目次
プロジェクトマネジメント資格の種類と目的
近年、さまざまな業界でプロジェクトを成功させるための知識やスキルが求められています。これを裏付ける証として、プロジェクトマネジメント関連の資格が注目を集めています。プロジェクトマネジメント資格とは、プロジェクトを円滑に進め、目標達成や納期を守るための知識や経験があることを証明できる資格です。
主な資格には、国際的にも広く知られている「PMP(Project Management Professional)」、日本国内で特にITやシステム開発の分野において権威のある国家資格「PM(プロジェクトマネージャ試験)」があります。また、日本独自の資格体系として「P2M(Program & Project Management)」や、イギリス発祥で多くの国で活用されている「PRINCE2」も存在します。さらに、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の運営や支援を専門とする「PMOスペシャリスト」なども挙げられます。
これらの資格はそれぞれ、想定する対象者やスキルのレベル、そして受験する際の条件が異なります。たとえば、ご自身の業種や職種、キャリアプランによって適切な資格選びが重要です。将来プロジェクトをまとめる立場を目指す方や、現在プロジェクトチームで活躍する方、さらに専門的な知識を強化したい方など、目指すゴールによって最適な資格が変わってきます。
次の章では、PMP資格の受験資格について詳しくご紹介します。
PMP資格の受験資格(国際資格)
PMP(Project Management Professional)は、アメリカに本部を持つPMI(Project Management Institute)が主催している国際資格です。世界中で高い信頼と認知度があり、プロジェクトマネジメント分野でキャリアを築きたい方によく選ばれています。
PMP資格の受験資格について
PMP試験の受験にはいくつかの条件があります。主な要件は、学歴・実務経験・研修の修了です。細かく分けると、以下の2つのパターンに分かれます。
1. 4年制大学卒業の場合
- 過去8年以内に36か月(約3年)以上のプロジェクトマネジメント経験
- 35時間以上のPMI認定公式研修(PDU)を修了していること
2. 大学卒以外(高卒・短大・専門卒など)の場合
- 過去8年以内に60か月(約5年)以上のプロジェクトマネジメント経験
- 35時間以上のPMI認定公式研修(PDU)を修了していること
実務経験の具体例
プロジェクトマネジメント経験とは、計画立案・実行・監督・完了までの各工程に携わった経験を指します。担当していた仕事の一部がプロジェクトの管理や調整と関わっていれば、その期間を合計できます。 "プロジェクトマネージャー"の肩書がなくても、チームリーダーやサブリーダーとして指示・調整をした経験でも該当します。
公式研修(PDU)の取得方法
PMP受験には35時間以上のPMI認定公式研修が必要です。これはPMIが認める教育機関や、専用のオンライン講座などで受講します。教材や動画だけで独学した時間は公式に認められません。
有効な経験と申請のポイント
プロジェクトマネジメント経験は“申請時から遡って8年以内”のものだけが有効となります。古い経験は認められませんのでご注意ください。
PMP試験の特徴
受験料はPMI会員なら405ドル、非会員なら555ドル(2025年時点)です。合格率は公式には非公開ですが、60%程度と推測されています。十分な事前学習が必要で、およそ100~200時間の勉強が目安とされています。
次の章では、日本国内の国家資格である「プロジェクトマネージャ試験(PM)」の受験資格について詳しく紹介します。
日本の国家資格「プロジェクトマネージャ試験(PM)」の受験資格
プロジェクトマネジメントの資格の中でも、日本独自の国家資格である「プロジェクトマネージャ試験(PM)」についてご紹介します。この試験は、情報処理推進機構(IPA)が主催しており、毎年多くの受験者が挑戦しています。
受験資格に年齢や学歴の制限は一切なし
プロジェクトマネージャ試験(PM)の大きな特徴は、誰でも受験できることです。受験資格に学歴や年齢、実務経験といった条件がまったくありません。例えば、社会人はもちろん、学生や主婦、転職を考えている方でも、自分のスキルアップやキャリアのために自由に受験することができます。
難易度が高い国家試験
誰でも受験できる一方で、合格は容易ではありません。この試験の合格率は近年15%未満とされており、難易度が非常に高いことで知られています。試験は、IT知識だけでなく、プロジェクト全体を管理する総合力やマネジメント力も問われます。そのため、しっかりとした準備が必要です。
効果的な勉強の目安
仕事や家庭と両立しながら合格を目指す場合、200時間以上の学習時間の確保が一般的に推奨されています。具体的には、仕事終わりや週末に2〜3時間ずつ勉強する方が多く、半年〜1年ほどかけて計画的に対策するのが現実的です。資格勉強を通して、実践的な知識や考え方も身につけることができます。
次の章では、「P2M資格の受験資格」について解説します。
P2M資格の受験資格
P2M(Program & Project Management)資格は、日本プロジェクトマネジメント協会が運営している日本発の資格体系です。プロジェクトマネジメントの知識や能力を段階的に証明できる仕組みが特徴です。ここでは、P2M資格の主な種類と受験資格について具体的にご紹介します。
P2M資格の主な種類
P2M資格にはいくつかの段階があります。基本的には「PMC(入門者向け)」「PMS(中堅者向け)」「PMR(上級者向け)」「PMA(最上位、現時点で未実施)」という流れになっています。
1. PMC(プロジェクトマネジメント・コーディネータ)
PMC資格は、P2Mの最初のステップです。この資格を受験するには、所定のPMC講習会を受けて修了することが必須となります。実務経験がなくてもチャレンジしやすい資格です。たとえば、ITや製造、建設といった分野でこれからプロジェクトに関わる方が、最初に学ぶのに適しています。
