目次
はじめに:ゲーム開発のPMが難しい理由
ゲーム開発におけるプロジェクトマネジメント(PM)は、他のIT分野以上に難易度が高いと言われています。なぜなら、ゲームというプロダクトは、初期アイデアから完成、運用までの間に「何を作るか」や「面白さ」「価値」といった基準が、状況やユーザーの反応、流行によって大きく変わりやすい特徴があるからです。
たとえば、最初はアクションゲームを想定していたのに、途中でパズル要素を追加することになった、などは珍しくありません。こうした方針転換が頻繁に起こります。また、リリース後もユーザーの反応を見ながら新たな機能追加やバランス調整を続ける「運用」が重要となるため、一度きりの完成で終わらないのがゲーム開発の特徴です。
そのためには、開発の全工程をしっかり理解し、どの時点でどんな判断や優先順位付けが必要かを見極める力が求められます。また、イレギュラーな事態や多様なメンバーの調整、常に変わるリスクへの対応も不可欠です。
一方で、IT業界全体で確立されたプロジェクトマネジメントの知識や手法—たとえば進行管理やリスク管理、情報共有のしくみ—は、ゲーム開発にもとても役立ちます。ウォーターフォール型やアジャイル型という代表的な進め方に、現場独自の工夫を組み合わせることで、より柔軟で確かなマネジメントが実現できます。
ゲーム開発におけるPMの世界に興味がある方や、これから挑戦したい方へ。次の章では「ゲーム開発プロジェクト管理の基本がわかる一冊」についてご紹介します。
セクション1:ゲーム開発プロジェクト管理の基本がわかる一冊
ゲーム開発におけるプロジェクト管理の全体像
本章では、ゲームの初期開発プロジェクトをひとつの事例として、ゲーム開発ならではの管理のポイントをご紹介します。ゲーム作りは映画や一般的なソフトウェア開発よりも「目的が途中で変わる」「正解が最後までわからない」といった独特の特徴があります。たとえば、開発初期に盛り上がったアイデアが途中で見直されることや、ユーザーの声によって完成間際に大幅修正が入ることも少なくありません。
プロジェクト構造と流れ
まず、ゲーム開発プロジェクトは大きく「企画」「開発」「運用」の3つの工程に分かれます。
- 企画段階ではアイデアを形にし、どこまでを実現するか(=スコープ)を定めます。
- 開発工程では、プログラムやデザインなど各専門家チームが協力し合います。
- 運用に入ると、サービスを提供しながら、新たな改善やアップデートを重ねていきます。
この流れの中で、途中でゲーム内容や方向性が揺れることを前提に計画し直す力、つまり「柔軟性」と「判断力」が強く求められます。
重要要素の選定と意思決定
ゲーム開発では、限られた予算や時間の中で、どれを優先すべきなのかをチームで決めていく必要があります。たとえば「どの画面を一番かっこよくするか」「遊びの部分をどこまで深くするか」など、選択と集中がプロジェクト成功のカギです。こうしたシーンで役立つのが、みんなが納得できる「意思決定のフレーム(考え方の型)」です。このフレームがあると、無駄な議論を減らし、本当に重要な選択にエネルギーを注げます。
リスク管理とチーム運営
どんなに慎重に進めても、途中で問題やトラブルは発生します。そのため、事前に「どんなリスクがありそうか」「発生したとき誰がどう対処するか」を想定しておくことが効果的です。また、ゲーム開発は専門家集団のチーム作業です。企画職・プログラマー・デザイナーなど、異なる立場の人たちが協力できるような意見交換や情報共有のルールも大切です。
運用工程の管理手法
ゲームが完成し“リリース”されたあとも、運用業務という大事な仕事が続きます。たとえば新しいイベントの企画や不具合修正など、日々の課題が絶えません。ですので、適切な計画やチーム内の情報共有など、運用フェーズでもプロジェクト管理手法が活きてきます。
このように、プロジェクト管理の基本知識を身につけることは、ゲーム業界のあらゆる職種で役に立ちます。何より、共通言語ができることで意思疎通がスムーズになり、ゲームならではの困難を乗り越える力となります。
次の章では、実務で使えるITプロジェクトマネジメント研修がどのようにゲーム開発へ応用できるのかをご紹介します。
セクション2:実務で使えるITプロジェクトマネジメント研修(ゲーム開発に応用可能)
実践力を磨く研修が今、注目される理由
前章では、ゲーム開発のためのプロジェクト管理の基本書として、体系的な知識を身につける重要性を紹介しました。今回は、実際の現場で使えるスキルを身につけるためのITプロジェクトマネジメント研修についてまとめます。
