目次
はじめに
「プロジェクトマネジメントの手法っていろいろあるけど、結局どれを選べばいいの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実際の現場では、3か月で納期が決まっているシステム開発なのか、毎週のように仕様が変わるWebサービス運用なのかによって、適した進め方は大きく変わります。納期と作業内容が固定されている場合は最初に計画を固める方法が向いており、仕様が頻繁に変わる場合は短期間で試作と改善を繰り返す進め方が必要になります。
このように、手法は「どれが正しいか」ではなく、「自分の仕事に合っているか」で選ぶことが重要です。
この記事では、代表的な手法ごとに「どんな仕事で使うか」「どのように進めるか」を具体的に整理します。
プロジェクトマネジメントの「手法」とは?

プロジェクトマネジメントの「手法」とは、プロジェクトを計画から完了まで進める中で、「誰が・いつまでに・どの作業を行うか」を具体的に整理し、遅れや手戻りを防ぎながら成果物を納期どおりに仕上げるための進め方の型を指します。
たとえば、3か月間で新しいWebサイトを公開する場合、最初に要件を決めてから設計、開発、テストと順番に進めるのか、1週間単位で機能ごとに開発と確認を繰り返すのかによって、進行方法は大きく変わります。
ここでは、こうしたプロジェクトマネジメント手法の基本的な意味と、手法を理解して使い分けることでどのようなメリットが得られるのかを、具体的な進行イメージが持てる形で解説していきます。
プロジェクトマネジメントの「手法」の意味
プロジェクトマネジメントの「手法」とは、開始日から終了日までの期間内に、作業内容・担当者・期限・進め方をあらかじめ決め、計画通りに進めるための具体的な進行ルールです。
たとえば、1か月の開発案件であれば、初日に全体作業を細かく分解し、各タスクに対して担当者1名と完了日を設定し、週1回の進捗確認で遅れが発生していないかを確認し、遅れが出た場合は当日中に調整を行う、といった一連の手順を事前に定めて実行します。
これにより、誰が何をいつまでに終わらせるかが数値と日付で明確になり、作業の抜けや遅延を防ぎながら、納期までに成果物を完成させる状態を維持できます。
手法を理解するメリット
プロジェクトマネジメントの「手法」を理解すると、作業開始前に全タスクを細分化し、各タスクに担当者1名と完了日を設定したうえで進行できるため、進捗確認のたびに「誰がどこまで終わっているか」を数値と日付で把握できます。
その結果、遅延が発生した場合でも、週次または日次の確認時点で即座に把握し、その日のうちに担当変更や作業順序の調整を行えるため、納期直前の手戻りや作業の集中を防ぐことができます。
また、計画と実績の差を日単位で比較できるため、進捗が予定より何日遅れているかを具体的に判断でき、納期までに必要な作業量を再計算して修正できます。
代表的なプロジェクトマネジメントの「手法」

プロジェクトを進める方法には1つの正解があるわけではなく、期間が3か月の小規模な案件なのか、1年以上かかる大規模開発なのか、またメンバーが5人なのか30人なのかによって、適した進め方は大きく変わります。
そのため現場では、「作業を細かく分解して進捗を管理する方法」「スケジュールの最短ルートを把握して遅れを防ぐ方法」「複数プロジェクトを同時に優先順位付けして管理する方法」など、目的に応じて複数の手法を使い分けることが一般的です。
ここでは、実務でよく使われる代表的なプロジェクトマネジメントの「手法」について、それぞれがどのような場面で使われ、どのように進行を管理するのかを具体的にイメージできる形で解説していきます。
PMBOK

PMBOKは、プロジェクトを「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」の5つのプロセス群に分け、さらに10の知識エリアごとに作業手順を定めて進める管理手法です。
開始時点で目的・成果物・予算・期間を明確にし、計画段階で全タスクを分解して担当者と完了日を設定し、実行中は週1回または日次で進捗を数値で確認し、遅れが発生した場合はその場で作業順序や担当を調整します。
これらを各プロセスごとに順番に実施することで、作業の抜けや判断の遅れを防ぎ、決めた期限とコスト内で成果物を完成させる状態を維持できます。
WBS(Work Breakdown Structure)

WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト全体の作業を最小単位まで分解し、各作業に担当者1名と開始日・完了日を設定する手法です。最初に最終成果物を定義し、その成果物を完成させるために必要な作業を順番に分解し、1つの作業が1日から3日程度で完了する単位になるまで細かく分けます。
そのうえで、各作業に担当者と期限を設定することで、「誰が・いつまでに・何を終わらせるか」を日付単位で明確にできます。
これにより、進捗確認時に完了・未完了を日単位で判断でき、遅れが発生した場合でも該当作業を特定して当日中に調整できます。
PERT(Program Evaluation and Review Technique)

PERT(Program Evaluation and Review Technique)は、各作業の所要時間を「最短時間」「最も可能性が高い時間」「最長時間」の3つで見積もり、期待時間を算出して全体のスケジュールを決める手法です。
各作業について、たとえば最短2日・通常3日・最長5日といった3つの数値を設定し、(最短+4×通常+最長)÷6の計算で期待時間を求めます。そのうえで、作業の前後関係を線で結び、開始から終了までの経路ごとに所要日数を合計し、最も日数が長い経路を特定します。
この経路上の作業が1日遅れると全体の納期も1日遅れるため、重点的に進捗を日単位で管理し、遅れが発生した場合は即日で作業の順序や担当を調整できます。
CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)

CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)は、各作業の所要時間から余裕分を取り除いたうえで、全体の最後にまとめてバッファを配置し、遅れを一括で吸収する手法です。
最初にすべての作業について通常5日と見積もっていた場合でも、安全余裕を除いた3日などの実行時間に短縮し、その削減した2日分を各作業ごとではなく、プロジェクト全体の終盤に「プロジェクトバッファ」としてまとめて設定します。
そのうえで、作業は同時並行を減らし、1人の担当者が1つの作業を完了させてから次に進む順序で進めます。
進捗は日単位で確認し、バッファの消費日数を基準に遅れを判断することで、個別作業の遅れではなく全体として納期に間に合うかを数値で管理できます。
PPM(プロジェクトポートフォリオマネジメント)

PPM(プロジェクトポートフォリオマネジメント)は、複数のプロジェクトを同時に一覧化し、予算・人員・期間を数値で配分して優先順位を決める手法です。まず進行中および計画中のすべてのプロジェクトを洗い出し、それぞれに対して予算額、必要人員数、開始日と終了日、期待される成果を数値で整理します。
そのうえで、限られた人員や予算をどのプロジェクトに何人・何円配分するかを決め、重要度が低い案件は開始時期を後ろにずらす、もしくは中止する判断を行います。
これにより、同時に進める案件数を適正な数に抑えながら、各プロジェクトに必要なリソースを確保でき、全体として遅延やリソース不足が発生しにくい状態を維持できます。
P2M

P2Mは、複数のプロジェクトを「プログラム」として束ね、全体の目的に対してどの案件を実行するかを選択しながら管理する手法です。
まず組織として達成すべき目標を数値で設定し、その目標に対して貢献度が高いプロジェクトを選び、予算額・人員数・実施期間を具体的に割り当てます。そのうえで、各プロジェクトの進捗を月次や週次で確認し、成果が目標値に対してどれだけ達成しているかを数値で評価し、達成率が低い場合は途中で計画の見直しや中止を判断します。
このように全体目標に対して実行案件を入れ替えながら進めることで、限られた資源を効果の高いプロジェクトに集中させ、全体として目標達成に近づける状態を維持できます。
ガントチャート

ガントチャートは、各作業の開始日と終了日を横棒で表示し、全体のスケジュールを日付単位で可視化する手法です。
最初にすべての作業を洗い出し、それぞれに開始日と完了日を設定したうえで、日付を横軸、作業名を縦軸にしてバーで表します。これにより、どの作業が何日間続くのか、どの作業が同時に進行しているのかを一目で確認でき、進捗確認の際には計画上の終了日と実績の完了日を比較して、何日遅れているかを数値で把握できます。
その結果、遅延が発生した作業を特定し、当日中に担当や順序を調整することで、全体の納期に影響が出る前に修正できます。
カンバン

カンバンは、作業を「未着手」「進行中」「完了」などの列に分け、カードを移動させることで進捗を日単位で管理する手法です。
各作業を1枚のカードとして作成し、担当者1名と開始日を設定したうえで、作業開始時に「進行中」の列へ移動し、完了した時点で「完了」に移します。さらに「進行中」の列には同時に3件までといった上限数を設定し、それ以上は新しい作業を開始しないルールを適用します。
これにより、どの時点で何件の作業が進んでいるかを常に数で把握でき、進行中の件数が上限に達した場合は新規作業を止めて既存作業の完了を優先する判断ができるため、作業の滞留や遅延を防げます。
プロジェクトマネジメントの「手法」の使い分け

