目次
はじめに
「リーダーシップについて論文で学びたいけれど、理論が多くて何から読めばよいのか分からない」
「特性理論や行動理論などの名前は見かけるものの、それぞれがいつ、どのような研究から生まれたのか整理できない」と感じていませんか。
大学のレポートや卒業論文、仕事での研究に使うために文献を探していても、年代や研究者ごとに異なる理論が出てくると、どの論文から確認すればよいのか迷いやすくなります。
この記事では、リーダーシップ研究の主要理論がどのように移り変わってきたのかを整理し、代表的な研究や押さえておきたい論文を紹介します。
リーダーシップ論文を読む前に押さえたい研究の全体像

リーダーシップに関する論文を読むと、研究ごとに扱うテーマや理論が異なるため、それぞれがどのような関係にあるのか分かりにくいことがあります。
ここでは、リーダーシップ研究で明らかにされてきた内容と、研究対象がどのように変化してきたのかを順番に解説します。
リーダーシップ研究では何が明らかにされてきたのか
リーダーシップ研究では、リーダーの資質や行動が、部下の仕事への取り組み方やチームの成果にどう影響するのかが研究されてきました。
性格や能力だけでなく、指示の出し方や部下への配慮、意思決定への関わらせ方なども研究対象です。
また、同じ行動でも部下の経験や仕事の内容によって結果が変わることから、状況との関係も重視されています。
リーダーシップ論は資質・行動・状況へと研究対象を広げてきた
初期の研究では、成果を上げるリーダーに共通する性格や能力などの「資質」が注目されていました。
その後、「どのような人物か」だけでなく、「部下にどう働きかけるか」という行動へ研究対象が広がります。
さらに、効果的なリーダーシップは部下の経験や仕事、組織の状況によって異なると考えられるようになり、状況に応じた関わり方も研究されるようになりました。
リーダーシップ論はどのように発展してきた?
リーダーシップ論は、時代ごとに研究の対象を変えながら発展してきました。
ここでは、資質論から変革型リーダーシップ論まで、リーダーシップ研究がどのように発展してきたのかを順番に解説します。
資質論|リーダー個人の特性に注目した初期の研究
資質論は、優れたリーダーに共通する性格や能力などに注目した研究です。
知性や自信、決断力、責任感などから、成果を上げるリーダーの共通点が探られてきました。
ただし、同じ資質がすべての状況で有効とは限らないことから、次第にリーダーの行動にも目が向けられるようになります。
リーダーに求められる具体的な資質や能力について詳しく知りたい方は、代表的な特徴を整理した記事も参考にしてみてください。
▶リーダーシップに必要な資質とは?求められる能力や特徴を解説
行動論|リーダーが何をするかに注目した研究
行動論は、リーダーの性格や能力ではなく、部下に対してどのように行動するかに注目した研究です。
仕事の進め方や役割を明確にする行動、部下の意見を聞いて人間関係に配慮する行動などと、チームの成果との関係が研究されてきました。
これにより、リーダーシップを生まれ持った特性だけでなく、実際の行動から捉える考え方が広がります。
条件適合論|状況によって有効なリーダーシップが変わるという研究
条件適合論は、効果的なリーダーシップは状況によって変わると考える研究です。
リーダーと部下の関係や仕事の内容、リーダーが持つ権限などを踏まえ、どのような関わり方が成果につながるのかを考えます。
そのため、一つの方法を正解とするのではなく、状況との組み合わせを重視する点が特徴です。
変革型リーダーシップ論|組織やメンバーの変化を重視する研究
変革型リーダーシップ論は、リーダーの働きかけによって、組織やメンバーにどのような変化が生まれるのかに注目した研究です。
将来像を示して共有したり、新しい考え方を促したり、一人ひとりの成長を支えたりする行動が研究されています。
こうした働きかけと、メンバーの意欲や行動、組織の成果との関係を捉えていきます。
現在のリーダーシップ研究で重視される組織・チームとの関係
現在のリーダーシップ研究では、特定の理論だけでリーダーの有効性を説明するのではなく、置かれている状況やメンバーとの関係まで含めて捉える考え方が重視されています。
ここでは、現在のリーダーシップ研究で重視されている状況、メンバーとの関係、チーム全体という3つの視点を順番に解説します。
一つの理論だけでなく状況に応じてリーダーシップを捉える
現在のリーダーシップ研究では、一つの理論をすべての組織やチームに当てはめるのではなく、状況に合わせて考えることが重視されています。
メンバーの経験や自律性、仕事の内容、組織が抱える課題などによって、同じリーダーの行動でも結果が変わるためです。
そのため、「どの方法が正しいか」ではなく、「どのような状況で有効なのか」という視点から捉えられています。
理論の違いは分かっても、自分が実際にどのようなリーダーシップを取ればよいのか迷う場合は、代表的な型と使い分け方を確認しておくと整理しやすくなります。
リーダーシップの型とは?代表的な種類の特徴と自分に合った型の選び方
リーダー個人だけでなくメンバーとの関係から考える
リーダーシップは、リーダーからメンバーへの一方的な働きかけだけで決まるものではありません。
リーダーが指示や支援を行う一方で、メンバーの意見や反応を受けて関わり方を変えることもあります。
