否定的な反応は控える
- 時間配分を守り、全員が何度も経験できるようにする
名前を当ててねゲーム(検索当てゲーム)
概要
出題された画像を手がかりに、グループで特徴を言葉にして検索語を作り、インターネットで同じ画像を探すゲームです。検索力、質問力、傾聴力を同時に鍛えられます。言語化や協力の練習にも最適です。
準備物
- 画像(あらかじめ用意、またはランダム)
- 検索可能な端末(1グループに1台)
- タイマー、メモ用紙
ルール
- 出題者が画像を見せる(参加者は最初は見ない場合も可)。
- グループで特徴を言語化して検索語を決める。制限時間を設ける。
- 検索で同じ画像を見つけたら得点。早さと正確さで競う。
進め方(具体例)
- 画像が赤い自転車なら「赤 自転車 レトロ」など複数語を試します。
- 一語で出ない時は、色・形・背景・写っている物・テキストなどを加えます。
学べる力
- 単語選択の精度、聞き取りの速さ、意見のすり合わせ。
工夫と発展
- 制約(語数制限や禁止語)を加えて難度調整。ペア戦やトーナメントも可能です。
注意点
- ネット上の画像の著作権や不適切な内容を避ける工夫をしてください。
質問ゲーム(Yes/Noゲーム)
目的
参加者の一人が心に思い浮かべたものを、ほかの人が「はい」「いいえ」で答えられる質問だけで当てます。論理的思考力と質問の順序立てが鍛えられ、相手の考えを想像する力も育ちます。
ルール
- 一人が答える人(出題者)になります。出題者は何かを思い浮かべます。性質や固有名詞など何でも可。
- 他の参加者は交代で質問をします。質問は必ず「はい/いいえ」で答えられる形式にします。
- 質問回数や制限時間をあらかじめ決めます(例:20問ルールや3分制など)。
- 出題者は正直に答えます(変種として“1回だけ嘘をつける”ルールも可)。
進め方のコツ
- 大きなカテゴリから絞る:まず「生き物ですか?」「食べ物ですか?」などで範囲を狭めます。
- 二分探索を意識する:可能な選択肢を半分に分ける質問を優先します。
- 曖昧な語を避ける:質問は具体的にし、解釈の余地を減らします(例:「よく見る物ですか?」は避ける)。
- 前提を確かめる:相手が文化や年齢で違う認識を持つ場合は補足質問で前提を合わせます。
バリエーション
- チーム戦:2チームで対戦し早く当てたチームに得点。
- 制限つき嘘ルール:出題者は1回だけ嘘をついてよい。
- テーマ指定:動物限定、乗り物限定など範囲を決める。
練習例(短め)
出題者:りんごを思い浮かべる。
問1「食べ物ですか?」→はい
問2「果物ですか?」→はい
問3「赤いですか?」→はい
問4「丸いですか?」→はい
推測:りんご。
注意点
- 出題者は答えをあいまいにしないこと。答えに迷いがあるとゲームが停滞します。
- 質問は順序立てて。感情的な質問や冗長な質問を減らすことで学習効果が上がります。
質問リレーゲーム
目的
参加者が順番に質問を考え、前の回答を受けて次の質問を作ります。会話力、即興力、想像力を育てます。
準備
- 3人以上が望ましい
- 制限時間やテーマを決めると進行しやすい
基本ルール
- 進行役を決めます。右回りなど順番を決めます。
- 最初の人が質問を一つ投げます(例:「休日に一番したいことは?」)。
- 次の人はその質問に答え、回答の一部を使って新しい質問を作ります(例「家で映画を見たいです。どんな映画が好きですか?」)。
- これを繰り返します。質問や回答は一文程度で簡潔にします。
- 制限時間や回数を超えたら終了します。
バリエーション
- テーマリレー:食べ物、旅行などテーマを絞る
- 制約リレー:一問につき形容詞を一つ使う、など
- 早口リレー:制限時間を短くする
効果
連鎖的に発想が広がり、聞く力と考える力が同時に鍛えられます。チームの距離感も縮まります。
進行のコツ
短く答え、次の質問に結びつける習慣をつけます。詰まったらヒントを与えて場を回してください。
時間・人数
5〜20分、3〜10人が目安です。
私は誰でしょうゲーム
概要
自分の額に貼られたカードに書かれた人物や物を、他の参加者への質問を通じて推測するゲームです。論理的な質問力、推理力、対話スキルを楽しく鍛えられます。
ルール(基本)
- 参加者の一人がカードを額に貼り、本人は内容を見ません。
- 他の人は「はい/いいえ」や短い答えで応えられる質問を順番にします。
- 質問回数や時間を決めて勝敗を決めます。
準備
- カードに人物・職業・動物・物品などを書きます。
- レベルに応じて簡単〜難しい語を混ぜます。
- チーム戦にすると盛り上がります。
進め方のコツ
- 大きな分類から始める(生き物か、屋内か、有名人か)。
- 絞り込みは仮説検証の順で(例:『動物ですか?』→『鳥ですか?』)。
- 一問一答にし、複数の事柄を同時に聞かないでください。
質問の例
- 「生き物ですか?」
- 「日本でよく知られていますか?」
- 「手で持てますか?」
バリエーション
- Yes/Noのみ、3回まで、タイムアタック、ヒントカードあり、テーマ(歴史上の人物など)。
進行の工夫
- 最初に5分で説明してルールを統一します。
- 答えを早く言い過ぎないよう促します。
注意点
- ネタバレを避ける。相手をからかいすぎない。
- 年齢や場に合わせた語を選んでください。
質問じゃんけん
概要
2人1組でじゃんけんをし、勝った人が負けた人に質問をするシンプルなゲームです。短時間で多様な質問を体験でき、会話のきっかけづくりに適しています。
準備
- 人数: 2人以上(ペアを作る)
- 時間: 1回あたり1〜3分程度がおすすめ
- 用具: 特になし。質問を書いたカードがあると進行が楽になります。
ルール(遊び方)
- ペアでじゃんけんをする。
- 勝った人が1つ質問を出す。
- 負けた人は正直に短く答える。
- もう一度じゃんけんして交代する。回数や時間を決めて繰り返します。
進め方のコツ
- 質問は簡潔にし、答えやすいものを選びます。
- 相手の答えに対して短いリアクションやフォローを入れると会話が深まります。
質問例
- 今日いちばん嬉しかったことは?
