目次
はじめに
コミュニケーションマネジメントって、結局なにをすればいいの?
会議を増やせばうまくいくの?チャットを活発にすれば解決するの?
そんな疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、うまくいくかどうかは「誰に・何を・どの手段で・どのくらいの頻度で伝えるか」を、仕事が始まる前に具体的に決めているかどうかでほぼ決まります。たとえば、進捗は毎週月曜の定例会議でチーム全員に共有するのか、重要な仕様変更はその日のうちにチャットとメールの両方で関係者へ送るのか、経営層への報告は月末に1枚の資料でまとめるのか――ここまで決めておくことが大切です。
会議の回数を増やしたり、チャットの投稿数を増やしたりすることが目的ではありません。「どの情報を、誰が、いつ受け取るのか」がはっきりしている状態をつくることがポイントです。情報の流れをあらかじめ図に描けるくらい具体的にしておくと、伝え漏れや二重連絡が減ります。
もし今の現場で、「誰に伝えるのかはその場の判断」「とりあえず全員にCC」「急ぎは口頭で伝えることもある」といった状態になっているなら、まずは伝える相手と方法を紙に書き出すところから始めてみてください。
すでに連絡ルールが決まっている場合は、その通りに運用できているか、実際に情報が届いているかを一度見直してみましょう。
これから順番に、具体的に何を決めておくと迷わなくなるのかをひとつずつ整理していきます。
コミュニケーションマネジメントとは?

コミュニケーションマネジメントとは、プロジェクトの中で発生する情報を整理し、関係者に正しく届けるための管理活動です。メンバー間で認識がずれたり、必要な報告が遅れたりすると、手戻りやトラブルが発生します。そうならないために、あらかじめ「誰に・何を・いつ・どうやって」伝えるのかを決めておきます。ここでは、その具体的な中身を整理します。
「誰に・何を・いつ・どうやって」伝えるかを決める「管理活動」
プロジェクト開始時に、まず関係者の名前を一覧にします。たとえば、発注者、プロジェクトマネージャー、開発担当、営業担当、経理担当などです。そのうえで、「進捗状況」「予算の使用額」「仕様変更の有無」「納期の変更」など、共有する内容を具体的に書き出します。
次に、それぞれの情報をいつ伝えるのかを決めます。例として、進捗は毎週金曜日の定例会議で報告する、予算は月末に集計して翌月初に共有する、仕様変更は決定当日に全員へ通知する、というように日付やタイミングを固定します。さらに、伝える手段も決めます。正式な決定事項はメールで全員に送る、日々のやり取りはチャットツールを使う、重要な判断は対面またはオンライン会議で行う、といった形で使い分けます。
このように「誰に・何を・いつ・どうやって」を事前に具体的に決めておく活動が、コミュニケーションマネジメントです。
情報の行き違いを起こさないための「管理領域」
プロジェクトで仕様変更があったのに一部のメンバーに共有されていないと、古い内容のまま作業が進みます。納期が変更になったのに営業だけが知らなければ、顧客に誤った日程を伝えてしまいます。このような「聞いていない」「知らなかった」という状態を防ぐために、情報の流れをあらかじめ整理します。
具体的には、共有が必要な情報を一覧にし、それぞれを誰が発信し、誰が受け取るのかを決めます。さらに、メールで送るのか、定例会議で説明するのか、チャットで即時共有するのかを区別します。重要な決定事項は必ず記録を残し、関係者全員に同じ内容が届いているかを確認します。
このように、情報の漏れや誤解が起きないように仕組みを整える領域が、コミュニケーションマネジメントです。
コミュニケーションマネジメントで実際にやること

コミュニケーションマネジメントは考え方だけで終わらせず、具体的な手順に落として実行します。関係者を把握せずに進めたり、共有内容や方法を決めないまま連絡を始めたりすると、情報が偏ります。まずは「誰に伝えるのか」「何を共有するのか」「どの手段でどの頻度で行うのか」を順番に決めていきます。ここからは、実際に行う作業を具体的に整理します。
プロジェクトに関わる関係者をすべて洗い出す
まず、今回のプロジェクトに関係する人の名前を具体的に書き出します。社内の担当者だけでなく、発注者、協力会社の担当者、外部ベンダー、検収担当者、経理担当なども含めます。実際に報告を受けたり、判断をしたりする人を一人ずつ挙げます。
次に、それぞれの立場と役割を横に記載します。たとえば「最終承認を出す人」「日々の進捗を管理する人」「成果物を確認する人」「請求処理を行う人」などです。役割が重なっている場合もそのまま明記します。
ここまで整理できれば、関係者の全体像が把握できます。
共有する内容とその目的を具体的に決める
