プロジェクトの遅延・コスト超過の多くは、「工数の見積もりが甘いこと」 が原因です。
思ったより作業が増える
想定以上に手戻りが発生する
上流で漏れたタスクが後半に影響する
こうした問題は、正しい見積もりプロセス を踏むだけで大幅に改善できます。
この記事では、PMが実務で必ず使う3つの工数見積もり手法 と精度を高める具体的なコツ を体系的にまとめます。
- 工数見積もりの基本プロセス
- PMが使う3つの見積もり手法
- 見積もり精度を高める判断基準
- リスク・バッファの考え方
- チームレビューでズレをなくす方法
- 工数見積もりに使えるテンプレート
工数見積もりとは?
プロジェクトの「時間 × リソース」の予測作業
工数見積もりは
プロジェクトのスケジュール
必要なリソース(人・スキル)
コスト(予算)
納期遵守の確率
を確定させるための核心プロセスです。
正しい工数見積もりは
WBS → 見積もり → スケジュール作成 → 進捗管理
という一連のプロセスの基盤になります。
PMが使う工数見積もり手法
実務で最も再現性が高い3つ
① ボトムアップ見積もり(最も精度が高い)
WBSでタスクを細分化し
1タスクごとに時間を見積もり → 積み上げる方法。
特徴
- 精度が最も高い
- 中〜大規模プロジェクト向け
- 再現性・透明性が高い
手順
- WBSでタスクを分解する
- 各タスクの担当者に時間を見積もらせる
- 粒度を揃える(1〜2日以内)
- タスク時間を積み上げる
向いているケース
- 要件が明確
- 手戻りが少ない
- 過去に実績のあるプロジェクト
② 類推見積もり(似たプロジェクトを参考)
過去の類似プロジェクトからそのまま or 補正して見積もる方法。
特徴
- スピードが早い
- 小〜中規模で有効
- 新規プロジェクトにも使える
手順
- 過去のプロジェクトを選ぶ
- スケール(ページ数・機能数)を比較
- 増減補正し、工数を算出
向いているケース
- 新規プロジェクト
- ざっくり見積もりが必要
- 企画段階でざっくり予算を提示したいとき
③ パラメトリック見積もり(数字で計算する)
「1ページあたり◯時間」「機能1つあたり◯日」など、単位と工数の関係を数式化 して見積もる方法。
特徴
- 定量的でブレが少ない
- Web/開発/制作でよく使う
- 中大規模プロジェクトに強い
例
- Webサイト → 「1ページ=2時間」
- アプリ開発 → 「機能1つ=3日」
- デザイン制作 → 「1ページ=4時間」
向いているケース
- 量産型プロジェクト
- タスクが定型化している
- 同じチーム・同じスキルで回している
見積もり精度を高める「7つのコツ」
① タスクの粒度を揃える(最重要)
粒度がバラバラだと精度が崩れます。1タスク=4〜16時間(1〜2日) が理想。
② 依存関係を必ず整理する
- Aが終わらないとBが始められない
- 外部レビューが必要
- 他チームへの受け渡しがある
こうした依存関係を無視すると、
見積もりがズレてスケジュールが破綻します。
③ 楽観見積もりを避ける(人は必ず盛る or 甘く見る)
PMBOK・CCPMでも指摘されるように、
人は見積もりが必ず歪む 特性があります。
- 楽観バイアス
- 学生症候群
- パーキンソンの法則
これを避けるため、
複数人でレビュー するのが必須。
④ 過去実績のデータベースを作る
見積もりは経験とデータが命。
- 過去プロジェクトの一覧
- スケジュール実績
- 実際にかかった工数
- 手戻り率
これを蓄積するだけで精度が劇的に上がります。
⑤ バッファを“個別ではなく全体”にまとめる
各タスクに安全余裕を持たせるのはNG。
推奨は
- CPM:日程余裕の可視化
- CCPM:プロジェクトバッファに一元化
⑥ レビュー工程・テスト工程を必ず入れる
最も漏れやすいのが
- 手戻りリスク
- テスト工数
- 承認プロセス
WBSに必ず組み込むこと。
⑦ 外部要因(待ち時間・承認・外部依頼)を含める
- クライアントの確認待ち
- 外部ツールの承認待ち
- 他部署との調整
こうした“タスクではない工数”が実務では非常に重い。
バッファの設計
見積もりとセットで必須
■ 方式①:タスクごとに数% → 小規模向け、ざっくり用
■ 方式②:プロジェクトバッファ(CCPM方式) → 大規模・遅延リスクが高い案件向け
■ 方式③:フィーディングバッファ → クリティカルパス以外の遅延用
工数見積もりのテンプレート(例)
■ 工数見積もりテンプレート(表形式)
| タスク名 | 作業時間 | 担当者 | 依存関係 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 要件定義 | 16h | PM | ー | ヒアリング2回含む |
| 設計 | 24h | SE | 要件定義 | ー |
| 実装A | 40h | Dev1 | 設計 | API仕様要確認 |
| 実装B | 32h | Dev2 | 設計 | ー |
| テスト | 24h | QA | 実装A/B | バグ修正時間考慮 |
| リリース | 8h | PM | テスト | 承認待ちあり |
▶ WBS(作業分解)の作り方を完全解説|誰でも抜け漏れなくタスク化できる方法
(補足:工数見積もりはWBSの粒度が揃っていることが大前提です)
まとめ
工数見積もりはプロジェクト成功の“核心スキル”
正しい工数見積もりは、
- 予算
- 納期
- スケジュール
- リソース管理
- 手戻り削減
すべての基盤になります。
3つの手法を使い分けながら、
- WBSで粒度を揃える
- 過去実績を使う
- バッファを適切に設計する
これらを徹底すれば、
工数の見積もり精度は大幅に向上します。