プロジェクトマネジメント

▶統合マネジメントとは?プロジェクト全体を統括する役割と仕組み

目次

はじめに

プロジェクトマネジメントを学び始めると、スケジュールをどう組むか、リスクにどう備えるか、コストをどう管理するかなど、たくさんのテーマが次々と出てきますよね。テキストや講座で一つひとつ学んでいるときは、「なるほど、こうやればいいのか」と理解できた気持ちになるものです。

けれど、いざ現場に立つとどうでしょうか。
納期が迫るなかで仕様変更の相談が入り、同時にメンバーからは人手不足の声が上がる。さらに、想定していなかったトラブルも起きる――そんなふうに、複数の課題が同時に目の前に並ぶことは少なくありません。

そのとき、「まずスケジュールを立て直そう」「いや、先にリスクを洗い出すべきでは?」と、それぞれの担当が自分の持ち場を優先して動き始めると、チーム全体の足並みがそろわなくなってしまいます。
会議や作業は重ねているのに、完成イメージに近づいている実感が持てない――そんなもどかしさを感じたことはありませんか。

「結局、何から手を付ければいいの?」
「全体を見渡す役割は誰が担えばいいの?」

こうした疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

本記事では、バラバラに見える管理活動をひとつにまとめ、プロジェクト全体を同じ方向へ導く「統合マネジメント」の考え方を、順を追ってわかりやすく整理していきます。あわせて、実務のどのような場面で関わってくるのかも、具体的な状況を思い浮かべながらご紹介します。

統合マネジメントとは?

プロジェクトには、スケジュール管理、コスト管理、リスク管理など、さまざまな管理活動があります。それぞれは大切な役割を持っていますが、実際の現場ではそれらが同時に動き、互いに影響し合います。どれか一つだけを優先すると、ほかの計画と食い違いが生まれてしまうこともありますよね。では、それらをどのようにまとめ、全体として同じ方向に進めていけばよいのでしょうか。ここでは、複数の計画や作業をひとつの方針にまとめ、矛盾を調整しながら、最終的な決定を下す役割を担う「統合マネジメント」について整理していきます。

複数の計画や作業を一つの方針にまとめる管理

複数の部署や担当者がそれぞれ別に作成した計画や作業手順を、そのまま個別に進めるのではなく、目的・期限・担当・優先順位を整理して一つの実行計画にまとめて管理することを指します。たとえば、新商品の発売では「開発」「製造」「在庫確保」「広告」「販売開始日」の計画が別々に存在しますが、統合マネジメントでは発売日から逆算して工程表を作成し、各作業の開始日と完了日、責任者、必要な資材や予算を一つの表やシステム上で管理します。

これにより、製造が遅れているのに広告だけ先に始まるといった不一致や、同じ作業の重複、担当の抜け漏れを防ぎ、全体を予定どおりに進めることができます。

異なるマネジメント領域の矛盾を調整する管理

品質・コスト・納期・人員・リスクなど、それぞれ別の担当者が管理している項目の間で発生する食い違いを具体的に調整し、全体として実行可能な状態にすることを指します。たとえば、品質担当が「検査工程を追加して不良率を下げる」と計画すると作業時間と人件費が増え、コスト担当の予算上限を超える可能性があります。また、納期担当が「予定どおり出荷する」とすると、検査時間を確保できず品質基準を満たせなくなる場合があります。

統合マネジメントでは、追加検査を一部ロットのみに限定する、外部検査会社を利用して人員不足を補う、出荷日を数日後ろにずらすなど、具体的な代替案を比較し、品質基準・予算・納期のすべてを満たす現実的な条件に調整します。このように、各分野の要求を個別に優先するのではなく、衝突している点を数値や作業内容レベルで修正して全体を成立させる管理です。

プロジェクト全体の最終判断を行う管理

複数の担当者や部署から上がってくる提案や報告を踏まえ、実行する内容を最終的に一つに決定する役割を指します。たとえば、システム開発プロジェクトで「機能を追加して利便性を上げるべき」という意見と、「追加すると納期が1か月遅れる」という報告が同時に出た場合、どちらを採用するかを決めるのがこの管理です。

