目次
はじめに
本記事の目的
本記事は、応用情報技術者試験のプロジェクトマネジメント分野で出る計算問題を、基礎から解けるようにすることを目指します。中心となるEVM(アーンドバリューマネジメント)の指標や計算の考え方を平易に説明し、管理工数の見積もりや試験対策まで一連の流れで学べる構成にしました。実務でも使える進捗・コスト管理の小さなコツも取り上げます。
なぜ「計算」がカギになるのか
プロジェクトでは、計画と実績を同じものさしで比べる場面が多くあります。数字で語れると、現状の良し悪しを素早く把握でき、次の一手を迷わずに決められます。試験でも同じで、基本指標の意味と簡単な計算が分かれば、設問の半分は見通しが立ちます。
EVMとは(かんたんに)
EVMは「計画した価値」と「実際に得られた価値」を比べて、進み具合やお金の使い方を点検する方法です。
- 例:タスクに100時間分の予算を用意し、今までに50時間を使いました。予定では60%終わっているはずでしたが、実際は40%しか終わっていないとします。この差を数字で示すのがEVMの役割です。どれだけ遅れているか、どれだけコストがかさんでいるかを同じ基準で見られます。
専門用語は最小限にし、各章で具体例を添えて理解を助けます。
本記事で学べること
- EVMの基本指標と計算の考え方が分かります。
- 進捗・コスト管理を実務で試す手順を理解します。
- 管理工数(管理にかかる時間)の見積もりの勘どころをつかみます。
- 応用情報技術者試験での出題傾向を踏まえた解き方のコツを身につけます。
読み進め方と前提
- 数学は四則演算が中心です。電卓や表計算ソフトを使って構いません。
- 図や簡単な表で直感的に理解できるように説明します。
- 実務の現場でありがちな“小さな例”を積み上げながら、試験問題にも通じる視点を養います。
想定する読者
- PM(プロジェクトマネジメント)の計算が苦手な学習者の方
- EVMを聞いたことはあるが、実務でどう使うかイメージできない方
- 応用情報技術者試験で安定して得点したい方
本記事の構成
- プロジェクトマネジメントにおける計算問題の重要性
- EVMの基本指標と計算式
- EVMを使った進捗・コスト管理の実践例
- 管理工数の見積もりと計算方法
- 応用情報試験での出題傾向と対策
- まとめと学習のポイント
プロジェクトマネジメントにおける計算問題の重要性
プロジェクトマネジメントにおける計算問題の重要性
前章のふり返り
前章では、本シリーズの目的と学習の進め方を確認し、EVM(アーンドバリューマネジメント)が試験対策だけでなく実務にも役立つことを共有しました。数値で現状をとらえる姿勢が、判断の質を高めるという考え方を紹介しました。
なぜ「計算」が重要なのか
応用情報技術者試験(AP)では、プロジェクトマネジメント分野でEVMを中心とした計算問題がよく出題されます。EVMは、計画と実績を数字で比べて、進み具合やお金の使い方を把握する方法です。感覚だけで「順調です」と言っても、人によって解釈が変わります。しかし、数値で示せば、同じ物差しで会話できます。
計算がもたらす3つの効果
- 早期発見ができる: 計画より遅れている、またはお金を使いすぎている兆しを早く見つけられます。
- 具体的な対策につながる: 「今は20%遅れ」など数値で示すと、増員や範囲調整などの対策を検討しやすくなります。
- 合意形成が速い: 数字に基づく説明は、関係者の理解をそろえやすく、無用な議論を減らします。
ミニケース:会議でのやり取りが変わる
例として、設計タスクの計画を「1か月で30万円、月半ばの時点で50%完了」を目標とします。実際には「使った費用20万円、完了率40%」でした。
- 感覚の会話: 「少し遅れていますが、挽回できます」
- 数字の会話: 「予定は50%ですが40%です。費用は既に20万円で、残り10日で60%分を終える必要があります」
