プロジェクトマネジメント

▶ 管理職(責任者)のプロジェクトマネジメント|全体を動かす考え方

はじめに

「進捗が遅れています」「このままだと予算が足りません」「仕様が変わりそうです」――
管理職としてプロジェクトに関わっていると、こんな報告や相談が毎日のように届きますよね。

会議では納期と予算の数字が並び、現場からは「人が足りない」「追加対応が発生した」といった声が上がります。
そのたびに、「自分が手を動かしたほうが早いのでは?」と感じたことはありませんか。

でも、管理職の役割は、目の前の作業を代わりにこなすことではありません。
限られた時間・人員・予算の中で、どこを優先するのかを決めることです。

たとえば、納期を守るために人を増やすのか。
それとも、機能を一部見直して負担を減らすのか。
予算をこれ以上使わないと決めるなら、どの作業を止めるのか。

複数の条件が同時に動く中で、「今、何を優先し、何を後回しにするのか」を具体的に決めていく。
それが、管理職に求められている役目です。

ここでは、こうした迷いが生まれる場面をひとつずつ整理しながら、どのように考え、どんな行動を取ればよいのかを順番に見ていきます。

管理職がプロジェクトで同時に見ておくべきこととは?

管理職がプロジェクトを見るとき、進捗表や売上見込みだけを追っていても全体は動きません。まず「何のためにやるのか」「どの状態になれば成功なのか」を明確にし、そのうえで納期・コスト・人員といった制約の中で現実的に回るかを確認します。さらに、その判断が他部署や来期の計画にどう波及するのかまで同時に見ておく必要があります。ここでは、管理職が同時に押さえておくべき3つの視点を整理します。

全体を横断して判断する考え方は、統合マネジメントの視点そのものです。
▶統合マネジメントとは?プロジェクト全体を統括する役割と仕組み
複数条件をどう整理し、最終判断につなげるかを具体例でまとめています。

①目的と成果基準

プロジェクトの目的は、「何を終わらせれば完了とするのか」を文章で明確にすることです。たとえば「売上を上げる」では不十分で、「3か月以内に新商品ページを公開し、月間問い合わせ件数を20件から40件に増やす」のように、期限・対象・数値をセットで決めます。

成果基準は、「できたと言える状態」を具体的に定義することです。たとえばシステム開発なら、「全機能が仕様書どおりに動作し、テスト項目100件中不具合ゼロで承認を得る」といった確認条件まで書きます。資料作成なら、「役員会で修正指示が出ず、そのまま承認されるレベル」といった合格ラインを先に決めます。

管理職は、会議のたびにこの2点を照合します。今進めている作業が目的に直結しているか、成果基準を満たす内容になっているかを確認します。目的と成果基準が曖昧なままだと、担当者は作業量だけが増え、完成形がぶれます。

まず「いつまでに」「何を」「どの状態にするのか」を一文で言える状態にします。そのうえで、成果を測る数字や確認方法を決めます。ここが固まっていない場合は、スケジュールや担当割り振りよりも先に修正します。

②スコープ・納期・コスト・人員という制約条件

スコープ・納期・コスト・人員は、同時に数字で把握します。どれか一つだけを見ると判断を誤ります。
まずスコープは、「今回やる作業」と「今回やらない作業」を一覧で分けます。たとえば、Webサイト改修なら「トップページ刷新・問い合わせフォーム改善は含む」「会員機能の追加は含まない」と文章で固定します。ここが曖昧だと、途中で作業が増えます。

納期は、最終期限だけでなく中間締切を日付で設定します。例として「3月31日公開」だけでなく、「3月10日デザイン確定」「3月20日テスト完了」と区切ります。遅れが出た場合は、どの工程で止まっているかを日付単位で確認します。

コストは、総予算と内訳を分けて管理します。「総額300万円、うち外注200万円・広告費50万円・内部人件費50万円」のように構成を明確にします。追加作業が発生した場合は、予算内で吸収できるのか、別途承認が必要かをその場で判断します。

