リーダーシップとマネジメントスキル

営業マネジメントと営業の違いを徹底解説する理由とは

目次

はじめに

目的

本記事は営業マネージャーが現場で成果を出すために必要な考え方と実践手法をやさしく解説することを目的としています。目標管理、プロセス設計、案件管理、メンバー育成など、日々の業務で役立つノウハウを具体例とともにお伝えします。

対象読者

  • 現役の営業マネージャー
  • これからマネージャーを目指す営業担当者
  • 営業チームの改善に関わる人事や経営者

実務にすぐ使えるチェックリストや場面別の対処法も盛り込みますので、立場に関わらず役立てていただけます。

読み方のヒント

各章は独立して読めますが、まず第2章で営業マネジメントの全体像をつかむと理解が深まります。実際の運用に移す際は、第5章以降を順に読んでいただくと、計画→実行→評価の流れを実務に落とし込みやすくなります。

営業マネジメントとは何か

定義

営業マネジメントは、営業チーム全体の成果を最大化するために、目標・行動・案件・モチベーションなどを継続的に管理・改善する活動です。個人の売上だけでなく、チームとして再現性のある成果を作ることを目指します。

誰が何を行うか

営業担当者は顧客対応や商談を進めます。営業マネージャーは、目標設定、進捗の可視化、課題抽出、方針決定、メンバー育成などを行い、チーム全体を導きます。

具体的な活動(例)

  • 目標設定と分解:年間目標を月次・週次に落とし込みます。
  • 案件管理:重要案件の優先度を決め、支援します。
  • プロセス設計:商談の流れや評価基準を作ります。
  • 面談・コーチング:個別に課題を明確にし改善策を提示します。
  • モチベーション管理:成功体験や適切なフィードバックで士気を高めます。

本質的な目的

継続的に目標達成できる仕組みを作り、個人に依存しない組織力を高めることが本質です。

営業と営業マネジメントの違い

役割の違い

営業担当者は顧客と直接向き合い、契約を取ることが主な役割です。自分の目標達成が責務で、日々の行動や商談で結果を出します。

一方、営業マネージャーは部下を通じて成果を出す役割です。個人の受注だけでなく、チーム全体の売上や生産性を最大化する責任があります。

成果の出し方の違い

営業は自分で商談を進めて結果を作ります。マネージャーは部下の行動を支援し、課題を把握して正しい判断を下すことで成果を作ります。

必要な意識の転換

優秀なプレイヤーほど「自分で売る」発想に頼りがちです。しかし、マネージャーは「他者を通じて売る」発想が必要です。時間配分も変わり、自分で商談を増やすより部下を育てる時間を優先します。

具体的な支援内容(例)

  • 商談スクリプトや提案資料の改善
  • 障害となるプロセスの見直し
  • 個別面談での課題抽出とアドバイス
  • 案件の優先付けと顧客割当の最適化

移行でつまずきやすい点と対処法

  • 自分のやり方を押し付ける: 部下のやり方を観察し、気付きを促すコーチングを行います。
  • マイクロマネジメント: 権限を委譲し、小さな成功体験を積ませます。
  • 成果を数値だけで追う: 行動とプロセスを評価し、改善点を一緒に明確にします。

具体例

トップ営業がマネージャーになり、自分で受注を続けた結果、部下の育成が進まずチーム全体が停滞するケースがあります。解決策は週次で1対1を実施し、目標と行動計画を共有して進捗を管理することです。

営業マネジメントの主な役割

営業マネジメントの役割は大きく五つに分かれます。それぞれの役割で行う具体的な行動と、現場での分かりやすい例を挙げて説明します。

1. 目標設定と管理

達成すべき売上や件数を明確に定めます。月・四半期・年単位での数値目標を作り、達成状況を定期的に確認します。例:月初にチームで目標を共有し、週次ミーティングで進捗を点検します。

2. 営業戦略・プロセスの設計と管理

どの顧客に、どのように働きかけるかを設計します。ターゲット、提案の流れ、優先順位を決め、標準的な営業フローを作ります。例:新規は電話→訪問→提案の3ステップをルール化します。

3. 案件管理と行動管理

重要案件の進捗管理と、日々の営業活動を可視化します。案件ごとに次のアクションを設定し、未処理を早めに発見して対処します。例:CRMで案件段階を更新し、阻害要因を週次で洗い出します。

4. メンバーのモチベーション管理と個別指導

個々の得意・不得意を見極め、目標達成に向けて声かけや助言を行います。成果を認める仕組みや短期的な課題設定でやる気を引き出します。例:成功事例を共有し、困っているメンバーにロールプレイで指導します。