この違いだけで、次に取る行動(人員追加、優先順位変更、スコープ見直し)が明確になります。したがって、日々の意思決定のスピードと質が上がります。
試験でのメリット
- 得点源になりやすい: 基本の考え方と手順が定まっており、練習すれば再現性高く解けます。
- 時間配分が安定する: 計算の型を覚えると、迷いが減り、他の設問に時間を回せます。
- 実務感覚が身につく: 数字で状況を説明する練習は、現場の報告・相談の質を高めます。
よくあるつまずきと対処
- 単位の取り違え: 「万円・千円」「日・週」を問題文の表に合わせてそろえます。
- 図や表の読み落とし: 軸の意味(計画か実績か)を最初に確認します。
- 式のあてはめミス: 言葉で意味を理解してから数値を入れます(例:「進み具合を表す指標」→進捗に関係する数を使う)。
- 手計算が不安: 暗算に頼らず、途中式を書き、桁をそろえます。
学習の進め方のヒント
- 小さな例題で「値の関係」を掴む: まずは数を小さくして、増える・減るの感覚を確認します。
- 同じパターンを反復: 問題形式は似ています。型をメモ化して解く順を固定します。
- 実務に置き換えて説明してみる: 同僚に「今どれくらい進んでいるか」を数で説明する練習をします。
EVM(アーンドバリューマネジメント)の基本指標と計算式
EVM(アーンドバリューマネジメント)の基本指標と計算式
前章の振り返りとこの章のゴール
前章では、プロジェクトの成功には、状況を数字でつかみ、早めにズレを見つけて対処することが重要だとお伝えしました。本章では、そのための代表的な方法であるEVM(Earned Value Management)の指標と計算式をわかりやすく整理します。
EVMの基本となる3つの値
EVMは、まず次の3つの値をそろえるところから始めます。
- 計画値(PV: Planned Value)
- いま時点までに「計画では」いくら分進んでいるはずかを表す金額です。
- 例:10日間の作業で総予算100万円、5日目ならPVは50万円。
- 出来高(EV: Earned Value)
- 実際に「完了した仕事の価値」をお金に換算した金額です。
- 例:5日目に計画の40%相当が完了ならEVは40万円。
- 実コスト(AC: Actual Cost)
- ここまでに実際に使ったお金です。
- 例:ここまでの支出が45万円ならACは45万円。
この3つがあれば、進捗とコストのズレを数値で判断できます。
ズレと効率を示す指標と式
- コスト差異(CV: Cost Variance)
- 式:CV = EV − AC
- 解釈:正なら予算内、負ならコスト超過です。
- スケジュール差異(SV: Schedule Variance)
- 式:SV = EV − PV
- 解釈:正なら前倒し、負なら遅れです。
- コスト効率指数(CPI: Cost Performance Index)
- 式:CPI = EV ÷ AC
- 解釈:1以上ならコスト運用が効率的、1未満なら非効率です。
- スケジュール効率指数(SPI: Schedule Performance Index)
- 式:SPI = EV ÷ PV
- 解釈:1以上なら予定より速い、1未満なら遅いです。
かんたん計算例(CV・CPI・SPI)
前提:総予算100万円、5日目の時点で次の通りです。
- PV = 50万円(計画どおりなら半分進んでいるはず)
- EV = 40万円(実際は40%ぶん完了)
- AC = 45万円(使ったお金)
計算:
- CV = EV − AC = 40 − 45 = −5万円(コスト超過)
- CPI = EV ÷ AC = 40 ÷ 45 ≈ 0.89(1未満で非効率)
- SPI = EV ÷ PV = 40 ÷ 50 = 0.80(遅れ気味)