人員は、人数ではなく役割で管理します。「3人いる」ではなく、「要件定義1名、開発1名、テスト1名」のように担当範囲を明確にします。作業量が増えたときは、誰の工数が不足しているのかを具体的に確認します。

管理職は、スコープを増やすなら納期を延ばすかコストを増やすかを決めます。納期を縮めるなら、人員を増やすかスコープを削ります。この4つは必ず連動させて判断します。

範囲を明確にしないと、途中で作業が膨らみます。
スコープマネジメントとは?プロジェクト失敗を防ぐ範囲管理の基本と実践方法
やること・やらないことを固定する具体手順を解説しています。

③「組織全体への影響」

プロジェクトの判断は、その案件の中だけで完結しません。管理職は「この決定が他部署・他案件・人事評価・来期計画にどう影響するか」を同時に確認します。たとえば、特定のプロジェクトを優先してエース社員を3か月専任にした場合、その間に別部署の業務が遅れないかを確認します。月次売上管理や既存顧客対応が滞るなら、別の担当者を補充するか、目標数値を調整する必要があります。

予算の前倒し使用も同様です。今期の予算を追加で500万円使う判断をするなら、他の計画案件を延期するのか、来期の投資枠を減らすのかを決めます。単体プロジェクトの成功だけで判断しません。制度や評価への影響も見ます。短納期を理由に残業を常態化させれば、離職率や人事評価制度に影響します。特定メンバーだけに負荷が集中していないかを、勤怠データや業務配分表で確認します。

管理職は「この案件が成功するか」だけでなく、「会社全体の数字と人にどんな変化が出るか」を具体的に把握します。部門別売上、工数配分、予算残高、人員配置表を並べて見ます。ここまで確認して初めて、実行するかどうかを決めます。

誰の要望を優先するかを整理しないと、判断はぶれます。
▶ステークホルダーマネジメントとは?関係者を洗い出して優先順位を決める手順
関係者の整理方法と優先順位の決め方を具体的にまとめています。

プロジェクトでのPMと管理職の役割の違いとは?

プロジェクトでは「責任者」とひとまとめにされがちですが、PMと管理職では見ている範囲も、下す判断の重さも違います。PMは現場で進行を回し、期限までに成果物を形にする役割です。一方で管理職は、そのプロジェクトを会社全体の方針や他案件とのバランスの中で位置づけ、最終的な方向性を決めます。この違いを整理しておくと、役割の衝突や責任の曖昧さを防げます。

PMは日々の進行と実行を担う立場

PMは、1日の作業単位で進行を管理する立場です。朝の時点でその日のタスクを具体的に確定し、担当者ごとに「何を」「何時までに」終わらせるのかを明示します。たとえば設計書提出が18時締切なら、14時時点で進捗を確認し、未完了なら優先順位を変更させる判断をその場で行います。遅延が30分でも発生すれば、影響する後続作業を洗い出し、当日中に再配分を決めます。

会議では議論を長引かせず、結論と担当者名、期限をその場で確定させます。問題が起きた場合も原因分析を翌日に持ち越さず、まず「今日中にどこまで戻すか」を決めてから行動させます。進捗は感覚で見ず、完了タスク数や残作業時間など数字で確認します。こうして日単位、場合によっては時間単位で実行を前に進めることがPMの役割です。

進捗を数値で把握する方法を具体的に整理しています。
▶プロジェクトにおける進捗管理のやり方|遅延を防ぐ実践手順
日単位で立て直す方法をまとめています。

管理職は方向性と最終判断を担う立場

管理職は、プロジェクトの進め方そのものを決める立場です。開始前に売上目標を年間1億円と設定するのか、利益率を20%確保するのかといった数値目標を確定し、その目標に沿って進めるかどうかを最終的に承認します。途中でコストが当初予算5,000万円から5,800万円へ増える提案が出た場合、その増額を認めるのか、仕様を削減して5,000万円以内に戻すのかを判断します。