具体的には、追加機能による売上見込み、開発費の増加額、遅延による損失、契約上の期限などの数値や条件を確認し、機能を削る・延期する・人員を増やして納期を守るなどの選択肢の中から実行する案を一つに決定します。また、仕様変更、予算の増額、スケジュールの修正、外注の採用といった重要事項についても、承認または却下を行い、全員が同じ方針で動ける状態にします。これにより、現場ごとに異なる判断で作業が進むことを防ぎ、プロジェクトを一つの決定に基づいて進行させることができます。

統合マネジメントの役割とは?

統合マネジメントは、個別に進む作業や判断をバラバラのままにせず、プロジェクト全体として矛盾なく動かすための調整機能です。スコープ・スケジュール・コストの食い違いを防ぎ、関係者の意見の衝突を整理し、最終的にどの方向で進めるかを決定します。ここでは、プロジェクトを破綻させないために統合マネジメントが担う具体的な役割を確認します。

スコープ・スケジュール・コストの整合を保つ役割

作業範囲(何をどこまで作るか)、作業期間(いつまでに終えるか)、予算(いくら使えるか)の3つが互いに食い違わないように具体的に調整し続ける役割を指します。たとえば、機能を追加して作業範囲が増えた場合、そのままでは作業時間と人件費も増えるため、納期の延長か予算の増額が必要になります。

逆に、納期を前倒しする場合は、作業内容を減らすか、担当者を増やして残業や外注費を含めた追加コストを確保しなければなりません。統合マネジメントでは、追加された機能一覧、各作業の所要時間、担当人数、単価、利用できる総予算などを具体的な数値で確認し、「機能Aを削除して予定どおりに終える」「外注費を100万円追加して期限を守る」など、3つの条件が同時に成立する形に修正します。このように、どれか一つだけを優先して他が破綻する状態を防ぎ、作業内容・期限・費用が現実的に一致した計画を維持することが目的です。

関係者間の意見や判断を一本化する役割

発注者、管理者、現場担当、外部業者など複数の関係者がそれぞれ異なる要望や判断を出した場合に、最終的に採用する方針を一つに決めて全員に徹底させる役割を指します。たとえば、発注者は「早く完成させたい」、品質担当は「検査工程を増やしたい」、現場は「人員が足りない」と主張している場合、そのままでは作業が進みません。

統合マネジメントでは、契約上の納期、追加費用の有無、確保できる人員数、品質基準などを具体的に確認し、「検査は重要部分のみ追加する」「外部作業員を2名投入する」「納期は変更しない」といった実行可能な方針を決定します。そして、その決定内容を全関係者に共有し、個別の判断で勝手に作業方法や優先順位を変えないよう統一します。これにより、部署ごとに異なる指示が出ることや、現場がどの意見に従うべきか分からなくなる状況を防ぎ、全員が同じ条件で作業を進められるようにします。

プロジェクト全体の最適な方向を決める役割

売上目標、納期、予算、品質基準、契約条件など複数の制約を踏まえ、どの方法で進めるのが最も現実的かを具体的に決定する役割を指します。たとえば、システム開発で「高性能だが開発に8か月かかる案」と「性能はやや下がるが4か月で完成する案」がある場合、契約上の納期が5か月なら前者は選べません。

統合マネジメントでは、契約違反による違約金、開発費、人員確保の可否、完成後の売上見込みなどを数値で比較し、「性能を一部削減して4か月で完成させる」「重要機能のみ先に公開し、残りは追加開発とする」など、条件を満たしつつ成果を最大化できる進め方を決定します。また、途中で予算削減や人員不足が発生した場合も、機能の優先順位を見直して不要部分を削る、外注範囲を変更するなど、全体が破綻しない方向へ修正します。このように、個別の要望ではなく、期限内に完成させて契約や事業目的を達成できる具体的な進め方を一つに定めることが目的です。

統合マネジメントで行う具体的な業務(5つのプロセス)