- 参考:SV = EV − PV = 40 − 50 = −10万円(遅れ)
数字が小数になるときは四捨五入などで見やすくします。社内のルールに合わせて小数点以下の桁数を決めると判断が揃います。
完了時コスト見積もり(EAC)
最終的にいくらかかりそうかを見積もる指標です。手軽な求め方の一例は次の通りです。
- 式:EAC = 総予算 ÷ CPI(総予算はプロジェクト全体の予定額)
- 例:総予算100万円、CPIが0.89なら、EAC ≈ 100 ÷ 0.89 ≈ 112.4万円
- 意味:このペースが続くと、最終的に約112万円かかる見込みです。
CPIを使う方法は直感的で扱いやすいです。精度を高めたい場合は、実績や残作業の性質に応じた別式(例:EAC = AC +(総予算 − EV)など)もあります。目的に合う式をチームで決めてから運用すると、判断がぶれにくくなります。
指標の読み方のコツ
- EVとPVのちがいに着目します。EVは「実際の成果」、PVは「計画上の進み具合」です。ここが混ざると判断を誤ります。
- CPIやSPIは「1」を基準に見ます。1以上なら良好、1未満なら要注意という軸で早めに対策を検討します。
- 1回の数値だけで結論にせず、推移を見ます。毎週同じタイミングで計算し、改善策の効果を確認します。
EVMを使うと、感覚ではなく数字で会話できるようになります。これが早期の軌道修正につながります。
次章:EVMを使った進捗・コスト管理の実践例
EVMを使った進捗・コスト管理の実践例
前章の要約と本章の狙い
前章では、EVMの基本指標(PV:計画出来高、EV:実績出来高、AC:実績コスト)と、差や効率を表すSV・CV・SPI・CPIの計算式、読み取り方を整理しました。指標間の関係と、数値から「遅れ」「超過」を素早く見抜く手順も確認しました。本章ではそれらを実データに当てはめ、進捗・コスト管理をどのように運用するかを具体例で示します。
EVMを活用すると、現状を数値で迅速に把握でき、将来の総コスト予測(EAC)や残りコスト(ETC)の見通しも立てられます。これにより、進捗報告や関係者への説明の透明性が高まり、数値に基づく意思決定が可能になります。
ケース1:月次レビューでの状況把握と予測
想定プロジェクト:5か月、総予算(BAC)1,000万円。2か月目の月次レビュー。
- 現在の指標
- PV=400万円、EV=320万円、AC=360万円
- いまの状態
- SV=EV−PV=−80万円(計画より遅れ)
- CV=EV−AC=−40万円(コスト超過)
- SPI=EV/PV=0.80(進みが遅い)
- CPI=EV/AC=0.89(コスト効率が悪い)
- 先の見通し(予測)
- EAC=BAC/CPI=1,000/0.89≈1,125万円(総コスト見込み)
- ETC=EAC−AC=1,125−360=765万円(残り見込みコスト)
- したがって、現状のやり方のままでは約125万円の超過が見込まれます。
- すぐ打つ手
- 重要タスクの優先度を上げ、遅延要因を除去します(例:仕様確認の待ち時間を短縮)。
- コストが重い作業の進め方を見直します(例:手戻りの多いレビュー工程にチェックリスト導入)。
- 翌週からのSPI・CPIの改善目標を具体化します(例:SPIを0.90以上、CPIを0.95以上)。
ケース2:巻き返し策を数値で比較する
選択肢を「どれがより現実的か」で比べるために、残りの仕事をどの効率で進める必要があるかの目安(TCPI)を使います。
- 現在の前提:EV=320、AC=360、BAC=1,000(単位は万円)
- 目標A:総コストをBAC内に収めたい
- 必要効率の目安 TCPI(BAC)=(BAC−EV)/(BAC−AC)=(1,000−320)/(1,000−360)=680/640=1.06