5. 人材育成・営業力強化・ナレッジ共有

研修やOJTでスキルを高め、ナレッジをチームで蓄積します。マニュアルやトーク集を整備し、学びの場を定期的に設けます。例:週1回の勉強会で成功事例を持ち寄り、改善点を議論します。

目標設定と管理

役割の要点

営業マネジメントは、経営目標から組織・チーム・個人の数値目標を整合させ、達成を管理する役割を担います。メンバーと合意してコミットを得ることが重要です。

目標設計のステップ

  1. 経営目標を分解する:全社売上や利益から部門・チームに振り分けます。例:月間売上300万円をチーム3人で達成するなら、個人目標は1人当たり100万円と計算します。
  2. 指標を具体化する:売上だけでなく、商談件数・受注率・案件単価なども設定します。例:平均単価30万円、必要受注数=目標÷単価で算出。
  3. 合意形成:数値の根拠を示し、個人と話し合って納得を得ます。

進捗管理の方法

  • 定期確認:週次で商談状況、月次で達成率をチェックします。
  • 見える化:ダッシュボードや簡易表で目標・実績・残差を表示します。
  • アラート設定:達成率が目標の80%を下回ったら早めに対応します。

ギャップへの具体的打ち手

  • 行動量を増やす:新規アポイント数や提案数を一時的に増やす。
  • 案件の優先付け:確度が高い商談にリソースを集中する。
  • テコ入れ支援:価格交渉や意思決定者へのアクセスを支援する。

合意形成のポイント

  • 根拠を示す:なぜその数値が必要かを説明します。
  • 小さな成功を作る:短期KPIを設定し達成感を得させます。
  • 目標はチャレンジと現実のバランスを取る。

これらを習慣化すると、目標達成の確度が高まります。

営業戦略・プロセスの設計と管理

はじめに

営業マネージャーは、狙う市場や顧客像を明確にして、それに合った営業プロセスを設計・管理します。本章では実務で使える設計の考え方と管理手法をわかりやすく説明します。

営業戦略の設計

  • 市場と顧客セグメントの選定:顧客の業種、規模、課題でセグメント分けします(例:中小企業向けのコスト削減提案、製造業向けの生産性向上提案)。
  • 提案のポジショニング:競合との差別化ポイントを明記します。価格訴求か、機能訴求か、サポート訴求かを決めます。
  • 体制と役割分担:インサイド/フィールド/CSなどの役割を定義し、リード獲得から受注後までの責任範囲を整理します。

営業プロセスの設計

  • ステージ定義:リード獲得→商談化→提案→交渉→クロージング→フォローの各段階を明確にします。各段階の判定基準を数値化します(例:商談化は課題確認の完了)。
  • KPI設定:案件数、商談化率、提案数、クロージング率、平均リードタイムなどを設定します。
  • 活動ルール:初回接触の回数、提案後のフォロー間隔、見積提出の標準テンプレートなどを定めます。

可視化とボトルネック特定

  • CRMやパイプラインダッシュボードで各ステージの件数と滞留時間を見える化します。
  • コンバージョン率の低いステージがボトルネックです。例えば商談化で止まるならヒアリング力やリードの質を改善します。

活動量と提案の質の両面で分析

  • 活動量(接触数、訪問数、デモ数)だけでなく、提案の質(提案内容の合致度、カスタマイズ度)も評価します。
  • A/Bでトークや提案書を試し、成果の差を数値で把握します。

改善の進め方と運用

  • 週次でパイプラインレビューを行い、重点案件と対応方針を決めます。
  • マネージャーはデータに基づきリソース配分と個別指導を行います。小さな仮説を試し短いサイクルで改善します。

実践チェックリスト

  • 狙う顧客と差別化ポイントを明文化する
  • 各ステージの判定基準とKPIを決める
  • CRMで滞留とコンバージョンを常時監視する
  • 週次レビューで迅速に対策を打つ
  • 提案のABテストを継続する

案件管理と行動管理

営業マネジメントの役割

営業マネジャーはメンバーの案件と日々の行動を把握し、成果に直結する活動を増やします。状況を可視化して優先順位をつけ、支援が必要な案件に介入します。

案件管理で見るべき項目

  • パイプライン総量(件数・金額)と商談ステージ別の件数・金額
  • 受注確度・期待時期・停滞期間
  • 失注理由や停滞理由(競合、価格、決裁者不在など)
  • 優先度(受注確度×金額や期限で算出)