ケースワーク中心で「使える力」を身につける
リカレントの「ITプロジェクトマネジメント研修」では、ただ知識を学ぶだけでなく、グループでのワークや架空のプロジェクトをテーマとした実践的なケーススタディに取り組みます。たとえば、開発初期に不明確だった要望が追加された場合、どのようにチームで対応するかなど、実際よくある課題に向き合う内容です。また、過去の失敗例を取り上げてディスカッションを行い、改善策やベストプラクティスを考えます。こうした振り返りを通じて、本当に現場で役立つ力を育てます。
この研修は、ウォーターフォール型(計画通りに進める伝統的な手法)とアジャイル型(柔軟な変更対応ができる新しい手法)の両方に対応しています。学ぶ段階や自分の立場、ゲーム開発の規模に合わせて選べるのも魅力です。ゲーム分野では、要件変更がよく起きるのでアジャイル編が特に役立ちますし、大規模ゲームの制作では、ウォーターフォールのガバナンス強化が重要な場合もあります。
PMの役割を体系的に理解
パーソルの「成果が出る研修プログラム」では、プロジェクトマネージャーに必要な "テクニカル(技術力)"、"リーダーシップ(人をまとめる力)"、"ストラテジー(戦略性)" の3つの視点をバランスよく学べます。例えば、プロジェクトの計画づくり、人員の配置や指示の仕方、進行状況やリスクの管理など、実際にPMとして必要なことが体系的に整理されています。ゲーム開発では、チームの多様性や独自のクリエイティブ性が問われるため、こうした幅広いスキルが特に重要になります。
短期間で「基礎から実践」へ
SmileWayの「超実践型 ITプロジェクトマネジメント」は、動画で学ぶeラーニング講座です。ウォーターフォールとアジャイル双方の基礎を短時間で身につけることができ、過去の失敗談や成功事例も取り入れながら、今すぐ現場で使えるノウハウを学びます。受講は1人あたり33,000円、標準5時間で、忙しいプロジェクト中でもスキルアップしやすい内容です。特に、リリース直前のスケジュール逼迫時のような緊急リスキリングにも適しています。
次の章では、「無料から始めるPMスキル」の内容についてご紹介します。
セクション3:無料から始めるPMスキル
無料講座で学び始めるメリット
プロジェクトマネジメント(PM)の基礎を学ぶには、まず「無料講座」から始めるのがおすすめです。アイシンクが提供する「無料おすすめ講座3選」は、初心者でもすぐに役立つ内容を分かりやすく解説しています。そのため、これからPMに挑戦したい方や、自分の知識を復習したい方にぴったりです。
超入門講座で概要をすばやく理解
1日でPMの概要をつかめる「プロジェクトマネジメント超入門講座」は、プロジェクト推進の流れや関わる人たちの役割、スケジュールの考え方など、基本中の基本を丁寧に紹介します。たとえば、ゲーム開発現場では、「なぜスケジュールが遅れるのか」「どのように優先順位を決めるのか」といった疑問に、具体的な事例をもとに答えます。これにより、新任リーダーもすぐに現場で生かせる知識が手に入ります。
用語理解で円滑なコミュニケーション
PMには幅広い専門用語が存在しますが、「用語理解講座」を受講すると、自分だけでなくチーム全体のコミュニケーションがスムーズになります。例えば「マイルストーン」「リスク管理」「ステークホルダー」など、よく使う言葉の意味がわかることで、話し合いに無駄な時間をかけずに済みます。特にゲーム開発では、複数の職種の人が集まるため、共通言語の理解がとても大事です。
PMP対策講座でスキルの証明も
さらに、高度なPM資格として注目されるのがPMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)です。アイシンクの無料PMP試験対策講座では、短期間で重要ポイントを学べるだけでなく、実務に役立つ知識も身につきます。資格取得への興味が湧いた場合は、有料の本格コースに進む道も用意されています。
学習導線で無理なくステップアップ
無料講座で知識や興味を深めた後、自分に合った有料講座へ進める仕組みもメリットです。いきなり高額の研修に申し込むのは不安ですが、まずは無料で「どんな学びか」を体験できるため、安心感があります。
ゲーム開発現場での活かし方
ゲーム開発では、特に新任リーダーが基礎から学ぶ際に、こうした無料講座が役立ちます。用語や考え方を統一できれば、企画・デザイン・プログラムなど異なる職種同士の連携も強固になります。
次の章に記載するタイトル:新任リーダーにやさしい“ゲーム仕立て”の学び