統合マネジメントでは、プロジェクトを「立ち上げて終わらせるまで」の全工程を横断的に管理します。個々の作業を単に進めるのではなく、開始の承認から計画策定、実行の統括、変更対応、そして正式な終結までを一貫した流れとして統合することが重要です。ここでは、統合マネジメントで実際に行われる主要な5つの業務プロセスを順に確認します。

①プロジェクト開始を正式に承認する業務

プロジェクトを正式な業務として開始してよいかを決定し、実施の根拠となる文書を作成・承認する業務を指します。具体的には、目的(何を作る・実施するのか)、成果物、予算上限、納期、責任者、参加部署、使用できる人員や設備などを明記した「プロジェクト憲章」や承認書を作成し、発注者や経営層の署名・決裁を得ます。

たとえば、新しい商品開発の場合、「開発費は最大2,000万円」「発売予定は来年4月」「開発責任者は〇〇部長」「製造は△△工場を使用」といった具体的条件を文書で確定させます。この承認が完了すると、予算の使用、担当者の配置、外注契約の準備などを正式に進めることが可能になります。逆に承認がない段階では、試験的な調査や企画検討はできても、本格的な作業や費用支出は行えません。これにより、誰の判断で開始したのか不明なまま業務が進むことや、後から「承認していない」と否認される事態を防ぎます。

② 全体計画を統合して策定する業務

作業範囲、工程表、予算、人員配置、品質基準、調達方法、リスク対応など、各分野ごとに作成された計画を一つの実行計画としてまとめる業務を指します。たとえば、開発部は機能一覧と作業手順、経理は予算配分、購買は資材の発注計画、人事は担当者の配置表をそれぞれ作成しますが、そのままでは開始日や完了日、必要人数、費用の支出時期が一致しないことがあります。

統合では、全作業を時系列に並べた工程表を作成し、「設計完了後でなければ製造を開始しない」「資材は製造開始の2週間前までに納入する」「人員は〇月〇日から配置する」といった具体的な順序と条件を確定させます。また、各作業に必要な費用を月ごとに集計し、予算上限を超えないかを確認します。このように、個別計画の不一致や重複を修正し、実際に実行できる一つの総合計画として文書化することが目的です。

③ プロジェクトの実行を統括する業務・管理する

策定した全体計画どおりに作業が進むよう、各担当者の業務を調整しながら日々の進行状況を管理する業務を指します。具体的には、工程表に基づいて「設計は予定どおり完了しているか」「資材は納入されたか」「外注作業は開始されたか」などを定期的に確認し、遅れや問題があれば即座に対応します。

たとえば、製造に必要な部品の納入が遅れた場合は、別の仕入先に緊急発注する、他の作業を先に進める、人員を別工程へ振り替えるなどの具体的な調整を行います。また、作業指示の変更、追加業務の割り当て、関係部署への連絡、進捗報告の取りまとめなども含まれます。これにより、各担当が個別に動いて全体の順序が崩れることや、問題が放置されて工程全体が停止する事態を防ぎ、計画どおりに成果物が完成するようプロジェクト全体を指揮します。

④ 変更内容を評価・承認・反映する業務

作業内容や仕様、納期、予算などを途中で変更する必要が生じた場合に、その影響を具体的に確認し、実施するかどうかを決定したうえで計画へ反映する業務を指します。たとえば、発注者から「機能を追加してほしい」という要望が出た場合、追加作業に必要な工数(何人が何日必要か)、人件費や外注費の増加額、完成日の遅延日数、既存作業への影響を数値で算出します。

その結果、「費用が200万円増加し納期が2週間延びる」と分かれば、契約条件や予算内で対応可能かを確認し、承認または却下を判断します。承認した場合は、工程表・予算表・作業指示書などを修正し、関係者全員に新しい条件を通知します。逆に却下した場合は、当初の計画どおりに作業を継続します。この手順を踏まずに変更を個別に受け入れると、費用超過や納期遅延、作業の混乱が発生するため、必ず影響確認と正式承認を経てから反映させます。

