目次
はじめに
本書の目的
このドキュメントは「リーダーシップ・コーチング」について、基礎から効果までを分かりやすく整理するために作成しました。リーダーが自分のやり方を見直したいとき、育成や組織づくりの方針を考えるときに役立つ実践的な知識を提供します。
どなたに向けているか
- 課長やチームリーダーなど、部下育成の責任がある方
- 人事・育成担当者
- リーダーシップに興味がある個人(将来の管理職を目指す方)
具体例を交え、専門用語を最小限にして解説しますので、初めて学ぶ方でも読みやすい構成にしています。
本書の読み方
第2章で「リーダーシップ・コーチング」の定義と特徴を説明します。第3章では、なぜ今コーチ型のリーダーシップが求められているかを扱い、第4章で主な効果と導入のポイントを示します。順に読むことで理論と実践がつながりますし、必要な章だけ先に読むこともできます。
この「はじめに」で、全体像をつかんでください。次章から具体的な内容に入ります。
第1章 リーダーシップ・コーチングとは何か
1-1. コーチングの基本的な意味
コーチングは対話を通じて相手の主体性や潜在能力を引き出し、目標達成へ向けた自発的な行動を促すコミュニケーションです。教える・指示するのではなく、質問・傾聴・フィードバックを通して相手自身に気づきをもたらします。例えば、上司が答えを与えるのではなく「どう考えますか?」と問うことで、部下が自分で解決策を見つけやすくなります。国際コーチング連盟(ICF)はコーチングをパートナーシップとして定義しています。
1-2. リーダーシップの意味
リーダーシップは組織やチームの目標達成に向け人を導き、良い影響を与える力です。方向性やビジョンを示し、メンバーのモチベーションを高め、課題解決に働きかけます。命令で従わせるのではなく、メンバーが自らついていきたいと思える行動を続ける存在がリーダーです。たとえば、明確なゴールを示しつつ、個々の強みを活かす役割を与えると信頼が生まれます。
1-3. リーダーシップ・コーチングの定義
リーダーシップ・コーチングはコーチングのスキルやプロセスを用いて、リーダー自身と部下の成長を促す手法です。目的はリーダーシップ能力の向上と、チームメンバーの主体性や潜在能力を引き出して成果を高めることです。一般のコーチングが幅広い課題に向くのに対し、リーダーシップ・コーチングはリーダーの成長に特化します。実践例として、週次の1on1で質問と振り返りを重ね、部下が自発的に行動する仕組みを作る方法があります。
第2章 なぜ今「コーチ型リーダーシップ」が求められているのか
2-1. 指示型リーダーシップとの違い
指示型リーダーシップは、上から明確に命令を出して迅速に動かすスタイルです。目標がはっきりしている場面や緊急対応では有効です。たとえば、災害対応や締め切り直前の最終調整など、速やかな意思決定が求められる場面で力を発揮します。とはいえ、日常的な業務や変化の多い環境では、指示を待つ姿勢が定着しやすく、自主性や創造性が育ちにくいという限界があります。
2-2. コーチ型リーダーシップとは
コーチ型リーダーシップは、1on1の対話を通じて相手の考えや強みを引き出すスタイルです。答えを教えるのではなく、質問や傾聴で相手が自分で答えを見つけられるよう支援します。たとえば、課題に直面したメンバーに「どんな選択肢が考えられますか?」と問いかけ、一緒に優先順位を整理することで主体性を促します。結果として、メンバーの成長やエンゲージメント(仕事への熱意)が高まります。
2-3. なぜ優秀なリーダーはコーチングがうまいのか
研究では、効果的なコーチングがメンバーのパフォーマンスを引き出すプロセスだと示されています。優秀なリーダーは単に評価や指示をするのではなく、支援や成長促進に重きを置きます。具体的には、適切な質問を投げかけ、建設的なフィードバックを行い、失敗から学ぶ機会を作ります。変化の速い職場では、自ら考えて動ける人材を増やすことが最も重要です。コーチ型の関わりは、そのために非常に効果的な方法の一つです。
第4章 リーダーシップ・コーチングを実践するためのステップ
はじめに
この章では、日常で使える具体的な方法と組織へ広げる手順をわかりやすく示します。すぐに試せる実践例を中心に説明します。
4-1 リーダー自身の準備
- 自己理解を深める:強み・価値観・優先順位を書き出す。例:週に一度、30分で振り返る習慣を作る。
- 目的を明確にする:何を育てたいか(裁量・主体性・思考力など)を言語化する。
- コーチング姿勢を整える:聴く時間を増やし、答えを与える前に問いを投げる癖をつける。
4-2 日常でできる具体的な実践例
- 1on1(週30分)
- 構成:近況→目標→障害→次の一歩。問い例:「今、一番の課題は何ですか?」「次に何を試しますか?」
- 効果:自分で解決策を考える力が育つ。
- 会議での促進
- 質問を増やす:意見の前に理由や期待を尋ねる。短い沈黙を恐れない。
- フィードバック
- 観察→影響→期待の順で伝える。具体例を挙げると受け取りやすい。
4-3 組織に広げる方法
- 小さな実験で始める:一チームで6週間の試行を行い成果を測る。
- トレーニングと実践のセット:学んだことをすぐ現場で使う仕組みを作る。
- 支援体制を整える:上司のモデル行動と評価制度の連動で定着を促す。
4-4 注意点とよくある誤解
- 指示を全くしないことが目的ではありません。適切な指示と対話のバランスが重要です。
- 短期間で劇的な変化を期待しないこと。継続が成果を生みます。
- 誰にでも同じやり方が効くわけではありません。個人の背景に合わせて調整してください。