そのため、リーダー個人の能力だけでなく、メンバーとのやり取りや関係性にも目が向けられています。
チーム全体で目標達成や変化を生み出す視点が重視されている
現在の研究では、リーダー一人の行動だけでなく、チーム全体がどのように協力するかという視点も重視されています。
メンバー同士で情報を共有し、それぞれが必要な役割を担いながら、課題に合わせて行動を調整していくことも大切な要素です。
こうしたチーム全体の関わりから、目標達成や組織の変化がどのように生まれるのかが研究されています。
リーダーシップを研究するときに読みたい代表的な論文
リーダーシップについて研究する際は、関心のあるテーマに合わせて論文を選ぶことで、理論や研究成果を整理しやすくなります。
ここでは、リーダーシップ研究の目的に合わせて読みたい代表的な論文を3つのテーマに分けて紹介します。
リーダーシップ論の変遷と主要理論を理解できる論文
リーダーシップ研究の全体像をつかみたい場合は、これまでの研究がどのように発展してきたのかを整理した論文から読むと理解しやすくなります。
資質や行動に注目した研究から、メンバーとの関係やチーム全体を捉える研究への流れを確認してみましょう。
■:「リーダーシップ研究の変遷:シェアド・リーダーシップの視点から」
一宮剛・原口恭彦による2020年の論文で、リーダーシップ研究の変遷を整理しながら、シェアド・リーダーシップがどのように位置づけられるのかを論じています。
主要な研究の流れを広く確認したいときに参考にしやすい論文です。
論文を確認する(東京経済大学学術リポジトリ)
リーダーシップ開発について理解できる論文
リーダーとして成長する過程を知りたい場合は、研修だけでなく、仕事や人との関わりなどの経験に注目した研究も参考になります。どのような経験がリーダーの成長につながるのかを考える際に読んでおきたいテーマです。
■:「経営リーダーになる飛躍的成長機会と『経験理論』の再検討―リーダーシップ開発論の視点」
大嶋淳俊による2024年の論文で、経営リーダーの成長につながるキャリア上の経験を取り上げています。
仕事上の経験だけでなく、業務外での学びや人との交流にも目を向け、リーダーシップ開発について考察している点が特徴です。
論文を確認する(J-STAGE)
組織やチーム活動におけるリーダーシップを理解できる論文
チームの中でリーダーシップがどのように生まれ、成果につながるのかを知りたい場合は、メンバー間でリーダーシップを共有する考え方にも注目してみましょう。一人のリーダーだけに焦点を当てない研究を読むことで、チーム活動との関係を捉えやすくなります。
■:「研究開発チームにおけるシェアド・リーダーシップ:チーム・リーダーのリーダーシップ,シェアド・リーダーシップ,チーム業績の関係」
石川淳による2013年の論文で、研究開発チームを対象に、チーム・リーダーの行動やシェアド・リーダーシップとチーム業績との関係を検証しています。
リーダー一人ではなく、メンバー同士がリーダーシップを発揮することの意味を考える際に参考になります。
論文を確認する(J-STAGE)
リーダーシップ論文を読むときに確認したいポイント
リーダーシップに関する論文は、扱っている理論や研究方法によって、読み取るべき内容が異なります。
ここでは、リーダーシップ論文を読む際に確認したいポイントを順番に解説します。
論文がどのリーダーシップ理論を扱っているか確認する
論文を読むときは、まず研究の背景や先行研究を見て、どのリーダーシップ理論を扱っているか確認しましょう。
資質論や行動論、条件適合論、変革型リーダーシップ論など、理論によって研究する内容や視点が異なります。
理論名だけでなく、論文の中でどのように定義されているかまで確認すると、研究結果の意味をつかみやすくなります。
理論を整理した論文か実証研究かを確認する
次に、先行研究や理論を整理した論文なのか、調査や実験によってデータを集めた実証研究なのかを確認します。
理論を整理した論文では取り上げている研究の範囲、実証研究では調査対象や測定方法、分析結果などを見ることがポイントです。
研究の種類が分かると、その論文が何を明らかにしようとしているのかを理解しやすくなります。
参考文献から関連するリーダーシップ研究をたどる
さらに詳しく調べたいときは、論文の最後にある参考文献にも目を向けてみましょう。
本文で何度も引用されている研究や、理論の説明に使われている文献をたどると、その分野で重要な研究を見つけやすくなります。
気になる論文から少しずつ関連文献をたどっていけば、リーダーシップ研究の流れも整理しやすくなるでしょう。
まとめ
リーダーシップ研究は、リーダー個人の資質だけでなく、行動や状況、メンバーとの関係、チーム全体の働きへと視点を広げてきました。
資質論や行動論、条件適合論、変革型リーダーシップ論などの流れを知っておくと、それぞれの研究が何に注目しているのか理解しやすくなります。
論文を読むときは、扱われている理論だけでなく、研究方法や調査対象にも目を向けてみましょう。
気になる研究が見つかったら参考文献もたどっていくことで、その理論がどのように発展してきたのかをより深く知ることができます。
最初から多くの論文を読む必要はありません。
まずは主要な理ーダーシップ理論の流れをつかみ、そこから自分が知りたいテーマに近い論文へ少しずつ読み進めてみてください。