プロジェクトマネジメントの「手法」は、どれか1つを固定で使い続けるものではなく、プロジェクトの規模や関わる人数、納期までの期間、求められる成果物の内容によって適した方法を選び分ける必要があります。
たとえば、メンバーが3人で2週間以内に完了する小規模なタスクと、20人以上が関わり6か月以上かかる開発案件では、進捗の管理方法や情報共有の粒度が大きく異なります。また、「納期を厳守したいのか」「品質を最優先にしたいのか」「複数案件の優先順位を整理したいのか」といった目的によっても、選ぶべき手法は変わります。
ここでは、こうした違いを踏まえて、プロジェクト規模や目的に応じた手法の選び方について、実務の判断基準が具体的にイメージできる形で解説していきます。
プロジェクト規模による手法の選び方
プロジェクト規模による手法の選び方は、作業数と関与人数、期間の長さを基準に決めます。
作業が10件以内で担当者が3人以下、期間が1週間から2週間程度の小規模案件であれば、各作業に担当者と完了日を設定したうえでカンバンや簡易なガントチャートで日単位の進捗を管理します。
一方で、作業が50件以上、担当者が10人以上、期間が1か月を超える場合は、最初にWBSで全作業を1日から3日単位に分解し、そのうえでガントチャートで全体のスケジュールを作成し、週1回の進捗確認で遅れを数値で把握します。
さらに、複数のプロジェクトが同時に動き、総人数が20人以上になる場合は、各プロジェクトごとに人員と予算を配分するためにPPMを併用し、どの案件に何人配置するかを調整します。
このように規模が大きくなるほど、作業分解・スケジュール管理・全体配分の順で手法を組み合わせていく必要があります。
目的別の手法の選び方
目的別の手法の選び方は、「何を優先して管理したいか」を基準に決めます。
作業の抜けや担当の曖昧さをなくしたい場合は、最初にWBSで全作業を1日から3日単位に分解し、各作業に担当者1名と完了日を設定します。納期の遅延を防ぎたい場合は、ガントチャートで全作業の開始日と終了日を並べ、日次または週次で計画と実績の差を比較して遅れ日数を確認します。
作業時間のばらつきを考慮して全体の完了日を見積もりたい場合は、PERTで各作業に最短・通常・最長の3つの所要日数を設定し、計算した期待日数でスケジュールを組みます。担当者の同時作業を減らして納期全体を守りたい場合は、CCPMで各作業の余裕時間を削減し、最後にバッファをまとめて配置して消費日数で進捗を管理します。
複数案件の中でどのプロジェクトを優先するかを決めたい場合は、PPMで予算額と人員数を基準に配分を行い、重要度の低い案件は開始時期を後ろに調整します。
このように、管理したい対象に応じて手法を選択することで、目的に直結した管理ができます。
まとめ
プロジェクトマネジメントの「手法」は、どれか1つが正解というものではなく、作業数・関与人数・期間・優先したい目的に応じて選び分けることで、納期遅延や手戻りを防ぎながら進行を安定させるための具体的な進め方です。
小規模な案件であれば、作業を1日単位で管理できるカンバンや簡易なガントチャートを使い、担当者と期限を明確にすることで日次の進捗を把握できます。
作業数が増え、期間が1か月以上になる場合は、WBSで作業を1日から3日単位に分解し、ガントチャートで全体のスケジュールを可視化することで、週次の確認で遅れを数値として把握できます。さらに複数案件を同時に進める場合は、PPMを使って人員や予算を配分し、どのプロジェクトを優先するかを判断する必要があります。
また、目的に応じた使い分けも重要です。作業の抜けや担当の曖昧さをなくす場合はWBS、納期遅延を防ぐ場合はガントチャート、所要時間のばらつきを考慮する場合はPERT、全体の納期を守るために遅れを吸収する場合はCCPM、複数案件の優先順位を決める場合はPPMといったように、管理したい対象ごとに適した手法を選ぶことで、進捗を日付や数値で判断できる状態を維持できます。
この記事で解説した手法をもとに、自分のプロジェクトが「何人で・どのくらいの期間で・何を優先して進めるのか」を具体的に整理し、それに合った手法を選ぶことで、「どの作業を誰がいつまでに終わらせるか」を明確にした状態で進行できるようになります。