- 残り期間で6%効率を上げる必要があります。
- 目標B:小幅な超過は許容し、現実的に完了させたい(目標EAC=1,080)
- TCPI(1,080)=(1,000−320)/(1,080−360)=680/720=0.94
- 現状より少し余裕があり、実現可能性が高い案です。
- 判断のポイント
- Aを選ぶなら、体制強化や機能の優先順位見直しが不可欠です。
- Bを選ぶなら、追加コストの承認を先に取り、遅延リスクを先回りで潰します。
ケース3:小規模Web開発の週次管理(軽量運用)
想定:総予算BAC=300万円、4週間の短期案件。週3のチェックで回します。
- 週3終了時点:PV=90、EV=100、AC=110(単位:万円)
- SPI=1.11(計画より早い)
- CPI=0.91(コストは重い)
- アクション
- 早さは維持しつつ、残りの高コスト作業を見直します(外注の単価交渉、作業の並行化の整理)。
- 翌週は「支出を抑えて前倒しを維持」を目標に、CPI改善を優先します。
- 軽量運用のコツ
- タスクに大まかな重みを付けてEVを算出(例:要件20%、設計20%、実装40%、テスト20%)。
- 週次でPV・EV・ACを更新し、SPIとCPIが1.0から離れたら原因を一つだけ特定して対処します。
伝わる進捗報告の作り方(1枚レポート例)
- 今の全体像:SPI、CPI、SV、CVをひと目で(色分け)
- 重要メッセージ:一文で「期日・予算は守れそうか」
- 予測:EAC、ETC、必要な効率の目安(TCPI)
- 対応策:次の1~2週間でやること(担当と期日つき)
- リスクと依存関係:決裁待ち、外部要因
データの集め方と落とし穴
- EVの過大評価を防ぐには「完了の定義」を明確にします(例:テストケース合格までで完了)。
- PVは現実的な計画から作ります。粗すぎるWBSは誤差を生みます。
- ACは抜け漏れが起きやすいので、工数・外注費・ツール費を同じ日付粒度で集計します。
- 変更が入ったら、承認のうえで計画(PV・BAC)を更新し、いつから新しい基準かを記録します。これは後からの説明を楽にします。
- しかし、基準の更新を頻発させると実力が見えにくくなるため、やむを得ない場合に限定します。
スプレッドシートですぐ始める
- 入力欄:BAC、PV、EV、AC
- 自動計算:
- SPI=EV/PV、CPI=EV/AC
- SV=EV−PV、CV=EV−AC
- EAC=BAC/CPI、ETC=EAC−AC
- 目標EACを別セルに置き、TCPI=(BAC−EV)/(目標EAC−AC)
- 見た目:SPI・CPIが1.0未満で赤、1.0以上で緑。SV・CVがマイナスで赤。
- 運用:毎週同じ曜日・同じ粒度で更新し、前回からの変化だけを会議で話します。
管理工数の見積もりと計算方法
管理工数の見積もりと計算方法
前章の振り返りと本章の狙い
前章では、EVMを使って計画と実績を見比べ、差を数値でつかむ手順を実例で確認しました。グラフや指標で状況を見える化することで、早めに手を打てる点がポイントでした。本章は、その土台となる「管理工数」をどう見積もり、どう計算するかに焦点を当てます。
管理工数とは何か
管理工数は、会議、進捗報告、課題・リスク対応、品質レビュー、調整作業などに使う時間の合計です。作る作業そのものではありませんが、プロジェクトを安全に前へ進めるために必要です。見積もりの基本は、作業項目ごとに数式で表し、合計することです。
基本の考え方:人数 × 時間 × 回数
管理工数の多くは、次の式で求められます。
- 管理工数(時間)= 参加人数 × 1回あたりの所要時間 × 実施回数
頻度が「週1回」のように書かれている場合は、期間に合わせて回数に直します。例えば4ヶ月を16週とみなすと、週1回は16回です。
