プロジェクトマネジメント

▶調達マネジメントとは?外注・契約の流れと失敗しない管理方法を具体例で解説

はじめに

「調達マネジメントって、なんだか難しそう」「外注するときにそこまで管理が必要なの?」と感じていませんか。

調達マネジメントとは、外部の会社や個人に仕事をお願いするときに、契約を結ぶ前の見積もり確認から、発注、作業の進み具合のチェック、そして納品物の確認までを、自分で責任を持って管理することです。たとえば、年間でいくら外部に支払っているのかすぐに答えられない、どんな契約内容で発注しているのか説明できない、発注後に「聞いていない」「そこまでは含まれていない」とトラブルになったことがある――こうした経験があるなら、感覚に任せるのではなく、契約や発注をきちんと整理する仕組みを持つことを考えたほうが安心です。

一方で、年に数回、数万円程度の単発発注だけで、内容もシンプルでトラブルが起きていない場合は、細かい管理表や手順書まで用意しなくても支障がないこともあります。

このあと、どこまで管理する必要があるのかを、順番にわかりやすく整理していきます。まずは、ご自身の外部支出の状況や、これまでの発注のやり方を思い浮かべながら読み進めてみてください。

調達マネジメントとは?

調達マネジメントとは、外部の会社や個人に仕事や物品を依頼するときに、発注の準備から契約、作業の進行管理、納品後の確認までを自社の責任で管理することを指します。単に注文するだけでなく、条件や範囲を事前に明確にし、トラブルや認識違いを防ぐ役割があります。具体的にどこまで管理するのかを、次で確認します。

発注前から納品確認までを自社でコントロールすること

外部の会社や個人に仕事を依頼する場合、見積もりの取得、発注書や契約書の作成、納期の取り決め、作業中の進捗確認、納品物の受け取り、内容や数量の検収、問題があった場合の修正依頼、請求内容の確認、支払いまでの一連の流れを自社が主導して管理します。たとえばシステム開発を外注するなら、仕様を決めて見積もりを比較し、契約で納期と成果物を明記し、途中で進み具合を確認し、完成後に動作テストを行ってから検収・支払いを行います。これらを任せきりにせず、自社の担当者が順番と基準を決めてチェックすることが調達マネジメントです。

契約条件や責任範囲まで含めて決めること

外部に業務を依頼するときは、作業内容だけでなく、納期、金額、支払い条件、成果物の内容、検収方法、修正対応の範囲、遅延時の対応、損害が出た場合の責任分担などを契約書で具体的に決めます。たとえば「○月○日までに完成版を納品」「不具合は納品後30日以内なら無償修正」「仕様外の追加作業は別料金」「納期遅延1日につき○%減額」など、トラブルになりやすい部分を事前に文章で明記します。どこまでが委託先の責任で、どこからが自社の負担になるのかを線引きしておくことが、契約条件や責任範囲まで含めて決めるという意味です。

調達マネジメントが必要な会社とは?

調達マネジメントはすべての会社に必須というわけではありませんが、外部への発注が増えるほど必要性は高まります。特に、支出の全体像が見えていない、契約の進め方が担当者ごとにばらばら、発注後に条件をめぐってトラブルが起きている場合は、仕組みとして整備しないと損失が拡大します。自社に当てはまるかどうかを、次の項目で確認してみてください。

年間の外部支出額を把握できていない会社

外注費、業務委託費、保守費、広告費、システム利用料、派遣費など、社外に支払っているお金の合計が1年間でいくらになるのかを集計できていない会社は、調達マネジメントが必要です。たとえば「どの取引先にいくら払っているか」「同じサービスを複数社と契約していないか」「毎月自動更新で支払いが続いている契約は何か」といった一覧がなく、請求書が来るたびに個別に支払っている状態です。

この場合、無駄な契約の重複や不要な支出に気づけず、コスト削減の判断もできません。まず年間の支出総額と取引先ごとの金額を把握できていない会社は、調達の管理体制を整える必要があります。