まず、「何を共有するのか」を具体的な項目で書き出します。たとえば、進捗状況、作業完了率、残タスク数、予算の使用額、仕様変更の有無、納期変更の有無、リスク発生状況などです。抽象的に「状況報告」とまとめず、数字や事実で表せる単位に分解します。
次に、それぞれの情報を「なぜ共有するのか」を明確にします。進捗は遅れの早期発見のため、予算は超過防止のため、仕様変更は認識違いを防ぐため、と目的を横に記載します。目的を書かないと、不要な情報まで増えてしまいます。
ここではまだ「誰に送るか」や「どう送るか」は決めません。あくまで「共有する情報」と「その理由」を明確にする段階です。これにより、伝える内容の基準が固まります。
使う連絡手段と共有する頻度を決める
共有する情報が決まったら、次に「どの手段で伝えるか」と「どの頻度で行うか」を具体的に決めます。
たとえば、週次の進捗は毎週月曜10時の定例会議で報告する、日々の細かい連絡はチャットツールで行う、正式な決定事項はメールで全員に送る、というように用途ごとに使い分けます。
頻度も数字で固定します。「必要に応じて」ではなく、「週1回」「月末に1回」「変更が発生した当日」など、タイミングを明確にします。ここまで決めて初めて、情報の流れが安定します。
決めた方法で実行しズレがあれば見直す
計画を作っただけでは管理にはなりません。実際に決めた手段と頻度で共有を行います。
定例会議が予定どおり開かれているか、議事録が全員に届いているか、メールが送られた後に確認が取れているかをチェックします。共有が滞っている場合は、原因を特定します。会議時間が長すぎるのか、情報が多すぎるのか、参加者が多すぎるのかを具体的に見ます。
問題があれば、頻度を減らす、手段を変更する、参加者を絞るなど修正します。このように運用しながら調整することが、コミュニケーションマネジメントの実行段階です。
プロジェクトで決めるコミュニケーション計画の内容

コミュニケーション計画は、「とりあえず共有する」ではなく、事前に内容を文書で決めておくことが前提です。何を共有するのかが曖昧だと、必要な報告が漏れたり、不要な情報が増えたりします。また、誰が発信し、誰が受け取るのかを決めていないと責任の所在が不明確になります。ここでは、プロジェクトで具体的に決めておくコミュニケーション計画の中身を整理します。
コミュニケーション計画書に記載する共有情報の種類
コミュニケーション計画書には、まず共有する情報の種類を具体的な項目で記載します。たとえば「週次進捗報告」「月次予算実績」「仕様変更の決定内容」「リスク一覧の更新状況」「課題管理表の最新状態」など、実際の資料名や報告名で書きます。「状況報告」や「連絡事項」といった曖昧な表現は使いません。
次に、それぞれの情報に含まれる内容も明記します。進捗報告なら「完了タスク数」「未完了タスク数」「遅延の有無」「翌週の予定作業」、予算実績なら「計画額」「実績額」「差額」「残予算」など、数字で確認できる項目を列挙します。
さらに、緊急連絡として扱う情報も分けて記載します。たとえば「納期変更」「重大な不具合の発生」「契約条件の変更」などは通常報告とは区別します。このように、共有する情報を具体的な種類ごとに整理して記載することが、コミュニケーション計画書の中身になります。
情報を送る担当者と受け取る相手の役割
コミュニケーション計画書には、各情報ごとに「誰が送るのか」と「誰が受け取るのか」を具体的に記載します。たとえば、週次進捗報告はプロジェクトマネージャーが作成し、発注者と社内責任者が受け取る、と明記します。仕様変更の連絡は設計担当が作成し、開発担当と品質管理担当が受け取る、というように情報ごとに分けます。
あわせて、受け取る側の役割も書きます。報告を「確認する人」「承認する人」「共有のみ受ける人」を区別します。たとえば、予算実績は経理担当が集計し、部門長が承認し、プロジェクトメンバーは閲覧のみ、と役割を分けて記載します。
名前ではなく役職や担当名で書いておくと、人が変わっても運用が止まりません。このように、発信者と受信者の役割を具体的に定義することが、コミュニケーション計画の内容になります。
使用する連絡手段(定例会議・チャットツール・メール)とその使い分け
コミュニケーション計画書には、どの情報をどの連絡手段で伝えるかを具体的に記載します。たとえば、週次の進捗報告は毎週月曜の定例会議で説明し、会議後に議事録をメールで全員へ送付すると決めます。日々の軽微な確認事項はチャットツールでやり取りし、正式な決定事項は必ずメールで記録を残す、と使い分けます。
定例会議は「全体の進捗確認と意思決定を行う場」として使い、チャットは「即時性が必要な確認や簡単な相談」に限定します。メールは「後から確認できる記録を残すための手段」として扱います。用途を分けずに混在させると、重要な情報が流れてしまいます。
