リーダーシップとマネジメントスキル

建設プロジェクト成功の秘訣を徹底解説!実務と管理のポイント全公開

建設プロジェクトマネジメント入門:5つのフェーズと実務の要点

建設プロジェクトマネジメント(PM)とは、建物やインフラなどの建設プロジェクトを成功に導くための体系的な管理手法です。一般的なプロジェクトマネジメントの考え方を建設業に応用し、計画から完成までをスムーズに進めるための枠組みが構築されています。ここでは、PMBOK(プロジェクトマネジメントの国際標準)の5つのフェーズに沿って、建設分野で重要となるポイントをご紹介します。

1. 立ち上げフェーズ

建設プロジェクトの第一歩は「立ち上げ」です。この段階でビジネスケース(なぜこの建築が必要か、事業として成立するか)を明確にし、関係者の意見をまとめます。たとえば、新しい学校の建設であれば、地元住民、教育委員会、予算担当者など多くの関係者が存在します。次に「プロジェクト憲章」と呼ばれる、プロジェクトの目的・範囲・責任などをまとめた文書を作成します。この文書が、全体の土台になります。

2. 計画フェーズ

計画段階では、建物をどのようにつくるのかを細かく決めていきます。スケジュール(工期)、予算、品質基準などのほかに、建設独特の設計や資材調達、安全対策もここで詳細に検討します。たとえばマンション建設なら、設計図の作成や必要な建材の見積もり、安全用具の準備が該当します。また、計画は一度立てて終わりではありません。予期しない事態が起きた場合のリスクや、関係者間の情報共有(コミュニケーション計画)も併せて考えておきます。

3. 実行フェーズ

このフェーズから現場が本格的に動き出します。設計通りに施工が進められるよう調整し、必要に応じて資材の発注や作業員の手配をします。建設現場では、天候や予期しないトラブルによって、予定が大きく変わることも少なくありません。そのため、変更があればすぐに判断し、関係者と連携して進めます。加えて、品質の確認や安全管理も随時実施します。

4. 監視・管理フェーズ

実行中は「計画通りに進んでいるか?」を常にチェックします。予算の超過、スケジュールの遅れ、品質の問題などが発生した場合、速やかに対応策を考えるのがポイントです。また、現場で起きた問題を文書化し、今後のプロジェクトに生かすことも大切です。

5. 終結フェーズ

完成後は、建物を発注者に引き渡す「終結」が待っています。工事に使った図面や資料を整理し、今後のメンテナンスや運用に役立つよう引渡書類をまとめます。また、今回のプロジェクトで得られた反省や成功事例を記録し、次のプロジェクトに活用できる形で知識を蓄積するのも、建設PMの重要な役割です。

このように、建設プロジェクトマネジメントは5つの段階を踏んで、計画から完成まで一貫して管理するプロセスです。次回は、「CM方式とPMの違い:最上流から関与し調整力を最大化」についてご紹介します。

CM方式とPMの違い:最上流から関与し調整力を最大化

建設プロジェクトのマネジメント方法として、CM(コンストラクション・マネジメント)方式とPM(プロジェクトマネジメント)はしばしば混同されがちですが、実際には役割や考え方に明確な違いがあります。ここではそれぞれの特徴や違い、現場での活用イメージについてわかりやすくご説明します。

CM方式とは何か

CM方式は、建設プロジェクトにおいて施主(発注者)の立場で、計画段階から事業完成・運用まで、プロジェクト全体の管理・調整を担う手法です。CMの特徴は、第三者の立場で細かな調整を行う点です。たとえば、設計をどのように進めるか、コストや工期をどうやって抑えるか、品質をどう確保するかについて、設計者・施工者・施主それぞれの意見や要望を調整しながら、最適な方向へ導きます。

具体例として、大型ショッピングセンターの建設現場では、店舗オーナー・工事業者・設計事務所・管理会社など様々な立場の人がかかわります。CMはそれぞれの窓口となり、現場の意見を集約して全体をスムーズに動かします。

PMとは何か

一方、PM(プロジェクトマネジメント)は、建設業界に限らずあらゆる業界で活用するマネジメントの考え方です。PMでは、プロジェクトを計画、実行、監視、終了といった5つの過程(プロセス)に分けて進めていきます。この進め方はPMBOKというグローバルな知識体系に基づいています。

