リーダーシップとマネジメントスキル

PMP申請に役立つプロジェクトマネジメント経験の書き方完全ガイド

目次

プロジェクトマネジメント経験とは何か

プロジェクトマネジメント経験とは、単に「プロジェクトマネージャー」という肩書きがある人だけが持つものではありません。実際には、プロジェクトの立ち上げから完了までの流れの中で、計画の立案、進捗状況の管理、コストや品質、リスクのコントロール、さらには関係者との調整など、プロジェクト全体の管理やリーダーシップを発揮した経験を指します。

特にIT分野では、複数の業務や関係者が関わる案件が多いため、メンバーの進捗を把握し、期日を守れるように日々調整したり、問題が発生した時に対応策を考えて実行したりすることもプロジェクトマネジメント経験の一部です。例えば、「システム導入の進行役を任され、メンバーにタスクを割り振って期限までに完了させた」「新サービスの開発チームで課題を洗い出し、対策をまとめて発表した」など、実践を通じて培った経験が対象となります。

また、「肩書き」や実際の「役職名」に関係なく、チーム内でのリーダー役や後輩・新入社員の教育担当、進捗会議の運営や日程管理など、“人に関わる業務の運営・マネジメント”が含まれる場合もあります。このように、幅広い場面での管理やリーダーシップ経験がプロジェクトマネジメント経験として評価されます。

次の章では、PMP受験に必要な「PM実務経験」条件について詳しく解説します。

PMP受験に必要な「PM実務経験」条件(学歴別)

PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)試験を受けるためには、一定のプロジェクトマネジメント実務経験が必要です。この経験要件は、最終学歴によって異なります。

大学卒以上の方

4年制大学以上を卒業されている場合、過去8年以内に36か月以上のプロジェクトマネジメント実務経験が必要です。プロジェクトに携わった期間が月単位でカウントされます。

高卒・短大卒の方

最終学歴が高卒や短大卒の場合は、60か月以上のプロジェクトマネジメント実務経験が必要となります。こちらも過去8年以内が対象期間です。

GAC認定プログラム修了者

PMI認定(GAC認定)の学士・修士プログラムを修了している場合は、24か月以上のプロジェクトマネジメント実務経験で受験が可能です。

共通の公式研修要件

学歴や経験にかかわらず、全員が共通して35時間以上の公式なプロジェクトマネジメント研修の修了が必要です。これはオンライン講座や集合研修など、さまざまな形態の公式プログラムで満たすことができます。

経験カウントのポイント

経験の期間は、月数を一意にカウントします。たとえば、同じ月に2つのプロジェクトで活動していた場合でも、重複分は1か月分として数えます。プロジェクトマネージャーという役職名でなくとも、実際にプロジェクト管理に関与していた実績があれば対象となります。

次の章は、「PMP受験申請での『実務経験の書き方』の要点」についてご紹介します。

PMP受験申請での「実務経験の書き方」の要点

PMP(Project Management Professional)を受験するためには、申請時にプロジェクトマネジメントの実務経験を英語で記載する必要があります。実務経験を書く際には、いくつかの重要なポイントを押さえることが大切です。

1. 1プロジェクトごとに簡潔かつ具体的にまとめる

複数のプロジェクトに携わった場合でも、各プロジェクトごとに背景・目的・規模・自分の役割を簡潔にまとめます。背景は「どのような状況でプロジェクトが始まったか」、目的は「達成したい目標は何か」を示します。規模については、予算・期間・チーム人数など具体的な数字を明記しましょう。

例:

  • Project Purpose: Improve customer satisfaction by upgrading the service system.
  • Team size: 8 members, Project duration: 1 year, Budget: $200,000

2. 担当フェーズと責務を明らかにする

PMBOK(PMPで採用されている管理手法)には、「立ち上げ(Initiating)」「計画(Planning)」「実行(Executing)」「監視コントロール(Monitoring & Controlling)」「終結(Closing)」というプロセスがあります。どのプロセスに携わったか、それぞれ具体的な責務や役割を記述しましょう。

例:

  • Involved in Planning and Executing phases. Responsibilities included resource allocation, schedule management, and stakeholder communication.

3. 実績を数字で示す

成果や実績は、できるだけ具体的な数値を用います。納期短縮、コスト削減、品質向上(KPI達成など)は重要なアピールポイントです。

例:

  • Reduced project delivery time by 15% compared to the initial plan.
  • Achieved cost savings of $30,000 through efficient resource management.