⑤ プロジェクトを正式に終結させる業務

すべての作業と契約上の義務が完了したことを確認し、業務として正式に終了したと記録する手続きを行う業務を指します。具体的には、成果物が仕様どおり完成しているかの最終検査を行い、発注者から受領書や検収書への署名を得ます。また、未払いの費用の精算、外注契約の終了手続き、使用した設備や資材の返却、不要になったアカウントや権限の停止なども実施します。

さらに、最終報告書を作成し、実際にかかった費用総額、作業期間、発生した問題と対応内容、今後の参考となる注意点などを記録として残します。これらが完了すると、担当者を元の部署へ戻し、プロジェクト専用の予算や管理番号を閉鎖します。この手続きを行わないと、費用請求や責任範囲が不明確なまま業務が継続している状態になるため、正式な終結処理が必要になります。

統合マネジメントと他のマネジメント領域との関係

統合マネジメントは、単独で機能するものではなく、スコープ・スケジュール・コスト、リスク、品質、調達、ステークホルダーなど、すべてのマネジメント領域を横断して結び付ける役割を担います。各領域が個別に最適化されても、全体として整合が取れていなければプロジェクトは成功しません。ここでは、主要なマネジメント領域と統合マネジメントがどのように関係し、全体最適を実現しているのかを整理します。

スコープ・スケジュール・コストとの関係

作業範囲(何をどこまで実施するか)、工程(いつ実施するか)、費用(いくら使うか)は互いに強く影響し合うため、どれか一つを変更すると残りも調整が必要になります。統合マネジメントは、この3つが同時に成立するよう具体的に管理します。たとえば、機能を追加して作業範囲が広がれば、その分だけ作業日数と人件費が増えます。

納期を変更しない場合は、人員を増やして残業や外注で対応する必要があり、結果として費用が上がります。逆に予算を削減する場合は、人員や外注を減らすことになるため、作業期間を延ばすか、機能の一部を削除しなければなりません。統合マネジメントでは、追加機能一覧、各作業の所要日数、担当人数、単価、総予算などを具体的な数値で確認し、「機能Bを削除して予定どおり完了させる」「外注費を150万円追加して納期を維持する」といった形で3要素の整合を取ります。このように、作業内容・期限・費用が互いに矛盾しない状態を維持する役割を担います。

リスク・品質・調達との関係

不具合や遅延の可能性(リスク)、完成品が満たすべき基準(品質)、外部から資材や作業を調達する計画(調達)は相互に影響するため、個別に決めると実行できない状態になることがあります。統合マネジメントでは、これらを同時に確認して矛盾がない形に調整します。たとえば、品質基準を厳しくして全数検査を行う場合、検査時間が増えるため納期遅延のリスクが高まり、人員追加や外部検査会社への委託が必要になる可能性があります。

また、調達先を低価格の海外業者に変更すると費用は下がりますが、輸送遅延や品質不良の発生確率が上がることがあります。この場合、納期に余裕を持たせる、予備在庫を確保する、受入検査を追加するなどの具体的対策を組み合わせて全体が成立する条件を作ります。このように、品質向上・コスト削減・外注計画・遅延や不具合の可能性を同時に検討し、どれか一つの判断によって他が破綻しないよう調整する役割を担います。

ステークホルダーとの関係

発注者、利用者、社内の各部署、外注業者、出資者など、利害や立場が異なる関係者の要望や制約を整理し、実行可能な条件にまとめて対応する役割を指します。たとえば、発注者は「追加機能を無償で入れてほしい」と求め、利用者は「操作を簡単にしてほしい」、経理は「予算を増やせない」、現場は「人員が不足している」といった状況では、そのままではどれも同時に満たせません。

統合マネジメントでは、契約内容、追加費用の有無、作業日数、人員確保の可否などを具体的に確認し、「追加機能は有償対応とする」「操作改善は既存機能の範囲内で実施する」「人員不足は外注で補う」など、現実に実行できる条件を決定します。また、決定内容を文書や会議で全関係者に共有し、認識の違いによるトラブルや後からの要求変更を防ぎます。このように、関係者ごとの主張を個別に受け入れるのではなく、契約・予算・納期を守りながら全体として成立する対応に整理することが目的です。

統合マネジメントが機能しないと起こる問題とは?