つまりPMは「仕事全体の流れやルールを決める知識の箱」であり、CMはそれを建設現場で具体的に使うための実務的な役割分担や運用モデル、と考えると混乱しにくくなります。

CMとPMの使い分け

建設プロジェクトの現場では、CM方式のフロー(企画→計画→設計→発注・契約→工事→運用)の一つ一つの段階に、PMの5つのプロセス(立ち上げ→計画→実行→監視・コントロール→終結)を重ね合わせて活用するケースが増えています。たとえば設計段階でも、詳細な計画や取得データの管理、関係者への説明や調整が必要です。このとき、CMの立場で細かな現場調整をしつつ、PMの知識体系を道しるべに使うことで、プロジェクト全体の効率や品質、コスト最適化を目指します。

こうした役回りを通じて、CMとPMそれぞれの良い面を組み合わせ、現場にとって「動きやすく・効率的で・失敗の少ない」進め方が可能になります。

次は「建設PMの人材市場:人手不足下でマネジメントスキルの価値が上昇」について解説します。

建設PMの人材市場:人手不足下でマネジメントスキルの価値が上昇

近年、建設業界では深刻な人手不足が続いています。その影響で、建設プロジェクトマネージャー(PM)の人材市場が大きく変化しています。具体的には、「建設 プロジェクト管理」や「施工管理者」といったキーワードの検索数が増加し、特に資格を持つ施工管理技士へのニーズが高まっています。

実際に、プロジェクトマネージャー経験者のレジュメ(職務経歴書)検索数も、3年前と比べて約2倍に増えているという調査結果があります。これは企業側が、役職や肩書き以上に、実際のプロジェクトを動かすマネジメントスキルに強い関心を持ち始めていることを示しています。

従来は「部長」「課長」といった役職が重視される傾向にありました。しかし、今はプロジェクトの成功に直結する実践的なスキルや、プロジェクトを円滑に進める調整力が求められる時代です。特に、1級施工管理技士といった国家資格や、実際の現場での経験値、他業種で普及している管理ツールの運用経験などが評価されやすくなっています。

そのため、建設PMとして転職や昇進を目指す方は、自分のスキルを「見える化」することが重要です。具体的には、取得資格の明記、担当したプロジェクトの規模や具体的な成果、使用ツールの一覧などを整理しましょう。こうした情報が採用や社内配置、昇進において、他の候補者との差別化ポイントになります。

次の章では、ナレッジマネジメントで現場力を資産化:暗黙知の共有設計について解説します。

ナレッジマネジメントで現場力を資産化:暗黙知の共有設計

建設現場における暗黙知の壁

建設プロジェクトでは、ベテラン技術者の経験や現場独自の工夫が、口伝えや個人の記憶に頼ることが多いです。これら暗黙知は新人や他拠点のスタッフに伝わりにくく、属人化が課題となっています。そこで、現場で実際に役立ったノウハウや失敗事例を組織の資産として、誰もが使える形に落とし込むナレッジマネジメントが重要です。

ナレッジマネジメントとは何か?

ナレッジマネジメントとは、技能や知見など価値ある情報を記録し、組織内で共有・活用できるようにする仕組みのことです。例えば、「過去の事故事例を一覧でまとめる」「効率的な手順を写真付きで解説する」など、ベストプラクティスを集約します。これにより、同じ失敗を繰り返すリスクを減らし、安全で効率的な作業を後輩に継承できます。

共有の仕組み作り

効果的なナレッジ共有には、現場目線の設計が不可欠です。たとえば、専門知を持つ人同士が直接相談できる「専門知ネット型」や、現場で生まれた優れた手法を社内全体で発信し合う「ベストプラクティス共有型」が、建設業と相性が良いといわれています。日報や作業報告書、写真・動画を使った記録・共有も推奨されます。

システム選定のポイント

ナレッジを資産化するには、共有システムの選定が肝心です。建設業の場合は、現場作業の合間にも使えるか(操作性)、スマホやタブレットで扱えるか(モバイル対応)、工事写真や図面の管理がしやすいか(特化機能)がポイントです。また、導入前には「どこまで共有するか」「何を最重視するか(安全?効率?)」など、運用ルールを明確にしておくことが成功のカギとなります。

