プロジェクトマネジメント

マーケティングプロジェクト管理を完全攻略|10ステップで成果を出す実務ガイド

この記事でわかること

  • 「マーケティングプロジェクト管理」とは何か、一般的なPMとの違い
  • キャンペーン施策を失敗させない10ステップの進め方
  • マーケティング特有の「ぐちゃぐちゃ問題(調整・変更・短納期)」のさばき方
  • チームと外部パートナーを動かすコミュニケーション設計
  • すぐに真似できるタスク設計・KPI設計・ツール活用の具体例
  • 成功パターンを「属人スキル」から「組織の資産」に変える方法

目次

マーケティングプロジェクト管理とは何か?

マーケティングプロジェクト管理とは、
広告運用・SNS・コンテンツ制作・LP制作・イベント・メルマガなど、バラバラに見えるマーケ施策を
「一つのプロジェクト」として設計・実行・検証するための管理手法 です。

  • いつまでに
  • 誰に
  • どのチャネルで
  • どんなメッセージを届け
  • どのくらいの成果(売上・リード・認知)を出すのか

これを 計画 → 実行 → モニタリング → 改善 の流れで“見える化”し、関係者を巻き込みながら進めていくのがマーケティングプロジェクト管理の役割です。

単発の広告やSNS投稿ではなく、
「認知 → 興味 → 比較 → 行動」という一連の流れを1つのストーリーとして設計し、
複数チャネルが連動して成果につながる状態をつくるのがゴールになります。


一般的なプロジェクト管理との違い

共通するのは QCD(品質・コスト・納期)の考え方ですが、マーケティング領域には次のような特徴があります。

施策の成否が「KPI」という数値でシビアに評価される

  • CTR(クリック率)
  • CVR(コンバージョン率)
  • CPA(顧客獲得単価)
  • ROAS(広告費用対効果)
  • LTV(顧客生涯価値)

など、結果がすべて数字で可視化されます。
「やった感」では評価されないため、プロジェクト管理も 数字を前提とした設計 が欠かせません。

トレンド・競合・アルゴリズムなど外部要因の変化が激しい

  • SNSアルゴリズムの変更
  • 検索順位の変動
  • 広告単価の急騰・急落
  • 競合のキャンペーン開始

こうした外部要因で、計画が簡単に崩れます。
そのため、最初から「完璧な計画」を作るよりも、
変化に対応しやすい計画とモニタリングの仕組み が重要になります。

社内外の関係者(営業・商品開発・制作会社・広告代理店など)が多い

マーケティングプロジェクトには、多くの部署・パートナーが関わります。

  • 営業・事業部
  • 商品開発・CS
  • デザイナー・ライター・エンジニア
  • 制作会社・広告代理店・フリーランス

関係者が増えるほど、情報が分散し、判断のスピードが落ちます。
マーケティングPMには、情報整理・優先順位づけ・意思決定のフォロー まで求められます。

「やってみないとわからない」要素が大きく、途中変更が前提

  • どの訴求が一番刺さるか
  • どのクリエイティブが成果を出すか
  • どのチャネルが一番効率が良いか

これらは、事前の机上検討だけでは決まりません。
テスト → 学び → 改善 を前提にした設計が必須であり、
「変化に対応できる計画」と「意思決定しやすい情報設計」 がプロジェクト管理の要になります。


