リーダーシップとマネジメントスキル

リスクマネジメントとは?放置すると危険な理由と、今日からできる現実的な始め方

目次

はじめに

リスクマネジメントは「何か起きたら考えるもの」ではなく、何も起きていない今のうちに、必ずやっておくべき経営判断です。
後回しにしている状態そのものが、すでに最大のリスクになっています。

リスクマネジメントという言葉は、どうしても大企業や専門部署の話に聞こえがちです。ですが実際には、取引先とのトラブル、情報漏えい、災害、社員の急な離脱など、日常業務の延長線上で起きる問題ばかりです。自社には関係ないと思っていても、これで本当に大丈夫なのだろうかと一度でも感じたなら、それはすでにサインです。

対策をしていない企業ほど、トラブルが起きたときの判断が遅れ、被害が広がります。一方で、完璧な仕組みを作る必要はありません。最低限の考え方と順序を押さえておくだけで、被害は現実的に抑えられます。この記事では、リスクマネジメントを難しい理論ではなく、現場で使える考え方として整理していきます。

リスクマネジメントって、結局なにを守るためのもの?

守る対象具体的に守っているもの守れないと起きること
事業の継続売上・取引・業務の流れ業務停止、資金繰り悪化、取引終了
判断の余地余裕のある意思決定パニック対応、場当たり的判断
信頼顧客・取引先・社会的評価クレーム増加、評判悪化、信用低下
社員・担当者・ノウハウ属人化崩壊、離職、引き継ぎ不能
お金想定外の損失・追加コスト賠償・復旧費・保険未対応損失
将来成長の選択肢・挑戦余地攻められない経営、縮小判断

「危険をゼロにすること」ではないって本当?

リスクマネジメントは、すべての危険を消し去ることを目的にしていません。現実の事業では、挑戦や投資を完全に避けることは不可能ですし、避けてしまえば成長も止まります。重要なのは、起こり得る問題を把握したうえで、どこまでなら受け入れられるかを決めておくことです。危険を知ったうえで進む状態と、何も知らずに進む状態では、結果が大きく変わります。これで本当にいいのだろうかと迷う場面ほど、事前の整理が効いてきます。

トラブルが起きてから対応するのと、何が違う?

問題が起きてから動く対応は、どうしても場当たり的になります。誰が判断するのか、どこまで対応するのか、何を優先するのかが決まっていないため、時間もコストも余計にかかります。一方、リスクマネジメントができていると、想定された範囲内で動けます。被害を最小限に抑えやすく、関係者への説明もブレません。いざという時に慌てない状態は、思っている以上に大きな価値があります。誰にも聞けないまま判断を迫られる状況は、できれば避けたいところです。

中小企業や個人事業でも必要になる場面は?

規模が小さいから不要ということはありません。むしろ、人や資金に余裕がない組織ほど、一度のトラブルが致命傷になります。取引先が一社止まるだけで資金繰りが苦しくなる、担当者が抜けただけで業務が回らなくなる、といった状況は珍しくありません。こうした事態を想定し、最低限の備えをしておくことが、事業を続けるための土台になります。まだ大丈夫だと思っていても、その根拠はどこにあるのかと考えると、答えに詰まることもあります。

なぜ今、リスクマネジメントを後回しにできないのか

昔と比べて、企業リスクはどう変わった?

企業を取り巻くリスクは、以前よりも数が増え、広がり方も速くなっています。自然災害の頻度は高まり、IT化によって情報漏えいやシステム停止の影響範囲も一気に拡大しました。ひとつの問題が、取引先や顧客、社会全体へ連鎖する時代です。過去と同じ感覚でいれば大丈夫、という前提はすでに成り立ちません。昔は何とかなっていたけれど、今も同じでいいのだろうかと感じる場面は増えています。

「想定外」が起きやすくなった理由

市場の変化が早く、働き方や取引形態も多様化しています。外部サービスやクラウドに依存する場面が増え、自社だけではコントロールできない要素が増えました。その結果、想定していなかったところから問題が起きやすくなっています。想定外という言葉で片づけてしまいがちですが、多くは想定していなかっただけ、というケースです。そこまで考える必要があるのかと一瞬思ってしまうところに、落とし穴があります。

対策していない会社ほど影響が大きくなる理由

リスクへの備えがない状態では、問題が起きた瞬間に選択肢が極端に減ります。判断が遅れ、対応が後手に回り、結果として被害が拡大します。逆に、最低限の想定と方針があるだけで、初動は大きく変わります。準備にかかる手間よりも、準備不足で失うもののほうが圧倒的に大きいのが現実です。今は忙しいから後でいい、と考えてしまう気持ちが一番危ないのかもしれません。

リスクにはどんな種類があり、自社はどこが弱い?