代表的な項目のチェックリスト
抜けやすい項目を最初に洗い出します。
- 定例会議(進捗会議、課題会議、チームミーティング)
- ステータスレポート作成・提出
- 課題・リスクの洗い出しとレビュー
- 品質レビュー(成果物チェック、承認)
- 変更対応(スコープ・スケジュール調整)
- 関係者調整(ベンダー・社内他部門)
- メンバーのオンボーディング、教育
- ツール設定・権限管理、ドキュメント整備
- プロジェクト開始・終了イベント(キックオフ、振り返り、クローズ作業)
具体例:会議とレポートの計算
- 進捗会議(週1回30分、5人参加、4ヶ月=16週)
- 5人 × 0.5時間 × 16回 = 40時間
- ステータスレポート(作成30分+提出10分を1人が毎週、4ヶ月=16週)
- 1人 × 0.67時間 × 16回 = 約10.7時間(約11時間)
- 課題レビュー(月2回30分、4ヶ月=8回、3人参加)
- 3人 × 0.5時間 × 8回 = 12時間
- 成果物レビュー(2回、各60分、4人参加)
- 4人 × 1時間 × 2回 = 8時間
合計の目安:40+11+12+8=71時間
比率での見積もり(ざっくり版)
詳細分解が難しい初期段階では、プロジェクト全体工数の10〜20%を管理工数の目安とします。チーム規模で幅を決めると精度が上がります。
- 小規模(〜5人):8〜12%
- 中規模(6〜15人):12〜18%
- 大規模(16人以上):15〜25%
途中で詳細が見えてきたら、比率見積もりから項目別見積もりへ置き換えます。
固定と変動を分けて考える
- 固定費用型:キックオフ、最終レビュー、ツール初期設定など。回数が少なく、人数も決まっているもの。
- 変動費用型:週次会議、日次の更新、課題対応など。期間や人数に比例して増えます。
この区分で抜けや重複を減らしやすくなります。
重複とムダの見つけ方
- 会議の目的が似ていないかを確認(統合できるものはまとめる)
- 同じ人が似たレポートを二重で作っていないかを確認
- 参加者が「聞くだけ」になっていないかを見直し
- 週次の頻度を隔週にできないか、15分に短縮できないかを検討
最適化のコツ
- 事前アジェンダとタイムボックスで会議を短くする
- 進捗の数値やグラフはテンプレート化して作成時間を短縮する
- チャットやボードでの非同期更新を活用し、報告の重複を減らす
- 決裁者は要点だけの短い別資料で合意を得る
- レビューはまとめて実施し、移動や準備の時間を節約する
抜けを防ぐチェックポイント
- 祝日や長期休暇、繁忙期の影響
- メンバーの入れ替えや新規参画時の説明時間
- 発注・検収・契約関連のやり取り
- セキュリティやコンプライアンスの審査
- プロジェクト終了時の引き継ぎと保管
小さなサンプル計画(4ヶ月/8人チームの一部)
- 週次進捗会議:5人 × 0.5h × 16回 = 40h
- ステータスレポート:1人 × 0.67h × 16回 = 約11h
- 課題レビュー:3人 × 0.5h × 8回 = 12h
- キックオフ:8人 × 1h × 1回 = 8h
- クローズ会議:8人 × 1h × 1回 = 8h
合計:79時間(この他にツール設定や品質レビューがあれば追加)
実務での簡易フォーマット例
- 項目名|頻度・回数|1回の時間|人数|計(時間)
- 合計(時間)と、全体工数に対する割合(%)を併記
- 比率見積もりと項目別見積もりの両方を並べ、差が大きい場合は理由を確認
EVMとのつながり
管理工数は実コストに直結します。実績としてかかった時間を記録すると、EVMの実コストに正しく反映できます。見積もりと実績の差を毎週チェックし、会議の回数や参加者を調整すれば、ムダを早く減らせます。
応用情報試験での出題傾向と対策
応用情報試験での出題傾向と対策