マーケティングプロジェクト管理がもたらす4つの価値

1. 全体像が見えることで、ムダ撃ちが減る

チャネルごとにバラバラに動くと、

  • 同じような訴求を何度も作る
  • タイミングがズレて認知が分散する
  • 担当者のリソースが偏る

といったロスが出ます。

プロジェクトとして管理することで、
「どのタイミングでどのチャネルが何を打つか」 を俯瞰でき、
重複・抜け漏れを抑えた、無駄の少ない構成にできます。

2. チームの意思決定が早くなる

  • 目的・KPI
  • スケジュール
  • 優先度

これらが共有されていれば、現場で迷ったときも
「このKPIを優先するから、A案ではなくB案でいこう」
といった判断がしやすくなります。

意思決定の基準が共有されているほど、
“いちいち上に聞かないと進まない”状態から脱却 できます。

3. 外部パートナーとの連携がスムーズになる

制作会社・広告代理店・フリーランスなど、外部パートナーが関わるほど、
「どの情報を、いつ、どのレベルまで共有するか」 が重要になります。

プロジェクト管理の枠組みがあると、

  • 事前のブリーフ
  • スケジュール
  • レビューのポイント

をテンプレート化できるため、案件数が増えても混乱しにくくなります。
毎回のやり取りも、「型に沿って進めるだけ」 の状態に近づけられます。

4. 「再現性のある成功パターン」がたまる

単発の“当たり施策”で終わらせず、

  • どんな計画・体制・メッセージだったのか
  • どの指標が、いつ、どう動いたか

を記録・振り返ることで、「勝ちパターンのテンプレ」を作れるようになります。
ここまでいくと、マーケティングプロジェクト管理は
「属人技」から「組織の資産」 に変わっていきます。


成果が出るマーケティングプロジェクト管理 10ステップ

ここからは、実務でそのまま使える 10ステップの標準プロセス を紹介します。
フェーズごとに整理しておくと、どこで詰まっているかが分かりやすくなります。


フェーズ1:目的・KPIの設計(ステップ1〜3)

ステップ1:プロジェクトの目的を一言で定義する

例:

  • 新商品の認知を広げる
  • 既存顧客のリピート率を上げる
  • 見込み顧客(リード)を月100件獲得する

「何のための施策か」を一言にまとめることで、
企画・クリエイティブ・チャネル選定など、後の意思決定がブレにくくなります。

ステップ2:ゴール指標(KGI)と中間指標(KPI)を設定する

例:

  • KGI:キャンペーン期間中の売上◯◯万円
  • KPI:
    • LPアクセス数◯◯PV
    • CVR◯%
    • メール開封率◯%
    • 広告CPA◯円以内

「売上だけ」ではなく、プロセスを分解したKPIを複数用意しておくと、
途中での 軌道修正ポイント が見つかりやすくなります。

ステップ3:ターゲットとインサイトを具体化する

  • 年齢・性別・職業などの基本属性
  • どのチャネルによく触れているか
  • どんな課題・欲求を持っているか
  • その課題をどんな言葉で検索し、どんなコンテンツを好むか

ここまで落とし込んでおくと、
コピー・クリエイティブ・チャネル選定が圧倒的に楽になります。
「誰向けかわからない、ふわっとした施策」を避けられます。


フェーズ2:戦略設計(ステップ4〜5)

ステップ4:チャネルとメッセージの全体設計

まずは、どのチャネルを使うかを決めます。

  • 広告(リスティング・ディスプレイ・SNS)
  • 自社メディア(ブログ・オウンドメディア)
  • SNSアカウント
  • メール・LINE
  • オフライン(チラシ・イベント・セミナー)

次に、チャネルごとの役割を整理します。

  • 認知獲得用
  • 深い情報提供・検討促進用
  • クロージング・リマインド用

最後に、共通のコアメッセージ+チャネルごとの表現の違い を設計します。
ここで 「キャンペーン全体のストーリーライン」 を描いておくと、
どのタッチポイントでも一貫性のある体験を提供できます。

ステップ5:オファー・CTAを決める

  • どんなオファーを打つか
    • 割引・特典
    • サンプル・資料請求
    • 無料相談・体験会
  • どのタイミングで、どのチャネルで出すか
  • ユーザーに「次の1歩」として何をしてほしいか(CTA)

オファーが曖昧だと、どれだけリーチしても成果につながりません。
ゴールから逆算して、「次の1クリック」を明確にするイメージ で設計します。


フェーズ3:計画・タスク設計(ステップ6〜7)

ステップ6:WBSでタスクを洗い出す

「なんとなくToDoを並べる」のではなく、
WBS(Work Breakdown Structure)の考え方でタスクを分解していきます。

例:新商品キャンペーンのWBSイメージ

  • 戦略・設計
    • KPI設計
    • ターゲット定義
    • 競合・市場調査
  • クリエイティブ制作
    • LP構成案作成
    • LPデザイン・コーディング
    • バナー制作(サイズ別)
    • SNS用画像・動画制作
  • コンテンツ制作
    • ブログ記事(◯本)
    • メルマガ/LINE配信文(◯通)
  • 配信・運用設定
    • 広告アカウント設定
    • コンバージョンタグ実装確認
    • 配信スケジュール設定
  • 計測・レポート
    • ダッシュボード設計
    • 週次/日次レポート作成

