リーダーシップとマネジメントスキル

職場で使えるアサーティブコミュニケーションの事例集|相手を尊重しながら伝える言い方を解説

はじめに

「仕事を断りたいけれど、角が立ちそうで言い出せない」
「上司や同僚に意見を伝えたいのに、強く言いすぎたり我慢しすぎたりしてしまう」と感じたことはありませんか。

職場では、急な業務依頼を受けたり、会議で意見を求められたり、協力をお願いしたりする場面が日常的にあります。

しかし、相手との関係を気にするあまり本音を飲み込んでしまったり、反対に感情的な伝え方になってしまったりして、あとから後悔することも少なくありません。

この記事では、アサーティブコミュニケーションの基本的な考え方から、仕事を頼まれすぎたときや上司へ相談するとき、同僚へ協力をお願いするときなど、職場でよくある場面別の事例まで分かりやすく紹介します。

アサーティブコミュニケーションとは?

アサーティブコミュニケーションという言葉を聞いたことがあっても、「具体的にどのような伝え方なのか分からない」「普通のコミュニケーションと何が違うのか知りたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。

ここでは、アサーティブコミュニケーションの基本的な考え方や特徴、非主張型・攻撃型との違い、そして職場で重要とされる理由について順番に解説していきます。

相手を尊重しながら自分の意見を伝えるコミュニケーション

アサーティブコミュニケーションとは、相手の意見や立場を尊重しながら、自分の考えや要望を率直に伝えるコミュニケーション方法です。

自分だけが我慢したり、一方的に要求したりするのではなく、「現在は他の案件を2件担当しているため、本日中の対応は難しいですが、明日の15時までであれば対応できます」のように、事実と要望を分けて伝えます。

相手への配慮を示しながら自分の意思も明確に伝えることで、認識のずれや不要な対立を防ぎやすくなります。

非主張型・攻撃型との違い

非主張型は、自分の意見や要望があっても「大丈夫です」「お任せします」と相手を優先し、自分の考えを十分に伝えない話し方です。

一方、攻撃型は「それは間違っています」「そのやり方ではだめです」のように、自分の意見を優先して相手への配慮を欠いた伝え方を指します。

これに対してアサーティブコミュニケーションは、相手の意見を尊重しながら、自分の考えや要望も明確に伝える方法です。

相手と自分のどちらかを優先するのではなく、お互いを大切にしながら話し合いを進めやすくする考え方といえます。

アサーティブコミュニケーションが職場で重要と言われる理由

アサーティブコミュニケーションが職場で重要と言われるのは、業務の依頼や相談、報告の場面で、必要な情報や要望を正確に伝えやすくなるためです。

自分の考えを伝えずに引き受け続けると業務量の偏りが起こりやすく、反対に強い言い方ばかりでは対立や反発を招きやすくなります。

相手の立場を尊重しながら自分の意見や状況を具体的に伝えることで、お互いの認識を合わせやすくなり、仕事上の行き違いを減らしやすくなります。

『相手を尊重しながら意見を伝えるには、職場全体で安心して発言できる環境づくりも大切です。心理的安全性について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。』
心理的安全性とは?意味・注目される理由・高い職場の特徴をわかりやすく解説

職場でよくあるアサーティブコミュニケーションの事例

職場では、自分の考えを伝えたり相手に依頼したりする場面が日常的にあります。

ここでは、仕事を頼まれすぎたときの対応から上司への相談、同僚への依頼、部下への指導、会議での発言まで、職場でよくある場面ごとの具体的な事例を紹介します。

仕事を頼まれすぎたときの伝え方

仕事を頼まれすぎたときは、無理に引き受けたり感情的に断ったりせず、現在の業務状況を伝えたうえで対応できる範囲を示します。

例えば

「現在は3件の案件を進めており、本日中に対応するのは難しい状況です。明日の午前中であれば着手できます」

のように、業務量と対応可能な日時を具体的に伝えます。

現状と要望を分けて伝えることで、相手にも状況を理解してもらいやすくなり、優先順位や期限を相談しやすくなります。

上司へ相談や意見を伝えるときの事例

上司へ相談や意見を伝えるときは、不満や反対だけを伝えるのではなく、現状と自分の考えを分けて話すことが大切です。

例えば

「現在の進め方では納期まで残り3日で作業工程が2つ残っています。このままでは完了が難しいため、優先順位の見直しをご相談したいです」

のように、事実を示したうえで要望や意見を伝えます。

状況の根拠と自分の考えを整理して伝えることで、上司にも意図が伝わりやすくなり、相談をスムーズに進めやすくなります。

『上司への相談や報告の伝え方に迷う場合は、報連相の基本を押さえておくと、要点を整理しながら話しやすくなります。』
▶報連相とは?意味やコツ・上手に伝えるポイントを解説