統合マネジメントが十分に機能しない場合、個々の作業や判断がバラバラに進み、プロジェクト全体の整合性が失われます。その結果、計画と実行のズレや変更時の混乱、責任の不明確化などが連鎖的に発生し、最終的にはプロジェクトの失敗につながる可能性も高まります。ここでは、統合マネジメントの欠如によって具体的にどのような問題が起こるのかを確認します。

計画と実行が一致しなくなる

全体計画で定めた作業内容・手順・期限どおりに現場が動かなくなり、別々のやり方で作業が進む状態になります。たとえば、工程表では「設計完了後に製造開始」となっているのに、納期を急ぐ現場が設計確定前に製造を始めてしまい、後から仕様変更が入って作り直しが発生することがあります。

また、予算計画では外注を使わない前提だったのに、担当者の判断で外注を発注してしまい費用が超過する場合もあります。さらに、最新版の仕様書が共有されていないと、部署ごとに異なる図面や手順で作業を進め、完成品の内容が一致しないことも起こります。このように、計画は存在していても統一して管理されていないと、現場の判断で作業が変更され、手戻り・費用増加・納期遅延などの具体的な問題が連鎖的に発生します。

変更のたびに混乱が生じる

仕様追加や納期変更などが発生するたびに、誰が何を変更したのか、どこまで影響があるのかが共有されず、現場ごとに異なる対応を取る状態になります。たとえば、発注者の要望で機能を1つ追加したにもかかわらず、工程表や作業指示書が更新されないまま作業が続くと、ある部署は旧仕様で作業し、別の部署は新仕様で作業するという不一致が発生します。

また、追加作業に必要な人員や費用が正式に確保されないと、担当者が通常業務と並行して対応することになり、他の作業が遅延します。さらに、外注先に変更内容が伝わっていない場合、完成品が要件を満たさず再発注が必要になることもあります。このように、変更内容の影響範囲の確認、承認、計画の更新、関係者への通知が行われないと、手戻り、作業の重複、納期遅延、費用増加といった具体的な混乱が繰り返し発生します。

責任の所在が不明確になる

作業の担当者や承認者が明確に定められていないため、問題が発生しても誰が対応すべきか分からなくなる状態になります。たとえば、納期に間に合わなかった場合に「設計が遅れたのが原因」「資材が届かなかった」「発注が遅れた」など複数の要因があると、各部署が互いに責任を主張し合い、具体的な是正措置が進まなくなります。

また、仕様変更を誰が承認したのか記録がないと、追加費用が発生した際に「正式な指示ではない」として支払いを巡るトラブルになることもあります。さらに、外注先との契約内容を管理する担当が不明確な場合、不具合が発生しても修正依頼の窓口が分からず対応が遅れます。このように、担当範囲・承認権限・連絡窓口が文書や体制として定義されていないと、問題解決が進まず、費用増加や納期遅延が拡大します。

プロジェクト全体が破綻する

作業範囲・納期・予算・人員などが個別に変更され続け、互いに成立しない条件のまま進行することで、最終的に完成や納品が不可能になる状態を指します。たとえば、機能追加を繰り返して作業量が当初の2倍になったのに予算と人員が増えず、納期も延長されない場合、現場は残業や休日出勤で対応しても完了できません。さらに、資材の発注遅れ、外注契約の未締結、仕様の確定不足などが重なると、必要な作業そのものが実施できなくなります。

その結果、納期を過ぎても成果物が完成せず、違約金の発生、契約解除、支払い停止などの重大な損失につながります。場合によっては、途中まで作った成果物が使用できず全て作り直しになることや、投入した費用や人件費が回収できないまま終了することもあります。このように、全体を統一して管理しないまま個別判断で進めると、修正では立て直せない段階まで状況が悪化し、プロジェクト自体が中止または失敗として終わる可能性が高くなります。