契約内容を担当者任せにしている会社

外注や業務委託の契約を、担当者個人の判断だけで締結し、上司や管理部門が内容を確認していない会社は調達マネジメントが必要です。たとえば担当者が取引先と口頭で金額や作業範囲を決めてしまい、正式な契約書がない、更新条件や解約条件を誰も把握していない、担当者が異動・退職すると契約内容が分からなくなる、といった状態です。

また、同じ業務でも担当者ごとに単価や条件がばらばらになり、会社としての基準がありません。このままでは不利な条件で契約していても気づけず、トラブル時の責任範囲も不明確になります。契約内容を個人任せにせず、会社として確認・承認・保管する仕組みを整える必要があります。

発注後に価格や納期でもめている会社

発注したあとに「聞いていた金額と違う」「追加費用が必要と言われた」「納期が遅れると言われた」などのトラブルが頻繁に起きている会社は、調達マネジメントが不足しています。たとえば見積書の内容が曖昧なまま発注している、作業範囲や成果物を文章で確定していない、納期や遅延時の対応を契約で決めていない、といった状態です。

その結果、作業途中で「これは別料金」「この部分は対象外」「予定より時間がかかる」と条件を変更され、支払い額やスケジュールが当初の想定から大きくずれます。発注前に価格の内訳、追加作業の扱い、納期、遅延時の対応まで書面で確定していない会社は、同じ問題を繰り返すため管理体制を整える必要があります。

調達マネジメントで『契約前』に確認すること

契約を結ぶ前の段階で条件が曖昧なままだと、価格の比較ができなかったり、納品後に「聞いていない」「含まれていない」といったトラブルが発生します。調達マネジメントでは、発注内容・見積もりの前提・納期や責任の所在を事前に整理し、文書として確認しておくことが重要です。契約前に最低限チェックすべき項目を、次で具体的に確認します。

発注する仕様と数量が文書で確定しているか

何をどの仕様で、いくつ発注するのかが、口頭ではなく文書(仕様書・発注書・見積書など)で確定しているかを確認します。たとえば「サイズはA4」「材質はステンレス」「機能は○○を含む」「数量は500個」「色は黒のみ」など、第三者が見ても同じ内容で発注されたと分かる状態にします。

数量についても「一式」や「必要数」ではなく、具体的な個数や範囲を明記します。ここが曖昧なまま契約すると、納品後に「思っていた内容と違う」「その作業は含まれていない」「追加費用が必要」といったトラブルになります。仕様と数量が文書で確定していることが、契約前の最低条件です。

見積もり条件が各社で同じ前提になっているか

複数の会社から見積もりを取る場合は、作業内容、数量、納期、支給品の有無、設置作業の範囲、運搬費や人件費を含むかどうかなどの前提条件がすべて同じになっているかを確認します。たとえばA社は「本体のみ」、B社は「設置・設定込み」、C社は「保守1年込み」と条件が違えば、金額だけを比較しても意味がありません。

見積依頼書を共通にし、「○月○日納品」「設置作業を含む」「運搬費込み」「追加費用なし」などの条件を統一してから提出してもらいます。前提が揃っていない見積もりで契約すると、契約後に別料金が発生したり、必要な作業が含まれていなかったりするため、各社同一条件で算出されていることを必ず確認します。

納期と責任範囲が契約書に明記されているか

いつまでに何を納品するのか、遅れた場合に誰がどこまで責任を負うのかが、契約書に具体的な日付と内容で書かれているかを確認します。たとえば「2026年3月31日までに完成版を納品」「設計・製作・設置までを委託先が実施」「検収合格をもって納品完了」「納期遅延1日につき契約金額の○%を減額」など、後から解釈が分かれない形で明記します。

また、材料の手配が遅れた場合や仕様変更があった場合の扱いも決めておきます。納期や責任範囲が曖昧なまま契約すると、遅延や不具合が発生したときに「そこまでの責任はない」と主張され、是正や補償を求めにくくなるため、契約書への明記が必須です。

調達マネジメントで『契約後』に確認すること

契約が締結された後も、発注側の管理が終わるわけではありません。実際の作業や納品が契約どおりに進んでいるかを確認しなければ、品質不足や数量違い、追加費用の発生に気づくのが遅れます。また、取引結果を記録しておくことで、次回の発注先選定や条件交渉の判断材料になります。契約後に確認すべきポイントを、次で具体的に見ていきます。