4. 期間整理と重複の避け方

申請時には担当した期間が重ならないように整理する必要があります。一度に複数プロジェクトを担当していた場合、重複なく分割して記述してください。

5. 英語での記述ポイント

シンプルな英語で簡潔にまとめることが大切です。主語は「I」ではなく、受動態や三人称を活用して、客観的な文にしましょう。また、専門用語は使いすぎず、一般的な単語を選ぶことで読みやすさを優先してください。


次の章に記載するタイトル:「職務経歴書でPM経験を差別化する書き方」

職務経歴書でPM経験を差別化する書き方

職務経歴書にプロジェクトマネジメント(PM)経験を記述する際、単に「PM担当」と書くだけでは他の応募者との差を明確にできません。採用担当者は、あなたがどのような規模のプロジェクトをどのような立場で、どんな成果を出したのかに注目しています。ここでは、差別化するためのポイントと具体的な書き方をご紹介します。

1. プロジェクトの規模感を正確に記載する

プロジェクトの予算や期間、関わった人数は、あなたのマネジメント力の指標になります。例えば、
- 「5,000万円規模・10名体制・1年プロジェクトを主導」
- 「自社4名、外部ベンダー3社総勢18名を統括」
のように、数字を明示しましょう。

2. 業界・システム領域を具体的に

どの業界、どんなシステム開発や運用だったのかを簡潔に伝えます。
- 「製造業向け生産管理システム」
- 「金融業界コアバンキング刷新」
などと一行でまとめると、読み手のイメージが付きやすくなります。

3. プロジェクト背景と主な役割の明示

なぜそのプロジェクトが立ち上がったのか、そこでの自分の役割(例:全体管理、リスク対応、要件定義主導など)も加えることで責任範囲が明確になります。

4. PMBOK知識エリアに絡めて自己PR

リスク管理やスケジュール調整、コストや品質のコントロール、ステークホルダー調整など、PMBOKの知識エリアごとに工夫した点をアピールしましょう。
- 「リスク洗い出しと対策会議(月2回実施)」
- 「スケジュール遅延をWBS再編成で10%短縮」
- 「ベンダー選定プロセスを標準化」
など、施策とその理由を具体化します。

5. 定量的な成果の記載で説得力を高める

成果はできるだけ定量的に表現します。
- 「納期遵守率98%を維持」
- 「予算超過を5%以内に抑制」
- 「顧客満足度アンケートで4.5/5評価」
など、数字で示すことがポイントです。

6. すぐ使えるテンプレート観点

  • プロジェクト名/期間/体制(人数、自社・ベンダー構成)/予算
  • 自分の役割:主担当プロセス(例:WBS作成、クリティカルパス短縮、バーンダウン監視、変更管理など)
  • 成果KPI:納期遵守率、コスト差異、欠陥密度、顧客満足度 など

職務経歴書にこれらを整理して盛り込むことで、単なる経歴の羅列ではなく、成果と実力が具体的に伝わる内容になります。

次の章に記載するタイトル:PMになるためのキャリアパスと経験の積み方

PMになるためのキャリアパスと経験の積み方

ステップ型キャリアパスの例

プロジェクトマネージャー(PM)を目指すには、段階的なキャリアアップが一般的です。まず、システム開発や業務改善のメンバーとして1〜3年間、現場の作業を経験します。例えば、開発担当やテスト担当など、プロジェクトの各工程を一通り体験することから始まります。現場での小さな成功体験を積むことで、基礎的なスキルや業務理解が深まります。

次に、リーダー的なポジションを任される経験が大切です。プロジェクトリーダー(PL)やサブリーダーとして、メンバーのタスク管理や進捗確認を担当します。ここでは、コミュニケーション能力や問題解決力、チームの調整力などが求められます。

PLとして成果を上げた後、次第により大きなプロジェクトや複数チームを束ねる役割を経験し、PMとしての候補となります。PMになると、プロジェクト全体の計画や管理、リスクの把握、顧客との折衝など幅広い責任が発生します。

経験の幅を広げるポイント

PMに求められる力を養うためには、さまざまな規模や業界、顧客特性のプロジェクトを経験することが有効です。たとえば、中小規模のプロジェクトで効率重視の進行管理を経験し、大手顧客案件で高い品質要求や厳しい納期管理を経験するなど、多様な現場を知ることが自身の判断力・応用力につながります。