納期を3か月延ばす案が出たときも、取引先との契約条件や違約金の有無を踏まえて延長を許可するかどうかを決定します。人員を2名追加する申請があれば、人件費総額と回収見込みを照らし合わせて可否を出します。複数案が提示された場合は、最終的にどの案で進めるかを明確に選び、その決定に責任を持ちます。方向を定め、資源配分と是非を確定させる最終判断を行うことが管理職の役割です。

PMは単一プロジェクト|管理職は複数案件

PMは、担当する1つのプロジェクトに専任で入り、その案件の予算、納期、品質を日単位で管理します。期間が6か月、予算が3,000万円と決まっていれば、その範囲内で進捗を追い、遅れが1日でも出れば当日中に立て直します。会議、資料作成、関係者調整もその単一案件に集中し、判断もそのプロジェクト内部で完結します。

一方で管理職は、同時に3件や5件といった複数の案件を並行して見ます。A案件で1,000万円の追加投資が必要になった場合、B案件やC案件の予算配分と比較し、どこに資金と人員を回すかを決めます。限られた部門人員10名をどの案件に何名ずつ割り当てるかを調整し、優先順位を週単位で組み替えます。単一案件の進行ではなく、複数案件の資源配分と優先順位を決めることが管理職の役割です。

管理職のプロジェクト判断が求められる具体例とは?

管理職の判断が必要になるのは、単に「進みが遅れている」といった日常的な調整ではありません。外部に約束した日程を動かせない状況、想定外の追加費用が発生した場面、人員不足で現場が止まりかけているときなど、会社全体に影響が及ぶ局面です。さらに、複数のプロジェクトが同時に逼迫している場合は、どこを優先し、どこを調整するかを決めなければなりません。ここでは、管理職の最終判断が求められる具体的な場面を整理します。

広告や発表会の日程が決まっている中で不具合が出たとき

テレビCMの放映開始日が6月1日、発表会が5月25日と確定している状態で、5月15日に重大な不具合が見つかった場合、管理職は修正に必要な日数と費用を即座に把握します。修正完了までに10日かかり、追加費用が800万円必要と報告されたなら、5月25日の発表会に間に合うかどうかを日付で判断します。

間に合わない場合は、発表会を延期して違約金300万円を支払うのか、不具合を残したまま限定公開に切り替えるのかを選びます。広告費2,000万円がすでに契約済みでキャンセル不可であれば、品質よりも公開日を優先するかどうかを決定します。人員を3名追加して5日短縮できる案が出れば、その人件費増加分と売上見込みを比較し、採用可否を即断します。日程、費用、信用への影響を数値で照合し、どの条件を守りどの条件を切るかを最終的に決めるのが管理職の判断です。

想定外のトラブルは事前に洗い出しておくことが重要です。
▶プロジェクトのリスクマネジメントとは?PMBOK準拠で手順と具体例を解説
不具合や遅延を事前に想定する方法をまとめています。

見積もりを超える追加費用が発生したとき

当初見積もりが5,000万円だったプロジェクトで、追加費用として1,200万円が必要だと報告された場合、管理職はまず総額6,200万円を許容するかどうかを判断します。利益見込みが800万円だったなら、追加費用により赤字へ転落するため、増額を承認するか、仕様を削減して5,000万円以内に戻すかを即決します。

契約が固定価格であれば、自社負担で進めるのか、発注元と再交渉して600万円でも上乗せできるかを選びます。追加費用の内訳が人件費900万円、外注費300万円であれば、人員を2名減らして人件費を400万円圧縮できるかを検討し、その可否を決めます。支払い時期が今期か来期かによって決算へ影響するなら、計上時期も含めて判断します。増額を認めるのか、内容を縮小するのか、契約を見直すのかを最終的に決めることが管理職の役割です。

