目次
はじめに
「フィードバック制御の伝達関数はどうやって求めるの?」
「閉ループ伝達関数の導出が途中で分からなくなり、式変形についていけない」と悩んだことはありませんか。
制御工学の授業や試験勉強でブロック線図を見ながら計算していると、どの信号を使って式を立てればよいのか分からなくなったり、分母に「1+GH」が現れる理由が理解できず、迷ってしまうこともありますよね。
この記事では、フィードバック制御の伝達関数の基本から、閉ループ伝達関数の求め方や導出手順まで、式変形の流れを追いながら分かりやすく説明していきます。
フィードバック制御の伝達関数とは?

フィードバック制御の伝達関数を理解するには、まず制御系がどのような構成になっているのかを把握したうえで、なぜ伝達関数という考え方が使われるのかを知ることが大切です。
ここでは、フィードバック制御系の基本的な構成と、伝達関数が制御設計や解析で用いられる理由について順を追って説明します。
フィードバック制御系の構成
フィードバック制御系は、目標値、比較器、制御器、制御対象、検出器(センサー)で構成されます。
比較器では目標値と検出器から戻ってきた出力信号を比べ、偏差を求めます。制御器はその偏差をもとに操作量を計算して制御対象へ入力します。制御対象の出力は検出器で測定され、再び比較器へ戻されることで、目標値との差を繰り返し小さくします。
このように、出力を入力側へ戻して偏差を減らす仕組みがフィードバック制御系の基本です。
伝達関数が使われる理由
伝達関数は、入力と出力の関係を数式で表し、制御系の応答を計算しやすくするために使われます。
時間変化を微分方程式のまま扱うと計算が複雑になりますが、ラプラス変換を用いて伝達関数で表すことで、加算や乗算による計算が可能になります。そのため、制御系全体の伝達関数を求めたり、各要素を組み合わせたときの出力を計算したりしやすくなります。
制御系の設計や応答解析を効率よく進めるための基本的な手法です。
フィードバック制御系のブロック線図
フィードバック制御系の伝達関数を正しく求めるには、ブロック線図の見方を理解することが欠かせません。
ここでは、ブロック線図を構成する各要素の役割と、入力から出力まで信号がどのような順序で伝わるのかを順を追って説明します。
ブロック線図の構成要素
フィードバック制御系のブロック線図は、入力、比較器、制御器、制御対象、検出器(フィードバック要素)、出力で構成されます。
入力は目標値を表し、比較器では目標値と検出器から戻る信号を比べて偏差を求めます。制御器はその偏差をもとに操作量を計算し、制御対象へ送ります。制御対象で得られた出力は検出器で測定され、比較器へ戻されます。
各要素は信号線でつながれ、矢印によって信号の流れを表します。
入力から出力までの信号の流れ
入力された目標値は比較器へ送られ、検出器から戻るフィードバック信号と比較されて偏差が求められます。
その偏差は制御器へ送られ、計算された操作量が制御対象へ入力されます。制御対象で生成された出力は外部へ出力されると同時に、検出器を通して比較器へ戻されます。
この流れを繰り返すことで、目標値との差を少しずつ小さくしていきます。
フィードバック制御の伝達関数の求め方
フィードバック制御の伝達関数は、決められた手順に沿って式を整理すると求められます。
ここでは、偏差(誤差)の式の立て方から閉ループ伝達関数の導出手順、さらにユニティフィードバックの場合の求め方まで、順を追って説明します。
ブロック線図の読み方にまだ不安がある方は、基本から確認すると式の導出が理解しやすくなります。
▶制御工学のブロック線図とは?見方・書き方・簡略化の基本をわかりやすく解説
偏差(誤差)の式を立てる
フィードバック制御の伝達関数を求めるときは、最初に偏差(誤差)の式を立てます。
負帰還の場合、偏差は入力信号 R(s) からフィードバック信号を差し引いた E(s)=R(s)−H(s)Y(s) で表されます。
ここで、E(s) は偏差、H(s) はフィードバック要素の伝達関数、Y(s) は出力信号です。
この式をもとに、各要素の伝達関数を順番に整理していきます。
閉ループ伝達関数を導出する
偏差の式と各要素の伝達関数を整理したら、出力 Y(s) を入力 R(s) だけで表せる形に変形します。
順方向の伝達関数を G(s)、フィードバック要素を H(s) とすると、閉ループ伝達関数は Y(s)/R(s)=G(s)/(1+G(s)H(s)) となります。
この式によって、フィードバック制御系全体の伝達特性を表せます。
ユニティフィードバックの場合の伝達関数
ユニティフィードバックでは、フィードバック要素の伝達関数は H(s)=1 です。
そのため、閉ループ伝達関数は Y(s)/R(s)=G(s)/(1+G(s)) と簡略化できます。式が短くなるため、伝達関数の計算や制御系の解析を進めやすくなります。
開ループ伝達関数・閉ループ伝達関数・一巡伝達関数の違い
