リーダーシップとマネジメントスキル

管理職の時間外労働と残業代ルールをわかりやすく解説

目次

はじめに

目的

本調査は「管理職 時間外労働」に関する公開情報を整理し、労務・人事担当者が実務で直面しやすい疑問に答えるためにまとめたものです。管理職の残業代の支払い義務、時間外労働の取り扱い、36協定の適用範囲、管理監督者の定義や勤怠管理の義務化など、複数の記事や解説を横断的に検討しています。

対象読者

人事・総務担当者、現場の管理職、経営者、社労士など、管理職の労務管理に関わる方を想定しています。専門家でない方にも分かりやすいよう、具体例を交えて説明します。

本調査の範囲

  • 管理職に対する残業代の法的扱い
  • 管理監督者の要件と実務上の判断ポイント
  • 36協定や労働基準法、労働安全衛生法との関係
  • 店長など現場管理者の実例と裁判例の概観

注意点

本稿は一般的な整理を目的とします。個別の事案では事情が異なるため、具体的な対応は労務の専門家にご相談ください。次章以降で各論を順に解説していきます。

第2章: 管理職の残業代と時間外労働のルール

概要

労働基準法第37条は、一般社員について1日8時間・週40時間を超える時間外労働に対し割増賃金を支払うことを定めています。ここでは管理職の扱いを中心に、違いを分かりやすく説明します。

一般社員のルール

一般社員は所定労働時間を超えて働けば、25%以上の割増賃金が必要です。会社が時間外労働をさせるには36協定(労使協定)が必要で、原則として月45時間・年360時間の上限があります。

管理監督者の扱い

管理監督者に該当する管理職は、労働基準法第41条により労働時間・休憩・休日の規定が適用除外になります。つまり法定の残業代や時間外労働の上限規制は原則として適用されません。管理監督者の判断は職務の性質や裁量の有無などで行われます。

36協定との違い

36協定は一般社員に適用され、時間外の上限規定が関連しますが、管理監督者には適用されません。したがって会社は管理監督者に対し36協定に基づく上限を直接適用する義務はありません。

具体例

店長や部長など、経営に近い立場で重要な決定を行う人は管理監督者と判断されやすいです。ただし実際は単に肩書きがあるだけでは認められないため、裁量や待遇などを総合的に確認します。

注意点

管理監督者でも労働者性が認められれば残業代が支払われる場合があります。企業は安易に適用除外とせず、実態に即した判断と説明が必要です。

管理監督者の時間外労働の取り扱いと深夜労働

管理監督者とは

管理監督者は経営者と一体の立場で業務の企画・立案や人事判断に実質的な裁量を持つ者を指します。通常の労働時間規制の適用が除外されます。

時間外労働の適用除外

管理監督者には法定の時間外労働の割増賃金適用がありません。つまり、月の時間外が60時間を超えても、企業は法定割増(時間外手当)を支払う義務はありません。

深夜労働の扱い

深夜(原則22時〜5時)の労働についても、管理監督者は割増賃金の法的支給対象外です。ただし企業の就業規則や個別契約で深夜手当を定めている場合は、その規定に従って支払われます。

実務上の注意点

・就業規則や労働契約を明確にし、どの待遇が適用されるか書面で示してください。
・名ばかり管理職に注意してください。実態が管理監督者に該当しなければ、割増賃金の支払いが求められます。

具体例

店長が実際には細かな出退勤管理を受け、裁量が乏しい場合は管理監督者に当たらず、時間外・深夜の割増賃金が必要になります。

管理職の労働時間の上限規制と安全衛生法の関係

ポイントの整理

管理職(管理監督者)には、労働基準法第32条の1日8時間・週40時間の労働時間規制や、36協定による時間外労働の上限は直接適用されません。つまり、法定の残業時間上限がないため、月100時間を超えても直ちに労基法違反とはなりません。

