目次
はじめに
本資料の目的
本資料は、組織改革を計画し実行する際に役立つ主要なフレームワークを分かりやすく紹介します。理論だけでなく、実務で使える視点や整理方法をお伝えします。
何を学べるか
主にマッキンゼーの7Sフレームワークとクルト・レヴィンの3段階変革プロセスを解説します。加えて、SWOT分析やOKR、PDCAなどのフレームワークの位置づけと使い分けも示します。例:事業部の組織改編や業務プロセス改善、IT導入の計画作成に応用できます。
想定読者
マネジャー、人事担当、プロジェクトリーダーなど、組織やチームの変化を担当する方を想定しています。フレームワークの初心者でも読み進められる構成です。
読み方と使い方のポイント
各章は「理論の説明→実務での当てはめ方→簡単な例」の順で構成します。まずは全体像を把握し、具体的な課題に応じて必要なフレームワークを選んでください。短いワークシートを使うと議論が進みやすくなります。
マッキンゼーの7Sフレームワーク
概要
マッキンゼーの7Sは、組織を7つの要素で捉え、全体の調和を目指す枠組みです。要素同士が互いに影響するため、1つを変えれば他も調整が必要になります。日常の経営改善や組織変革に使いやすいツールです。
7つの要素
- 戦略(Strategy):市場で勝つための方針。例)低価格戦略や差別化。
- 組織構造(Structure):部署や報告ラインの配置。例)フラット化で意思決定を速める。
- システム(Systems):業務プロセスや評価制度。例)在庫管理や人事評価。
- 共有価値観(Shared values):組織の核となる考え方。意思決定の基準になります。
- スキル(Skills):従業員が持つ能力。デジタルスキルや営業力など。
- スタイル(Style):経営者や管理職のリーダーシップ様式。
- 人材(Staff):採用・配置・育成の状況。
活用プロセス(実務的な進め方)
1) 共有の将来像を定めます。関係者で目指す姿を言語化します。
2) 現状分析で7項目を評価し、ズレを明確にします。チェックリストを使うと効率的です。
3) 改革案を作り、優先順位を付けて実行計画に落とし込みます。スキルやシステムは早めに手を入れると効果が出やすいです。
4) 結果を測定し、必要なら組み合わせを再調整します。
具体例と注意点
例えば小売業でEC強化が必要なら、戦略(EC拡大)に合わせてシステム(注文処理)とスキル(デジタルマーケ)を強化します。同時に評価制度や組織構造を見直すと定着しやすくなります。どの要素を優先するかは現状のギャップで判断してください。
3段階のプロセス(クルト・レヴィンの変革フレームワーク)
概要
クルト・レヴィンのフレームワークは、変革を「解凍」「変革」「再凍結」の3段階でとらえます。段階ごとに目的と手法を分けることで、現場の抵抗を減らし、変化を定着させやすくします。ここでは各段階の具体的な進め方と実例、リーダーが取るべき行動を説明します。
1. 解凍(Unfreeze)— 変化の準備
目的: 現状の慣習や抵抗をほぐし、変化の必要性を理解してもらう段階です。
やり方: データや事例を示して現状の課題を明確にします。関係者と対話し、不安や疑問を受け止めます。小さな実験やパイロットを行って成功体験を作ることが有効です。
具体例: 新しい顧客管理システムを導入する際、まず現行の問題点(重複入力や情報の断絶)を数字で示し、他部署の成功事例を紹介します。その後、限定部署で試験導入して担当者の声を集めます。
注意点: 「説明だけ」で終わらせず、参加と体験の場を作ることが重要です。
2. 変革(Change)— 実際の実行
目的: 新しいやり方を導入し、運用を始める段階です。
やり方: 明確なロードマップと役割分担を示します。教育やトレーニング、サポート窓口を用意して不安を低減します。進捗を小刻みに評価して軌道修正します。
具体例: 顧客管理システムの本格導入では、移行スケジュール、担当者の操作研修、旧システムからのデータ移行計画を実行します。初期は二重運用を行い、問題点を早めに発見します。
注意点: 一度に全てを変えようとすると混乱します。段階的に進め、現場の声を反映して改善を繰り返してください。
3. 再凍結(Refreeze)— 定着と維持
目的: 新しい状態を組織の標準にし、安定させる段階です。
やり方: 新ルールや手順を文書化して共有します。評価指標や報酬制度を連動させ、新しい行動が促される仕組みを作ります。定期的なレビューで微修正を加えます。
具体例: 新システムの操作が日常業務になったら、マニュアルやFAQを整備し、KPIに新しい顧客対応時間を組み入れます。成功事例を社内で紹介して理解を深めます。
注意点: 定着後も環境変化に応じて見直す余地を残してください。
リーダーへのチェックリスト(簡潔)
- 変化の理由を明確に伝えたか
- ステークホルダーの声を聞く仕組みを作ったか
- 小さな成功体験を設計したか
- 教育とサポートを用意したか
- 定着するための評価と報酬を整えたか
実務では、この3段階を循環的に回すことで、変革を継続的に改善できます。現場との対話を重視しながら段階ごとに丁寧に進めてください。
その他の主要フレームワーク
SWOT分析
SWOTは「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の4観点で自社や事業を整理します。強みは競合に勝てる要素、弱みは改善すべき内部課題、機会は外部環境で活かせる要素、脅威は注意すべき外部リスクです。たとえば、地域密着の販売網が強みなら、それを生かした新規サービスを検討します。弱みは優先度を付けて対策を進めます。
OKR(目標と主要な成果)
OKRは「目標(Objective)」とそれを測る「主要な成果(Key Results)」で構成します。野心的な目標を設定し、主要な成果で進捗を数値化します。例えば「半年で顧客満足度を上げる」が目標なら、「NPSを10ポイント向上」「月間リピート率を20%増」などを主要成果にします。透明性を保ち、定期的に振り返ることが重要です。
PDCAサイクル
PDCAは「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Act)」の循環です。小さな仮説を立てて実験的に実行し、速やかに評価して改善します。継続的な改善と学習を促すため、短いサイクルで回すと効果的です。例えば、新しい販売施策を試し、数週間で結果を評価して改善案を導く流れです。