コミュニケーションスキル

ナラティブ分析とは?初心者向けに意味・進め方・他分析との違いをわかりやすく解説

はじめに

「ナラティブ分析とは何をする分析なのだろう」
「インタビューや体験談を集めたけれど、どこを見て、どう整理すればいいのか分からない」と迷っていませんか。

研究やレポート、マーケティング調査などで語りのデータを扱う場面では、発言内容をただ要約するだけでよいのか、話の流れや背景まで読むべきなのか判断しにくいことがありますよね。

この記事では、ナラティブ分析の意味、基本的な進め方、他の分析方法との違いを初心者にも分かりやすく整理していきます。

ナラティブ分析とは?

ナラティブ分析を理解するには、まず「何を分析対象にするのか」を整理しておくことが大切です。

ナラティブ分析では、発言や文章に含まれる出来事そのものだけでなく、その出来事がどのような順序で語られ、どのような意味づけがされているのかに注目します。

ここでは、ナラティブ分析の基本的な考え方や、出来事の事実確認とは異なる視点、質的研究で用いられる理由について見ていきます。

ナラティブ分析の基本的な考え方

ナラティブ分析では、インタビューで話された内容を「何を話したか」だけでなく、「どのような順番で語られたか」「どの出来事を強調しているか」といった語りの流れにも注目します。

そのため、発言を一つずつ分類するだけではなく、出来事同士がどのようにつながり、その人が経験をどのように意味づけているのかを丁寧に読み取っていきます。

つまり、ナラティブ分析の基本は、話し手が自分の経験をどのような物語として語っているのかを、全体の流れを大切にしながら理解することです。

「出来事」ではなく「どう語られたか」を分析する

ナラティブ分析では、起きた出来事そのものだけでなく、その出来事がどのような言葉で、どのような順番で語られたのかに注目します。

たとえば、同じ経験でも「つらかった」という話から始める人と、「乗り越えられた」という話から始める人では、その経験に与えている意味が異なることがあります。

そのため、ナラティブ分析では、話し手が自分の経験をどのように組み立てて語っているのかを丁寧に見ながら、その人にとっての意味を読み取っていきます。

質的研究でナラティブ分析が使われる理由

質的研究でナラティブ分析が使われるのは、出来事そのものだけではなく、話し手がその経験をどのように受け止め、意味づけているのかを深く理解するためです。

インタビューでの語りには、出来事の説明だけでなく、何を大切に感じ、どのような変化や転機として受け止めたのかといった考え方も表れます。

そのため、人の考えや行動の背景を丁寧に理解したい質的研究では、語り全体の流れを重視するナラティブ分析が広く活用されています。

ナラティブ分析は何を分析する手法なの?

ナラティブ分析では、話し手の言葉を通して、経験の受け止め方や価値観、背景にある意味づけを読み取ります。

ここでは、ナラティブ分析が何を対象にしているのか、どのような情報を読み解けるのかを見ていきます。

個人の経験や価値観を読み解く分析である

ナラティブ分析は、話し手が語った経験を通して、その人が何を大切にしているのか、どの出来事を強く印象に残しているのかを読み解く分析方法です。

たとえば、同じ経験でも「失敗したこと」を中心に語る人と、「そこから学んだこと」を中心に語る人では、その経験への向き合い方や価値観が異なることがあります。

そのため、ナラティブ分析では、話し手が使う言葉や語りの流れに注目しながら、その人ならではの経験の意味や価値観を丁寧に理解していきます。

数字では見えにくい背景を分析できる

ナラティブ分析では、回答数や割合だけでは分かりにくい、その人がどのような理由で考えや行動に至ったのかという背景まで読み取ることができます。

たとえば、同じ「満足」という回答でも、何をきっかけに気持ちが変わったのか、どのような経験を通してその考えに至ったのかは、人によって異なります。

そのため、ナラティブ分析では、話し手の語りの流れを丁寧に追いながら、数字だけでは見えにくい経験や考え方の背景を理解していきます。

インタビュー調査との相性が良い

ナラティブ分析は、インタビュー調査で得られた語りを詳しく読み解く方法として、特に相性が良い分析手法です。

インタビューでは、出来事だけでなく、そのときの気持ちや考えの変化まで自然な流れで語られるため、話し手が経験をどのように受け止めているのかを理解しやすくなります。

そのため、ナラティブ分析では、話し手が選んだ言葉や語りの順番に注目しながら、経験や考え方の背景を丁寧に読み取っていきます。

ナラティブ分析と他の分析手法との違い

ナラティブ分析は、同じ質的研究の中でも、テーマ分析や内容分析とは注目する点が異なります。

共通する話題や言葉の出現を整理するだけでなく、話し手が経験をどのような流れで語り、どのように意味づけているのかを読み解く点に特徴があります。

ここでは、テーマ分析や内容分析との違いを整理しながら、ナラティブ分析が向いている場面を見ていきます。

テーマ分析との違い

テーマ分析は、インタビューの中から共通する話題や意味のまとまりを見つけて整理する方法で、「どのような内容が語られたか」を把握するのに向いています。

一方、ナラティブ分析は、話し手が経験をどのような順番で語り、どのような意味を持たせているのかという語りの流れにも注目して分析します。

そのため、共通するテーマを整理したい場合はテーマ分析、一人ひとりの経験や意味づけを丁寧に理解したい場合はナラティブ分析が適しています。

「テーマ分析との違いがまだ分かりにくいと感じる方は、それぞれの進め方や特徴を比較すると、使い分けのイメージがつかみやすくなります。」
▶テーマ分析とは?やり方・手順・メリットを初心者向けにわかりやすく解説