リスクの種類具体例弱くなりやすいポイント見落とすと起きやすい問題
災害・事故リスク地震・台風・火災・労災拠点集中、代替手段なし業務停止、復旧遅延、取引停止
IT・情報リスク情報漏えい、システム障害パスワード管理、外部サービス依存信用低下、顧客対応混乱、損害賠償
人的リスク退職・欠勤・属人化特定担当者への依存業務停止、引き継ぎ不能
法令・契約リスク法改正未対応、契約ミス確認不足、更新放置罰則、取引条件悪化
財務リスク資金繰り悪化、未回収売上集中、固定費過多支払い遅延、経営不安
評判・SNSリスククレーム拡散、炎上対応ルール不在信頼低下、問い合わせ急増

災害・事故のリスクは、事業にどう影響する?

地震や台風などの自然災害、火災や労災といった事故は、発生した瞬間に業務を止めます。拠点が使えなくなる、人が出社できなくなる、設備が壊れるといった影響は、その日の売上だけでなく、取引先との信頼にも直結します。復旧までの時間が読めない点も厄介です。起きたら仕方ないと考えがちですが、起きた後にどこまで耐えられるかは事前の備えで決まります。自社は何日止まったら厳しいのだろうかと考えると、意外と余裕がないことに気づきます。

情報漏えいやシステム停止は、どこで起きやすい?

業務の多くがITに依存する今、情報漏えいやシステム障害は身近なリスクです。外部サービスの障害、操作ミス、パスワード管理の甘さなど、原因は特別な攻撃だけではありません。一度起きると、顧客対応や社内業務が同時に止まり、回復にも時間がかかります。自分のところは大丈夫と思っていても、実際にどこまで把握できているかは別問題です。正直、全部は分かっていないかもしれないと感じる場面もあります。

法令・取引・お金のトラブルは見落とされやすい?

契約内容の理解不足、法改正への対応遅れ、支払い条件の認識違いなどは、後から大きな問題になりやすい分野です。日常業務が回っていると、つい後回しにされがちですが、発覚したときには修正が効かないこともあります。取引停止や追加コストが発生すれば、事業計画そのものが崩れます。問題が起きていない今こそ、静かに進行しているリスクに目を向ける必要があります。今の契約内容を即答できるかと聞かれると、少し不安になります。

SNSや評判の問題は、どこから火がつく?

SNSや口コミは、企業が意図しない形で広がります。たった一つの対応ミスや説明不足が、短時間で拡散されることも珍しくありません。事実かどうかに関係なく、印象だけが先行する点が特徴です。炎上は大企業だけの話ではなく、規模が小さいほどダメージが残りやすい傾向があります。自社が話題になること自体は少なくても、ゼロではないと考える必要があります。まさか自分の会社が、と思っている時ほど備えがありません。

リスクマネジメントは、何からどう進めればいい?

手順まずやることポイントここが曖昧だと起きること
① 洗い出し起きたら困ることを書き出す完璧を目指さず、業務の流れに沿って出す重要なリスクを見落とす
② 影響度確認起きたときのダメージを考える売上・信頼・業務停止の視点で見る小さな問題に時間を使いすぎる
③ 起こりやすさ確認どれくらいの頻度で起きそうか過去の経験・実績を基準にする想定が甘くなる
④ 優先順位付け対応すべき順番を決める「影響 × 起こりやすさ」で判断本当に危険な点が後回しになる
⑤ 対応方針決定回避・低減・移転・受容を選ぶ全部やらない、やらない理由も決めるその場しのぎの対応になる
⑥ 定期見直し状況変化に合わせて更新年1回でもOK、形骸化を防ぐ作っただけで使われなくなる

まずやるべき「洗い出し」は、どうやって行う?

最初にやるべきことは、起こり得る問題をできるだけ具体的に書き出すことです。完璧さは求めません。業務の流れを追いながら、止まったら困るところ、ミスが起きやすいところ、人に依存しているところを拾っていきます。経験や勘に頼るのではなく、事実ベースで並べることが重要です。思ったより多いな、と感じるくらいでちょうどいい段階です。

影響と起こりやすさは、どう比べればいい?

洗い出したリスクは、影響の大きさと起こりやすさで整理します。売上や信頼への影響が大きいもの、頻繁に起きそうなものから優先度が上がります。ここで感情的に判断するとブレやすくなるため、数段階でもいいので基準をそろえることが大切です。数字にすると冷静になれる反面、これで合っているのだろうかと迷う瞬間も出てきます。

優先順位は、感覚で決めてはいけない?