契約条件どおりに履行されているか

作業の進み方や納品内容が、契約書に書かれた条件どおりになっているかを途中段階から確認します。たとえば「月1回の進捗報告」「指定した材料の使用」「図面どおりの寸法」「約束した人数での作業」「外注の再委託禁止」など、契約で定めた内容が守られているかを記録付きでチェックします。

完成してから確認すると修正が困難になるため、工程ごとに写真・報告書・検査結果などを提出させ、条件違反があればその時点で是正を求めます。契約どおりに履行されているかを確認しないまま進めると、最終的に品質不足や仕様違いのまま受け取ることになり、追加費用や再作業が発生します。

納品物の数量と内容が発注内容と一致しているか

納品された物が、発注書や契約書に記載した数量・仕様・型番・内容と同じかを受け取り時に確認します。たとえば「500個発注したのに480個しかない」「指定した型番と異なる製品が混ざっている」「色やサイズが違う」「付属品が不足している」「図面どおりの寸法になっていない」といった不一致がないかを、現物・納品書・発注書を照合してチェックします。システムや制作物の場合も、機能一覧や仕様書と照らし合わせて、約束した機能がすべて実装されているかを確認します。一度受領してしまうと後から不足分の補填や差し替えを求めにくくなるため、数量と内容の一致確認は検収前に必ず行います。

過去の取引実績を記録し次回判断に使えているか

過去にその取引先へ発注したときの金額、納期遵守の状況、品質、不具合の有無、対応速度、追加費用の発生状況などを記録し、次回の発注先選定や価格交渉に使える状態になっているかを確認します。たとえば「予定納期より5日遅れた」「初期不良が20件発生したが3日以内に交換対応した」「見積額は80万円、最終請求は追加作業込みで95万円になった」など、具体的な数値と事実を残します。

担当者の記憶だけに頼るのではなく、共有フォルダや管理表に取引先ごとの履歴として保存し、担当者が変わっても参照できるようにします。過去の実績が残っていないと、毎回ゼロから業者選定を行うことになり、不利な条件で契約する原因になります。

調達マネジメントが必要になる取引は?

すべての外部取引で厳密な管理が必要になるわけではありませんが、金額が大きい、期間が長い、成果物の内容が複雑といった条件が重なるほど、事前の取り決めと管理が重要になります。特に、支払いが継続する契約や、納期・責任・違約時の対応を明確にしておく必要がある取引では、調達マネジメントの有無が損失の大きさを左右します。どのような取引が該当するのかを、次で確認します。

契約期間があり継続的に支払いが発生する取引

サーバー利用料、システム保守、ソフトウェアのサブスクリプション、機器のリース、清掃や警備の委託など、契約期間中は毎月または毎年自動的に支払いが発生する取引は調達管理が必要です。たとえば「月額10万円で3年契約」「1年ごとに自動更新」「解約は満了日の2か月前までに通知」などの条件があり、放置すると不要でも料金が引き落とされ続けます。

また、利用していないサービスや重複契約があっても気づきにくく、解約時に違約金が発生する場合もあります。契約期間、更新条件、解約期限、総支払額を事前に把握し、管理台帳で期限を追跡できる取引が対象です。

納期や成果物の責任範囲を事前に決める取引

システム開発、設備工事、設計業務、制作物の作成など、完成時期と納品内容を事前に決めてから発注する取引は調達管理が必要です。たとえば「6月30日までに稼働するシステムを納品」「図面作成から設置工事までを実施」「Webサイト一式を公開できる状態で引き渡し」など、成果物の範囲と納期を契約で固定します。

さらに、不具合があった場合の修正対応、検収の基準、遅延時の減額や損害賠償の扱いなど、責任の所在も明確にします。これらを決めずに発注すると、「そこまでの作業は含まれていない」「納期は目安だった」と主張され、追加費用や再作業が必要になるため、事前に責任範囲を定める取引は管理対象になります。