開ループ伝達関数・閉ループ伝達関数・一巡伝達関数は名称が似ているため、違いが分かりにくいと感じる方も少なくありません。
ここでは、それぞれの伝達関数の意味と違いを順を追って説明します。
開ループ・閉ループの違いだけでなく、フィードバック制御そのものの仕組みも整理したい方はこちらも参考にしてください。
▶フィードバック制御とは?仕組み・メリット・具体例を初心者向けに解説
開ループ伝達関数とは
開ループ伝達関数とは、フィードバック経路を考慮せず、入力から出力までの順方向だけの伝達特性を表す伝達関数です。
制御器と制御対象が直列に接続されている場合は、それぞれの伝達関数を掛け合わせて求めます。
例えば、制御器を G1(s)、制御対象を G2(s) とすると、開ループ伝達関数は G(s)=G1(s)G2(s) となります。
閉ループ伝達関数とは
閉ループ伝達関数とは、フィードバック経路を含めた制御系全体の入力と出力の関係を表す伝達関数です。
入力信号を R(s)、出力信号を Y(s) とすると、閉ループ伝達関数は Y(s)/R(s) で表されます。
負帰還制御系では、順方向の伝達関数を G(s)、フィードバック要素を H(s) とした場合、Y(s)/R(s)=G(s)/(1+G(s)H(s)) となります。
一巡伝達関数とは
一巡伝達関数とは、信号がフィードバック経路を1周するときの伝達特性を表す伝達関数です。
順方向の伝達関数を G(s)、フィードバック要素を H(s) とすると、一巡伝達関数は G(s)H(s) で表されます。
閉ループ伝達関数を求める際の基本となる伝達関数で、負帰還制御系では分母の 1+G(s)H(s) に含まれる G(s)H(s) が一巡伝達関数に当たります。
フィードバック制御の伝達関数の計算例
フィードバック制御の伝達関数は、実際に式を立てて計算することで理解しやすくなります。
ここでは、具体例を使って伝達関数を求める手順を確認し、求めた計算結果をどのように読み取ればよいのかを順を追って説明します。
伝達関数の計算に慣れてきたら、制御系の安定性をどのように判断するのかも確認してみましょう。
▶制御系の安定判別とは?極・特性方程式・ラウス判別法をわかりやすく解説
具体例|伝達関数を求める手順
順方向の伝達関数を G(s)=2/(s+3)、フィードバック要素を H(s)=1 とします。
負帰還制御系の閉ループ伝達関数は Y(s)/R(s)=G(s)/(1+G(s)H(s)) で求めます。
これらを代入すると Y(s)/R(s)=(2/(s+3))/(1+2/(s+3)) となります。分母を通分して整理すると、最終的に Y(s)/R(s)=2/(s+5) が得られます。
計算結果の見方
求めた閉ループ伝達関数が Y(s)/R(s)=2/(s+5) の場合、分母の s+5 から極は s=-5 と分かります。
極が複素平面の左半分にあるため、この制御系は安定です。
また、一次遅れ系なので時定数は 1/5=0.2秒、直流ゲインは 2/5=0.4 となります。そのため、入力が1のステップ信号なら、出力は最終的に 0.4 に近づきます。
フィードバック制御の伝達関数でよくある間違い
フィードバック制御の伝達関数を学び始めると、名称や式が似ていることから混同しやすいポイントがいくつかあります。
ここでは、特に混同しやすい代表的なポイントを順を追って説明します。
開ループ伝達関数と閉ループ伝達関数を混同する
開ループ伝達関数と閉ループ伝達関数は混同しやすいポイントです。
開ループ伝達関数はフィードバック経路を含まない順方向だけの伝達関数で、G(s) で表されます。
一方、負帰還制御系の閉ループ伝達関数は G(s)/(1+G(s)H(s)) です。問題でどちらを求めるのかを確認してから式を立てるようにしましょう。
一巡伝達関数との違いを混同する
一巡伝達関数と閉ループ伝達関数を同じものと考えてしまうこともよくあります。
一巡伝達関数は G(s)H(s) で表され、順方向とフィードバック経路を1周したときの伝達特性を示します。一方、閉ループ伝達関数は G(s)/(1+G(s)H(s)) で表され、入力と出力の関係を示す式です。
一巡伝達関数は、閉ループ伝達関数を求めるために使う値と覚えておくと区別しやすくなります。
まとめ
フィードバック制御の伝達関数は、入力と出力の関係を数式で表し、制御系全体の動きを理解するための基本となる考え方です。
ブロック線図の構成や信号の流れを押さえ、偏差(誤差)の式から順番に整理すると、閉ループ伝達関数を無理なく導き出せます。
また、開ループ伝達関数・閉ループ伝達関数・一巡伝達関数は似た名称ですが、それぞれ役割が異なります。
どの伝達関数を求めるのかを意識して式を立てることが、計算ミスを防ぐポイントです。
公式を暗記するだけでなく、「なぜこの式になるのか」をブロック線図と結び付けて理解すると、応用問題にも対応しやすくなります。
まずはユニティフィードバック系の計算に慣れ、少しずつさまざまな制御系の問題に取り組んで理解を深めていきましょう。