リーダーシップとマネジメントスキル

リーダーシップの型を理解し組織力を最大化する方法

はじめに

リーダーシップとは

リーダーシップは、人を動かし成果を生む力です。職場のチームリーダーや学校のクラブの代表、スポーツのコーチといった身近な役割にも当てはまります。良いリーダー像は状況や目的で変わるため、型を理解すると適切な行動を選びやすくなります。

本章の目的

本書では、代表的な3つの分類方法をわかりやすく解説します。最初に基本の考え方を示し、続く章で各理論の特徴と実際の使い方を具体例を交えて説明します。目的は理論を学ぶだけでなく、日常の場面で使えるヒントを持ち帰っていただくことです。

読み方のポイント

  • 具体例に注目してください。実務や家庭の場面に当てはめやすくしています。
  • すべての理論が万能ではありません。状況や相手を見て使い分ける視点を大切にしてください。

以降の章で、まずクルト・レヴィンの3分類から見ていきます。

クルト・レヴィンの3分類

クルト・レヴィンはリーダーシップを「専制型(権威型)」「民主型(参加型)」「放任型(委任型)」の3つに分けました。ここでは各タイプの特徴、具体例、長所と短所、どんな場面で向くかを分かりやすく説明します。

専制型(権威型)

特徴:リーダーが指示と決定を一方的に出します。責任と権限が明確です。
具体例:工場の現場監督が作業手順を決め、作業員に従わせる場面。
長所:意思決定が速く、混乱が少ない。緊急対応や新人育成に適します。
短所:メンバーの自主性が育ちにくく、モチベーションが下がることがある。
向く場面:時間がない時や安全が最優先の場面。

民主型(参加型)

特徴:メンバーの意見を集めて決定します。協力と合意形成を重視します。
具体例:プロジェクト会議でメンバー全員の意見を聞き、方針を決める。
長所:意欲や創意工夫が引き出せる。組織の学習につながります。
短所:意思決定に時間がかかる場合がある。意見がまとまらないこともあります。
向く場面:複雑な課題や長期的なプロジェクト。

放任型(委任型)

特徴:リーダーは大まかな方針だけ示し、細かい裁量はメンバーに任せます。
具体例:専門家チームに自由に研究を進めさせる。
長所:創造性や自律性が促進されます。専門性を活かせます。
短所:方向性がバラつきやすく、進捗管理が難しい。
向く場面:高い専門性が求められる業務や成熟したチーム。

どのスタイルも一長一短です。状況やメンバーに応じて使い分けることが大切です。

ダニエル・ゴールマンの6分類

ダニエル・ゴールマンは感情的知能(EQ)を踏まえ、リーダーシップを6つに分類しました。各タイプの特徴と向く場面、具体例を紹介します。

ビジョン型(Visionary)

  • 特徴: 未来の方向性を示し、チームを一つの目標に向けて導きます。
  • 向く場面: 変革期や新しい方針が必要なとき。
  • 具体例: 新規事業の方向性を示してメンバーをまとめるリーダー。

コーチ型(Coaching)

  • 特徴: 個人の成長を支援し、フィードバックで能力を伸ばします。
  • 向く場面: 人材育成や長期的なスキル向上が求められるとき。
  • 具体例: 部下の強み・弱みを見て成長計画を一緒に作る上司。

親和型(Affiliative)

  • 特徴: 信頼関係とチームの調和を重視し、働きやすい雰囲気を作ります。
  • 向く場面: チーム内の不和やストレスが高いとき。
  • 具体例: 対話を重ねて関係を修復するリーダー。

民主型(Democratic)

  • 特徴: 意見を幅広く集め、参加型の意思決定を行います。
  • 向く場面: 多様な視点が役立つプロジェクト。
  • 具体例: チームの合意を得て決定をする場面。

ペースセッター型(Pacesetting)

  • 特徴: 高い基準を示し、自ら率先して成果を追求します。
  • 向く場面: 短期間で高い成果が必要なとき。ただし手順や負担に注意が必要です。
  • 具体例: 緊急の目標達成で先頭に立って働くリーダー。

強制型(Commanding)

  • 特徴: 明確な指示と迅速な統制でチームを動かします。
  • 向く場面: 緊急事態や混乱時に効果的です。
  • 具体例: 危機対応で即断即決を行うリーダー。

どのタイプも状況に応じて使い分けることが大切です。感情的知能を生かし、相手や場面に合わせてスタイルを調整すると良い結果につながります。

PM理論による4分類

PM理論とは

P行動(目標達成)とM行動(集団維持)の強弱でリーダーを4つに分けます。Pは成果や計画の推進、Mはメンバーの信頼関係や雰囲気づくりを指します。両方をバランスよく発揮することが理想です。

PM型(P強・M強)――バランス型

特長:目標を明確に示しつつ、メンバーの声を大切にします。成果と人間関係を同時に育てます。実例:プロジェクトの目標を設定しつつ、定期的に1対1で状況を確認する。
長所:高い信頼と安定した成果が得られます。短所:両面に時間を割くため負担が大きくなりやすい。

Pm型(P強・M弱)――目標重視

特長:業績や期限に強くコミットします。人間関係の配慮は控えめです。実例:売上目標を厳しく管理し、個別フォローが少ない。
長所:短期的な成果が出やすい。短所:士気低下や離職リスクが高まる場合があります。

pM型(P弱・M強)――人間関係重視

特長:チームの雰囲気や育成を重視しますが、目標管理は弱くなりがちです。実例:相談や研修に時間をかける一方で、締切の管理が甘い。
長所:信頼と定着率が向上します。短所:成果が出にくい場面があります。

pm型(P弱・M弱)――消極的型

特長:方向性も人間関係も十分にマネジメントしない傾向があります。実例:指示やフォローが少なく、チームが自律に任される。
長所:メンバーの自立性が高いチームなら機能する場合があります。短所:混乱や放任につながる危険があります。

実務での使い方

まず自己とチームの現状を観察し、どのタイプになりやすいか確認してください。状況に応じてPとMの比重を変える柔軟性が重要です。例えば成果が停滞しているならPを強め、人間関係に問題が出ているならMを意識して増やすと良いです。

-リーダーシップとマネジメントスキル
-,