同僚へ協力をお願いするときの事例

同僚へ協力をお願いするときは、依頼内容と必要な範囲を具体的に伝えながら、相手の状況にも配慮して話します。

例えば

「15時までに提出する資料の最終確認が終わっていません。10分ほど内容を確認していただくことは可能でしょうか」

のように、依頼する理由と必要な時間を明確に伝えます。

相手が判断しやすい情報を添えてお願いすることで、協力を得やすくなり、仕事もスムーズに進めやすくなります。

部下へ改善を伝えるときの事例

部下へ改善を伝えるときは、人格や能力を評価するのではなく、実際の行動や結果を具体的に伝えます。

例えば

「昨日提出された資料は提出期限の17時を30分過ぎていました。次回は16時までに進捗を共有してもらえると、修正が必要な場合でも期限内に対応できます」

のように、事実と改善してほしい行動を分けて伝えます。

感情的な言い方を避け、改善点を具体的に伝えることで、部下も次に何をすればよいのか理解しやすくなります。

会議で意見を伝えるときの事例

会議で意見を伝えるときは、他者の意見を否定するのではなく、自分の考えとその根拠を具体的に伝えます。

例えば

「現在の案には賛成ですが、作業期間が5日間では検証工程が不足するため、2日延長する案も検討したいと考えています」

のように、相手の意見を認めたうえで自分の考えを示します。

判断の根拠と提案内容を明確に伝えることで、お互いの考えを整理しやすくなり、会議もスムーズに進めやすくなります。

職場で使えるアサーティブコミュニケーションの言い換え例

アサーティブコミュニケーションを実践するときは、考え方を理解するだけでなく、実際にどのような言葉で伝えるかを知っておくことも大切です。

ここでは、相手との関係を大切にしながら自分の考えや状況を伝えるための言い換え例を場面別に紹介します。

否定せずに意見を伝えたいとき

否定せずに意見を伝えたいときは、「それは違います」と結論から否定するのではなく

「その考え方も理解できます。そのうえで、納期まで残り2日であることを考えると、こちらの方法も検討できると思います」

のように、相手の意見を認めてから自分の考えを伝えます。

最初に相手の考えを受け止めることで、意見の違いがあっても対立しにくくなり、落ち着いて話し合いを進めやすくなります。

断りづらい依頼を断りたいとき

断りづらい依頼を断りたいときは、「できません」とだけ伝えるのではなく、対応できない理由と可能な範囲を具体的に伝えます。

例えば

「ご依頼ありがとうございます。ただ、現在は2件の案件を進めており、本日中の対応は難しい状況です。来週月曜日であれば対応できます」

のように伝えます。

現在の状況と対応できる範囲を示すことで、相手にも事情を理解してもらいやすくなり、お互いに納得できる形で調整しやすくなります。

相手へ改善をお願いしたいとき

相手へ改善をお願いしたいときは、人格や態度を指摘するのではなく、実際に起きている事実と望む行動を具体的に伝えます。

例えば

「資料の共有が会議開始後になることが続いているため、内容確認の時間が取れていません。会議開始の30分前までに共有していただけると助かります」

のように伝えます。

改善してほしい点を具体的に伝えることで、相手も何を変えればよいのか理解しやすくなり、前向きに話し合いを進めやすくなります。

自分の状況を理解してほしいとき

自分の状況を理解してほしいときは、不満や感情だけを伝えるのではなく、現在の状況と必要な配慮を具体的に伝えます。

例えば

「今週は月末処理と顧客対応が重なっており、1日あたり3件の打ち合わせがあります。そのため、追加業務は来週から対応させていただけると助かります」

のように伝えます。

現状と要望を明確に伝えることで、相手にも状況を理解してもらいやすくなり、お互いに無理のない形で調整しやすくなります。

アサーティブコミュニケーションのNG例

アサーティブコミュニケーションは、自分の意見を伝えることだけを目的とした方法ではありません。

ここでは、アサーティブコミュニケーションでよくあるNG例を取り上げながら、避けたい伝え方の特徴を解説します。

遠回しすぎて伝わらないケース

遠回しすぎて伝わらないケースでは、自分の要望や意見をはっきり伝えず、相手に察してもらうことを期待してしまいます。