また、業種や担当業務が異なるプロジェクトへの参加もおすすめです。製造業向けのシステム開発の次に、金融業界の案件を経験することで、対応力や視野が広がるだけでなく、リスク対応や顧客ごとのコミュニケーションのコツも身につきます。

PMの役割と他職種との違い

プロジェクトマネージャーは「プロジェクト全体の責任者」です。プロジェクト計画の立案、チームの編成、関係者との調整、進捗と品質の管理、コストや納期のコントロールに至るまで、すべてを統括します。エンジニアやリーダーは主に実行面を受け持ちますが、PMは全体を俯瞰し、トラブルが起きても全責任を持って対応しなければなりません。

このような幅広い役割と責任を体験するためにも、さまざまな規模や業界のプロジェクトで少しずつ成長していく歩みを大切にしましょう。

次の章に記載するタイトル:実例で学ぶ「定量化」フレーズ集(職務経歴書/PMP申請で活用)

実例で学ぶ「定量化」フレーズ集(職務経歴書/PMP申請で活用)

はじめに

前章では、プロジェクトマネジメント経験を職務経歴書やPMP受験申請書で強調するためには、単なる業務内容の羅列ではなく、成果を明確に伝えることが重要であることを解説しました。その際、「定量化」された表現により、実際にどのような価値を提供したのかが一目で伝わるようになります。

定量化フレーズのポイント

実績を「数字」で表現することで、読む人にインパクトを与えやすくなります。たとえば、人数・期間・金額・割合(%)などの数字を具体的に盛り込むことが効果的です。自分の担当部分が全体の中で占める規模や、改善した内容を定量的に示しましょう。

定量化フレーズの実例

以下に、職務経歴書やPMP申請書で活用できる表現例を日本語・英語で紹介します。

日本語の実例

  • 「10名規模のプロジェクトを6か月で推進、1億円規模のシステムリニューアルを主導」
  • 「クリティカルパス短縮により、工期を2週間短縮」
  • 「リスク特定と回避策を講じ、プロジェクトコストを5%削減」
  • 「顧客満足度調査で95%の高評価を獲得」
  • 「作業効率化により、ドキュメント作成時間を30%短縮」

PMP申請用 英語フレーズ例

  • "Led a team of 8 members to successfully deliver a cloud migration project in 4 months, reducing operational costs by 10%."
  • "Managed a cross-functional team and achieved 100% on-time delivery for 3 consecutive projects."
  • "Identified and responded to risks, saving 15% in total project expenses."
  • "Improved stakeholder satisfaction from 85% to 95% via process optimization."
  • "Planned and executed a project valued at $500,000 with zero critical incidents."

よく使われる定量ワード

  • 規模:人数(~名)、金額(~万円・~億円)、納期(~か月・~年)
  • 成果:削減(%/金額)、短縮(%/日数)、増加(%/数値)、満足度(%)

これらの表現を活用し、ご自身の業務内容や成果をより際立たせてアピールすることができます。具体的な数字や割合を取り入れることで、「何を、どれだけ、どう変えたか」を伝えやすくなります。

次の章に記載するタイトル:よくある疑問Q&A

よくある疑問Q&A

Q. PM(プロジェクトマネージャー)の肩書きがなくても「PM経験」になるのでしょうか?

A. はい、肩書きが正式に「プロジェクトマネージャー」でなくとも、実際にリーダーシップを発揮したり、プロジェクトの計画や進捗管理を担っていれば「PM経験」とみなされます。たとえば「サブリーダー」や「チームリーダー」として、チームをまとめたり、納期やコストを管理した経験があれば、申請や職務経歴書でしっかりアピールできます。

Q. 複数のプロジェクトを同時進行で担当した場合、経験年数はどう数えますか?

A. PMP受験申請の際は、同じ期間に進行していた複数のプロジェクトを重複してカウントしてはいけません。例えば、2022年4月から2022年9月の半年間で2つのプロジェクトを同時に担当した場合、その期間は「半年」としてカウントします。それぞれ別々に6ヶ月ずつ(計1年)とはできない点に注意しましょう。