次章では、建設PMの成功要件と実務で使えるチェックリストについてご紹介します。

実務に落とすチェックリスト:建設PMの成功要件(フェーズ別)

1. 立ち上げフェーズ:計画の基盤づくり

  • プロジェクト憲章(ゴールや基本方針)とビジネスケース(費用対効果、事業目的)の整合性を確認します。
  • 主要なステークホルダー(施主・設計者・行政など)から同意を得ることが大切です。リーダー自ら認識合わせの場を設けましょう。
  • プロジェクト全体の成功基準(納期・予算・品質の指標)を明確に定めて共有します。
  • 例:「完成後6か月以内に運用開始」「予算内に収める」「法令に適合」など、具体的な指標を書き出して見える化しましょう。

2. 計画フェーズ:具体化と見通し

  • 全体を監督できる『統合管理計画書』を作成します。これがプロジェクトのガイド役になります。
  • 設計スケジュールと他工程(調達・施工など)の計画に矛盾がないか設計者とよく話し合いましょう。
  • 許認可取得に必要な工程や事務手続きの日程も組み込んで、抜け漏れを防止します。
  • 例:「建築確認申請の提出日を施工計画と連動させてチェックリスト化」など。

3. 実行フェーズ:現場対応力

  • 調達(材料・工事)や契約の内容を把握し、抜けや遅れがないかマメに進捗を追いましょう。
  • 設計変更が発生した場合は、影響をすぐ検討し関係者に説明できる体制を整えます。
  • 品質検査を定期的に実施し、不良部分は是正します。現場で写真記録も忘れず行いましょう。
  • サブコン(下請業者)とも密にコミュニケーションを取り、手順書や予定をこまめに確認します。

4. 監視・コントロールフェーズ:ずれを見逃さない

  • 工程の進捗やコストが計画と比べてどうか、週次で確認しましょう。
  • リスク台帳(注意が必要な事項リスト)を定期的に見直し、対応策をアップデートします。
  • 設計や工程への変更管理は専用の「変更管理ボード」などを使い、全員が状況共有できるようにします。
  • 会議や発信の頻度(例:週1回の進捗会議、日次の現場確認ミーティングなど)も事前に決めておくと、情報の行き違いを防げます。

5. 終結フェーズ:成果と学びの整理

  • 最終検査を行い、完了報告や精算業務をしっかり終わらせます。
  • 竣工図書(建物の記録や図面)、各種引渡し資料をまとめて施主へ渡します。
  • プロジェクトの振り返りを行い、学んだ教訓や改善点をナレッジ資料として社内で共有します。

次の章では「役割と組織:PM、CM、施工管理の連携ポイント」についてご紹介します。

役割と組織:PM、CM、施工管理の連携ポイント

建設プロジェクトを成功させるには、プロジェクトマネージャー(PM)、コンストラクションマネージャー(CM)、そして施工管理の三者がうまく連携することが不可欠です。それぞれの役割と組織的な協力について、具体的に解説します。

PMの役割と連携のポイント

PM(プロジェクトマネージャー)は、全体の統合役として機能します。工事全体の目標や予算、スケジュール、品質などを管理し、プロジェクトの意思決定を主導します。例えば、設計や予算に変更が発生した場合、PMが最終判断を行い、方向性を示します。

連携面では、CMや施工管理からの現場状況の報告や提案を受け入れ、計画に反映することが重要です。現場で問題が起きた際は、PMが情報をまとめ、リスクとコストのバランスを見ながら調整を行います。

CMの役割と連携のポイント

CM(コンストラクションマネージャー)は、主に発注者をサポートし、設計・施工チームや材料調達などの調整を担います。例えば、設計段階で「この材料の方がコストを抑えられる」といった提案をし、そのうえで安全や品質を維持できるかを見極めます。

CMは、PMと綿密に情報を共有し、現場での実行計画や契約調整が円滑に進むよう橋渡し役となります。進捗・品質・安全管理で問題が発生した際、CMが早めにキャッチし解決策をPMや現場に提案することが連携の要です。

施工管理の役割と連携のポイント

施工管理は“現場の実行部隊”として、CMやPMが立てた計画を現場で実施し、状況を詳細に記録・報告します。具体的には、作業進捗、安全パトロール、施工中のトラブル対応などです。