内容分析との違い

内容分析は、文章や発言に出てくる言葉や内容を分類し、どのような話題が多く語られているのかといった全体の傾向を整理する分析方法です。

一方、ナラティブ分析は、言葉の数だけではなく、話し手が経験をどのような順番で語り、どのような意味を持たせているのかという語りの流れにも注目します。

そのため、発言全体の傾向を把握したい場合は内容分析、一人ひとりの経験や意味づけを丁寧に理解したい場合はナラティブ分析が適しています。

『内容分析とは何が違うのか』をもう少し詳しく知りたい場合は、内容分析の特徴や進め方もあわせて確認すると違いを整理しやすくなります。
内容分析とは?やり方・手順・特徴を初心者向けにわかりやすく解説

ナラティブ分析が向いているケース

ナラティブ分析は、話し手が経験をどのように受け止め、どのような流れで語っているのかを丁寧に理解したい場合に向いています。

たとえば、インタビューでは出来事だけでなく、そのときの気持ちや考え方の変化まで一連の流れとして語られることが多く、その語り全体から経験の意味を読み取ることができます。

そのため、回答を分類して傾向を整理するよりも、一人ひとりの経験や意味づけを深く理解したい場面で活用される分析手法です。

ナラティブ分析の基本的な進め方

ナラティブ分析を進めるときは、まず分析対象となる語りを集め、その内容を丁寧に読みながら流れや特徴を整理していきます。

そのうえで、話し手が経験をどのように受け止め、どのような意味を与えているのかを読み解くことが大切です。

ここでは、データ収集からストーリーの整理、語りに込められた意味の分析まで、基本的な進め方を見ていきます。

インタビューや語りのデータを集める

ナラティブ分析では、まず分析のもとになるインタビューや語りのデータを集めます。質問は「はい」「いいえ」で終わるものではなく、経験の流れや気持ちの変化を自分の言葉で話してもらえる内容にすることが大切です。

また、集めたデータは内容だけでなく、どのような順番で語られたのかが分かる形で残しておくことで、その後の分析を進めやすくなります。

語りの流れを丁寧に記録しておくことで、話し手が経験にどのような意味を持たせているのかを、より深く読み取りやすくなります。

ストーリーの流れや特徴を整理する

集めた語りのデータは、まず話の始まりから終わりまでの流れを確認し、どの出来事から話し始めたのか、どこで話が展開したのかといった全体の構成を整理します。

このときは発言を細かく分類するのではなく、話し手が経験をどのような順番で語り、どの場面を大切に伝えているのかに注目することが大切です。

ストーリーの流れや特徴を整理することで、話し手が自分の経験をどのように意味づけているのかを、より丁寧に理解しやすくなります。

語りに込められた意味を読み解く

語りの流れを整理したあとは、話し手がその経験にどのような意味を持たせているのかを読み解いていきます。どの出来事を詳しく語ったのか、どの言葉を繰り返したのか、どこで気持ちや考え方が変わったのかといった点に注目します。

また、発言を事実として受け取るだけではなく、なぜその順番で語られたのかを考えながら見ていくことで、経験の受け止め方や価値観をより深く理解しやすくなります。

このように語りに込められた意味を丁寧に読み解くことで、話し手にとってその経験がどのような意味を持っているのかを捉えやすくなります。

ナラティブ分析はどんな場面で使われる?

ナラティブ分析は、人の経験や思いを深く理解したい場面で使われます。

ここでは、インタビュー調査をはじめ、医療・看護分野、マーケティングやユーザー調査での活用場面を見ていきます。

インタビュー調査で使われるケース

ナラティブ分析は、インタビュー調査で話し手の経験や考え方を詳しく理解したいときによく使われます。出来事だけでなく、そのときの気持ちや考え方の変化まで、一連の流れとして捉えられるためです。

また、インタビューでは、どの場面を詳しく語ったのか、どの言葉を繰り返したのかといった特徴も分かるため、話し手が経験をどのように受け止めているのかを読み取りやすくなります。