Q. PMP受験にはどれくらいの研修が必要ですか?

A. PMI(Project Management Institute)が認定するPMP受験の条件として、「35時間以上の公式なプロジェクトマネジメント研修」の修了が必要です。eラーニング、オンライン講座、集合研修など多様な形式が認められています。研修修了証明書の提出が求められるので、事前に確認し準備しておくと安心です。

Q. どんな経験が職務経歴書で強みになりますか?

A. 評価されやすい経験は、プロジェクトの規模(人数、予算、期間)や成果を数字で明示しているものです。また、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)で示される「進捗管理」「品質管理」「リスク管理」などの知識分野と関連した改善や統制の実績も好印象を与えます。例えば「20人規模のチームを率い、納期を30%短縮」「予算超過を抑制する業務フローを導入」など、具体的に書くことがポイントです。

次の章に記載するタイトル:チェックリスト(提出前の最終確認)

チェックリスト(提出前の最終確認)

提出前に申請書や職務経歴書の内容を見直すことは、合格や選考通過に大きく影響します。ここでは、よくある見落としやすいポイントを整理したチェックリストをご紹介します。印刷する、メモするなどして最終確認にご活用ください。

PMP申請書のチェック項目

  • 規定の「PM実務経験月数」を満たしているか確認しましたか?(学歴ごとに異なります)
  • 経験対象期間は、過去8年以内に限定していますか?
  • プロジェクトごとの経験期間に重複がないよう整理できていますか?
  • 35時間の公式研修を修了していますか?(証明書が手元にありますか?)
  • プロジェクトごとに「関与したプロセス」や「成果・達成」に具体性を持たせて記載していますか?

職務経歴書のチェック項目

  • 各プロジェクトごとに、規模(予算・期間・チーム人数)を記載していますか?
  • ご自身の役割や担当フェーズを明記していますか?
  • 成果や貢献度を数値や具体的なエピソードで示していますか?
  • PMBOKの知識分野と職務内容を結びつけて説明できていますか?
  • リーダーシップ経験や“教育・運営”といったマネジメント業務ももれなく網羅していますか?
  • 書類全体に一貫性や論理的な流れがありますか?

最後に、第三者(同僚や転職支援サービスの担当など)にチェックを依頼すると、不備の発見につながります。万全を期して提出しましょう。

次の章では、PM関連資格や今後の学習アクションについて説明します。

関連資格と学習の次アクション

PMP(Project Management Professional)は国際的な標準資格として、プロジェクトマネジメント分野で高く評価されています。しかし、受験には実務要件や35時間の研修受講が必要となるため、計画的な準備が求められます。ここでは、PMP以外の資格選択肢と今後の学習に向けた具体的なアクションを紹介します。

■ PMP以外の関連資格

プロジェクトマネージャーを目指す方には、PMP以外にも複数の資格があります。例えば、国内資格である「プロジェクトマネージャ(情報処理技術者試験)」や、ITIL(ITサービスマネジメント)、Prince2(英国発のPM手法)も有力です。それぞれの資格は業界・職種によって評価されるケースが異なるので、ご自身のキャリアや志望業界に合わせて選んでみてください。

■ 学習の第一歩:過去プロジェクトの棚卸し

まずはこれまで携わったプロジェクトを書き出し、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)の10の知識エリアで分類することをおすすめします。例えば「リスク管理」「調達管理」など、どんな場面でどんな役割を担ったか、思い出しながら整理しましょう。

■ KPIや成果の定量化

申請書や職務経歴書で差を付けるには、“どれだけ”できたかを数字で示すことが大切です。たとえば「予算1,000万円のプロジェクトを担当し、納期を10%短縮」「10名チームをリーダーとしてまとめた」など、できるだけ具体的に記載しましょう。

■ 英語サマリーの作成

PMP申請書では英語での職務サマリー作成が求められます。英語が苦手な方は、過去プロジェクト概要を日本語で箇条書きし、その後に英語化してみるとスムーズです。今後のキャリアにも役立つ準備になるでしょう。

■ 今後のアクションまとめ

  • 自分の学歴・実務経験が受験要件に合致するか再確認
  • 受験予定年度の要件変更に注意し、PMI公式ガイドで最新情報を取得
  • 35時間の公式研修申込を計画
  • 他のPM系資格を調査し、自身のキャリアに合致するものを選択
  • PMBOKの知識エリアごとに自分の経験を整理

これらの準備を丁寧に行えば、PMPをはじめとするプロジェクトマネジメント資格の取得に一歩近づくことができます。

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