具体例:提案段階で3週間停滞している大型案件は早期に決裁者アプローチや追加価値提示の支援が必要です。

行動管理で見るべき指標

  • 訪問件数、架電件数、提案回数、デモ実施回数
  • 各行動の反応率(商談化率、受注率)と売上との相関

分析例:架電数は多いが商談化率が低ければ、トークやターゲティングの見直しが必要です。ここで役立つのが活動ごとの標準値(目標)とKPIです。

実務的な運用ポイント

  • SFA/CRMで必須項目を統一し、ダッシュボードで可視化します。
  • 停滞案件はアラートや色分けで旗を立て、週次レビューで対応を決めます。
  • 行動目標は数値(件数)と質(提案の深さ、決裁者接触)を両方設定します。
  • 個別支援は短期の具体的アクション(アポ獲得用スクリプト、提案資料テンプレ)で効果を出します。

チェックリスト(例)

  • 週次:パイプラインの金額とステージ確認
  • 日次:活動件数と重要案件の進捗確認
  • 月次:行動と成果の相関分析に基づく改善施策立案

これらを運用することで、無駄な活動を減らし、受注に直結する行動を増やせます。

メンバーのモチベーション管理と個別指導

はじめに

営業マネジメントでは、個々のモチベーションを維持・向上させることが成果に直結します。精神論に終わらせず、成果につながる具体的な行動を支援する視点で取り組みます。

目標設定と評価・フィードバック

  • 目標は「到達点」と「過程」の両方で設定します。例:月間受注数(到達点)と週ごとの見込み案件数(過程)。
  • 評価は定量と定性を組み合わせます。訪問数や受注率と、商談での改善点を両方見ます。
  • フィードバックは即時性を重視します。良い点は具体的に挙げ、改善点は次に試す具体行動を示します。例:「先週の商談はヒアリングが深かったので顧客の課題が出せています。次は提案の選択肢を2つ用意してみましょう。」

日々のコミュニケーションと信頼関係

  • 毎日の短い報告や朝会で状況共有します。成果だけでなく課題も話せる雰囲気を作ります。
  • 1対1の定期面談で雑談も取り入れ、仕事以外の関心事を知るようにします。信頼は小さな約束の積み重ねで作ります。

個別指導(性格・強み・キャリア志向の把握)

  • 性格は観察と面談で把握します。慎重なタイプには段階的な挑戦を、積極的なタイプには裁量を与えます。
  • 強みは成功事例から抽出します。得意な商談パターンを他メンバーと共有する機会をつくります。
  • キャリア志向は面談で確認し、短期・中長期の目標を合わせます。昇進志向にはリーダー業務を任せ、専門志向には専門案件を増やします。

コーチング的アプローチで具体行動へ落とし込む

  • 問いかけで本人に気づかせます:事実→解釈→行動の流れで質問します(例:「その場面で何が起きましたか?」「どう解釈しましたか?」「次は何を試しますか?」)。
  • 小さな実験を設定し、結果を振り返るサイクルを回します。成功体験を積ませると自信がつきます。
  • 観察とフィードバックを組み合わせ、できている点を具体的に承認します。承認はモチベーションの持続に効果的です。

最後に

個別指導はテンプレでは効果が出ません。相手を理解し、具体的な行動計画に落とし込むことで日々の改善と成果につなげます。

人材育成・営業力強化・ナレッジ共有

人材育成の目的と方針

チーム全体の底上げを目的に、個人依存を減らし再現性の高い営業力を作ります。育成方針は「観察→指導→実践→振り返り」を短いサイクルで回すことです。

OJTとロールプレイング(具体例)

OJTでは先輩同行で実戦感を伝えます。同行後は5分でポイントをフィードバックします。ロールプレイは週1回、課題を絞って行い録画して共有します。例えば“価格交渉”だけをテーマに3段階で練習します。

ナレッジ共有の仕組み

成功・失敗事例をテンプレ化して社内DBに蓄積します。週次のケース共有会で短い発表を回し、議事録をタグで整理します。よく使うトークや資料はテンプレとして保存します。

トップ営業の思考法を言語化する

トップが行う情報収集、仮説立て、優先順位の付け方をステップ化します。例:①顧客状況の5項目確認→②課題の本質を仮説化→③最短の検証アクション提案。これをチェックリストにします。

定着と評価

行動KPI(訪問数や提案数)と質的評価(提案の深さ、顧客評価)を合わせて評価します。振り返りは月次で行い、育成計画を更新します。

実践のポイント

短いサイクルで試して改善を繰り返すこと、心理的安全を作り学びを促すことが重要です。個々の強みを組み合わせ、チームとして再現できるスタイルに育てます。

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