忙しい現場では、目についた問題から対応しがちです。ただし、それが本当に重要なリスクとは限りません。影響が小さいものに時間を使いすぎると、本当に危険な部分が手つかずになります。限られた時間と資源をどこに使うかを決めること自体が、リスクマネジメントの中心です。全部は無理だと割り切る判断も、実は重要な一歩です。

このリスク、放置すると何が起きる?

小さなトラブルが大きな損失に変わる流れ

初めは軽いミスや小さな遅れでも、放置されると連鎖的に影響が広がります。対応が遅れることで追加対応が必要になり、関係者が増え、説明コストも膨らみます。結果として、当初想定していなかった時間とお金を失います。最初に止めていれば済んだ話が、取り返しのつかない規模になることも珍しくありません。あの時すぐ手を打っていれば、と後から思い返す場面は多いものです。

「そのうち対応」で手遅れになるケース

忙しさを理由に後回しにされたリスクは、静かに進行します。兆候が出ていたにもかかわらず見過ごされ、気づいた時には選択肢がなくなっている状態です。契約トラブルや法令対応の遅れは、このパターンが特に多く見られます。問題が表面化してからでは、修正よりも対応に追われる時間の方が長くなります。まだ大丈夫だと思っていた判断が、結果的に一番高くつくこともあります。

信頼・取引・人材に残るダメージとは?

金銭的な損失よりも厄介なのが、信頼の低下です。一度失った信用は、数字以上に回復が難しくなります。取引条件が厳しくなったり、新しい話が来なくなったりと、じわじわ効いてきます。社内でも、不安や不満が溜まり、人が離れる原因になります。表に見えない影響ほど、実は長く残るものです。ここまで考えると、放置は選択肢に入らないと感じるはずです。

リスクへの向き合い方は、この4つしかない

向き合い方内容向いているケース注意点
回避その業務・取引自体をやめる損失が大きく、見返りが小さい場合成長機会まで失わないか確認が必要
低減起きたときの被害を小さくする完全には防げないが重要な業務現場負担が増えすぎない調整が必要
移転保険・外注・サービスに任せる自社で管理しきれないリスク丸投げにならないよう範囲を明確に
受容起きる前提で受け入れる影響が小さく頻度も低いもの放置と混同しないことが重要

そもそもやらない、という選択はあり?

リスクを避けるために、その業務や取引自体をやめるという選択肢は確かに存在します。利益よりも損失が大きいと分かっている場合、この判断は合理的です。ただし、何も考えずに避け続けると、事業の幅は確実に狭まります。避けるべきリスクと、向き合うべきリスクを分けて考えることが前提になります。全部やめてしまっていいのだろうかと一瞬立ち止まる感覚は、むしろ健全です。

被害を小さくするには、何を変える?

多くのリスクは、やり方を少し変えるだけで被害を抑えられます。手順を増やす、確認を挟む、権限を分けるといった工夫は、その代表例です。完全に防げなくても、影響を限定できれば十分なケースもあります。現場の負担が増えすぎない範囲で調整することが現実的です。そこまでやる必要があるのかと感じた点ほど、後から効いてくることがあります。

保険や外注に任せる判断はいつする?

自社で抱えきれないリスクは、外部に移すという選択が有効です。保険、専門業者、外部サービスの活用は、その典型です。ただし、丸投げでは意味がありません。何を任せて、何を自社で管理するのかを整理しておく必要があります。任せたから安心、ではなく、任せた範囲を把握しているかが重要です。本当にカバーされているのかと確認したくなる場面は、一度は出てきます。

あえて受け入れるべきリスクもある?

すべてのリスクに対策を講じることは現実的ではありません。影響が小さく、起こる頻度も低いものについては、受け入れる判断も必要です。その代わり、起きたときにどうするかだけは決めておきます。何もしないのではなく、理解したうえで受け入れる状態が重要です。放置と受容は似ているようで、実際には大きく違います。

ISOやBCPって、結局どこまでやればいい?

国際基準は、すべて守らないとダメ?

ISOなどの国際基準は、リスクマネジメントの考え方を整理した枠組みです。すべてを完璧に導入しなければならないわけではありません。実務では、自社の規模や体制に合う部分だけを取り入れる方が現実的です。形式をそろえることよりも、考え方が社内で共有されているかどうかのほうが重要になります。全部やらないと意味がないのでは、と構えてしまうと手が止まりがちです。

事業継続計画とリスク管理はどうつながる?