統合マネジメントはプロジェクトのどの段階で行われるの

統合マネジメントは特定の一場面だけで行われるものではなく、プロジェクトの立ち上げから終了まで全ての段階で継続的に実施されます。各フェーズごとに役割や重点は異なりますが、一貫して全体の整合性を保ち、方向性を統一することが求められます。ここでは、プロジェクトの各段階において統合マネジメントがどのように関わるのかを順に確認します。

統合マネジメントが開始される立ち上げ時

プロジェクトを開始する前に、目的・成果物・予算上限・納期・責任者・参加部署などの基本条件を確定し、正式な業務として動き出せる状態を作る段階で行われます。具体的には、「何を作るのか」「いつまでに完成させるのか」「最大いくらまで費用を使えるのか」「誰が最終責任者か」といった内容を文書にまとめ、発注者や経営層の承認を得ます。

たとえば、新製品開発では「発売予定は来年4月」「開発費は2,000万円以内」「開発責任者は〇〇部長」「製造は△△工場」といった条件を確定させます。また、この段階で主要メンバーの選定、必要な設備や外注の有無の確認、初期スケジュールの作成も行います。これらを決めずに作業を始めると、途中で目的や予算が変わり、計画の作り直しや作業停止が発生するため、立ち上げ時に全体の前提条件を統一しておく必要があります。

統合マネジメントの計画を整える段階

立ち上げ時に決めた前提条件をもとに、実際に作業を進めるための全体計画を具体的な内容まで落とし込む段階で行われます。具体的には、作業範囲の詳細(どの機能を作るか)、工程表(各作業の開始日と完了日)、担当者の割り当て、必要な人員数、月ごとの予算配分、資材の発注時期、外注の契約予定、品質確認の方法、想定されるトラブルへの対応策などを一つの計画としてまとめます。

たとえば、「設計は5月1日〜5月31日」「製造は6月1日開始」「部品は5月15日までに納入」「検査は7月上旬」「総費用は1,500万円以内」といった形で、実行に必要な条件を具体的な日付や金額で確定させます。また、各部署が作成した個別計画に矛盾がないかを確認し、順序や人員配置を調整します。これにより、作業開始後に「人が足りない」「資材がない」「予算が不足している」といった事態を防ぎ、計画どおりに進められる状態を整えます。

統合マネジメントが最も頻繁に行われる実行中

実際の作業が進んでいる期間は、進捗の遅れ、仕様変更、トラブルの発生、人員不足、資材の納入遅延などが次々に起こるため、最も頻繁に調整や判断が必要になります。具体的には、工程表どおりに作業が進んでいるかを日次・週次で確認し、遅れている工程があれば人員を追加する、作業順序を入れ替える、外注を利用するなどの対応を行います。

たとえば、部品の到着が1週間遅れた場合、そのままでは製造が停止するため、先にできる作業へ担当者を振り替える、代替部品を手配する、納期を再調整するなどの判断を行います。また、発注者からの仕様変更や追加要望が出た場合は、必要な作業時間や費用を算出し、承認を得てから計画を修正します。このように、現場で発生する具体的な問題を放置せず、その都度計画・人員・費用・手順を調整して、全体が止まらないよう維持することが主な業務になります。

統合マネジメントで完了を確認する終了時

すべての作業が完了したあと、契約どおりの成果物が納品され、未処理の業務や支払いが残っていないことを確認する段階で行われます。具体的には、完成品が仕様書どおりに仕上がっているかの最終検査を実施し、発注者から検収書や受領書への署名を受け取ります。また、外注先への最終支払い、追加費用の精算、未納の請求の有無の確認、契約の終了手続きなどを行います。

さらに、使用していた作業場所や設備の返却、プロジェクト専用アカウントや権限の停止、保管が必要な資料やデータの整理も実施します。最後に、実際にかかった費用総額、作業期間、発生した問題と対応内容をまとめた最終報告書を作成し、正式に業務が終了したことを記録します。これにより、後から追加作業や責任問題が発生することを防ぎ、プロジェクトを完全に完了した状態にします。