例えば、「最近少し忙しいかもしれません」と伝えるだけでは、業務量を調整してほしいのか、相談したいのかが相手には伝わりません。

伝えたい内容が曖昧なままだと状況は変わりにくいため、要望や希望する対応を具体的な言葉で伝えることが大切です。

強く言いすぎて攻撃的になるケース

強く言いすぎて攻撃的になるケースでは、自分の意見や要望を伝える際に、相手の考えや状況を考えず一方的な表現を使ってしまいます。

例えば、「そのやり方は間違っています」「すぐに直してください」と伝えると、改善内容よりも言い方に意識が向きやすくなります。

相手に伝えたい内容を正しく理解してもらうためにも、事実と要望を分けて、落ち着いて伝えることが大切です。

感情だけで伝えてしまうケース

感情だけで伝えてしまうケースでは、「納得できません」「困っています」と気持ちだけを伝え、何が問題でどのような対応を望んでいるのかを示していません。

感情だけでは相手が状況を正確に把握できず、どう対応すればよいか判断しにくくなります。

気持ちを伝えることも大切ですが、事実や改善してほしい内容を具体的に伝えることを意識しましょう。

職場でアサーティブコミュニケーションを実践するコツ

アサーティブコミュニケーションは知識として理解するだけではなく、日々の職場で意識して実践することが大切です。

ここでは、職場でアサーティブコミュニケーションを実践する際に意識したいコツを順番に解説していきます。

まず事実と気持ちを整理する

アサーティブコミュニケーションを実践するときは、まず実際に起きた出来事と、自分が感じていることを分けて整理します。

例えば、「資料の提出が期限より1日遅れた」という事実と、「作業計画の変更が必要になり困った」という気持ちは別の情報です。

事実と気持ちを整理して伝えることで、相手にも状況が伝わりやすくなり、落ち着いて話し合いを進めやすくなります。

相手を否定せずに伝える

要望を伝えるときは、相手を責めたり否定したりせず、事実をもとに自分の希望を具体的に伝えます。

例えば、「資料は会議開始の30分前までに共有していただけると確認時間を確保できます」のように、相手にしてほしい行動を落ち着いて伝えます。

相手への配慮を示しながら話すことで、要望も受け入れてもらいやすくなり、前向きに話し合いを進めやすくなります。

要望は具体的に伝える

要望を伝えるときは、「もう少し頑張ってほしい」「できれば早めにお願いします」といった曖昧な表現ではなく、何をいつまでにしてほしいのかを具体的に伝えることが大切です。

例えば、作業内容や期限、希望する対応を分けて伝えると、相手も求められていることを理解しやすくなります。

要望を具体的に伝えることで認識のズレを防ぎ、お互いに納得したうえで行動しやすくなります。

相手の意見も受け止めながら話す

相手の意見も受け止めながら話すためには、自分の考えを伝える前に、相手の発言内容を確認して理解したことを言葉にします。

例えば、「納期を優先したいという考えは理解しました。そのうえで、検証期間を2日確保したいと考えています」のように伝えます。

相手の考えを受け止めたうえで自分の意見を伝えることで、お互いに納得できる話し合いを進めやすくなります。

『相手の話を正しく理解しながら会話を進めたい方は、聞く力を高めるコツについても確認してみてください。』
▶聞く力とは?鍛え方やコミュニケーションで役立つポイントを解説

まとめ

アサーティブコミュニケーションは、自分の意見を我慢したり、相手を言い負かしたりするための話し方ではありません。

相手を尊重しながら、自分の考えや気持ちも大切にして伝えるためのコミュニケーション方法です。

仕事では、断りづらい依頼を受けたり、意見の違いに悩んだり、自分の状況をうまく説明できなかったりすることがあります。

そのようなときも、事実を整理し、相手への配慮を忘れずに自分の考えを伝えることで、お互いに納得できる話し合いにつながりやすくなります。

最初から完璧に実践しようとする必要はありません。

まずは「事実を伝える」「要望を具体的に伝える」「相手の意見を受け止める」の3つを意識するだけでも、コミュニケーションは少しずつ変わっていきます。

できる場面から取り入れながら、自分らしく話せる伝え方を見つけていきましょう。

-リーダーシップとマネジメントスキル
-, ,