前章では、管理工数の見積もり手順をステップごとに整理し、簡単な計算例で根拠のある見積もり方法を確認しました。その土台があると、試験でのEVM(出来高管理)の計算や読み取りも落ち着いて対応できます。
出題傾向の全体像
- 指標の意味を問う設問:計画の値(PV)、できた値(EV)、使ったお金(AC)の違いを問います。
- 計算問題:CPI(コスト効率)= EV/AC、SPI(進み具合)= EV/PV などの計算と、1を基準にした良否の判断をします。
- シナリオ問題:小さなプロジェクトの場面設定に数値が添えられ、遅れや超過の有無、今後の見通し(完了見込み額など)を答えます。
- 工数・進捗の読み取り:ガント風の表やテキストから、予定と実績のズレを読み解きます。
よくある設問パターンと解き方の流れ
- 単位をそろえます(円・万円、時間・人時など)。
- 与えられた数値をメモ欄に整理します(PV、EV、AC)。
- 先に比率を計算します(CPI、SPI)。
- 1を基準に解釈します(1以上は良好、1未満は要注意)。
- 必要に応じて差(SV=EV−PV、CV=EV−AC)も見ます。
- シナリオの問いに対応づけて結論を選びます。したがって、手を動かす順番を固定すると取りこぼしが減ります。
ミニ例題で確認
- 条件:総予算100万円。計画では今日は40%完了のはず。実績は「できた値(EV)」30万円、「使ったお金(AC)」35万円。
- まずPV=100×0.4=40万円。
- CPI=EV/AC=30/35≈0.86(コスト効率は悪い)。
- SPI=EV/PV=30/40=0.75(進みが遅い)。
- 判断:コストは超過傾向、進捗も遅延。対策は原因切り分け(見積もり精度か、作業の手戻りか、外部要因か)を短く述べる設問もあります。
計算のコツと落とし穴
- 単位ミス防止:冒頭に必ず単位をそろえます。特に百分率(%)と小数の混在に注意します。
- 端数処理:指定がなければ小数第2位程度まで。四捨五入の指示があれば従います。
- 符号の向き:差(SV、CV)がマイナスなら遅れ・超過のサインです。
- 比率の読み方:CPI・SPIは1を境に良否を判断します。数式の丸暗記だけに頼ると、符号や比較の取り違えが起きます。
- 予算全体の見通し:完了見込み額(EAC)を問う設問では、単純形として「総予算(BAC)÷CPI」を使うことがあります。前提が問題文に書かれていれば、それに合わせます。
- 図の読み取り:棒グラフや折れ線の凡例を確認してから数値を拾います。誤読が最も多いです。
- 例外への対応:一部の設問は「特定作業のみ遅延」「人員追加で追いつく」などの条件がつきます。条件文を先にマーカーで押さえます。
学習計画と練習方法
- 過去問の型を集中的に反復します(EVMの計算、表の読み取り、簡易工数計算)。
- 公式カードを作る:名称・意味・式・解釈(1を基準)の4点を1枚にまとめます。
- 自分用メモテンプレートを決める:「PV/EV/AC」「CPI/SPI」「所感」の3行を空欄で用意し、毎回同じ順に記入します。
- 暗算の肩慣らし:2桁÷2桁の比(例:36/45、28/35)を素早く小数2桁に直す練習をします。
- 10〜15分のセット学習:小問3〜4題を時間計測して解き、終了後に解法手順のどこで迷ったかを振り返ります。
本番での時間配分と見直し
- 先に「数字が揃っている短問」から解き、重い長文は後回しにします。
- メモ欄にPV・EV・ACの3つだけは必ず書き出します。
- 比率が0.9台か1.1台かで結論が変わる問題は、もう一度だけ再計算します。二度以上のやり直しは時間ロスです。
- 設問文の聞かれ方に合わせて答えます(例:「割合で答えよ」「金額で答えよ」)。
直前対策チェックリスト
- PV・EV・ACの意味を10秒で言えるか。
- CPI・SPIを計算し、1を基準に解釈できるか。