セクション4:新任リーダーにやさしい“ゲーム仕立て”の学び
ゲームの世界観で楽しく学ぶリーダー研修
新しくリーダーになるとき、不安や戸惑いを感じる方も多いのではないでしょうか。富士通ラーニングメディアのコラムでは、そんな新任リーダーの方々が楽しく学べるように、よく知られたロールプレイングゲーム(RPG)のキャラクターに例えてチームをまとめるコツを紹介しています。例えば、リーダーを“勇者”、バックアップするメンバーを“僧侶”や“魔法使い”に見立てて説明します。こうしたメタファーを使うことで、難しい理論や専門用語を使わずに、直感的にリーダーの役割や周囲の協力の大切さが理解しやすくなっています。
初心者から経験者まで選べる幅広い内容
こちらの研修プログラムは、システム開発の基礎知識がなくても始められる初心者向けから、実際にリーダー経験のある方が次のステップへ進むための応用編まで、幅広い内容をそろえています。ゲームの仕立てなので、初めて学ぶ方でも楽しく理解しながら実践に移しやすいのが特徴です。また、特定の業種・職種に限定していないため、例えばゲーム開発以外のプロジェクトでも基本的なチーム運営の原則を身につけられます。
非PM職種も参加しやすい理由
管理職やプロジェクトマネージャーだけでなく、デザイナーやプログラマーなど現場スタッフも一緒に学べるのが、このプログラムの魅力です。RPGの冒険のように、それぞれの役割や持ち味を活かしながら、どうすればチームでゴールを目指せるのかを体感的に理解できます。難しそうに思われがちなプロジェクト管理も、親しみやすいゲームの世界観で学ぶことで、参加者の意欲や学びも深まりやすくなります。
次の章では、「ITマネジメントの実践・オーダーメイド研修」について解説します。
セクション5:ITマネジメントの実践・オーダーメイド研修
オーダーメイド型研修の特徴
ゲーム開発のプロジェクトマネジメントでは、定型的な知識だけでなく、現場特有の課題解決力が求められます。秀玄舎のオーダーメイド型研修は、現役のコンサルタントが企業ごとの事業内容や開発状況に合わせてカリキュラムを設計するのが特徴です。たとえば、スマホゲームのライブ運営や、頻繁なアップデートが必要なタイトルには、それぞれに適した研修内容を用意します。
研修の進め方
受講者は会場に集まり、座学やワークショップを通じて実際のプロジェクト管理に近い形でスキルを磨きます。ハンズオン(実際に手を動かす)形式なので、知識を学ぶだけでなく、すぐに実務へ活かせる点が好評です。リアルなビジネス課題を題材とし、現場ですぐ役立つ経験を得られます。
効果の見える化
研修を終えた後は、独自のレポートで個人やチームの成長が可視化されます。これにより、参加者各自がどこまで力をつけたか、次の課題は何かなどが分かりやすくなります。また、企業側も受講者の成長度合いを確認できるので、研修の効果を実感しやすいです。
タイトル別ニーズへの対応
オンライン運用や定期イベント、コンテンツ追加が多いタイトルにも対応できる内容となっています。プロジェクトの事情ごとに、チームビルディングの方法やスケジュール調整のコツ、トラブル発生時の柔軟な対応法など、実践的なテクニックを学べます。
次の章に記載するタイトル:ゲーム開発スクールのPM接続点
セクション6:ゲーム開発スクールのPM接続点
ゲーム開発スクールで学べる実践的スキル
近年のゲーム開発スクールでは、実践を重視したカリキュラムが特徴です。たとえば、GitやGitHubを使ったバージョン管理、Slackでのチームコミュニケーション、タスク管理ツールなどをまとめて体験できます。これらのツールの使い方を授業内で繰り返し練習することで、卒業後すぐに現場で対応できる土台ができます。
PM視点で役立つポイント
プロジェクトマネジメント(PM)に必要な土台として、「情報共有」「変更管理」「イシュー管理」といった基礎力を強化できる点が大きなメリットです。情報共有の徹底や、メンバーのタスク・進捗の見える化といったPM業務に欠かせない力が、ツール活用を通じて自然と身につきます。
本格的PMスキルとの補完性
ただし、これらのスクールは純粋なPM講座ではありません。開発現場のリアルな流れを体感できますが、「プロジェクト全体のプロセス管理」「リスクやステークホルダーとの調整」といった総合的なPMスキルはカバーしきれない場合もあります。そのため、PM向けの専門講座や研修と組み合わせて学ぶことで、より強固なマネジメント力を身につけられます。
次の章に記載するタイトル:目的別・レベル別の講座選びガイド
セクション7:目的別・レベル別の講座選びガイド