「誰が見ても漏れなく・ダブりなく」になるまで分解しておくと、
担当の引き継ぎや外注依頼もしやすくなります。

ステップ7:スケジュールと依存関係を決める

  • LPデザインは「構成案」が決まらないと着手できない
  • 広告配信は「バナー」「入稿テキスト」「LP」が揃わないと打てない

このような 依存関係を明示 し、
ガントチャートやボードビューでスケジュールを組んでいきます。

ポイントは、

  • レビュー・修正時間をあらかじめバッファとして入れておく
  • 「ここからはもう戻らない」という決定ポイント(マイルストーン)を決めておく

ことです。
これだけで、後半の「間に合わない」「戻せない」を大幅に減らせます。


フェーズ4:実行・モニタリング(ステップ8〜9)

ステップ8:実行中の情報を1ヶ所に集約する

実行フェーズでよく起きるのは、

  • チャット
  • メール
  • スプレッドシート
  • 口頭共有

などに情報が分散し、誰も全体を把握できなくなるパターンです。

そこで、
「プロジェクトの唯一の情報源(Single Source of Truth)」 を決めておきます。

例:

  • Asana / Trello / Backlog などのプロジェクト管理ツール
  • Notion / Confluence などの情報整理ツール

そこに

  • タスクの状態(未着手/進行中/レビュー待ち/完了)
  • 最新の資料リンク
  • 決定事項・変更履歴

を集約しておくと、関係者が増えても混乱しにくくなります。

ステップ9:KPIと現場感をセットでモニタリングする

  • 日次 / 週次で見る指標を決める
  • ダッシュボードやレポートのフォーマットを固定する

例:

  • 集客:インプレッション・クリック・CTR・CPC
  • サイト内:セッション数・直帰率・CVR
  • CV後:商談化率・成約率・LTV

数値だけで判断せず、

  • ユーザーの反応(問い合わせ内容・コメント・SNSの声)
  • 制作現場の状況(想定より工数がかかっている箇所)

もセットで見て、「どこを触れば一番効くか」を判断します。
レポートは 「今どうなっているか」だけでなく「次に何をするか」まで書く と、意思決定が一気に楽になります。


フェーズ5:振り返り・ナレッジ化(ステップ10)

ステップ10:キャンペーンレビューを“テンプレ化”する

キャンペーン終了後に、毎回同じ観点で振り返ることが、再現性を上げる近道です。

振り返りの例:

  • 目的・KPIは妥当だったか
  • どのチャネル・メッセージ・オファーが効いたか
  • 計画と実績のギャップはどこで生まれたか
  • 次回は何を「やめる / 強化する / 変える」のか

これを1枚のテンプレート(スライド・ドキュメント)でまとめておくと、
社内での共有や、外部パートナーとの振り返りにも使えます。
ここでの記録が、そのまま 「次回案件の最初の設計図」 になります。


マーケティングプロジェクトで起こりやすい4つの“つまずき”と対処法

1. スコープクリープ(いつの間にか仕事が膨らむ)

  • 「ついでにこれもやりたい」が増える
  • 途中でターゲット・メッセージが変わる
  • ただし納期と予算はそのまま

対処のポイント:

  • 最初に「今回のプロジェクトで“やらないこと”」まで決めておく
  • 変更リクエストの窓口とルール(誰が、いつまでに、どう判断するか)を決めておく
  • 変更のたびに「スケジュール・コストへの影響」を必ずセットで共有する

2. 関係者が多すぎて調整だけで疲弊する

マーケティングは、

  • 営業・事業部
  • 経営層
  • 開発・制作
  • 法務・コンプライアンス

など調整先が多くなりがちです。

対処のポイント:

  • 関係者を「意思決定者」「レビューだけ必要な人」「報告だけでよい人」に分ける
  • それぞれに必要な情報の粒度・タイミングを決めておく
  • 重要な判断は、プロジェクトごとに「最終決定者」を1人に絞る

3. 要件変更・差し戻しが何度も発生する

  • デザインやコピーが「なんとなく違う」と何度も戻ってくる
  • 方向性が曖昧なまま制作が進んでいる

対処のポイント:

  • 初期の「コンセプト・方向性」を文章とラフで見える化する
  • NG例・競合例もセットで共有しておく
  • レビューの回数・タイミングをあらかじめ決める(無限ループを防ぐ)

4. 数字は追っているのに、次の一手が見えない

レポートは作っているのに、
「で、何を変えればいいの?」という状態になりがちです。

対処のポイント:

  • KPIを「仮説」とセットで設計しておく
    • 例:「30代女性はこのオファーに強く反応するはず」
  • レポートは「現状の数字」ではなく「次にやること」まで書く
  • 施策ごとに「打てる次の一手」を候補としてストックしておく

チームを動かすための4つの実践Tips

Tip1:コミュニケーション設計を最初に決める

  • 定例ミーティングの頻度・目的(企画/進行/振り返り)
  • どのテーマをどのチャネルで話すか(チャット/メール/会議)
  • 決裁・エスカレーションの流れ

これを プロジェクトキックオフ時に一度決めておく だけで、
後半のバタバタが大きく減ります。

Tip2:誰が見てもわかる「タスクボード」を作る

  • カンバン形式(ToDo/進行中/レビュー/完了)
  • 期限・担当・関連資料リンクを必ずセットで記載
  • 「今日自分がやるべきこと」が一目でわかる状態に

ツールは何でも構いませんが、
「紙+口頭」からは早めに卒業するのがおすすめです。

Tip3:KPIレビューの日を固定する

  • 週1回、同じ曜日・同じ時間に「KPIミーティング」を入れる
  • 見る指標を固定し、フォーマットも変えない
  • 「何が起きているか」「次に何をするか」だけに絞って話す

これをルーティン化すると、プロジェクト管理が
単なる「レポート作業」で終わらず、
ちゃんと “次の一手”につながる時間 になります。

Tip4:トラブル前提で「代替案」を用意しておく

  • クリエイティブが遅れたときの代替案
  • 広告が想定より高騰した際のプランB
  • 担当者が不在になった場合のバックアップ

完全に防ぐのは難しいので、
「起こったらどうするか」を先に決めておくことが、結果的にスピードを生みます。


マーケティングプロジェクト管理に役立つツール・フレームワーク

タスク・進行管理のためのツール例

  • Asana:キャンペーン単位でプロジェクトを作り、
    • セクション=チャネル/フェーズ
    • タスク=施策・コンテンツ
      として管理しやすい
  • Trello:ボード型でシンプルに「今どこまで進んでいるか」を把握しやすい
  • Backlog:開発チームとマーケチームが同じ案件を扱うときに便利

どのツールでも共通して大事なのは、
「タスク名だけで何をすべきか分かるように書く」 ことです。

プロジェクト全体を設計するフレームワーク

  • PMBOK:プロジェクトマネジメントの基本(立ち上げ〜終結)を体系的に学べる
  • PDCA・OODA:改善サイクルや意思決定のスピードを考えるのに役立つ

マーケチーム全員がPMBOKを読む必要はありませんが、
リーダー・マネージャー層が「考え方のベース」として持っておくと、
チーム全体のプロジェクト運営レベルが上がります。

マーケティング専用のシート・テンプレ

  • キャンペーン設計シート(目的・ターゲット・オファー・チャネル)
  • 施策WBSテンプレート
  • KPIダッシュボード用の項目設計案
  • 振り返り用のレビューシート

これらを自社用に1セット作っておくと、
毎回ゼロから考えなくて済み、「考えること」にリソースを割けるようになります。


まとめ:マーケティングにこそプロジェクトマネジメントが必要な理由

マーケティングは

  • 数値で評価される
  • 変化が激しい
  • 関係者が多い

という構造的な難しさを持っています。

だからこそ、

  • 目的とKPIを明確にし
  • 戦略とチャネルを整理し
  • タスクとスケジュールを見える化し
  • 実行・モニタリング・振り返りをセットで回す

という プロジェクトマネジメントの型 が効いてきます。

うまく回り始めると、

  • 調整コストが下がる
  • トラブルが減る
  • 一度成功したパターンを他の施策にも展開できる

といったメリットが雪だるま式に積み上がります。

「感覚と根性で回していたマーケティング運用」を、
再現性のある“プロジェクト”に変えること。
それが、これからのマーケティングチームに求められる大きな一歩です。

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