追加費用をどう判断するかは、コスト管理の仕組み次第です。
▶コストマネジメントとは?プロジェクトで予算を守る実践手法を解説
予算超過を防ぐ考え方を具体的に整理しています。

チームの人員が不足し進行が止まりそうなとき

開発メンバー5名で進めていた案件で、2名が同時に離脱し、残り3名では納期までに必要な作業時間600時間を消化できないと判明した場合、管理職は不足分の労働時間を具体的に算出します。3名体制で1人あたり月160時間稼働できるとしても、合計480時間しか確保できず、120時間不足するなら、追加で1名を投入して月160時間を確保するのか、納期を2週間延ばすのかを決めます。

外部人材を1名月額80万円で契約する案が出れば、その費用を負担しても利益が残るかを即時に計算します。既存案件から1名を異動させる場合は、移動元案件の進捗遅延が何日発生するかを確認し、どちらの影響が小さいかを比較します。残業で月40時間ずつ上乗せする案が出れば、36協定の上限を超えないかを確認したうえで可否を決めます。人員を増やすのか、期限を延ばすのか、業務量を削減するのかを数値で比較し、最終的にどの選択を取るかを決めるのが管理職の判断です。

複数プロジェクトの納期が重なったとき

A案件とB案件の納期がともに9月30日で、部門の人員が合計8名しかいない場合、管理職はまず各案件に必要な作業時間を算出します。A案件に合計1,000時間、B案件に800時間必要で、1人あたり月160時間稼働できるとすると、8名で1か月に確保できるのは1,280時間にとどまり、合計1,800時間には足りません。

不足分520時間をどちらに優先的に配分するかを決めます。売上規模がA案件3,000万円、B案件1,000万円であれば、Aを優先して人員6名、Bを2名にするのか、違約金が高い方を優先するのかを比較します。納期を2週間延ばせば必要時間が分散できる場合は、延長による違約金や信用低下の金額を算出し、延長可否を判断します。外部委託で300時間補える案があれば、その費用と利益率を照合します。どの案件を予定どおり完了させ、どの案件を調整するかを数値で比較し、最終的な優先順位を確定させるのが管理職の判断です。

管理職のプロジェクト判断の進め方とは?

管理職がプロジェクトで判断を下すとき、感覚や経験だけに頼るとブレが生まれます。納期が迫っている、予算が超過しそう、人員が足りないといった状況でも、順番を固定すれば迷いは減ります。まず何を守るべきかを確認し、動かせない条件を洗い出し、そのうえで優先順位を決める。そして最後に、組織全体への影響を踏まえて結論を出します。ここでは、その判断の進め方を段階ごとに整理します。

トラブル発生時の立て直し方は別途整理しています。
プロジェクトで困ったときの対処法|トラブル別に見る立て直しの進め方
遅延・人員不足・仕様変更時の具体対応をまとめています。

① 目的を確認する

まず売上目標や利益目標など、数値で定義された到達点を確認します。年間売上1億円を達成する案件なのか、利益率15%を確保する案件なのかを明確にします。次に契約書に記載された納期、違約金、成果物の仕様を読み直し、守るべき条件を特定します。社内で決裁済みの予算上限が5,000万円であれば、その枠内で進める前提かどうかを確認します。

目的が新規顧客獲得500件なのか、既存顧客維持率90%の維持なのかによって優先順位が変わるため、数値目標を基準に判断軸を固定します。目的を数値と期限で再確認しないまま対策を選ぶと判断基準がぶれるため、最初に到達点を具体的に確定させます。

② 制約を確認する

次に、動かせない条件を具体的な数値と期限で確認します。納期が10月31日固定なのか、最大2週間まで延長可能なのかを契約書で確定させます。予算上限が4,000万円で追加承認なしでは増額できないのか、取締役決裁で500万円まで上乗せできるのかを確認します。人員が現在6名で、他部署からの応援が0名なのか最大2名まで可能なのかを把握します。