このように、連絡手段ごとに役割を決め、どの情報をどの手段で共有するかを明文化することが、コミュニケーション計画の内容になります。
情報を共有するタイミングと頻度
コミュニケーション計画書には、各情報を「いつ共有するか」と「どの頻度で行うか」を具体的に記載します。たとえば、進捗報告は毎週月曜10時の定例会議で実施する、予算実績は毎月末に集計し翌月5日までに共有する、課題管理表は毎週金曜に更新して全員へ通知する、と日付や曜日まで決めます。
また、定期報告とは別に、発生時に共有する情報も明確にします。仕様変更が決定した場合は当日中にメールで通知する、重大な不具合が発生した場合は1時間以内にチャットで全体連絡を行う、というように時間基準を決めます。
「必要に応じて」「適宜」などの表現は使いません。具体的な日時や回数を決めておくことで、報告漏れや遅延を防ぎます。このように、共有のタイミングと頻度を明文化することが、コミュニケーション計画の内容になります。
プロジェクトのコミュニケーションがうまくいかないと起きる問題

プロジェクトでは、コミュニケーションの設計が不十分なまま進めると、作業そのものよりも「伝達のズレ」が原因で問題が発生します。連絡はしているのに認識がそろっていない、情報は共有されているのに決定が進まない、といった状況が起こります。ここでは、コミュニケーションがうまく機能していないときに現場で実際に起きる具体的な問題を整理します。
伝えたつもりで作業のやり直しが発生する
仕様変更を口頭で伝えただけで記録を残していないと、開発担当が古い仕様のまま作業を進めてしまいます。あとから「その内容は変更になっている」と判明すると、すでに完成していた画面や資料を修正することになります。
たとえば、納期を1週間前倒しにすると決めたのに一部メンバーに共有されていなければ、従来どおりのスケジュールで作業が進みます。その結果、全体の進捗にズレが生じ、再調整が必要になります。
このように、「伝えた」と思っていても、相手が正確に理解し同じ内容で作業していなければ、成果物の修正や再作業が発生します。記録を残さず、確認を取らないまま進めることが、やり直しの原因になります。
情報が多すぎて判断が遅れる
チャットに1日100件以上のメッセージが流れ、重要な決定事項が他の雑談や確認連絡に埋もれてしまうと、どれが対応必須なのか分からなくなります。会議資料が50ページあり、進捗・課題・リスク・参考情報が区別されていない場合も、参加者はどの項目を決める場なのか判断できません。
たとえば、承認が必要なのは「予算追加10万円の可否」だけなのに、関係の薄い参考データや過去の経緯説明が大量に含まれていると、意思決定が先延ばしになります。その結果、次の工程に進めず、スケジュール全体が遅れます。
必要な情報と参考情報を分けずに一度に大量共有すると、確認と判断に時間がかかります。情報を絞らずに送ることが、決定の遅れにつながります。
会議が増えても責任の所在があいまいになる
週に3回定例会議を開いていても、「誰が最終的に決めるのか」「誰が実行するのか」を決めていないと、話し合いだけで終わります。たとえば、仕様変更について会議で意見が出たのに、最終承認者を明確にしないまま解散すると、誰も決定を出さず作業が止まります。
議事録に「検討する」「対応する」とだけ書かれていて、担当者名が記載されていない場合も同じです。後日確認すると、「自分がやるとは思っていなかった」と言われ、対応が進んでいないことが判明します。
会議の回数を増やしても、決定者と実行担当をその場で確定しなければ、責任の所在はあいまいなままです。会議後に「誰が・いつまでに・何をするか」を明確にしないことが、責任不明確の原因になります。
まとめ
コミュニケーションマネジメントは、「連絡をしているかどうか」ではなく、「情報の流れが設計され、実行されているか」で判断します。プロジェクトに関わる関係者をすべて洗い出し、共有する情報の種類を具体的な資料名や数値項目で定義し、誰が送り誰が受け取るのかを役割単位で決めます。さらに、定例会議・チャット・メールなどの手段を用途ごとに分け、共有の曜日や時間、発生から何時間以内に通知するかまで明文化します。
これらが文書や共有資料に整理されていない場合、伝達ミスや作業のやり直し、判断の遅れが発生します。月に1回以上同じ伝達ミスが起きているなら、個人の注意不足ではなく、計画や運用に問題があります。どの情報が漏れたのか、誰が受け取っていなかったのか、手段や頻度が適切だったのかを具体的に見直します。
すでに計画書がある場合も安心はできません。会議が予定どおり実施されているか、議事録が全員に届いているか、決定事項が記録として残っているかを確認します。計画を作ること、実行すること、ズレを修正すること、この3点を継続できている状態が、コミュニケーションマネジメントが機能している状態です。