- 好きな食べ物は何ですか?
- 最近ハマっていることは?
- 子どもの頃の夢は?
- 行ってみたい場所は?
アレンジ例
- テーマ(仕事・趣味・旅行など)を決める
- 勝ち点制にして得点を競う
- 時間制限を設けてリズムよく進める
注意点
- プライバシーに関わる質問や答えにくい質問は避けてください。
- 無理に答えさせないで、安心できる雰囲気を作ることを優先してください。
傾聴・ヒアリング系ゲーム
概要
ヒアリングチャレンジは、グループをインタビュアー(聞き手)、クライアント(話し手)、観察者に分けて行います。話し手の言葉の裏にあるニーズや課題を引き出す質問を工夫し、傾聴と質問力を同時に鍛えます。営業や社内コミュニケーション研修で使いやすいゲームです。
準備物
- テーマカード(課題や状況を一枚ずつ)
- タイマー(5〜10分)
- 観察シート(傾聴の良かった点・改善点)
進め方
- 役割を決める(5〜10分ごとに交代)
- 話し手はテーマを受け取り、自分の状況を話す(2〜3分)
- 聞き手はオープン質問や掘り下げを中心に質問する(3〜5分)
- 観察者はメモを取り、終わりにフィードバックする(2分)
役割の詳しい説明
- 聞き手:相手の話を遮らず要点を確認しつつ、なぜ・どうしてに焦点を当てる質問を投げます。例:「それをすると何が変わりますか?」
- 話し手:素直に状況や悩みを語る。脚色しすぎず具体的に話すと実践効果が高まります。
- 観察者:非言語や沈黙の扱い、追質問の質を評価します。肯定的な点と改善点を必ず伝えます。
指導ポイントとコツ
- 「なぜ」を連発せず、相手の言葉を要約して確認する
- 開かれた質問(How, What)を多く使う
- 沈黙を恐れず、相手が考える時間を作る
具体例ケース
- 新製品の提案に対する顧客の不安を引き出す
- チームメンバーのモチベーション低下の原因を探る
バリエーション
- 制限質問(Yes/No禁止)で行う
- 電話・チャットを想定して非対面で練習する
評価と頻度
短いサイクルで繰り返すと効果的です。観察シートをもとに具体行動を一つ決めて次回に活かしてください。
その他の質問力を鍛えるアクティビティ
はじめに
ここでは、前章で触れたもの以外の問いを鍛える遊びを紹介します。短時間で多くの質問をする練習や、想像力と論理を同時に使う活動を中心に説明します。
水平思考ゲーム(ウミガメのスープ)の深掘り
出題者が短い物語を提示し、回答者はYes/Noで質問して真相を探ります。情報を小分けに引き出す訓練になります。質問は仮説を立てる形で行うと推理力が伸びます。出題者は曖昧さを残さず答え、必要に応じて補足を加えてください。
ラピッドQ&A(短時間で多くの質問)
制限時間を設定し、交互に質問を投げ合います。時間内にどれだけ的確な質問を出せるかを競います。会話のテンポ感と優先順位の付け方が身につきます。
ロールプレイで状況設定
職場や日常の場面を設定して役割を与え、目的に沿った質問を行います。例えばクレーム対応や企画ヒアリングの場面を想定すると実践力が付きます。
振り返りとフィードバック
練習後は必ず振り返りを行い、良かった質問と改善点を記録します。周囲から具体的な指摘をもらうと、次回の成長につながります。
注意点
相手を否定する質問や答えにくい個人情報を尋ねないよう配慮してください。練習は安全で楽しい雰囲気で行いましょう。
まとめ
学んだことの振り返り
本書で紹介したゲームは、単なるクイズに留まりません。対話力、観察力、推理力、即興力、協力する力などを同時に伸ばせます。たとえば「質問リレー」なら聞く力と次をつなぐ力を、「私は誰でしょう」なら推理と質問の精度を鍛えられます。
実践のコツ
- 目的に合わせてゲームを選ぶ:情報を引き出したいなら傾聴系、思考力を鍛えたいなら推理系を選びます。
- ルールは短く明確にする:参加者がすぐに取り組めます。
- フィードバックを重視する:良い質問例と改善点を具体的に伝えます。
- 参加者の役割を回す:出題者・回答者・観察者を交代して経験を広げます。
簡単な実践プラン(60分)
- ウォームアップ(10分): 短いYes/Noゲームで手を動かします。
- メイン(35分): 目的に合うゲームを実施(小グループで複数回)。
- 振り返り(15分): どの質問が有効だったかを共有し、改善点をまとめます。
続けるコツと心構え
小さな成功体験を積むことで質問力は確実に向上します。日常会話や職場の短いミーティングにも本書の練習を取り入れてください。楽しく続けることが一番の近道です。