法令や業界基準で必須となる仕様があるなら、その削減が不可であることを明確にします。これらの制約を確認しないまま案を選ぶと後から実行不能になるため、金額、日付、人員数といった動かせない条件を先に確定させます。

納期の管理は、工程単位で分解して見ないと遅れが見えません。
▶スケジュールマネジメントの実務フロー|WBSから進捗管理まで解説
計画から遅延把握までの流れを整理しています。

③ 優先順位を決める

目的と制約を確認したうえで、どの条件を最優先で守るかを数値で決めます。売上3,000万円の案件と1,000万円の案件が同時に遅延しているなら、売上規模の大きい方を優先するのか、違約金500万円が発生する方を優先するのかを選びます。納期10月31日固定、予算上限4,000万円、人員6名という条件がある場合、納期を守ることを最優先にするのか、予算超過を出さないことを最優先にするのかを一つに絞ります。すべてを同時に守ろうとすると実行が止まるため、守る条件を一つに定め、他の条件はどこまで緩めるかを具体的に決めます。優先順位を数値基準で固定することで、選ぶべき対応が一つに定まります。

④ 影響を考えて決める

優先順位を定めたうえで、その選択がどこにどれだけ影響するかを数値で確認します。納期を2週間延長する場合、違約金が200万円発生するのか、翌月売上が3,000万円から2,500万円に減るのかを試算します。追加人員を1名月80万円で投入する場合、最終利益が500万円から420万円に下がるのかを計算します。仕様を削減して工数を100時間減らす場合、顧客満足度調査の目標90%が85%に下がる見込みがあるかを確認します。影響を金額、日付、人数、割合で把握せずに決めると後から修正が必要になるため、選択肢ごとの増減を具体的に比較し、その差を受け入れると決めたうえで最終判断を下します。

管理職はプロジェクトにどこまで関わるべき

管理職がプロジェクトに深く入りすぎると現場の判断が止まり、逆に距離を取りすぎると重大な判断が遅れます。どこまで関わるかを曖昧にしたまま進めると、PMとの役割が重なり、責任の所在もぼやけます。日々の進行管理と、会社全体に影響する意思決定は切り分ける必要があります。ここでは、管理職が関与すべき範囲を具体的に整理します。

日々の進行や作業手順はPM

日々の進行管理と作業手順の決定はPMが担います。今日の作業を10項目に分け、担当者ごとに「誰が」「何を」「何時までに」終えるかを具体的に割り振るのはPMの役割です。設計書提出が18時締切なら、14時時点で進捗を確認し、遅れがあれば優先順位を変更して当日中に完了させる判断を行います。作業工程を3段階に分けるのか5段階に分けるのか、レビューを何回入れるのか、会議を週2回にするのか週1回にするのかといった実行単位の決定もPMが行います。日単位や時間単位でタスクを調整し、作業を止めずに前へ進める具体的な管理と手順設計はPMの責任範囲です。

予算・納期・契約変更など影響が大きい判断は管理職

予算が当初4,000万円から4,700万円へ増える提案が出た場合、その増額を承認するかどうかを決めるのは管理職です。納期が12月31日固定の契約で、2週間延長する案が出たときに、違約金300万円を支払って延長するのか、追加人員を投入して期限内に収めるのかを選ぶのも管理職です。契約書の成果物範囲を変更し、機能を3項目削減してコストを500万円下げる再交渉を行うかどうかも管理職が判断します。支払条件を検収後30日から60日に変更する交渉を進めるかどうかを決めるのも同様です。金額、期限、契約条件に影響し、部門の損益や信用に直結する変更は、最終的に管理職が可否を確定させます。

複数プロジェクトに影響する配分は管理職

部門の人員が10名で、A案件に6名、B案件に4名を配置している状況で、A案件に追加で2名必要だと報告が上がった場合、どの案件から人員を移すかを決めるのは管理職です。A案件の売上が5,000万円、B案件が2,000万円であれば、Bから2名を移して納期を1週間遅らせるのか、外部委託に月100万円で依頼して両方の納期を守るのかを比較します。

年間予算が1億円で残額が2,000万円しかない中で、どの案件に追加費用を充てるかを決めるのも管理職です。特定案件の優先順位を上げることで他案件の納期が何日遅れるかを確認し、その影響を許容するかどうかを判断します。複数案件にまたがって人員、予算、時間を再配分する決定は管理職が行います。

管理職が優先順位を決めないとプロジェクトはどうなる?