- 差(SV・CV)の符号を迷わないか。
- 単位・端数・指定条件を確認する癖がついているか。
- 自分のメモテンプレートを本番でも再現できるか。
次に記載するタイトル:まとめと学習のポイント
まとめと学習のポイント
前章の振り返り
前章では、応用情報試験の出題傾向として、EVMの計算、小問での進捗・コストの判断、管理工数の算出がよく問われる点を整理しました。短時間で正確に計算するコツ、過去問の反復、単位や符号のひっかけに注意する姿勢が有効であることも確認しました。
本記事全体の要点
- 計算は意味から理解します。EVは「できた分の値段」、PVは「計画どおりならの値段」、ACは「実際に払ったお金」です。
- 進み具合はSPI、コスト効率はCPIで見ます。1を基準に、1以上は良好、1未満は改善余地ありと判断します。
- 数字を会話に訳します。「予定より早い/遅い」「お金を多く/少なく使った」と言い換えると理解が進みます。
- 管理工数は、会議、レビュー、報告などを「回数×時間×人数」で積み上げて見積もります。
- 試験では、計算の手順化、単位の統一、端数処理のルール化、基準日の確認が得点に直結します。
学習の進め方(7日プラン)
- 1日目: EV・PV・ACの意味を一言で説明できるようにし、小さな例で確認します。
- 2日目: 差異(遅れ/超過)と効率(SPI/CPI)をフローチャート化します。
- 3日目: 1問1分のミニドリルを10問。計算メモの書き方を固定します。
- 4日目: シナリオ文から「良い/悪い」を言語化する練習をします。数式に入る前に結論を予想します。
- 5日目: 管理工数の積み上げ練習。会議、レビュー、報告を想定して見積もります。
- 6日目: 模擬セット(20分)で時間配分を確認します。見直し時間を5分確保します。
- 7日目: 間違いノートを清書し、A4一枚のチートシートを完成させます。
チートシートの作り方
- 片面A4に収めます。左に用語、右に一言説明を書きます。
- 色分けします。進捗は青、コストは赤、注意点は黄など視覚で覚えます。
- 端に「よくあるミス」を列挙します。単位、符号、母数、基準日の4項目は太字にします。
1分チェック(口で答えられたらOK)
- 例1: PV=100、EV=80、AC=70。進み具合とコスト効率は? → 進捗は遅れ(SPI=0.8)、コストは効率的(CPI≈1.14)。
- 例2: 会議2回/週、60分、5人、4週間。管理工数は? → 2×1h×5人×4=40人時。
- 例3: 「予定より高コスト、進捗は良好」とは? → CPI<1、SPI>1。
実務につなげるコツ
- 会議で「今週のEVがいくつ」ではなく「予定より●万円分進んだ/遅れた」と話します。
- ボードに「進み具合」「お金の使い方」を二色で表示し、誰でも一目で判断できる形にします。
- 見積もりは「何を・どれだけ・何人で」を分解し、根拠を一行メモで残します。
よくあるつまずきと回避策
- 単位の混在(万円/千円/円)→ 最初に単位をそろえ、紙の端に明記します。
- 基準日の取り違え→ 「どの時点の数字か」を問題文で丸で囲みます。
- 完了の定義のズレ→ 「開始したら何%」などの前提を先に書き出します。
- 母数の誤り(総額か時点か)→ 総計と累計を別欄に分けてメモします。
明日からのアクション5つ
- 1日1回、1問1分のEVMドリルを継続します。
- 会議やレビューを「回数×時間×人数」で必ず記録します。
- 計算メモの型(欄の順番)を固定します。
- 単位・符号・基準日チェックを声に出して確認します。
- チートシートを週1で更新し、古い誤りを消していきます。
おわりに
計算は道具です。意味をつかみ、同じ型で練習し、数字を日常の言葉に訳せば、試験でも現場でも迷いが減ります。今日から小さく始め、確実に積み上げていきましょう。