遅延や不備が起きた場合の違約条件を取り決める取引

納期遅れ、品質不良、仕様違い、作業ミスなどが発生した場合に、減額・やり直し・損害賠償などの対応を事前に契約で決めておく必要がある取引は調達管理が必要です。たとえば「納期遅延1日につき契約金額の1%を減額」「不良品は無償交換」「重大な不具合がある場合は検収不合格として再納品」「復旧対応は24時間以内」など、具体的な条件を文章で定めます。

工事、システム開発、製品製造、業務委託など、遅れや不備が発生すると業務停止や損失につながる案件が該当します。違約条件を決めていないと、問題が起きた際に是正や補償を求める根拠がなくなり、追加費用を払って自社で対応することになります。

調達マネジメントを始めるときに最初にやること

調達マネジメントを新たに導入する場合、いきなりルールを作るよりも、まず現状の取引状況を把握することが重要です。どの会社にいくら支払っているのか、継続契約がどれだけあるのかが分からなければ、優先順位も決められません。過去の支出データを整理することで、管理すべき取引と見直しが必要な契約が見えてきます。最初に行う具体的な作業を、次で確認します。

過去1年分の外部支出を集めて取引先ごとに合計する

直近1年間に社外へ支払った請求書や振込データをすべて集め、取引先ごとに支出額を合計します。対象は外注費、業務委託費、広告費、システム利用料、保守費、派遣費、リース料など、社外に支払ったすべての費用です。

たとえば会計ソフトや銀行の振込履歴から支払先名を抽出し、「A社 1,200万円」「B社 480万円」「C社 95万円」のように年間総額を一覧にします。部門ごとに分かれている場合は全社分を統合します。どの取引先にどれだけ支払っているかを数値で把握することで、重点的に管理すべき契約やコスト削減の対象を特定できます。

支出額の大きい順に並べる

取引先ごとに集計した年間支出額を、金額の大きい順に並べ替えます。たとえば「A社 1,200万円」「B社 480万円」「C社 95万円」「D社 30万円」のように上から順に並べることで、どの取引が会社の支出に大きく影響しているかが一目で分かります。

Excelなどで一覧を作り、降順で並べ替えるだけで構いません。上位の数社で全体支出の大半を占めているケースが多く、まずはその取引から契約条件や単価、必要性を確認します。金額の小さい取引を先に見直しても削減効果は限定的なため、支出額の大きい順に整理することが管理の出発点になります。

上位の取引から契約内容を確認する

年間支出額が大きい取引先から順に、契約書や発注書の内容を実際に確認します。具体的には、契約期間、金額、単価、支払い条件、更新の有無、解約期限、違約金、作業範囲、成果物、保守内容などが現在の運用と一致しているかをチェックします。

たとえば「自動更新で毎年継続しているが実際は利用していない」「同じサービスを別の部署でも契約している」「市場価格より高い単価のまま長年据え置きになっている」といった問題が見つかることがあります。支出額の大きい契約ほど見直しによる削減効果が大きいため、下位の取引ではなく上位から優先的に確認します。

まとめ

調達マネジメントとは、外部に仕事やサービスを依頼する際に、発注前の準備、契約条件の確定、作業中の確認、納品時の検収、支払いまでを自社の基準で管理することです。見積条件が揃っているか、仕様や数量が文書で確定しているか、納期や責任範囲が契約書に明記されているか、納品内容が発注どおりかなどを段階ごとに確認します。

特に必要になるのは、契約期間がある取引、継続的に支払いが発生する契約、成果物の範囲や責任分担を決める案件、遅延や不備時の違約条件を定める業務委託などです。年間の外部支出額を説明できない、契約内容を担当者任せにしている、発注後に価格や納期でもめた経験がある会社は、管理体制が不足しています。

実際に着手する際は、過去1年分の社外支出をすべて集めて取引先ごとに合計し、金額の大きい順に並べます。そのうえで上位の取引から契約内容、単価、更新条件、必要性を確認すれば、短時間でも大きなコスト削減とリスク低減が可能です。単発で少額の購入は通常の購買で対応し、影響の大きい契約だけを重点的に管理することが現実的な進め方です。

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