施工管理が現場で直面した課題や改善点を迅速にCM・PMへフィードバックすると、上流の計画修正やノウハウ蓄積に役立ちます。情報の流れを止めず、“現場から組織へ”そして“組織から現場へ”の双方向連携が成功の鍵です。


次の章に記載するタイトル:ツール・フレームワークの活用

ツール・フレームワークの活用

建設プロジェクトマネジメントの現場では、複雑な工程や多数の関係者を円滑にまとめるために、ツールやフレームワークの活用が欠かせません。代表的なフレームワークに「PMBOK(ピンボック)」があります。PMBOKはプロジェクトの流れ(プロセス)や管理すべき項目(知識エリア)を網羅しており、多角的に業務を把握できます。

PMBOKの活用方法

PMBOKでは「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」という5つのプロセスと、範囲・コスト・品質・コミュニケーションなど10分野の知識エリアが定義されています。これを建設分野に落としこむと、設計や資材調達、行政への許認可申請、安全対策まで網羅的に管理可能になります。抜け漏れ防止や、リスク低減に大きく貢献します。

実務のための主要ツール

建設PMの現場では、以下のような具体的なツールが使われています。
- WBS(作業分解構成図):全体を細かい作業に分解し、抜けや重複を防ぐものです。現場の進捗やスケジュールを見える化します。
- EVM(出来高管理):予算・進捗・実績を定量的に比較でき、工事のコスト管理に役立ちます。
- RFI管理:設計や工事内容について確認が必要な事項(“問合せ”)をリスト化し、対応状況を見える化します。
- 変更要求ログ:図面や仕様が変更された際は必ず記録・承認を残すことで、トラブルや認識齟齬を防ぎます。
- サブコン(下請業者)出来高管理:複数の業者の進捗を個別に把握し、支払い・品質確認を効率化します。
- 品質検査チェックリスト:施工ごとに実施する検査項目を標準化して管理し、不良施工を予防します。
- リスク台帳:発生しそうなリスクと、その対策・責任者・進捗を一覧で管理します。
- 竣工書類テンプレート:役所提出や顧客納品のために必要な書類をあらかじめ標準化します。

ナレッジ基盤の構築と活用

現場で得た知見は、すぐに資産化することが重要です。最近はモバイル端末を使い、現場写真や検査記録、作業の改善点をリアルタイムに記録・共有できるようになっています。現場経験者のノウハウや教訓は、"ベストプラクティス集"として整理し、必要な時に誰でも参照できます。また、専門家同士で情報共有するネットワークも運用されており、困ったときに相談しやすい体制づくりも進められています。

次の章に記載するタイトル:キャリア・採用の観点

キャリア・採用の観点

建設プロジェクトマネジメントにおいて求められる人材像は、単に現場経験が豊富なだけではありません。計画力や調整能力、交渉力、契約知識、コスト管理といった、プロジェクト全体を俯瞰して動かすための広いスキルセットが不可欠です。また、安全や品質に関する基準や法律への理解も現場を任せるうえで大きなポイントとなります。近年はデジタルツールの活用も業務効率化の鍵になっており、新しい技術やツールへの適応力が歓迎されています。

例えば、現場のスケジュール調整だけでなく、多くの担当者や外部業者と円滑に話し合いを進め、発生したトラブルにも柔軟に対応できるコミュニケーション力が評価されます。さらに、国や自治体による国家資格――たとえば施工管理技士など――を取得している人材は、管理能力の裏付けとなるため採用する側から高い需要があります。

転職活動では、自身のCM方式やPM業務での実績を整理し、どのように関係者を調整し成果を上げたか具体的なエピソードを伝えることが有効です。たとえば「図面調整の際に相反する要望をまとめて設計変更コストを20%削減した」「工程遅延のリスクを予見し、納期を計画より2週間短縮した」など、数字や事例で表現すれば、採用担当者に自分の実力をわかりやすく示せます。

また、実務未経験者であっても、他業界で培った調整力やITスキル、リーダー経験などが建設PM分野で生かせるケースが少なくありません。「建設現場は未経験だけどIT管理の知識や複数メンバーをまとめた経験がある」といった強みも積極的にアピールしましょう。

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