安全衛生法が求めること

法的上の上限がなくても、労働安全衛生法は職場の健康管理を義務づけます。長時間労働を放置すると健康障害や過労による事故のリスクが高まるため、事業者は次のような対策を講じる必要があります。
- 長時間労働者への医師による面接指導や健康診断の実施
- 労働時間の把握と記録、職場環境の分析
- 業務配分や休息の確保、業務改善
- ストレスチェックの実施と高ストレス者への対応(要件に該当する場合)

具体例

たとえば管理職が1か月に100時間を超える時間外労働が続く場合、事業者は医師面接や業務軽減などの措置を検討します。就業規則や管理体制で上限を定める、あるいは代休や配置転換で負担を減らすといった実務的対応が一般的です。

管理職自身ができること

自分の健康状態や業務時間を記録し、異常を感じたら早めに相談することが重要です。面談や健康診断の機会があれば積極的に利用してください。

まとめ

管理職は労基法の時間規制から除外されますが、安全衛生法に基づく健康管理義務は残ります。企業は長時間労働のリスクを軽減する具体的な措置を講じ、働く本人も早めの対応を心がけることが望まれます。

管理監督者と管理職の違いと要件

定義と違い

管理職とは一般に役職名や職務の範囲を指します。一方、管理監督者は労働基準上の概念で、労働時間や残業規制の適用除外が認められる可能性がある人をいいます。肩書きだけで判断せず、実質で判断します。

管理監督者に該当する要件

  • 会社の経営や重要な業務の管理に実質的に関与していること(例:人事・採用・予算管理など)
  • 労働時間の管理が自己責任でできること(出退勤や業務時間を自ら決められる)
  • 賃金や処遇が一般社員と区別されていること(必須ではないが判定要素)

判定のポイント(実務例)

  • 指揮命令系統:部下に業務命令を行っているか
  • 人事決定権:配属や評価に影響を持つか
  • 勤怠の裁量:出退勤や休憩を自律的に管理できるか

注意点

  • 「管理職」という肩書きだけでは不十分です。実際の職務内容を見て判断します。
  • 管理監督者に該当しない場合は、通常の労働時間規制や残業代の支払い対象になります。
  • 企業は個別の事情に基づき判断し、明確な説明を用意することが望ましいです。

管理職の残業時間の法的扱いと違法性

概要

管理監督者(労基法上の管理職)には労働時間規制が適用されないため、法的には残業時間に上限が直接適用されません。しかし、管理監督者に該当しない「管理職」は一般の労働者と同じ規制を受け、月100時間を超える残業は長時間労働として違法性が高まります。

判断のポイント

  • 職務の内容と裁量:昇降格や採用解雇の権限、勤務時間の自由度があるかを確認します。
  • 実態と書面の差:役職名だけで判断せず、実際の業務実態で判断します。

具体例

  • 店長で実際には労務管理権限が薄く長時間残業が常態化している場合、管理監督者に該当せず残業代請求が認められることがあります。

相談と対応

  • 勤怠記録を保管し、まずは会社に相談してください。改善されない場合は労働基準監督署や労働相談窓口、弁護士に相談すると対応が進みます。

ポイント

長時間労働が疑われる場合は、役職名のみで判断せず実態を整理することが重要です。誤った区分で権利が奪われないよう注意してください。

店長(管理監督者)の残業代の支払い状況

概要

店長が管理監督者に該当すると、労働基準法上の時間外労働の割増賃金の適用は原則として除外されます。しかし、会社の就業規則や労働契約で別に残業代を支払うと定めている場合は、その規定が優先されます。

管理監督者と残業代の関係

管理監督者とは、経営者と一体的に職務遂行の責任や判断を担う立場を指します。具体例としては、人事・採用の決定権や勤務時間の管理・調整の裁量がある場合などです。これらが認められれば、残業代は支給されない扱いになります。

例外と実務上の注意点

企業が任意で支払う場合や、就業規則で固定残業代を上回る分を別途支払う規定を設けることがあります。したがって、労働契約書や就業規則の記載をまず確認してください。実務では、職務実態が管理監督者に該当しないと判断され、後から残業代が認められるケースもあります。