2. PMS(プロジェクトマネジメント・スペシャリスト)
PMS資格は、PMC資格登録者を対象としています。つまり、まずPMCに合格してから、PMSへのステップアップが可能です。資格登録のほか、PMS試験を受けるためには協会が定める手順を踏む必要があります。
3. PMR(プロジェクトマネジメント・レジデント)
PMR資格は、上級者向けの資格です。PMS資格を取得していることが前提となり、さらにプロジェクトマネジメント分野で3年以上の実務経験が求められます。つまり、理論だけでなく、実際にプロジェクトの現場を経験した方が対象になります。
4. PMA(プロジェクトマネジメント・アーキテクト)
PMA資格は、P2M体系の最上位資格です。取得にはPMR資格が必要とされていますが、2024年6月時点ではまだ実施されていません。
このように、P2M資格は段階的にステップアップしていく設計になっています。初学者はPMCから、経験を積みながら上位資格を目指していく流れです。
次は、その他の代表的資格と受験資格についてご紹介します。
その他の代表的資格と受験資格
ここでは、PMPや日本の国家資格以外にも広く知られているプロジェクトマネジメント資格についてご紹介します。これらは、プロジェクト管理の入門から専門職まで、さまざまなレベルに対応しています。
CAPM(Certified Associate in Project Management)
CAPMはPMPの一歩手前の資格で、プロジェクトマネジメント入門者に適しています。実務経験は不要ですが、23時間の公式研修を修了することが受験の条件です。たとえば「プロジェクトに携わったことがないが、将来リーダーになりたい」という方にもおすすめできます。
PRINCE2
PRINCE2はイギリス生まれのプロジェクト管理方法論を基にした国際資格です。Foundationレベルであれば受験するための特別な条件は必要ありません。つまり、未経験者でも学習さえしていれば挑戦できます。一方、より上級のPractitionerレベルは、Foundationの合格が必要になります。
PMOスペシャリスト
日本PMO協会が運営するPMOスペシャリストは、プロジェクトを支援・管理する専門職向けの資格です。細かな受験条件は各資格ごとに異なりますので、ご自身の希望するコースや専門分野に合わせて、日本PMO協会の公式情報をよく確認することをおすすめします。
次の章では、「資格ごとの選び方・注意点」についてご案内します。
資格ごとの選び方・注意点
国際的なキャリアを目指す場合
プロジェクトマネジメントの国際資格であるPMPは、海外への転職やグローバル企業でのキャリアアップを目指す人に特におすすめです。英語でのコミュニケーション力や、プロジェクトマネージャーとしての実務経験が受験要件となるため、ある程度キャリアを積んだ方に向いています。PMPを取得すると、海外プロジェクトや外資系企業で評価されやすくなります。
日本国内中心でITやシステム分野なら
日本の国家資格であるプロジェクトマネージャ試験(PM)は、国内企業や官公庁、特にITや情報システム分野で広く知られています。受験資格に制限はありませんが、出題範囲が広く合格率が非常に低いことで有名です。実務経験が浅い場合は、しっかりとした準備が必要です。
段階的にキャリアアップしたい場合
P2M資格は、日本独自のプロジェクトマネジメント体系を理解したい方や、段階的にキャリアアップを目指す方に適しています。複数レベルが用意されているので、未経験からでもステップアップしながら学べます。教育や研修でP2Mを活用している企業も多いです。
未経験からプロジェクトマネジメントを学びたい場合
未経験者でプロジェクトマネジメントの基本を身に付けたい場合、CAPM(PMPの入門資格)やPRINCE2 Foundation(欧州発祥の資格)など、比較的受験しやすい資格から始めるのもよいでしょう。これらは実務経験を問わず、基本的な知識があれば受験できます。
資格選びの注意点
どの資格を選ぶかは、ご自身のキャリアプランや現在のスキル、希望する働き方によって異なります。また、資格によっては更新や継続学習が必要な場合もありますので、その点も事前に確認しましょう。学習期間や受験費用も資格ごとに差が出るため、無理のない計画を立てることが大切です。
次の章に記載するタイトル:プロジェクトマネジメント資格受験資格の比較表
まとめ:プロジェクトマネジメント資格受験資格の比較表
プロジェクトマネジメント資格比較表
以下の表は、主要なプロジェクトマネジメント資格について、受験資格と主な特徴を簡単にまとめたものです。自分に合った資格選びの参考にしてください。
資格名 | 受験資格 | 特徴 |
---|---|---|
PMP | 学歴+実務経験+35時間の公式研修 | 国際標準。経験重視のため中~上級者向け |
PM(国家資格) | 制限なし | 日本独自。難易度高。IT分野で評価されやすい |
P2M | 講習修了や下位資格+実務経験 | 日本独自。段階制で少しずつステップアップ |
CAPM | 23時間の研修 | 実務経験不要。初心者・若手におすすめ |
PRINCE2 Foundation | なし | 国際標準。欧州中心で認知度高い |
資格選びのポイント
それぞれの資格には、求められる経験や勉強時間に違いがあります。たとえば、実務経験を活かしたい場合はPMPやP2M、中長期でキャリアアップを目指す方にはPM(国家資格)が向いています。一方、これからプロジェクトマネジメントを学びたい方や、まだ経験が浅い方にはCAPMやPRINCE2 Foundationが適しています。
また、勉強や受験にかかる費用や時間も事前に比較し、自分の現在の状況やキャリア形成プランに合ったものを選ぶことが大切です。
プロジェクトマネジメント資格は、仕事の幅や選択肢を広げるための有力な手段です。しっかりと情報を集め、ご自身にぴったりの資格にチャレンジしてみてください。