統合マネジメントにおけるプロジェクトマネージャーの役割

統合マネジメントの中心となるのは、プロジェクト全体を俯瞰し意思決定を行うプロジェクトマネージャーです。各マネジメント領域の調整や優先順位の判断、最終的な方向性の決定など、多岐にわたる責任を担います。そのためには高度な調整力や判断力も不可欠です。ここでは、統合マネジメントにおいてプロジェクトマネージャーが果たす具体的な役割と求められる能力を整理します。

統合マネジメントで最終判断を行う役割

仕様変更、予算の増減、納期の延長、人員追加、外注の採用など、複数の選択肢がある重要事項について、どの案を実行するかを最終的に決定する役割を指します。たとえば、作業が遅れている場合に「機能を削って期限を守る」「人員を増やして当初どおり完成させる」「納期を延長する」といった対応策が出ますが、それぞれ費用・品質・契約条件への影響が異なります。

統合マネジメントでは、追加費用の金額、確保可能な人員数、契約上の期限、遅延による違約金、完成後の利用価値などを具体的に比較し、実行する案を一つに決めます。また、決定内容は工程表や予算表、作業指示に反映し、関係者全員に通知します。これにより、部署ごとに異なる判断で対応することを防ぎ、プロジェクト全体が同じ決定に基づいて進むようにします。

統合マネジメントで各領域を統合する役割

作業範囲、工程、予算、品質、リスク、人員、調達など、分野ごとに作成された計画や管理内容を一つの実行方針としてまとめ、互いに矛盾がない状態にする役割を指します。たとえば、開発計画では6か月で完成とされていても、調達計画で主要部品の納期が5か月後になっていれば、製造や検査の期間が確保できず計画どおりに進みません。また、品質基準を厳しく設定すると検査工程が増え、人員計画や予算計画の見直しが必要になります。

統合マネジメントでは、各分野の計画を同じ工程表や予算表上で照合し、「部品は4か月以内に納入可能な業者へ変更する」「検査要員を2名追加して期間内に完了させる」など具体的な修正を行います。このように、個別に成立している計画を単に並べるのではなく、実際に同時に実行できる条件へ調整して一体化させることが目的です。

統合マネジメントを担うために必要な能力

複数の分野の情報を同時に把握し、具体的な数値や条件を基に実行可能な判断を下す能力が必要になります。たとえば、作業範囲が増えたときに、追加作業に必要な人数、作業日数、人件費、納期への影響を計算できること、工程表を読み取り遅れが全体にどの程度影響するかを判断できることが求められます。

また、契約条件や予算上限を理解し、違反や費用超過が起きない範囲で代替案を選べる知識も必要です。さらに、各部署や外注先から進捗や問題点を正確に聞き取り、事実と推測を区別して状況を整理する能力、決定事項を文書や会議で明確に伝え、全員が同じ手順で動くよう指示できる能力も重要です。このように、単に管理するだけでなく、工程・費用・人員・契約・品質などを具体的な条件として結び付け、実行できる形に調整するための実務的な判断力と調整力が求められます。

まとめ

複数の部署や担当者が同時に作業や判断を行うプロジェクトでは、それぞれが自分の担当範囲だけを最適化しても、全体として成立しないことがあります。

たとえば、開発は高機能化を優先し、経理は予算削減を求め、営業は納期厳守を求めると、すべてを同時に満たすことができません。納期を短縮すれば人員追加や外注が必要になり費用が増え、品質基準を上げれば検査工程が増えて作業期間が延びます。このように条件が食い違ったまま進めると、後半になってから仕様変更や作業のやり直しが発生し、完成予定日を過ぎても納品できない事態になります。

全体を管理する役割がある場合は、契約上の期限、使用できる総予算、確保可能な人員数、必要な品質基準を具体的に確認し、「機能を一部削減して期限を守る」「外注費を追加して作業を前倒しする」など、実行可能な方針を一つに決定します。途中で資材の遅延や仕様追加が発生した場合も、工程表や予算表を更新して関係者全員に通知することで、作業の停止や重複を防げます。

開始から完了までこの調整を継続することで、最終検査、納品、支払い、契約終了といった手続きを予定どおり実施でき、プロジェクトを問題なく完了させることが可能になります。

-プロジェクトマネジメント
-