BCPは、事業を止めない、または早く再開するための計画です。その前提として、どんなリスクが事業を止めるのかを把握しておく必要があります。リスクマネジメントで洗い出した内容が、そのままBCPの材料になります。別物として考えるより、一連の流れとして捉えた方が無理がありません。どこまで準備すれば十分なのかと悩む場面でも、優先度が見えやすくなります。

形だけになりやすいポイントはどこ?

チェックリストを作って終わり、書類を整えて満足、という状態はよくあります。ですが、現場が内容を知らなければ、実際のトラブル時には機能しません。決めたことが普段の業務にどう影響するのか、具体的にイメージできているかが分かれ目になります。形を整えること自体が目的になっていないか、一度立ち止まって見直す必要があります。

よくある失敗は、なぜ何度も繰り返される?

担当者任せにすると、なぜ機能しなくなる?

リスクマネジメントを特定の担当者だけに任せると、判断が属人化します。その人が不在になった瞬間に、情報も判断基準も止まります。現場は「聞いていない」「知らない」状態になり、結局は元に戻ります。最低限の共有がない仕組みは、仕組みとは呼べません。自分がいない時はどうなるのか、と考えると不安が残ります。

作っただけで終わる会社の共通点

資料やルールを作成した時点で安心してしまうと、現場とのズレが広がります。業務の実態に合っていない手順は、次第に守られなくなります。使われないルールは、ないのと同じです。定期的に見直されない仕組みは、現実から置き去りになります。これ、今も使われているのだろうかと感じたら要注意です。

現場に伝わらない原因はどこにある?

伝えたつもりでも、受け取られていないことはよくあります。専門用語が多すぎる、現場の負担が想像されていない、といった点が原因になります。現場の動きに落とし込めない内容は、緊急時に役に立ちません。日常業務の中で自然に思い出せる形になっているかが重要です。いざという時に思い出せるだろうか、と考えてみると答えが見えます。

今日からできる、現実的な始め方

ステップやること意識するポイントできていないと起きやすいこと
① 守るものを決める何が一番止まると困るかを決める売上・信頼・人のどれかに絞る対策の方向性がブレる
② 判断者を決める誰が最終判断するか決める平時と緊急時を分けて考える判断待ちで初動が遅れる
③ 最低ラインを決めるどこまで守れればOKか決める完璧を目指さない何も決まらず放置される
④ 小さく始める重要な業務・部署から着手全社一斉にやろうとしない途中で止まる
⑤ 業務に組み込む普段の確認や会議に含める特別扱いしない形骸化する
⑥ 定期的に見直す年1回でも更新する状況変化を前提にする作っただけで終わる

最初に決めるべきことは3つだけ

いきなり完璧を目指す必要はありません。最初は「何が起きたら一番困るか」「誰が判断するか」「最低限どこまで守るか」の3点を決めるだけで十分です。これが曖昧なままだと、どんな対策も形だけになりやすくなります。シンプルでも言葉にして共有されていれば、判断の軸になります。これだけで足りるのかと感じるかもしれませんが、何も決まっていない状態よりは確実に前に進みます。

全社でやらなくても意味はある?

全社一斉に取り組まなくても、意味はあります。影響が大きい業務や、止まると困る部署から始める方が現実的です。部分的でも機能していれば、トラブル時の被害は確実に抑えられます。小さく始めて、必要に応じて広げていく方が続きやすいのも事実です。最初から全員を巻き込めるだろうかと悩んで止まるより、動いた方が結果につながります。

継続できる形にするためのコツ

続かない最大の原因は、日常業務とかけ離れていることです。特別な作業として切り出すのではなく、普段の確認や会議の中に少しずつ組み込みます。定期的に見直すタイミングを決めておくだけでも、形骸化は防げます。無理なく思い出せる仕組みであることが、結果的に一番強い対策になります。これなら続けられそうだと感じる形を選ぶことが大切です。

まとめ

リスクマネジメントは、特別な知識や大がかりな仕組みがないとできないものではありません。起きたら困ることを把握し、起きたときの動きを決めておく、この積み重ねが事業を守ります。やらない理由は見つけやすい一方で、やっておけば防げた後悔は必ず残ります。

完璧を目指す必要はありませんが、何も決めていない状態は明確な弱点になります。小さく始め、現場に合う形で続けることで、トラブル時の判断は確実に早くなります。今は問題が起きていなくても、その状態がいつまで続くかは誰にも分かりません。ここまで読んで、今のままで本当に大丈夫だと言い切れるでしょうか。

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