従業員が取るべき行動

契約や就業規則を確認し、不明な点は会社に問い合わせましょう。疑問が解決しないときは、労働基準監督署や労働相談窓口、専門の弁護士に相談することをお勧めします。証拠として勤務時間や業務内容を記録しておくと役立ちます。

管理監督者の時間外労働の上限と安全衛生法の関係

背景

労働基準法第41条2号により、管理監督者は労働時間・休憩・休日の規定が適用除外です。そのため、36協定による時間外労働の延長や上限規制の直接的な適用対象外となります。

安全衛生法上の位置づけ

安全衛生法は労働者の健康確保を目的とし、長時間労働による健康リスクの管理を事業者に求めます。管理監督者であっても、健康管理や過重労働対策は免除されません。

事業者が取るべき具体的対策

  • 定期健康診断やストレスチェックの実施
  • 長時間労働の実態把握とリスク評価
  • 勤務の見直しや交代制、休息確保の仕組みづくり
  • 面談や産業医による指導・措置

具体例

店長が深夜まで連日勤務する場合、就業規則で上限を定める、交代で休ませる、外部支援を導入するといった対応が求められます。

ポイント

労働基準法の上限は直接適用されないものの、事業者は安全衛生法に基づき管理責任を負います。健康保持のための具体的措置を講じることが重要です。

管理職の労働時間規定の概要

概要

一般の労働者は原則として1日8時間・週40時間の法定労働時間があり、時間外労働の目安は月45時間・年360時間などの上限があります。一方で、管理監督者(いわゆる“管理職”)にはこれらの規定が適用されない点が特徴です。

一般社員の基準

  • 法定労働時間:1日8時間・週40時間
  • 時間外の上限:労使協定(36協定)に基づき月45時間・年360時間などが目安

管理監督者の扱い

管理監督者は労働時間や割増賃金の規定から除外されます。具体的には出退勤の管理を自ら行い、勤務の実態が管理者的であることが要件です。ただし、名ばかり管理職と判断されると法的な保護(残業代など)を受けられます。

実務上の注意点

企業は職務内容や権限、給与・評価の仕組みを明確にし、管理職に該当する合理的根拠を示す必要があります。また労働時間の把握と健康管理は義務です。例として、店長や課長でも実態が一般社員と変わらなければ残業代支払いの対象になります。

具体例

  • 管理職に該当:採用や配置、評価の裁量があり、長時間労働の抑制より職務遂行が優先される場合
  • 該当しない例:定時出勤が厳格に管理され、指揮命令が変わらない場合

(途中の章のためまとめは省略)

管理職の残業時間の規制と安全衛生法による管理

管理職でも無制限ではありません

管理職は割増賃金の対象外になることがありますが、残業を無制限にさせてよいわけではありません。長時間労働は健康被害につながります。企業は労働時間が過度にならないよう実務的な管理を行う必要があります。

安全衛生法が求める企業の役割

安全衛生法は、労働者の健康を守るために事業者に健康管理や作業管理の義務を課しています。具体的には健康診断やストレスチェック、作業負荷の把握とその軽減が含まれます。管理職であっても、事業者の健康確保義務の対象です。

具体的な管理方法(企業が取るべき対策)

  • 労働時間の把握と目安の設定:管理職の勤務時間を記録し、上限の目安(例:月45〜80時間を超えたら面談)を設ける。
  • 健康管理の強化:定期健康診断や面談、必要に応じて産業医の面談を実施する。
  • 業務配分の見直し:業務量が集中する場合は権限委譲や人員補充で負担を減らす。
  • 休息と代替措置の確保:有給休暇取得促進や代行体制の整備を行う。

管理職本人の対応

自身の疲労や睡眠不足に気づいたら早めに上司や産業医に相談しましょう。具体的な勤務時間の記録を残すと、対話がスムーズになります。

企業は法律の趣旨に沿って労働時間を管理し、管理職の健康を守ることが求められます。適切な管理を行うことで、過重労働を防ぎ、職場全体の持続性を高められます。

管理監督者の勤怠管理の義務化

概要

管理監督者は労働時間・休憩・休日の労基法上の適用除外とされますが、近年は企業に対して管理監督者の労働時間把握(勤怠管理)を求める動きが進んでいます。企業は労働者の健康確保や長時間労働の予防のため、管理監督者の勤務実態も把握する必要があります。