入門:共通知識の獲得・用語の統一
ゲーム開発プロジェクト管理を初めて学ぶ方は、まず無料講座や超入門講座がおすすめです。これらはプロジェクトマネジメントの用語や基本的な流れを短時間で学べるのが特徴です。たとえば「PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)」の概要講座では、現場でよく使う言葉や管理のステップを体系的に理解できます。いきなり専門用語だらけで戸惑わないよう、例えば「スケジュール=開発のおおまかな日程表」「リスク=失敗しないための注意ポイント」など、身近な言葉に置き換えて学ぶ姿勢も大切です。
ゲームならではの“巻き込み力”を活かす基礎講座
入門段階では、ゲーム開発の世界観に合わせたRPGのような比喩を使うコラムや教材も役立ちます。例えば「クエスト(タスク管理)」「パーティ編成(チーム体制)」といった親しみやすいイメージがあるため、開発メンバー全体が共通の認識を持ちやすくなります。非PM職種のスタッフも巻き込みながら、基礎研修で共通土台を作りましょう。
実践編:プロセス設計と計画・統制
より実践的な内容としては、ワークフロー(WF)やアジャイルといった開発手法に対応したITプロジェクトマネジメント研修がおすすめです。実際のケースに沿ったワークや事例研究を通じて、計画作りや振り返りの力を磨くことができます。また短期間で受講できるeラーニングで、直面している問題(ボトルネック)解決スキルを素早く学ぶのも効率的です。
ゲーム開発特化:不確実性と意思決定
ゲーム開発は「最初に全体像が見えない」「途中で仕様が変わる」など特有の不確実性があります。こうした浮動的な目的に柔軟に対応するための管理観を本やケーススタディで養うと良いでしょう。加えて、自社タイトルや現場の事情を反映したオーダーメイド研修を活用すると、よりピンポイントな課題解決につながります。
補助スキル:チーム開発基盤の整備
プロジェクト管理が機能するためには現場の基盤作りも大切です。たとえばスクールでGitやGitHub、Slackなどの使い方を学ぶことで、チーム全体にスムーズな連携が生まれます。これらのツール運用が定着すれば、どんなPM施策も現場で活きるようになります。
次の章に記載するタイトル:「すぐに活かせる実装ポイント(ゲーム開発の現場視点)」
セクション8:すぐに活かせる実装ポイント(ゲーム開発の現場視点)
マイルストンごとの“価値仮説”更新と意思決定ログの可視化
ゲーム開発では、途中で仕様が変わることがよくあります。こうした変化に対応するために、マイルストンごとに「現時点で考える価値は何か」をチームで確認することが重要です。その際、なぜその判断をしたか、どんな議論があったかを記録として残す「Decision Log(意思決定ログ)」を導入すると、後から振り返ることができ、トラブル回避に役立ちます。
スコープ変更の経済性評価を習慣化
新しいアイデアや仕様変更が出た場合、その変更が本当に価値を生むのかを、労力・コスト・時間の観点から冷静に判断するクセをつけましょう。たとえば、「この機能を追加することで何人ぐらい新規ユーザーが増えるのか」や「開発期間がどれだけ延びるのか」といった点を具体的に考えていくと、無理のない範囲で進めやすくなります。
長期・短期計画の使い分けと複合手法
ゲーム開発は、数ヶ月~数年の大きな計画(ロードマップ)と、1~2週間単位の細かい作業(スプリントや短期ワークパッケージ)を使い分けることが効果的です。長い目で見た方向性をロードマップで決め、現場では短期の目標に集中します。ウォーターフォール方式(順番に進める方法)と、アジャイル方式(柔軟に見直す方法)をバランスよく使うことで、現実的で柔軟な進行が可能です。
三位一体で管理する進捗・品質・リスク
プロジェクトで大切な3つの要素として「進捗」「品質」「リスク」を同時に見ていくことがポイントです。たとえば、「Done(完了)の定義」をチームで決めて明確にし、品質をチェックする日をあらかじめ決めておきます。また、リスクとなりそうな問題は早い段階でチーム全体に共有し、週に1回程度、互いの成果物を点検する「クロスレビュー会議」を行うことで、問題を早く見つけて防ぐことができます。
失敗事例の共有と知見の資産化
うまくいかなかった事例も大事な経験です。プロジェクトの振り返りを定期的に実施し、どんな失敗があったか、なぜ起きたかをチームで話し合うことで、同じ失敗を繰り返しにくくなります。これらを記録して蓄積することで、組織全体の知恵として次のプロジェクトに活かせます。