そのため、一人ひとりの語りの流れや経験の意味づけを丁寧に分析したい場面で、ナラティブ分析が活用されています。

医療・看護分野での活用例

ナラティブ分析は、医療・看護分野で患者さんやご家族が病気や治療をどのように受け止めているのかを理解したいときによく活用されています。

診断を受けたときの気持ちや治療を続ける中での考え方の変化などを、一連の語りとして捉えることで、検査結果や治療経過だけでは見えにくい背景を理解しやすくなります。

そのため、一人ひとりの経験や病気と向き合う過程を丁寧に理解し、より良い支援につなげるための分析方法として活用されています。

マーケティングやユーザー調査での活用例

ナラティブ分析は、マーケティングやユーザー調査で、顧客が商品やサービスを選ぶまでの考え方や行動の流れを理解したいときによく活用されています。

購入前の悩みや情報収集のきっかけ、実際に使って感じたことなどを一連の語りとして捉えることで、アンケートの結果だけでは見えにくい判断の背景を理解しやすくなります。

そのため、顧客がどのような理由で商品やサービスを選び、どのような価値を感じているのかを、より丁寧に読み解くための分析方法として活用されています。

ナラティブ分析を行う際の注意点

ナラティブ分析では、語りの流れや言葉の選び方を丁寧に読み解くため、分析者の受け止め方が結果に影響しやすくなります。

また、インタビュー内容を細かく確認するほどデータ量が増え、整理に時間がかかることもあります。

ここでは、主観の入りやすさやデータ量への対応、結論を急がずに分析するための注意点を見ていきます。

分析者の主観が入りやすい

ナラティブ分析では、語りに込められた意味を読み取るため、分析者の考え方や経験が解釈に影響しやすいという特徴があります。

そのため、「そう感じたから」と判断するのではなく、話し手が実際に使った言葉や語りの流れを根拠にしながら、丁寧に読み進めることが大切です。

分析するときは、どの発言をもとに解釈したのかを意識することで、思い込みによる偏りを抑えながら、より納得感のある分析につなげやすくなります。

データ量が多くなりやすい

ナラティブ分析では、話し手の語りを流れとして扱うため、インタビューを文字起こしするとデータ量が多くなりやすいという特徴があります。

そのため、すべての発言を同じように分析するのではなく、どの経験や場面を対象にするのかをあらかじめ決めておくことが大切です。

分析する範囲を適切に絞ることで、重要な語りに注目しながら、話し手が経験に込めた意味をより丁寧に読み取りやすくなります。

結論を急ぎすぎないことが大切

ナラティブ分析では、語りの一部分だけを見て結論を出さず、話の始まりから終わりまでの流れを丁寧に確認することが大切です。

最初は不安を語っていても、その後に考え方が変わった理由や前向きな気持ちが語られることもあるため、一つの発言だけで判断すると、本来の意味を見落としてしまう可能性があります。

そのため、根拠となる発言や語りのつながりを最後まで確認しながら、話し手が経験をどのように受け止めているのかを丁寧に読み解いていくことが重要です。

初心者がナラティブ分析を理解する時のポイント

ナラティブ分析を初心者が理解するときは、細かな手順や専門用語から入るよりも、まず「人の語りを通して意味を読み解く分析」と捉えると分かりやすくなります。

ここでは、全体像の掴み方と、他の分析手法との違いを理解するためのポイントを見ていきます。

まずは“語りを見る分析”として全体像を掴む

初心者がナラティブ分析を理解するときは、まず「語りを見る分析」と考えるとイメージしやすくなります。専門的な分析方法を覚える前に、話し手が何をどのような順番で語っているのかに注目してみましょう。

ナラティブ分析では、一つひとつの発言だけではなく、話の始まりから終わりまでの流れを大切にしながら、その人が経験をどのように整理しているのかを読み取っていきます。

まずは全体の流れを意識して語りを見ることができれば、ナラティブ分析の考え方や分析のポイントも自然と理解しやすくなります。

他の質的分析との違いを整理して考える

初心者がナラティブ分析を理解するときは、他の質的分析との違いを比べながら考えると、特徴をつかみやすくなります。

テーマ分析や内容分析は、共通する話題や言葉を整理することに重点を置くのに対し、ナラティブ分析は、話し手が経験をどのような流れで語り、どのような意味を持たせているのかに注目します。

この違いを理解しておくと、ナラティブ分析では「語りの流れを見ること」が大切なポイントであると、自然にイメージしやすくなります。

まとめ

ナラティブ分析は、インタビューや体験談などの語りを通して、話し手が経験をどのように受け止め、どのような意味を持たせているのかを丁寧に読み解く分析手法です。

出来事だけでなく、語りの流れにも注目する点が大きな特徴です。

また、テーマ分析や内容分析とは目的が異なり、一人ひとりの経験や考え方の背景を深く理解したい場面で活用されています。

一方で、分析者の解釈が影響しやすいため、語りの内容を根拠にしながら慎重に読み進めることも大切です。

最初は難しく感じるかもしれませんが、まずは「話し手がどのように経験を語っているのかを見る分析」と捉えると理解しやすくなります。

全体の流れを意識しながら読み進めることで、ナラティブ分析の考え方を少しずつつかみやすくなるでしょう。

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