なぜ勤怠管理が必要か

  1. 健康管理のため:管理職も長時間労働で健康リスクが生じます。早期に把握することで過労リスクを減らせます。
  2. 労務リスク対策:裁判や労基署対応で勤務実態の記録が重要になります。

実務上の対応例(具体的)

  • タイムカードやPCログで始業・終業時刻を記録する。
  • 週次の自己申告や面談で業務量を確認する。
  • 年次の健康診断結果や長時間労働者リストに管理職も含める。

守るべきポイント

  • 勤怠記録は客観的かつ継続的に残すこと。
  • プライバシー配慮と説明を行い、運用ルールを就業規則に明記する。
  • 長時間が判明した場合は業務配分や休養を指示する。

まとめ的助言

管理監督者の扱いを放置すると健康・法務両面でリスクが高まります。実務では記録の整備、運用ルールの明文化、定期的なチェックと是正を行うことをおすすめします。

管理監督者の規定と残業時間の上限・割増賃金の適用除外

労基法の適用除外とは

労働基準法第41条により、管理監督者は「労働時間、休憩、休日」の規定が適用されません。実務上は、法定の残業時間の上限規制や、時間外・深夜・休日の割増賃金の規定の適用対象外になります。例えば、店長や部門長など責任ある立場の従業員が該当することがあります。

管理監督者に求められる実態

形式的な肩書きだけでは不十分で、次のような実態が重要です。
- 人事や業務運営の決定権があること
- 労働時間に対する裁量や管理責任があること
- 給与や処遇が一般従業員と区別されていること
これらが揃わない場合、裁判で管理監督者と認められず、割増賃金の支払いが求められることがあります。

企業の対応と注意点

法的に適用除外でも、企業は長時間労働による健康影響を放置できません。最低賃金は適用されますし、労働安全衛生法に基づく長時間労働の管理や職場の健康配慮義務は残ります。実務では勤務実態の記録や職務内容の明確化、待遇の説明を行い、誤認分類のリスクを下げることが大切です。

誤分類のリスクと救済

管理監督者とすべきでない人を適用除外にしていた場合、未払いの割増賃金の支払い命令や行政指導、企業イメージの低下を招きます。従業員からの請求に備え、権限や責任の実態を定期的に見直してください。

管理監督者に関する裁判例の概要

裁判所が重視する視点

裁判所は肩書きではなく、実際の職務内容や権限、人事・労務に関する裁量性を重視します。例えば採用・解雇、昇格・給与決定に関与しているか、勤務時間の裁量があるか、事業運営に主体的に関わっているかを総合的に判断します。

判断要素(具体例を交えて)

  • 権限の有無:店長が売上目標や勤務割の最終決定をできるなら管理監督者に近づきます。逆に本部の指示で細かく動かされるなら該当しにくいです。
  • 人事権の程度:実際に人事評価や懲戒処分の決定権があるかで評価が変わります。名義だけでなく実務での関与が重要です。
  • 賃金の扱い:高い基本給だけで管理監督者と認められる訳ではなく、裁量性との関係で見ます。
  • 勤務管理の実態:タイムカードや始終業時刻の報告があり実際に管理されていれば、労働時間の管理下にあるとされやすいです。

裁判例の傾向(典型例)

  • 実務上は管理職とされても、上記の実態が乏しければ「管理監督者に該当しない」と判断され、未払いの時間外手当を認める例があります。
  • 逆に明確な権限と裁量を持つ場合は管理監督者として時間外手当の適用除外が認められることがあります。

実務上のポイント(企業・労働者双方へ)

企業側は職務記載書や権限の委譲、報酬体系を明確にし、実態と整合させる必要があります。労働者側は勤務実態を証拠として残し、疑問があれば労基署や弁護士に相談してください。

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