複数の案件が同時に動いている中で、管理職が優先順位を示さないまま進めると、現場は目の前の作業から順に手を付けるしかなくなります。その結果、本来先に守るべき納期や利益率が後回しになることもあります。誰がどの基準で決めるのかが曖昧な状態は、進行だけでなく責任の所在にも影響します。ここでは、優先順位を決めない場合に起きる具体的な変化を整理します。

プロジェクト全体の進行が遅れる

管理職がどの案件を先に進めるかを決めないまま人員10名を複数案件に分散させると、各案件に必要な作業時間を満たせなくなります。A案件に600時間、B案件に500時間必要なのに、どちらも同じ人数で対応させると月内に確保できる労働時間が足りず、両方が未完了になります。納期が同じ月末でも優先順位を示さないと、担当者は判断できず作業の手戻りが発生し、1日単位の遅れが積み重なります。

追加費用の承認を先延ばしにすると、外注発注が遅れ、さらに5日、10日と工程が後ろにずれます。守る条件を一つに定めないまま進めることで、結果として全体の完了日が当初計画より遅れます。

現場が自分で優先順位を決め始める

管理職が売上規模や違約金の有無などの基準を示さないまま複数案件を並行させると、担当者は自分の判断で作業順を決め始めます。自分の評価に直結する案件を先に進めたり、作業量が少ないタスクから手を付けたりと、個人単位で優先順位を設定します。その結果、部門として優先すべき売上5,000万円の案件よりも、売上1,000万円の案件が先に進むことが起きます。

追加費用の承認が出ないまま待つ担当者と、独断で進める担当者が混在し、判断基準が部署内で統一されなくなります。優先順位を上位者が固定しないことで、現場ごとに異なる基準が生まれ、全体の方向が揃わなくなります。

最終責任の所在が曖昧になる

管理職がどの案件を優先するかを明確に示さないまま進行させると、納期遅延や予算超過が発生した際に誰が最終的に承認したのかが特定できなくなります。たとえば予算上限4,000万円を500万円超過した場合、増額を認めたのが誰なのか、判断基準が何だったのかが記録されていなければ、責任の所在が定まりません。

納期を2週間延ばした決定が口頭だけで行われていれば、契約違反が生じたときに誰が延長を許可したのか説明できなくなります。優先順位を正式に決裁せず現場判断に任せると、結果に対する承認者が不在となり、最終責任を負う立場が曖昧になります。

終わりに

管理職の役割は、作業の進み具合を細かく追うことではありません。複数の案件や部署が動く中で、何を優先し、どこで止め、どこに資源を配分するかを決めることです。優先順位が明確であれば、現場は迷いません。逆に、方向が定まらなければ会議は増え、判断は先送りされ、責任の所在が曖昧になります。

プロジェクトを前に進めるのは現場ですが、進む方向を定めるのは管理職です。目的と制約を整理し、優先順位を言語化し、影響範囲を確認してから決める。この一連の判断を繰り返すことで、組織全体の動きは整います。

任せる範囲と上げる基準を明確にすれば、過干渉も放任も起きません。管理職に求められるのは、すべてを知ることではなく、決めるべき場面で迷わないことです。日々の選択の積み重ねが、プロジェクト全体の安定につながります。

プロジェクト全体の基本構造から整理したい場合はこちらも参考になります。
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管理職視点の前提となる基礎構造をまとめています。

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